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フェーズ8。最強の悪夢。 パート2。

「まず前提として、私はディアボロードだ」

「ディアボロード。たしかに、アルターが見たことねえフォームになってるんだから、

アルターより強いって考えれば、それも納得か」

「ディアボロード。さっきの怪人さんたちとかこの世界に転生した人のことで、

身体能力が強化されてるんだっけ」

 

 プライムローダー・キャリバーに変身している勇大ゆうだいに続き、

 グレイルブルーとなっているてんまが、理解の呟きを紡いだ。

「転生者、そういう者達もいるのか」

 オルトロンは、てんまの口にした存在を、今初めて知ったようだ。

 

 

「しかし、ディアボロードとは通常、夢を媒介にして繋がった異世界の力を

その身に取り込んだ人間のことだ」

 

「夢で繋がった異世界。それ、女神様が言ってたのと同じ話よね?

異世界の神様から招待されて、ごく短い時間異世界に滞在できてるのが、

異世界にいるとしか思えない夢の正体、って言うあの話と」

 驚きに目を見開いて、カグヤはオルトロンの説明を、そうかみ砕いた。

 

「たしかに、異世界の夢って記憶に残り易いけど、

でもだからって、その体験がそのまま己の力になるって言うの?」

 

「そこが我々ディアボロードの、他と違うところなんだ。

あまりに鮮明過ぎるその夢は、君の言うように

本当に異世界にいたのだろう。それが積み重なることで、

ディアボロードとなりうる人間は、異世界の力をその身に取り込むことになる」

 

「そうだな。俺はその夢での異世界滞在を、人為的に起こすために眠り続けてた

アキロノスエネルギーを取り出すための実験の参加者だから、養殖ディアボロードだけどな」

「それはそれで過酷だな。強制的に昏睡状態になってたようなもんだろ」

 和也かずやの気の毒そうな声色と表情の言葉を「まあな」と受け流し、

 直樹なおきは言葉を続ける。

 

「けど、こいつの力は異常だ。一度や二度の滞在の記憶と体験だけじゃ

今の俺の、このカオストリームの上位互換のローダーを、

こうして平気な顔して纏ってられない」

「直樹、そのフォームってどんなのなんだ?

デスタニアの色違いみたいな感じだけど」

 

「見た目はその通りだ。けど、この銀色は

全部デスタニアのアキロストリーマーなんだ」

「なに!? ってことは、つまり全身にストリーマーが

大量に走ってる状態のフォームなのか?」

「ああ。だから、体への負荷も大きい。ディアボロードじゃないと使えないんだ」

 

 

「そう。直樹の解説でもわかるとは思うが、私はただのディアボロードではない。

強すぎる異世界への干渉能力を持っている、

いわば究極のディアボロードだ」

「究極のディアボロード」

 直樹はその響きに、仮面の裏で顔をしかめた。

 

 

「強すぎる、って。いったいどれぐらいなんだ?」

 食いついた勇大に頷き、オルトロンは更に続ける。

「毎日のように、だ」

「え?」

 

「いや、もうそれ強いとか強くないとかじゃなくてそういう特殊能力だろ」

 色の抜けた声で驚いた直樹と違い、勇大は突っ込みに似たリアクションで

 驚いている。

「寝ようが起きようが、常になにかを見、なにかを感じ続けている。

ゆえに私は、眠っている実感がない。起きている実感もあまりないのだがな」

 

 その言葉に、全員言葉を失った。

「だが!」

 その声と同時に、担いでいた大剣オルトザンバーを振り下ろす。

 それによる風圧で、一番近くにいる直樹とカグヤは、たたらを踏まされてしまった。

 

「こうしてオルトロンでいる間だけは、ぼやけた世界ではない。

くっきり、しっかりとした実感を持った、重みのある世界であり、

その空気の中にいると実感できる。

この黄金の鎧だけが、私に生きていると教えてくれるのだ」

 やはり、未だ聞いている者たちは言葉がない。

 

「だから私は、強き者との闘争を望んだ。それだけ実感が長く続く。

だが、この力でプライマルゲートの出現頻度を高めても、

望む強さの存在は、なかなか現れなかった」

 

「なんだと?」

「プライマルゲートの出現頻度って、そんなもん高められるのかよ?」

「このオルトロンを持ってすれば可能だ。ローダーの二人には、このローダーの力が、

プライマルゲート相応だ、と言うデータはあるんじゃないかな?」

 直樹と勇大は、肯定の意味を持ってうなることになった。

 

 

「で、今回複数のゲートが現れて、俺達が召喚されたってことか」

 和也が確信を持って確認するように問うと、

 オルトロンはそうだと頷いた。

 

「この男、ターミナットの情報を持ちすぎている。ローダーを使ってることといい、

ほんと、何者なんだ?」

 直樹はまた、オルトロンの変身者を訝しまざるをえなくなってしまった。

 

