表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

改定:プロローグ「隊長が就任されました! キャラ紹介編」




 魔王討伐隊、後方支援物資運搬担当。通称【お荷物隊】

  今まさに荷物を運んでいる彼女達3人は、いわゆる落ちこぼれである。

 女神に創造された者の中で他の追随を許さない最弱。

  当の本人達も既に諦めているが、一つの疑問はある。


   (何で、私達みたいなのが必要なのだろう)


 当然の疑問。魔王を倒すには力が必要。

  望むべきは圧倒的火力、圧倒的防御力、

  圧倒的回避力、圧倒的回復力等々。

 だが、彼女達が得たモノといえば、圧倒的な非力。

 初期ステータスで言えば全てが一桁であり、伸び代も低い。


 そんな彼女達の一人、

  剣士と思わしき釣り目の青い瞳に金髪ツインテールの少女が

  両手に木箱を抱えつつ残りの二人にポツリと言う。


  「ねぇ…。今日、アタシ達に隊長が来るらしいわ…。

    しかも、日本からという話」


 亜麻色の、ふんわり長い髪と丸くて大きな赤い瞳。

  それを覆い隠すように大きく、

  黒く、先の折れ曲がった帽子を被る少女がj真っ先に反応した。


  「ひゃいっ!? わわわ…私達に日本人の隊長ですのーっ!?」


 最後に気の弱そうな垂れ目に紫の目をした

  黒髪オカッパの神官少女がビクッと肩を竦ませた。


  「わわっ。でででも、どうして…」


 彼女達に隊長が就任する。それだけでも驚天動地の異常事態。

  加えるに多くの世界を救った超有名ブランドだった。

 そんな凄腕の隊長が彼女達と行動を共にする。

  

 理由を考えているのか、ツインテの少女が木箱を抱えたまま

  黙り込むが、すぐに首を横に振る。ワケが判らないと。

  そんな彼女の背後に残りの二人の視線が収束する。


 くすんだ銀のメタリックボディは丸みを帯び、

  身の丈は3mに届くかどうかの太く、大きな体躯。


 キュイ…と、鋼鉄の兜に隠された駆動する瞳が

  紅い光をユラリと動かし、ツインテの少女を見た直後。


 突然、少女はガシッとツインテールを掴まれた。


  「んななっ!?」


 あろうことか、そのまま持ち上げてしまう。


  「痛!ちょっ…何!? なんなのよーっ!?」


 手足をバタつかせ嫌がる少女の顔の横、

  鋼鉄の兜がにゅうっと腰を屈めて顔を出した。


  「湿気た面してんじゃねぇよ。ビャハハハ!!!」


 ゾワッと悪寒が走り、白く薄い生地の上着の下、白い肌に

  鳥肌が奔り、思わず叫びそうになるが、歯を食い縛り耐え、

  吊るされたまま横にある鋼鉄の兜めがけて頭突きを見舞う。

  

