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メモ(第3話 ゴブリンの争い)

【3話 ゴブリンの争い】


 イスイの森の魔物。辺境の地になればなるほど、魔物は強くなる。しかし、ヒケンの森は辺境の地といっても、大きく状況が変わる。

 数千年前にエンシェント・ドラゴンが暴れまわり、荒地となった大地には雑草すら生えない。森の再生には千年以上の年月を必要と、今でも名残は各所に残されている。

 森に点在する湖は、エンシェント・ドラゴンのブレスによって出来た跡でもある。赤や紫に染まる湖の色は、まだエンシェント・ドラゴンが放ったブレスの魔力の残滓。


 そんなエンシェント・ドラゴンの気紛れで、再び荒れ地になる場所を棲みかにしようとする魔物は居ない。だからこの森に居るのは、生存競争に破れ棲みかを失った弱小の魔物と、争いを好まない温厚な魔物だけ。




「待って欲しいゴブ。必ず残りの約束分は届けるゴブかよ。だから、これだけは持っていかないで欲しいでゴブ。仲間達が死んでしまうゴブ」


「うるさいっ、役に立たない奴は死ぬゴブッ。それがオレ達の掟だ」


「お願いゴブ。それだけは、それだけは、やっと手に入れた食料ゴブ」


「それなら、オレ様が仲間を救う方法を教えてやるゴブ」


 緑ゴブリンの持つ棍棒が振り下ろされると、赤ゴブリンは簡単には吹っ飛ばされてしまう。それを見た仲間の赤黒ゴブリンは、一目散に逃げ出してしまう。


 俺とブランシュの目の前で、繰り広げられたゴブリン同士の争い。子供サイズの魔物のゴブリンだが、赤黒い方は痩せ細り、緑の方は艶があり肥満体型。5体と数は同じだが、勝負は一瞬で決まってしまった。


 決して緑の肥満体型のゴブリンが強いわけではなく、痩せ細ったゴブリンが弱いだけにすぎない。弱小の魔物のゴブリンでもヒエラルキーがあり、常に強者と弱者は存在している。


「ゴブリン同士でも争いはあるのね」


 同族同士の争いを見るブランシュの顔は浮かない。熾天使がダンジョンマスターであることは、決して知られてはならず、目の前の争いに介入することは出来ない。


「残念だけど、そんなもんだ。ゴブリンロードクラスの上位種がいても、必ず弱者はのけ者にされる」


 ヒケンの森のダンジョンの周りには、幾つかのゴブリンの棲みかがある。その中でも緑のゴブリンは百匹ほどの集団を成し、ヒケンの森のゴブリンを支配している。少しでも強いものをダンジョンに住まわせるなら緑のゴブリンになるだろう。


「どう、レヴィンのお眼鏡にかなうゴブリンは見つかったの?」


「そうだな、だいたい目星はついてる。ブランシュのダンジョンに相応しいゴブリンではあると思うぞ」


 きっと、緑のゴブリンであるならば、ブランシュは拒否するだろう。だが、今はしなければならないことは違う。


「さあ、早くしよう。そうでないと、アイツは助からない」


 ゴブリン達の気配が消えると、俺の言葉よりも先にブランシュが動き出している。目の前のゴブリンを助けることに、何の意味もないかもしれない。それでも、ブランシュは瀕死のゴブリンを助けようとしている。


 ヒーリング魔法を唱えると、砕けたゴブリンの頭はみるみると修復され、流れ出す血も止まってしまう。


「余裕で、間に合ってしまうんだな……。流石は熾天使の回復魔法」


「しばらくは意識は戻らないでしょうけど、命に別状はないはずよ。流れ出た血は戻らないから、しばらくは目を覚まさないと思うわ」


「仕方ない。拉致するみたいで嫌だけど、コイツを連れて帰るか。後はどうにでもなるだろ」


「んっ、このゴブリンを連れて帰るの?緑ゴブリンじゃなくて?」


 ブランシュは驚くと同時に、安堵と不安の入り混ざった表情を浮かべている。情に流されて弱いゴブリンを連れて帰れば、ダンジョンは弱体化する。それでも、横柄な緑ゴブリンには嫌悪感しかない。


「ああっ、コイツで決まりだ。出来れば、仲間達もまとめて交渉したいくらいだけど、まずは最初の1体だろ」


「いいの?」


「大丈夫に決まってるだろ。コイツらは、ゴブリンの中でも変異種。こんな変わった奴らは、見たことがない」

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