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第二話 結成よろず部

第2話です。


誤字脱字などがありましたらよろしくお願いします!!

『昔々、ある異世界で、魔王が死にました。

魔王は魔族を従え、人間たちに悪逆非道なことをしていたので、勇者によって殺されました。すると魔王の魂は2つに分裂し、1つはさらに7つに別れ、異世界中に散らばりました。そしてもう1つは、どこかへ消えてしまいました。こうして、人間たちの平和は守られたのです。

その数百年後、異世界では人間とそれ以外の様々な種族が手を取り合い、仲良く暮らす世界となりました。そして各地域において、強い力を持つ種族の頂点に立つ一族の当主は、7つに別れた魔王の魂を代々受け継いできました。その当主7人は"七珠玉座セブンズパール”と呼ばれました。彼らのおかげで今日も異世界は平和です。』




「いや、俺平和じゃねーんだけど。」


「どうかなさいました?」


俺の言葉を心底疑問そうに尋ねたオルトの顔を1発ぶん殴りたくなった。今の発言誰のせいだと……。


「なんだ今の話。」


「今の話は優也様が死んでしまったこちらで言う異世界でのその後の出来事です。あなた様が死んでから随分と変わってしまったのですから。」


確かに教えろとは言ったけどな?だからって色々おかしいだろ。

誰もこんなおとぎ話風に言えとは言ってない。

俺の事いくつだと思ってんだよコノヤロウ。


「私もその時代に合わせ変化させていくことに疲れてしまっていまして。」


「それで狙われた俺の身にもなれ?」


「もう諦めたからいいではありませんか。」


何をやれやれみたいな感じで言ってるんだこいつ。

確かに昨日俺はオルトを家に迎え入れておばさんにはバレないようにしたが…こいつずっと俺が寝るまで俺の枕元に座ってたんだよ。

軽くホラーだわ。寝ろって言っても寝ないし。

だから向こうのことを教えろって言ったけど…赤子に絵本読んであげてんじゃねーんだよ!!


俺が頭を抱えているとしたからおばさんの声が聞こえる。


「優也。そろそろ行かないと翼ちゃん待ってるわよ!」


「あ、了解。…オルト、お前どうするんだ?このまま家にいるか?それともどっか出かけるか?」


「そうですね。私も少し外に出ることにします。」


「なら騒ぎは起こすなよ。行ってくる。」


「はい。行ってらっしゃいませ。また後でお会いしましょう。」


俺はその言葉に少し違和感を感じながらも鍵を閉めて家を出る。

待ち合わせ場所に走って向かうと集合時間ギリギリだったがなんとか間に合った。

まぁ既に翼はいた訳だが、間に合ったのでお咎めなし。


俺は翼と話しながら学校へ向かい、2年B組の教室へ入った。翼は2年A組なので別クラスだが、教室に入れば友人達が声をかけてくれる。奥の方で女子が何やら楽しそうに話しているが特に気にとめなかった。


「よう優也!今日も翼ちゃんと登校か?いいなぁあんな可愛い幼なじみ。俺も欲しいぜ〜。」


小野宮おのみやわかる!!それなぁ〜。」


俺が翼と登校することを羨ましがる奴もいる。目の前の小野宮や有川ありかわもそういう奴らだ。確かに見た目はいいんだろうけど。


「やめとけやめとけ。お前らも投げられるのがオチだぞ?俺が何度投げられたことか。」


「俺は投げられたい。」


出た園田そのだという名のド変態。いつもの事だが全員から引かれている。こういう時は口を揃えて言う言葉がある。はいせーの。


「「「きも。」」」


「酷い!!わざわざ揃えて言わなくても!!」


こんな感じで楽しい日々だ。

話しているうちに担任の浅井先生が入ってくる。

全員が席に着き、浅井先生は連絡事項を読み上げるがいつも言われている内容なので別に気にすることではないのだが、何故かニヤニヤしているのが気になる。

そしてクラスの大半もソワソワしている。何だ?


「今日は、転校生を紹介する。」


あ、なるほど。それで皆がソワソワしてたのか。

確かに転校生なんて高校生にもなると滅多に会うことないからな。

楽しみになる気持ちも分かる。でもどんなやつなんだ?


「じゃあオルトくん、入ってきてくれ。」


ん?……おると?あれ?いや気のせいだろう。

確かに扉の前に感じたことのあるような気配がいるかもしれないが。やけに似たような雰囲気を知っているが違うだろう。


「皆さん初めまして。オルト・ペニングスです。よろしくお願いします。」


ドンガラカッシャーン!


「ん?どうした藤村?」


俺は椅子から崩れ落ちた。

密かに尻に障壁を張ったから問題はなかったが、クラス中からの視線は防げない。


「い、いえ、なんでも、ありません。」


「そうか?じゃあオルト。……いや苗字はペニングスか?一番端の、さっき崩れ落ちたやつの横がお前の席だ。おーい藤村!色々教えてやってくれ。日直だしちょうどいいだろ?」


は?嘘だろ??というかまずなんでいる?

あ、朝確か……「また後で」とか言ってたな。そういうことかよふざけんな!!