  「ビャハ!?」


 ガイン!という音と共に手が緩み、彼女は捕縛から逃げ出すが、

  鋼鉄に頭突きを入れたのだ、結果は言うまでも無く。


  「うぎ…て…敵しゅ―――」


 痛みに蹲りそうになるのを耐え、敵襲と叫のだが、

  またしても鋼鉄の両腕が彼女に迫り、髪を片方掴み上げ、

  小さく、愛らしい口を無理矢理塞ぐ。

 同時に、残りの二人にも騒ぐな。と、低く重い声で伝えた。


  「むぐぐー!!」

  「ルーンさん!!」

  「…な、何者ですの!?」


 ガン!ゴン!ガン! 背面へと肘や踵で攻撃し、

  必死で捕縛から逃れようとするルーンという少女。

 それを嘲笑いつつ、鋼鉄は自己紹介した。


  「俺がその日本産の隊長様だよ~んwビャハハww」

  「むがが…!!!」


 全身鋼鉄に覆われた男…だろう。長身にして頑健。

  然しあからさまに性格に難があると言わざるを得ない。

 そんな男がルーンを解放し、胸元を開いて用紙を取り出し

 それを見ながら少女達を見渡す。


  「そこの金髪ツインテが…ルーン・ジフリートか」


  Lv1 ♀ 16歳 ソードマン

   HP20

   MP0

   攻撃値7

   防御値1

   賢さ1

   運0

   得意・料理

   特殊技能・素材殺し/袈裟斬り


  「素晴らしい…」


 鋼鉄の何かは、ルーンを見て、そう呟いた。

  言われた事も無い言葉。ルーンは明らかな戸惑いを覚え、

  視線を反らし、右側の髪を弄りながら、何が?と尋ねる。


  「見事だ。これは凄い逸材だ…」


 自らを隊長といった。ただのお世辞だ、社交辞令だ。

  これから仲良くしようという魂胆丸見えな――


  「ふ…ふんだ! そんなおべっか言われたってネェ――」

  「これ以上無いぐらいの産廃、ゴwミwだwなw

   得意科目が特殊技能で相殺されてんじゃねぇかよ

    ビャハハハハハハハハハハハハッwwwwww」

  「――んなーっ!!!」


 口から出たのは、お世辞も社交辞令でもなく罵倒。


 三人とも唖然とした。初対面の、それも女の子に

  面と向かってゴミと言い放つこの男に。


 更に男は魔法使い風の黒ずくめの少女を見る。


  「そこのぶかぶかウィッチハット。リリス・アルテシア」


 リリスは酷い事を言われると瞬時に察し耳を塞いだ。

  この世界に来て、数え切れない程、思い知らされた。

  然しそれは、紛れもない現実。  


  (もう劣等扱いさたくないの!! 聞きたく無いの!!)

 

  Lv1 ♀ 14歳 リトルウィッチ

   HP1

   MP9

   攻撃値1

   防御値1

   賢さ9

   運1

   得意・読書

   特殊技能・初級雷魔法/闇との対話


 ガシャ、ガシャ、ガシャ。鋼鉄と鋼鉄が擦りあい、

  地面を歩く音がリリスへと近づく。

 耳を塞ぐリリスの細い両腕を、鋼鉄の腕がガシリと掴む。


   「ひにゃっ…」


 所詮は魔法職。どれだけ力を込めようとも膂力では敵わず、

  耳を塞いだ筈の両腕が万歳をしたように、

  小さく、華奢な体は吊り上げられた。


   「ひっ…いや。いやですのぉ…」


  問答無用。鋼鉄の仮面がリリスの耳元に近づく。


 強く目を瞑りながら歯を食い縛る彼女に、

  しっとりと舐める様に、それでいてハッキリと…。

  

  「闇との対話ぁ? 読書ぉん? 

    弱過ぎて現実逃避でもしてるのかなぁぁあああんwwww」

  「やぁぁぁぁあああっ!!!!!!」


 知られたくない部分をやはり記されていた。

  記されたたった二つから、己の恥部を暴かれた。

 両手を離されたリリスは膝から地面へと崩れ落ち―


  「う、うぁぁぁぁぁぁぁああん!!!!」


 ――ガン泣き。


 大よそ隊長職。指揮官としてあるまじき行動に出る機械の男は、

  残りの一人に視線を移すが、先程まで居た筈の場所にいない。


  「何処いきやがったー? あの垂れ目の巨乳ちゃんは…」


 周囲を見回す鋼鉄の男がルーンとリリスを見る。

  二人とも余りのショックに立ち直れないようだ。


  ガチャン、ガチャン、ガチャン。


 ゆっくりと、探るように周囲、主に近場にある荷物置場を

  金属音を立てて歩く。


  ガチャン、ガチャン、ガチャン。ガタ…。


 木箱が金属音に僅かに反応し、揺れ動いた。

  今度は静かに、音を立てずに忍び寄り、ゆっくりと木箱の蓋を開けた。


  「こーこーかーぁ?www 巨乳のナーシア・マリアベル」

  「ひっ…」


 顔面蒼白。紫色の瞳は深い絶望の色。

  大粒の涙と共に暗い箱の中から、太陽に照らされる鋼鉄を見上げた。


  Lv1 ♀ 16歳 プリースト

   HP5

   MP5

   攻撃値2

   防御値3

   賢さ0

   運1

   得意・食事

   特殊技能・初級回復魔法/無毒化


  「得意が栄養摂取かぁん?wwww

    無毒化が相まって暴食かぁん?」

  「ひ…やぁぁぁあああっ!!!」


 鋼鉄の兜からギラリと光る赤い光がナーシアの胸元を照らす。

  

  「賢さ0ww 胸囲だけ脅威的数値だなおいwwww

    90は軽く超えてるな…ばいんばいんwww」

  「めがみしゃまぁぁぁあああっ!!!」


 嗚呼、女神様。貴方は何と言う隊長を遣わされたのですか!!

  出会った早々に暴言セクハラしか行いません!!と、

 両手を合わせ、悲痛の祈りを女神に向けるナーシア。


  「ビャハハハww 女神公認だぜぇえwwww」


 と、激しく男は笑うと突然、左肩にルーン、右肩にナーシア。

  一番小柄なリリスを掴んで頭の上に乗せる。

 もう何が何だか判らない。困惑に涙目の三人を無視して

  男はイカレた笑いをただ響かせる。


  「ビャッハハハハwwwさぁいこうぜ…

    魔王討伐の旅ってヤツによぉぉおおっwww」


    <超加速(ハイブースト)>


 ズアァッ!! 腰の後にあるバーニアが火を噴き地面を焼く。

  彼の足元から土煙と砂利が巻きあがり、急発進。


  ズバシュゥゥゥゥウウッ!!


 残像を残す程の速度で討伐本隊をぶっちぎり、

  魔王四天王の一人が居る第一防衛線へと突撃していくのだった。

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