 

「さあ、私に時間をくれ。生きている実感を持った時間を!」

 また大剣を一振りする。それが、戦いの火蓋を切ることになった。

 

 

「直樹、イグゼキャノン貸してくれ。アルターの特殊フォームで戦うような相手に、

キャリバーじゃ歯が立たないからな」

「わかった」

 言うなり直樹は、左腕のタッチパットを操作する。

 

『ゼロ! ワン! ゼロ!』

「ロード」

『オーダー! 魔会砲、転送!』

 ドライバー音声が終わると、どこからともなく両手で持たないと使えないような

 大型の銃器が飛んで来た。

 

 それを両腕でガッチリと受け止めた直樹は、そのままその銃器

 魔会砲イグゼキャノンを、勇大 キャリバーへ放り投げる。

 ガシンと言う重苦しい音で受け取るキャリバー。

 

 それを確認したアルターは続けて右腕の装甲を開き、

 普段フェイタルオーダーを発動する際に使用する小さな銃型ツール、

 アルタートリガーを取り出し、腕装甲を閉じるとキャリバーへと投げた。

 

 なんとか左手で受け取ると、ついででキャリバーは、

 イグゼキャノンのグリップ上部の、アルタートリガーの挿入口へと、

 イグゼキャノンと銃口を合わせる向きで、ガチャリと言うまで差し入れた。

 

『イグゼキャノン!』

 

 アルタートリガーがしっかりと噛みあうのと同時、

 銃からアルタードライバーと同じ、テンションの高い声が鳴った。

 射撃準備完了である。

 

 

「はっ!」

 まず仕掛けたのはアルター、直樹。

「んっ!」

 受け止めるオルトロンは、流れるように斬撃を返す。

 

「はぁっ!」

 受けたアルターは僅かに揺らぐが、左足を一歩引いてから

 リョウダン・ブレードを右の袈裟に振る。

「くっ、んえぇや!」

 受けたオルトロンも僅かに揺らぐが、右足を大きく一歩引いて

 叩きつけるような一撃を放つ。

 

「ぐうっ、けどっ!」

 一歩後ずさらされたが、怯むことなく上段からの一撃を返す。

 繰り広げられる大刀と大剣の打ち合いは、

 青白い火花を散らしながら何合も続く。

 そのスピードは、まるで得物の大きさを感じさせない素早さである。

 

 

「今は、打ち込める上体じゃねえな」

「見てるだけってのも、暇よねぇ」

「暇って……」

 カグヤの言いぐさに、困ったように呟くグレイルブルー。

 しかし他の四人同様に、カグヤも構えを解いていない。

 

 それに加えてカグヤは、微妙に体を前後に揺らしており、

 一瞬でも隙間があれば殴りに行くつもりだと仲間たちは見ており、

 自分たちも気を抜かないようにしている。

 

 

 ーー仲間。

 召喚された者と現地の人間。

 即席のチームだが、今は同じ方向を向いている。

 

 一つは呼ばれた以上は役割があるはずだと、力を尽くす者。

 一つは流れに乗る以外に選択肢がないと思った者。

 一つは、自らこの戦場に飛び込んだ者。

 一つは強大な相手と戦う仲間の援護をする者。

 

 その標的は、同じ金色こんじきのローダー。

 十二の瞳は、同じ黄金へと視線を注いでいるのである。

 

 

「よかったのか?」

「なにがだっ!」

「アルタートリガーを渡したことだ。

フェイタルオーダーを自ら封印したことになるだろう?」

「あんたには關係ない。それより、どうしてそんなにローダーに詳しいっ!」

 

 二撃打っては返すと言う打ち合いを続けながら、この二人は会話している。

 それはリズムをとっているようであり、見ている五人は不思議な感覚を味わっている。

「まるで、踊ってるみたいね」

「ええ。実際は斬り合いだと言うのに」

「楽しそうにも見えますね」

 

「混ざりたくなるリズムのよさだな」

 左腰にマウントされている自分のつるぎ、動殺剣イグゼキャリバーをみやり

 勇大は呟いた。

 

「混ざったところで吹っ飛ばされるのが落ちだろうけどな」

 悔しそうに答える和也かずやは、ただの高校生を自称しながらも、

 現状手出しできないことに歯がゆさを感じている。

 

 

「うすうす、見当はっ! ついてっ! いるんじゃっ! ないのかっ!」

「ぐ、振りが細かくなったかっ!」

「だがっ! 君はっ、己の、推測を、確かめたく、なくて、

答え、合わせを、放置、しているっ!」

 

「くっ。隙がない……!」

 言葉の後、大振りの一撃を、連撃の閉めに放つべく、

 オルトロンは僅かに刃を引いた。

 

「知った風な口を」

 そのタイミングを逃さず、同じく直樹、アルターも

 一撃を叩き込むため刃を引く。

 

