異世界
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ーー人類は凡ゆる自然資源を喰い潰し、地球から全てを奪い尽くした。
地球温暖化は進み、著しい気温上昇により、大地は砂漠化し、熱波が襲う様になった。
生物は絶滅し、人類も滅亡の危機に瀕したが、透明なドームの様な膜を都市に被せ、まるで蛹の様に外界から隔離する事でその身を守った。
そうした自業自得な結果から、人類の支配領域は極限られた空間でしか生活出来なくなったーー
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レプリが産まれたのは小さな村だった。
村の周りには、粗末な棒が地面から生えており、簡易的な柵としている、
その境界線とでも呼ぶべき柵の向こうでは、何処までも草原が続いていて、そこに村人達は畑を耕し自給自足で生活していた。
レプリの父レイも、家畜(羊)と共に村の外に出ては、夜遅くまで狩をして、日々の糧を得て生活していた。
ある日、レイは眠ったままのレプリを村の外へと連れ出した。
レイの日課は、村の誰よりも早く起きて、羊達の餌場である牧草地へと出掛ける事だった。
レプリを連れ出したのは、育児に奔走するマルタを気遣い、今日は自分が面倒を見てやろうという想いからだった。
実際のところは、レプリが可愛くてつい、家から持ってきてしまったのだがーー
この時のレプリは、世界の常識である歴史を信じていた。絶対に家の外には出ず、出ればたちまち熱波に身を焼かれてしまう。
何の装備も無い現状、部屋の中が1番安全と思っていた。
ーーそもそも転生してから1週間のレプリにとっては、這って移動する事も不可能であったが。
朝日が昇る
だんだんと世界が明るくなり....
レプリは穏やかな陽射しを浴び、意識がゆっくりと浮上していく。
すると、見たこともない風景が広がっていた。
太陽が、地平線の彼方から顔を覗かせていた。
薄暗い雲と、広大な大地。
放射状に伸びる、光り輝く光彩が、辺りを赤く色付ける。
それは、砂漠に荒れ狂う朱い熱波とはまるで違う。
生命力に溢れた炎が、赤く空を燃やしていた。
その光景に、レプリは感動で全身を震わせた。
刹那、レプリは我に返る。
(ここは町の境界線を越えている...)
たちまち熱波によって身を焼かれる恐怖がよぎり、
レプリは思わず息を詰まらせた。
しかし、その視界の端で、
羊達は悠々と歩いている。
レプリは詰まらせていた息を、大きく吐き出し、
この世界に感じていた違和感の正体に気付く。
(あ、あ、あ、ありえない....この世界は....!)
(ここは、まだ誰もしらない、地球で安全に暮らせる唯一の秘境だッ!!)
(だ、大発見だッ....!!)
レプリはここが異世界だと確信したのであった。
「よーしよしよし、大丈夫だぞ」
レイは、背中越しに感じるもぞもぞと落ち着かないレプリの様子に気がつき、優しく語りかけた。
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