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メモ(第8話 赤黒のゴブリンの村へ)

 ヒケンの森にダンジョンが誕生して、もう1ヶ月半が経過する。ダンジョンは順調に拡張を続け、ケイビング出来る程までに成長している。

 隠し部屋も1部屋数が増えたが、小人族が研究室となり、結局俺とブランシュの同棲生活は変わっていない。


 だが一番の変化は、ゴブリンのゴブゴブ。ダンジョンコアが汚染された大地から毒を吸い上げ、その毒をゴブゴブが吸収している。

 エンシェント・ドラゴンの毒にも順応した、赤黒のゴブリンの特異体質の真価が発揮されている。


 子供サイズの体は、今では立派なオニ族にしか見えない。筋肉隆々で額の左右には角が生えてきている。


「ゴブゴブ、そろそろじゃないか」


「そろそろって、何がゴブか?まだまが、予定の壺は50個しか作ってないゴブ」


 今、ゴブゴブがやっていることは、ダンジョン内に設置する壺の製作。最初に作っていた宝箱の100個は完成している。


「違う。ダンジョンも広くなってきたし、ダンジョンコアが吸い上げる毒も弱まってきた」


「えっ、そっ、そんな、ワイは用無しゴブか」


「最後まで話を聞け。そろそろ仲間達を連れて来ても大丈夫って話だ」


「……ホッ、ホントに、そんなことしてもイイゴブか?」


「当たり前だろ。ゴブリンが1体しか出現しないダンジョンなんて、冒険者を惹き付ける魅力はない。それにな、ゴブリンとしては少し進化しすぎた」


 当初の予定では、慌てるつもりはなかった。しかし、想像以上にダンジョンの成長が早く、そして何よりもゴブゴブが進化してしまった。ステータスも駆け出しの冒険者が相手に出来るレベルを越えてしまっていることに、ゴブゴブは気付いていない。


「さあ、さっさと行くぞ。時間はない」




 久しぶりに出る地上は、暗闇に包まれている。鬱蒼と繁った森の中は、日中でも薄暗いダンジョンの中と変わらない。ましてや、日が暮れてしまえば月明かりが届くはずもない。


「ゴブゴブ、見えるか?」


「大丈夫ゴブ。この森はワイの庭ゴブ。目を瞑っていたって、村まで帰れるゴブ」


 俺とゴブゴブが、ダンジョンの外に出たのは、暗闇に包まれた夜となってから。赤黒のゴブリンのことを考えれば少しでも急ぐ必要があるが、それ以上にオニへと進化したゴブゴブが目立ってしまう。

 そして暗闇の中を、ゴブゴブは迷うことなく駆けてゆく。進化した体は、以前よりも大きくステータスが上がっているが、それでも何の問題もなく暗闇の中を進んでゆく。

 赤黒のゴブリンの村に残された、ゴブゴブの弟達がいる。魔物といえど、獣以下の強さ。それに飢え死にしているかもしれないという不安が、ゴブゴブを急がせるが、赤黒のゴブリンはヒケンの森では飲まず食わずでも死なないだろう。そのことには、ゴブリン達は誰も気付いていない。


 明け方になると、異臭が漂ってくる。それが、赤黒のゴブリンの村が近いことの証拠になる。ゴブゴブの村の近くには赤い湖があり、そこからは腐ったような異臭が押し寄せてくる。そんな場所に住む者は、この森で棲みかのない者だけなのだから。


 さらに村に近付いてくると、聞き覚えのある下品な声が聞こえてくる。


「おら、早く歩くゴブ。こんな臭いところに住みがってゴブ」


「待ってゴブ。必ず、約束分の食糧は持ってくるゴブ」


「出来ないから、こうなってるゴブ。心配するなゴブ。生き餌として仕えてやるから、感謝するゴブ」


 前にゴブゴブ達を見た時と、同じゴブリンの集団。しかし、今度は赤黒のゴブリンは完全に捕らわれている。


「生き餌なんて、嫌ゴブよ。ここは、ボクに任せるゴブよ」


 一体の赤黒のゴブリンが果敢にも 緑ゴブリンに体当たりを食らわせる。不意をついた攻撃は、一瞬だけ緑ゴブリンをよろめかせる。しかし、痩せ細ったゴブリンと肥満ゴブリンでは体格差がありすぎて、逃げる隙は作れていない。


「はあっ、誰に向かってい言ってるゴブ。馬鹿は、死なんと分からんゴブね」


 ゴブゴブの時と同様に、棍棒を振り上げる緑ゴブリン。何もしなければ、間違いなくあの赤黒ゴブリンは死ぬ。


「ゴブ吉ーーーっ、今助けるゴブよ!」


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