フェーズ11。黄金の夢の覚める時。 パート2。
「肘が、ちょっとガクガクしますけれど、受けきれましたわ」
覇司魔はそう言って、ふぅぅと深く息を吐く。
「さて」
サムライトブレードを構え直し、ターゲットであるオルトロンへと向き直る。
「先陣、切らせていただきます。ヘンカワリーナ、ステラチャージ!」
『ござリーナ!」
「えっ?」
驚いたのはカグヤ、その驚きでイグゼキャリバーへの魔力供給が止まる。
「スタラチャージって今言わなかった?」
「ステラチャージ、だと思うけど。なにそんなに驚いてんだ?」
勇大は、間の抜けた声で尋ねる。
「違う……の?」
「ちょっとだけ違うな。意味合いとしては同じだろうけど」
「ああ、そうなんだ」
「で、なにを驚いたんだ?」
再度問う勇大に、「あ、ああそれね」とカグヤが気を取り直す。
「ニャたしの世界に、スタラチャージって言う、効果は高いんだけど
ものっっすごく苦まずい薬があるのよ。
だから驚いたの」
答えた後、左腕で額の汗をぬぐってから、
カグヤはイグゼキャリバーへの魔力注入を再開する。
「なるほど。異世界に自分とことそっくりな名前があったら驚くな」
「チャージ完了でござリーナ!」
紅に金色が入った、輝く紅の光に包まれた光彩刀の刀身。
「五角に集え! 浄化の光炎!」
言いながら、中空に五角形を描くトゥインクルサムライ。
刀身の光が中空に描かれた五角形へと流れ、同じ色の輝きを帯びる。
更に、ステラコーデのティアラの、額側にある太陽の紋章から、
陣へと更に光が放たれる。輝きを増す中空の五角形。
「ペンタファイ」
中空の陣を刀で貫き、その光を再びサムライトブレードへと吸収する。
「ウェーブ」
更に上へと振り上げ、大上段の構えになる。
刀身の色が、紅に金色が入った、輝く紅の光に包まれる、
今回は紅よりも金色の色が濃く、金に紅がしみ込んだような
金が前に出るカラーリングになった。
「バーニング!!」
力強い言葉の直後、全力で刀を振り下ろす。
それによって、刀身に宿った光が、切っ先へと凝縮された分厚い光波となって、
オルトロンに向かって走った。
「ぐっ、重い……!」
ぶつかった光の波は、オルトロンを一歩後ずさりさせるほどの衝撃を生んだのだ。
「二人の力を合わせ、それを更に強化した一撃です。それぐらいの威力は出てくれなければ」
しかし自慢げな声色と裏腹に、覇司魔は肩で息をしている。
「もっと、照射時間を継続させたかったのですが、
これ以上は肘と体力が持ちませんの。ごめんなさい」
僅かな時間だけエネルギーを放ったところで、エネルギーどころかステラコーデすら解除され、
元の少女に戻ってしまった。本当にエネルギーが底をついてしまったのだろう。
「大丈夫だぜ」
言いながら、和也は左腕のパイロプライムブレスのディスプレイの、
右側をタッチ。『キックシフト、モディフィケーション』の音声が流れる。
それを聞いて確認し、今度は左側をタッチした。
『フェイタルオーダー』
それを聞いて、今度は変身時に叩くように触れた、中央部分に触れる。
『火焼形態、ロード』
音声の直後拳の色が緑に戻り、そのかわりに足の色に輝きが生まれる。
「おわっ?!」
和也が驚いたのは、足から噴き出した蒸気のような煙のあまりの出力に、
身体が垂直に軽く飛び上がったからだ。
「たしか、必殺技はバックルに触れればいいんだったなっ!」
な、と同時に右手でバックルを叩く。
『パイロードライブラスト』
「ディバイナ、また頼みがある」
「なんでしょう?」
「だから、おめめキラキラさせんなうっとおしい。なに、簡単だ。
俺と同時に、奴を飛び蹴りで攻撃してくれ。いわゆるダブルキックって奴だ」
「そ、それはもしかして。共 同 作 業、ですかっ? ですよねっ!」
「え、あ……アッハイ」
「わかりましたっ! おまかせくださいっ!」
言うとディバイナの右足に、瞬時に白い光が生まれる。
その色は濃く、さきほどの終息魔弾クラスの明るさである。
「よし、いくぞ!」
「はい!」
言うが早いか、二人は同時にオルトロンへ向けて、
「でいやあああああ!!」「はああぁーっ!!」
裂帛の気合の声を発しながら飛び蹴りをしかけた。
「ぐうああっっ!」
両肩に命中した同時キックだったが、オルトロンは大きくのけぞるものの
