第三話 信頼と信用
結局、全員に契約魔法:をかけた魔法使い。
信用したのだから、魔法使いでは駄目だ。ちゃんと名前で呼ぼう。
「リン、私にも契約魔法:をかけて、皆を裏切らないように……」
「大丈夫よ、ピンキーを信じているから」
「狡い、まるで私が……」
ピンキーの言葉を遮ったのは、剣士の青年フォルだった。
「君の仲間を人族が殺したんだ。疑うのは当たり前だ」
4人は道中、いろんな事を教えてくれた。
「ねぇ、ピンキーも精霊魔法覚えてみる気はない?」
ピンキーは首を横に振った。
「きっと無理だよ」
黄金の騎士に言われたことがある。
強くなるためには人族から吸血する必用があるのだと。
吸血するっことにより、吸血鬼として進化して力が手に入るらしい。
でもピンキーは頑なに拒んだ。
二度と元に戻れなくなるのが怖かった。
「私は血魔法と骨魔法で十分よ」
この天空の塔で黄金の騎士に習った二つの魔法。
今までも十分やってこれたし……これからだってと思っていた矢先に14階層のBossに完敗したのだ。
「なら剣の特訓だ」
「うん。血魔法:呪鎌」
ピンキーは大きな鎌を召喚する。
ピンキーとフォルは楽しげに打ち合うが、実力的にはフォルの足元にも及ばない。
「ピンキーは魔法使いタイプだが、リン達よりも接近戦で戦える。接近戦も強くなればオールラウンダーとして戦えるぞ」
「うん、頑張る」
訓練が終わると、擦り傷切り傷は当たり前で骨折すら珍しくない。
ピンキーは戦闘モードに入ると、恐怖や痛みを感じないのだ。
「ちょっとは手加減しなさいよ。ピンキーがボロボロじゃない」
しかしフォルには目的がある。このパーティーで前衛職はフォルのみ。出来ればピンキーにも接近戦で戦って欲しいと思っている。
二刀流のBossの攻撃をフォルだけで抑えることができない。ピンキーが接近戦でBossの攻撃を抑えることが出来れば攻略の糸口が見えてくる。
ピンキーの左腕は骨折しているため、だらんとぶら下がった状態だ。
「アンゼム、お願い」
「まかせろ、治癒魔法:再生」
戦闘モードから解放したピンキーの顔が痛みに歪む。
吸血すればもっと強くなれるかも知れない。
でも……。人族の血の味を覚えてしまったら自分が自分じゃなくなる。
そんな気がしていた。