「よろしくお願いします。」


「ああ。よろしく。」


めっちゃにこにこしてるこいつ。

絶対楽しんでるだろ?こういうとこはバトラに似てんな。

さすが血縁。なんのためかは知らんが休み時間に聞くことにしよう。

俺はそう思いながら1時間目の授業を聞いた。



・・・・・・・



俺は色々舐めてた。

世の中で言うイケメンと言うやつを。


「オルトくんどこから来たの?」

「日本語上手だね!」

など


とにかく女子がオルトを囲んでいる。

よく見たらほかのクラスのやつもいて満員状態。

おかげで俺は席を追い出されることになった。

そんな中でもオルトはずっと笑顔で対応し続けている。

その顔が余計に女子を呼び寄せているのだ。

確かにオルトの容姿は日本人離れした青く長い髪を1つ結びに赤いメッシュが入っている。また髪とは少し違ったサファイア色の目はどこまでも透き通った印象を受ける。

昨日は暗闇でやけに目が光っていたがそういうことかと納得した。

手足もすらっとしているしまじで芸能界にいてもおかしくない。

女子がキャーキャー言うのもうなずける。


だけどもうるさい。俺の聞きたいこと聞けないじゃんこれじゃあ。

俺は仕方なく昼休みまで待つことにした。



・・・・・・・



「おい、オルト。一緒に飯食うぞ。」


「ええ、ありがとうございます。」


オルトが弁当をもって席を立ち上がるとおそらく一緒に弁当を食べようと狙っていた女子が群がってきてオルトに擦り寄るように言う。


「ええ、オルトくん私達と食べようよォ。」


「すみません元々彼との先約がありましたので。」


しかしオルトは爽やかな笑顔で断った。

さすがに本人に断られては引き下がるしかないが、オルトとは違う意味で俺に向けられた女子たちの視線が痛い。

俺は逃げるように教室を出た。


「んで?」


「はい?」


「なんでいるんだお前!!しかも生徒として!!」


今俺たちがいるのは人がなかなか来ない端っこの教室。

ここなら大声を出しても問題ないんだが、一応『無音地ノンサウンド』はやっておく。


「やはり私は優也様に忠誠を誓った身。いつでもお使いできるようにしておかなくては。」


「だからって学校に来るなよ。」


「ご安心を。しっかりとした手順でこちらに伺っておりますので。」


キメ顔するな。ルールを守っているなら咎めることはできない。

とりあえず俺はオルトに俺の事を様付けで呼ばないことや俺の許可無く魔法を使わないことを約束させた。

元々使う気はなかっただろうが一応主人となっている俺がこう言うことでより強制力が働くのでやっておくことに越したことはない。


教室に戻ると相変わらず女子の視線は痛かったが、話すことが好きな性質のおかげか自分たちの話に熱中してるものが多かった。

しばらくすると先生がやってきて授業は再開されたので俺は安心する。

先生の声は特に国語の教師の声は子守唄という名の催眠だと俺がこっちの世界にきて学んだことの一つだ。



・・・・・・・



放課後になり俺が教室を出るとオルトも当然のように後ろから着いてきた。

女子の大群を連れて。これには俺もさすがにため息。

今日1日オルトには女子がくっつきすぎだと思う。

お前絶対『魅了チャーム』使ってるだろ!!


どうやら女子達はオルトと一緒に帰りたいようだ。

それはここで仲良くなりたいという気持ちから来るんだろう。

しかしオルトはすべてを断っている。俺の従者だから俺と帰りたいらしい。


そして俺たちが下駄箱に着く頃には女子達がいなくなっていた。


「やっと断りきれましたよ。」


「そうか。もしここまで引き連れてきたら置いて帰ってたからな?」


するとオルトは少し驚いた表情になったがすぐに笑顔に戻ったので俺の見間違いかな?

こいつの笑顔ってデフォルトのようなもんだし。


「まぁいいや。俺よるとこあるんだ。」


「御一緒しても?」


「好きにしろ。」



・・・・・・・



俺達は電車に乗り最寄り駅の二つ前で降りた。

駅から少し歩くことを伝えるとオルトは色々な質問を投げかけてきた。


「優也様はいつ頃に能力が使えるようになったのですか?」


とか


「魔王様であった時のあれは一体……?」


とかだった


俺は墓地に入ると桶に水を汲んで尺をとり一直線にある場所へ向かう。

俺が止まった場所には『佐藤家』と書かれた墓だった。

とりあえず既に少し枯れた花を取り出し中にある水を捨てる。


「優也様、これは…誰の墓ですか?」


俺が花を手向けている間、オルトはその墓をじっと見つめていた。

オルトにとって人間の墓なんてどうでもいいものと思っていたが。


「俺の親友、翔太の墓だ。」


「その翔太さんは…人間ですか?」


ああ、なるほど。やっぱりそこ気になるのか。

確かにあっちの世界のやつなら当然そう思うよな。


「そうだ。この地球で生まれ育ち、俺と共に去年まで生きていた。」


「では彼はあなたと同じ転生者ですか?だって、人間で、こんなのはありえない。死後もここにあり続けているようだ。」


強いやつなら見つけられるほど微弱な魔力が墓から出ていた。

こっちの世界の人間は魔力などほぼなくどれだけ使おうとしても決して使うことはできない。

しかし墓の主は死してなお生前と変わらない、もしくはそれ以上の魔力を発しているのだ。


「骨はあるからな。こいつが転生者ということをこいつが知ってたかは知らない。こいつの魂を、向こうの世界で俺は見たことがあったけどな。ただ、翔太はちゃんと人間だよ。いつでも。」