衝撃で暫く後退させられただけで、オルトザンバーを
抱くように握りしめることで、むりやり取り落とすことを回避した。
そこでブレイロス、和也の装甲が緑の光に包まれた。
『オーバーフロー』
驚く間もなく、ブレスから音声が流れ、装甲の姿が消えてしまう。
「な、変身解除された?」
「だんなさま、後ろに!」
「お、おお」
言うと二人は覇司魔たちの側に戻り、その際に和也が直樹、アルターの肩を叩く。
それに一つ頷いて答えると、直樹が戦場に躍り出る。
『60%』
「はぁ……はぁ……もう、むり」
崩れるように地面へ両手をついて、カグヤがギブアップを宣言する。
「なら、後はあたしがやる」
言うと、カグヤの真上にドラゴンシグマド、みくるが飛んで来る。
「頼むわ」
頷いたみくるは、カグヤの頭のすぐ上まで下降すると、
イグゼキャリバーの鞘へ視線を向ける。
そして、口を大きく開けると緑色に輝くブレスを放ち始めた。
「一人じゃ大変だろ」
その言葉の直後、一つの手がイグゼキャリバーに添えられる。
「あなた、鎧の人」
グレイルブルー、てんまが驚くのに一つ頷くと、
鎧騎士シグマドは緑の光に包まれ、
その光がイグゼキャリバーに添えられた左手へと終息する。
『70%』
「わたしも、やる」
決意するように言ったのはグレイルブルー。
ヤキウチガンをイグゼキャリバーへと向ける。
めいっぱいやることをやっている周囲の中、自分の体力に余裕がまだ少しあることで、
手すきでいるのがいたたまれなくなったのだ。
「この角度なら、二人には当たらないな。よし」
言って、ヤキウチガンからビーム状の炎のエネルギーを
イグゼキャリバーへと注ぎ始める。
『パニオン!』
今の今まで、両刃剣の剣身を、腹を相手に向けたかっこうにしたような形の顔に
白い鎧を纏い、右肩甲骨部分に黒い翼を持った基本フォーム、
プロタゴンフォームだったアルターが、光を纏って姿を変えた。
「まだか! 俺もけっこうきついんだぞ!」
言いながら、速度重視のパニオンフォームにかわったことで、
素早い連続攻撃を叩き込んで行く。
オルトロンへの手応えは、最初の時と同じようにほぼ感じないが、
変身者である南島操真にダメージが蓄積していることで、
相手が防戦一方になっている。
『90%』
「よし90%、もうちょっとだ! わりい、後少し頼む!」
プライムローダー・キャリバー、勇大が手を貸してくれているメンバーを鼓舞する。
「後10%か」
勇大の声を聴いて状況を把握、連撃を続けながら口に出した。
『ゼロ! ゼロ! ゼロ!』
足技のみに攻撃を切り替えるのと同時に、左二の腕のタッチパットを操作。
更なるフォームチェンジに動くアルター、直樹。
『ディバイナ! いかり! 結葉!』
「ロード」
言葉の直後、緑の光に包まれるアルター。
『デスタニア!』
フォーム名を発するドライバー。宣言を終えると光が消え、
一回り体躯が大きくなり、黒ベースの体に鬼のような顔の、力重視の姿、
デスタニアフォームへと変身した。
「そいつを叩き折れればダメージも増すんだけどな」
言葉の後に大きく一つ息を吸う。
「らぁっ!」
そしてから、変わりなく腹を見せている構えの大剣、
オルトザンバーを殴り、それをきっかけに更なる連打を浴びせる。
一撃一撃を、体重を預けるように叩きつけているその動きの重さは、
装甲の特性ゆえの重みだけではない。
体力が限界に近い直樹は、
大きく息を吸い、打撃と同時に呼気を気迫と共に吐き出すことによって、
気力で戦っているのである。
「なぜ、そうまでして戦う」
「あんたならっ、知ってるだろうっ、南島操真っ。俺は、逃げないっ。
あんたとのっ戦いにっ、っ決着がっつくまでっ、このっ! 戦いからもっ! なっ!」
「その結果、死ぬことになってもか?」
「俺がっ、ディアボロードとしてっ、このっ、世界にっ、戻らっ、なければっ。
あんたはっ、苦しむっことはっ、なかったっ。これもっ、またっ、
俺のっ、体がっ招いた不幸っ。
ならっ、あんたのっ、最後をっ、最初のっディアボロードとしてっ、
見届けなきゃっ、そしてっ、見送らなきゃっ、いけないっ。
それがっ、俺のっ。答えだっ!」
「ぐっっ!」
最後に放った右の拳は、デスタニアフォームの体術で、
初めてオルトロンを弾き飛ばす威力だった。




