【四コマ漫画風短編小説】先生、バレンタインは愛の日ですよ
バレンタイン恋彩企画に投稿しようと書いていたのですが、締切マモレナカッタ……。
書くには書いたので普通に投稿。
ざっくりキャラ紹介。
女子高生【田主千夜子】
いとこで高校教師の先生が子どもの頃から大好きで、料理の腕を磨いたり、先生の勤める高校に首席合格したり、両親と学校の理事長や校長を説得して婚約者(口約束)になったりと、色々頑張る子。
先生【乃木身逸人】
女子高生の好意は理解しているものの、赤ん坊の時から面倒を見てきて、おしめまで変えた事のあるいとこの女子高生に恋愛感情はないが、親戚だし可愛がってはいるので突き放す事もできない難儀な立場。独身。彼女いた事なし。
単品でもお楽しみいただけますが、シリーズになっていますので、以前の作品もお読みいただけましたら嬉しいです。
【ご注文は甘いものですか?】
「先生は甘いものお好きですか?」
「えぇ、人並みには」
「良かった。そうしたら」
「全身にチョコレートを塗りたくるのは禁止ですからね」
「……どうして分かったのですか」
「私の食の好みなど完全に把握している君が、そんな事を言ってくる時点で警戒するのは当然です」
「そんな。折角全身を覆える量のチョコレートを準備したのに」
「食べ物を粗末にしてはいけません」
【常識的な非常識】
「先生が舐めてくれれば無駄にはなりませんよ」
「その量では血糖値が上がりすぎて体調不良になりそうですね」
「先生の健康のためでは諦めざるを得ないですね」
「どうせなら企画の時点で気付いて欲しかったのですが」
「普通に作ったら食べてくれますか?」
「あくまで普通に作ったらの話です」
「では私の顔の型を取って、チョコを流し込んで」
「普通の基準について話し合う必要がありそうですね」
【恋する時は前のめりに】
「私の顔の形のチョコを舐めて食べたら、『次はお前の番だ』ってなるかと思ったのに」
「そんな怪談みたいなノリで手を出すとでも思っているのですか」
「私と先生はいとこで婚約者。両親の許可も下りているのですから、遠慮はいりませんよ」
「赤ん坊の時から面倒を見ているのですから、そういう目で見れないと何度言ったらわかってくれるのですか」
「それはおかしいですよ。私は赤ん坊の時から先生を見ていますけど、愛しい気持ちは全く途切れませんよ」
「それは家族に向ける気持ちと混同しているのでは」
「つまり既に夫婦の域に達していると」
「前向きにも程があります」
【今この瞬間にありったけを】
「ではハート型の可愛いチョコを作りますから、食べてくださいね」
「止むを得ませんね」
「花の女子高生の手作りチョコに対して、反応が薄すぎますよ」
「高校教師が生徒からのチョコに大喜びするのは問題でしょう」
「つまり生徒でなくなれば喜んでくれると」
「そういう訳ではありませんので、退学を検討しないように」
「先生は私の事を何でもわかってくれているんですね」
「冗談のつもりだったのですが」
【決戦はバレンタイン】
「はい先生。ハッピーバレンタインです」
「わざわざ朝一番で届けに来なくても」
「だって誰よりも先に渡したいじゃないですか」
「そこまでしなくても、君以外に私にチョコを渡す物好きはいませんよ」
「先生の魅力は私だけが知っているという事ですね」
「君の場合は誤解が主な気がするのですが」
「誤解なんかありませんよ。先生の優しさや魅力や良いところはちゃんとわかってますから」
「優しいだけの男と言われた気がします」
【三倍返しだ】
「ホワイトデー、期待していますね」
「お返しは用意しますよ」
「ちなみにホワイトデーのお菓子には、物によって意味がある事を知っていますか?」
「初耳です」
「マシュマロやグミ、チョコレートには否定的な意味があるそうですよ」
「そうなのですか。ちなみに無難なお返しは何でしょうか」
「ウェディングケーキとかどうでしょう」
「君に聞いた私が間違っていました」
【プラシーボでもいいから】
「先生、できればそのチョコは今日の夜に食べてくださいね」
「今から出勤ですからそのつもりですが、何故改めて言ったのですか」
「チョコレートには媚薬効果があるそうなので、私が作った晩御飯を食べて、チョコも食べて、そのまま私も食べてもらえればと」
「今いただいてしまいましょうか」
「朝からだなんて、先生大胆」
「そんな危険なものなら、食べずに捨ててしまいましょう」
「あぁ! 先生! 大丈夫ですからちゃんと食べてください!」
「大丈夫なら最初から余計な事を言わないように」
【好きって言って】
「でも何だかんだ言っても受け取ってくれる先生優しい」
「受け取らなかったら夕食に混入されかねませんからね」
「カレーならバレませんよね?」
「受け取ったのですから、そんな怖い考えは捨ててください」
「冗談ですよ。ちゃんと『好き』って形にしないと、バレンタインのチョコに意味はないですから」
「そうですか」
「また先生はそうやって受け流すんですね」
「当然です。私は教師であり、いとこですから」
【あなたが望むなら】
「……私って迷惑ですか?」
「その聞き方はずるいですよ」
「でも先生が本当に迷惑に感じているなら、ちゃんと考えますから」
「迷惑というか、こんな十三歳も歳の離れた私よりも、もっと相応しい相手がいると思っているだけです」
「それは私のため、ですか……?」
「えぇ。君には幸せになってもらいたいので」
「私の幸せ……」
「君は私の大事ないとこですから」
【抑える気もないキモチ】
「私の幸せを願う、それはつまり私への愛ですね!」
「まぁ愛と言えば愛ですが、家族愛に近いもので」
「そして私の幸せは先生といる事です!」
「何故私はこうなる事を予想できなかったのでしょう」
「もはやこれはプロポーズと同義! ホワイトデーのお返しは記入済みの婚姻届ですね!」
「馬鹿な事を言っていないで学校に行きますよ」
「そうと決まれば一日も早く卒業しなくては! 先生! 私頑張ります!」
「どう頑張っても卒業式の日にちは変わりませんからね」
読了ありがとうございます。
先に温泉旅行編を書こうと思っていたのに、月日の経つのは早いもの……。
一日遅れのバレンタインですが、お楽しみいただけましたら幸いです。