俺がそういうとオルトはフムと理解したように頷く。

特に余計な詮索をする気はないらしい。


「しかし、彼はどのように亡くなったのですか?この地球での人間の寿命は結構長いはずですが。」


前言撤回。普通に聞いてきやがった。

まぁ向こうの連中はしょっちゅう争いとかもしてたから平和に暮らしてるこっちの方が寿命長いのは当たり前なんだが。

こいつに聞けばなんか参考になるかもしれないし。


「殺されたんだよ。こいつは。」


「人間にですか?」


「世間的にはそうなってるがな…。でもおそらく違う。殺したのは、魔力を持った異世界のやつだ。」


俺がオルトを見ると、違いますと言った感じに訴えてきたがそんなことはわかっている。そんなに否定するなって。お前は殺生好きじゃないって言ってたしな。


「俺がそう思ったのは、お前が俺のとこに来たからだ。殺され方は顔面崩壊してて川に流されてた。そのせいで発見が遅れたから犯人も未だ特定出来ていない。しかもそれを裏路地とはいえ民家があるところで誰にも気付かれずに行われた。ただの人間にそんなことはできない。お前がこっちに来たことでしっかりと人間では無いってことがわかったんだよ。」


俺が言い終わるとオルトは納得した表情をした。

俺が今日来たのは魔力の残穢が残っていないか探るためでもあったがやっぱり無駄骨。

元々翔太以外の気配がするならとっくに気づいてる。


「オルト。お前はどこからこっちの世界に来た?」


「この朝雪という地域から北に行った空絵そらえというところですね。」


「なるほど。」


どう探すかだな。既にその穴からは離れているだろうし。

どんな奴か分からないから痕跡を追うこともできない。


「しょうがない。オルト、こっちに来るってやつはどんな奴が多い?」


「そうですね、最初の頃は興味本位でしょうか。突如として現れた別世界。調査したくなるものは多かったのです。しかし多くのものが死に至ったことで、こちらに来ようとするのは相当強いものたちだけとなりました。」


「俺の魔力か……。」


「ええ、向こうであなたを知らないものはいない。そしてある程度力を持っているものであればこちらにあなたがいることもわかる。私のように。」


となると大抵が俺狙い。

なら…


「オルト!協力してくれ!」


「はい?」



・・・・・・・



そこからの俺の行動は早かった。

俺が通っている神楽星高校は朝雪市で最も大きな高校であり結構有名。

ならば俺の噂を広めるのも容易いだろう。


「なるほど。そこで部活動ですか。」


「ああ、この高校は2人から部活動作れるからな。おかげで訳分からん部活も多いが……。」


俺たちは本校舎ではなく図書室や音楽室なんかがある北校舎に来ていた。

そこには何個か使われていない部屋があり、そこを部室としてはあてがわれたのだ。

一応清掃担当の生徒はいるので綺麗にされているがほとんど何も無い。机と椅子が数個ずつくらいだ。


「確かにパンフレットを見て驚きましたよ。なんですか『大食い部』とか『床にごろごろ部』とか。まだ『サーフィン研究部』の方が分かりますね。」


それは俺も思った。

生徒数が多いからか絶対いらないだろうという部活がご満とある。

なら俺がこうやって部を立ち上げてもなんら問題ない。

なんならそういうのよりよっぽど実用的だ。


「それで部の名前が『よろず部』ですか。安直すぎません?」


「仕方ないだろ即興で考えたんだがら。とりあえずこれで事件解決でもしていけばいつかそいつも来るだろ。」


なんか…どっかのちっこい探偵みたいになってしまってるか俺?

いやここは我慢我慢…言わなかったらパクリとかなんとか言われないはずだから。


「なんかこっちの資料調べのために読んだ名探偵みたいですね。」


「言うなよせっかく黙ってたのに。……ゴホン、とにかく、まずは部の宣伝からだ。依頼が来なきゃ始まらないもんな。」


「では早速宣伝しましょう。そのためには色々と準備ですね。」


「ああ、やろうか。」



こうして俺は、目的を果たすために部を立ち上げた。










人物紹介

藤村優也

生前異世界の魔王をしており、テンプレと言わんばかりに勇者に倒され、何故かこっちの現代に転生した人。

魔力なしでも快適に生活できる現代を結構気に入っていて青春を謳歌しようとしてた。

ちなみに生前の名前は『ワース・ミスト』


髪:黒髪で少しはねてる

目:黄色


別に顔は悪くないのだが、翼と仲がいいので手は出されないというか、自然とそういう認識になってしまっているというか。

本人はもてたい訳では無いが、オルトに男として負けた気がしたらしい。



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