第四話 吸血鬼と吸血
今日は実践練習。
14階層は岩場だらけだ。
敵は岩の隙間から隙間に入りやすい蜥蜴タイプの敵も多い。
そんな敵にフォルが不意打ちを喰らう。
防具で守られていない左太ももに噛み付かれてしまった。
「フォル!!」
血魔法:沸騰で倒そうとするが、フォルが首を横に振った。
「武器で倒せ!!」
フォルの指示通り血魔法:呪鎌を召喚して蜥蜴を斬り裂く。
しかし、斬り裂いたのは尻尾だけだ。蜥蜴は岩陰に逃げてしまった。
「ごめん、フォル……」
「いいんだ」
フォルはピンキーから距離を取ってアンゼムを呼ぶ。
フォルの血の匂いが風に乗ってピンキーに届く。
ピンキーはその微かな匂いが人族の血の匂いだとわかった。
ピンキーの中の何かが激しく興奮する。
そんな姿をリンやシンシーに見られたくなくて、岩陰に隠れる。
ピンキーの行動に気が付いたリンはピンキーに近づく。
「大丈夫よ。それは吸血鬼の衝動。ピンキーの問題じゃないわ」
額から滝のような汗を流すピンキーを安心させるためリンが抱きしめる。
「ピンキー。苦しいなら私の血を吸ってもいいのよ」
何と言う甘い誘い。理性を失い欠けているピンキーはリンの首筋に噛み付こうとしていた。
「ピンキー」
その様子を見ていたシンシーはピンキーの名を叫ぶ。
我に返ったピンキーは自分のしようとしていた行動に動揺する。
「ごめんなさい……。私……」
涙を流して謝罪するピンキー。
「リン!!」
ピンキーを誘惑したリンの頬をフォルは叩く。