メモ(第6話 使い魔)
【6話 ブランシュの連れてきた使い魔】
俺達と契約した魔物の赤黒のゴブリンのゴブゴブは、ダンジョンの毒を吸収し進化している。それはゴブゴブの特異体質だけではなく、ダンジョンコアもそれを理解し、強制的に毒を流し込んでいる。
短期間の間に、子供サイズだったゴブゴブの身長は10㎝は伸びている。体付きも精悍で逞しくなり、ゴブリンというよりは鬼に近くなっている
「レヴィン、契約違反ゴブ。なんで、ワイがこんな事をしなければならないゴブ」
ゴブゴブは自身のの進化を目の当たりにし、戦うことにも自信を覗かせている。しかし、今ゴブゴブがやっていることは、戦闘とは全く無関係の宝箱の製作。
ダンジョンに必要なものは、どこからともなく出現する宝箱や壺。しかし、そんなものが急に現れるわけはなく、全てはダンジョンの裏方となく黒子天使や魔物が製作している。
ダンジョンに訪れる冒険者達と戦うことは、ダンジョンの膨大な業務の一つでしかなく、そこに至るまでの業務があってこそ、ダンジョンとしての魅力が生まれる。
「ゴブゴブ、中々上手いじゃないか。かなり筋はイイぞ。100年に一度の才能の持ち主かもしれん」
「そうゴブか。仕方ない……うっ、危ない、また誤魔化されるところだった。ブランシュ様は、どこに行ったゴブ、ブランシュ様は?」
何度かは誤魔化していたが、ゴブゴブの体の進化に伴い、ブランシュへアピールしたい気持ちが抑えきれなくなっている。
「使い魔を探しに行ったぞ。ダンジョンは魔物だけじゃ、やっていけないからな」
「ワイは進化したゴブ。使い魔なんて必要ないゴブよ」
使い魔とは、ダンジョンで死んだ冒険の魂。ダンジョンに強い未練を残し、成仏出来ずにいる魂に依代を与えることで、ダンジョンで使役させることが出来る。
「仕方ない。ゴブゴブはNPCなんて出来ないだろ」
ダンジョンに出現するNPCと呼ばれる存在が必ず居る。ダンジョンの中で窮地に立たされた時に都合よく出現する商人。謎解きに行き詰まった時に、それとなくヒントを出したり、都合よく異変を告げる冒険者。それらは、使い魔の仕業になる。
「うっ、頑張れば出来るゴブ」
「無理を言うな。熾天使と魔物が仲良くしているところを見られる訳にはいかないんだ」
「そうゴブけど。変なヤツに来てもらっては困るゴブ」
「それよりも、ダンジョンを大きくして仲間を連れてくるんだろ」
そんな話をしていると、ダンジョンの外から賑やかな声が聞こえてくる。
「ホビホビッ、ホビホビッ、ホビホビッ」
一人じゃなく複数の声で、少なくても十人以上は居る。まだ出来たばかりのダンジョンに連れてくる使い魔。魔物と同じで、存在を維持するには魔力を必要とし、そこに割ける魔力は多くない。
そして姿を現したのは、ブランシュに引率される小人族。
「姫、このダンジョンの毒は、クーッ、強烈ホビーッ。死ぬホビーッ」
「もう、死んでるホビよ」
「ホビー、噂の新種ゴブリンを発見ホビーッ」
「逃がすなホビ。サンプルを採取するホビよ」
小柄なゴブゴブの膝ほどの身長しかない小人族の集団が、あっという間にゴブゴブを取り囲むと、一斉に襲いかかる。
「生かして捕らえるホビ」
「内蔵は絶対に傷付けては駄目ホビ。狙うは頭ホビ」
物騒な言葉が飛び交うが、小人族は体の大きさに見合った力しかなく、ゴブゴブに簡単に払い除けられている。魔法が得意な種族でもなく、小人族は繰り返しゴブゴブに飛びかかっている。
「中々やるホビね。取って置きを出すホビよ」
今まで指揮を執っていた小人が、ゴブゴブに向かって煙玉を投げる。だが、小人の投げる大きさだけあって、大きさは小さく立ち込める煙も少ない。
「エヘゴブ~。ブランシュさーま、ワイ強くなたでゴブ~、エーヘーッ」
しかし、ゴブゴブはとろんとした目になり、呂律が回らなくなると、その場に倒れ込んでしまう。鑑定眼スキルでは、ゴブゴブにダメージは無いが、魅了状態になっている。そして、微かに匂う甘い香り。
「ホビーッ、サンプル採取するホビーッ」