「叩くなっっ!」

 踏み込んだその間合いは、オルトロンの大剣 オルトザンバーでは、

 近すぎて刃は当たらない。

「ぐぅっ!」

 僅かに体勢が崩れたオルトロン。

 

「これまで散々狙い続けてた場所だ。

リョウダン・ブレードでも効いたろうっ!」

 刃を振り下ろし、命中したその反動を利用して、

 アルターは鋭い右の回し蹴りを追撃に放った。

 銀色の足による衝撃は、オルトロンを一歩後退させる。

 

「たとえフェイタルオーダーが使えなくても!」

 追撃に踏み込み、そのまま体重を預けるような大上段からの一閃。

「ぐっ」

 その一撃でオルトザンバーを取り落としたオルトロン。

 

 それとは対照的に、振り返り状況を確認してから、

 自らリョウダン・ブレードを後ろへと放り、身を軽くしたアルターは、

「これぐらいのことはできるっ!」

 飛びあがりオルトロンの顎へと右の蹴りを放つ。

 

「んぐっ!」

 踏みとどまるオルトロンだが、それはアルターの想定内。

 着地したアルターは、続けてもう一度飛ぶ。

 

「カオストリームをなめるな!」

 今度は顔面に向けて両足で、体重を預けるような蹴りを叩き込んだ。

「ぐおあっっ!」

 初めて、カオストリームフォームのアルターの攻撃で、

 オルトロンは吹き飛ばされ、地に背をつけたばかりか、何度も地を転がる。

 

 

「はぁ……はぁ……ようやく、まとまった、ダメージか」

 ようやく攻防に区切りがついて緊張の糸が緩み、着地したアルターは

 膝に手を置いて肩で呼吸する。

「く、そ。これ以上は、きついな」

 疲労にざらついた声でアルター、倉沢直樹くらさわなおきは小さく吐き出した。

 

「体が、硬い」

 右手を左腕のタッチパットに延ばそうとしているが、

 小刻みに震えながら微妙にしか動いておらず、誰が見ても限界だとわかる。

「く、自力の変身解除も、ままならない、か」

 

「なら。舞台袖で大人しくしているといいっ!」

 

「なにっ、ぐああっっ!!」

 気が付いた時には、既にオルトロンの右腕によるラリアットが、

 己に叩きつけられるところだった。

 ただでさえ速度に性能を傾けた状態のオルトロンである。

 

 疲労困憊の現在、まして隙をさらしている状態では

 対応など余計に取れるはずもない。

 まるで先ほどカグヤに殴り上げられたオルトロンのように、

 アルターは後方へと弾き飛ばされた。

 

 

「ぐはっっ!」

 一度地面に背を打ち付けたアルターは、

 その反動で二度 三度 四度とバウンドし、それでようやく止まった。

 そして、動きが止まるのと同時に、アルターが濁った緑の光に包まれる。

 

 それが消えると、プライムローダー・アルターの鎧も消えて、

 倉沢直樹が天を仰いでいた。

 同時に転がっていたリョウダン・ブレードも、

 濁った緑の光に包まれてから姿を消す。

 

「「「っ!「直樹っ!「銀色っ!」」」」」

 勇大にその名前を悲痛に呼ばれ、他の仲間たちからも

 驚きのリアクションで見られた直樹は、

 ゆっくりと右腕を上げて意識があることを知らせる。

 

「悪い。後は、任せた」

 なんとかそれだけを口にして、力なく腕を降ろした。

 

 

「おい、大丈夫なのかよ、あいつ?」

 不安を声にも表情にも表し、和也が誰にでもなく言う。

「後は任せた、って。あの腕の降ろし方は意識はなんとかたもってそうね」

 

「そうか、ならいいんだけど」

 現状、メンバーの中で一番先頭経験があると踏んだカグヤの読みなので、

 和也は異論を唱えない。唱えるほどの戦闘経験を積んでいないからだ。

 

「とにかく、ニャんた、もってきなさい、あいつ」

 軽い調子で和也に告げるカグヤ。やはり和也に反論の意志はなく頷く。

 現在自分にできることは、これぐらいだと思っているようである。

 

「で、お前はどうするんだよ?」

「決まってるでしょっ!」

 答えたカグヤは直後姿がブレ、そうかと思えば鈍い打撃音が響いた。

 

「忙しい猫だな、ったく」

 疲れたように言うと、和也は戦場に背を向けて

 直樹が倒れているところに走って行く。

 

「わたくし、あのフォームチェンジしていた方、直樹さんですか?

あの方がなにを言っているかまではわかりませんでしたわ。

やはり人耳とケモミミの四つ耳は、集音性能が段違いですのね」

 感心して言うトゥインクルサムライ覇司魔。しかしその表現に、

 グレイルブルーとキャリバーは顔を見合わせた。

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