ハナ4
「戦闘訓練をします」
蓮の言葉を聞いて、ハナは瞳を輝かせた。
「ついに戦闘訓練をやるんですね!」
「はい。といっても特別なことはしません。ハナさんはとあるものと戦ってもらいます」
「あるもの?」
「それはあとで話します。ハナさんに必要なのは戦闘経験を積み、技を磨くことですね。剣の腕はすごいみたいですから、あとは敵を倒せるようにするだけです」
「わかるんですか?その……私の剣の腕がすごいって」
「はい。両手にあるたこと筋肉の付きかたから見て、すごく剣術を勉強してきたのがわかります。なにより初めて魔獣と戦っているあなたの剣を見て、美しいと思いました」
蓮はハナが剣を振るった瞬間をよく覚えていた。
ハナの剣技は力強くも、素早くもない。
しかし無駄がほとんどなく、綺麗な剣技だった。
「あなたがどれだけ努力してきたのかがよくわかります」
蓮は優しい声でそう言うと、ハナは……静かに泣いた。
涙を流すハナを見て、蓮は慌て出す。
「え?ちょっ、どうしたんですか!?」
「す、すみません!自分のやってきたことが無駄じゃなかって思ったら……嬉しくて」
指で涙を拭くハナ。
そんな彼女に蓮はハンカチを渡した。
「ここで問題なのですが……あなたの剣技は綺麗すぎます」
「綺麗すぎる?」
「はい。敵を倒す剣技というより、魅せる剣技に見えました」
「……」
「ハナさん?」
ハナは額に手を当てて、ため息を吐く。
「すみません……私が学んだ剣技は全てお母様が紹介してくれた先生たちが教えてくれたものなんです」
「なるほど……あなたの母親はハナさんに魔法少女になってほしくなかったのですね。だから実戦的な剣技を学ばせなかった」
「恐らく……私のために教えなかったんでしょうけど」
ハナはまたため息を吐く。
よほどショックだったのか、深く落ち込んでいた。
そんな彼女を元気つけるために蓮は言う。
「ですが大丈夫です。少し調整すれば実戦的な剣技へと進化させられます」
「本当ですか!?」
顔を近づけてくるハナに、蓮は「落ち着いてください」と言う。
「ですがその前に選択をしなければなりません」
「選択?」
「はい。どんなものにも選択が必要です。何かを犠牲にして、何かを得るか。魚は陸で活動できない代わりに、海で泳ぐ力を得た。鳥は水の中で泳げないかわりに、空を飛び翼を得た。人間も鋭い爪や牙、毛皮などを失う代わりに知能を得た。それと同じです」
「……」
「ハナさんには三つの選択肢があります。一つ目は力強い剣技で敵を倒す魔法少女。二つ目は素早い剣技で敵を倒す魔法少女。三つ目は殺傷能力が高い剣技で敵を倒す魔法少女。どれにするかよく考えてください」
ハナは顎に手を当てて考えた。
とても悩んだ顔を浮かべている。
「蓮さんは……どれがいいですか?」
「俺の意見は聞いてはいけないですよ。これはあなたの選択です」
真剣な表情でハッキリと告げる蓮。
ハナはハッと口に手を当てる。
「そう……ですよね。なら……決めました」
ハナは真剣な表情を浮かべて答える。
「殺傷能力が高い剣技を教えてください」
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食事を終え、一時間休んだ後、ハナは戦闘訓練を開始した。
「さてハナさんの戦闘訓練相手は……コイツです」
蓮が用意したのは浮遊する大きな鏡だった。
その鏡を見て、ハナは首を傾げる。
「それは?」
「こいつはこの部屋でだけ使うことができる鏡型魔導具なんです。この鏡は今まで存在した魔獣や妖怪、悪魔、魔法少女を召喚します。出てくるのは相手の実力によって変わります」
「へぇ~」
「じゃあ、さっそく始めましょう」
蓮が指をパチンと鳴らした。
すると鏡から小人のようなモンスターが現れる。
そのモンスターはとても顔が醜く、肌が緑色。
そして手には骨でできた短剣が握られている。
「ゴブリンですね。昔、存在していた悪魔の一種ですね」
「き、気持ち悪いですね」
「強さは歩兵級の魔獣と同じぐらいですね」
「そうなんですか」
「ではハナさん。変身を」
「はい」
ハナは静かに息を吸い、唱える。
「斬れ、【刃】」
すると彼女の手から鞘に納められた刀が現れる。
刀を握り締め、ハナは口を動かす。
「変身」
直後、ハナの服が着物とドレスが一つになったような戦闘服へと変わった。
「ではハナさん……俺が教えたとおりに」
「はい」
ハナは鞘から刀を抜き、構えた。
睨み合う刀の魔法少女と醜いモンスター。
先に動いたのは、ゴブリンだ。
「グギャギャ!」
素早い走りでハナに近付いたゴブリンは短剣を振るう。
迫りくる短剣を、ハナは刀で受け流す。
そして身体全身を使い、ハナは刀を振り下ろした。
しかしその一撃をゴブリンは回避する。
直後、ハナは素早く刀を鞘にしまい、抜刀。
鋭い斬撃はゴブリンの首を斬り飛ばした。
敵を倒したハナはハァハァと荒い息を漏らす。
「お見事」
パチパチと拍手する蓮。
初めてだったのか、敵を倒したハナは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「やった……やりました!」
「その調子です。さぁ……どんどんやりましょう」
「はい!」
それから二時間ぐらいハナはゴブリンと戦い続けた。




