第一話 世界の狭間
「あっち向いてホイ」
目の前のロリ無乳の女神様は、まっすぐ伸ばされた俺の右手人差し指の指す上へ顔をむける。まるで自分の意思で動かしたかのように自然にその方向を向く。
「何するんですか。神であるこの私が直々に説明しているのにっ」
上を振り向いたまま、ない胸を張り怒る女神様。
「神様にも能力って効くのかなぁって思って、つい」
「ついじゃないわよまったく。......ってなんで私に効くわけ‼︎」
そんなことを俺が知るはずもない。そんな俺に説明してくれた。
「だっておかしいでしょう、この世界では神格を持つものは一切のスキル、魔法を受け付けないと絶対神が定めたんだから」
へぇ〜。一番偉い人は絶対神っていうのか。このゲーム?
「そうよゲームよ。神格に通用するチカラがあるのなら、私の駒にしてやってもいいわね。一度しか説明しないからよく聞きなさい」
ない胸をはり女神さまが得意顔で説明を始める。
「まず落ち着い欲しいのだけど、元いた世界にあなたは帰ることが出来ないわ。そして今ここにいるあなたは元の世界の複製よ。何もかもコピーしてこの世界に持って来たのよ。まぁ、誰が来るかは全くのランダムなのだけど」
帰れないか?俺が偽物?なんだか不思議な感覚だ。帰れないことに不満はない、むしろ何が起こるか楽しみであるし。
「そして、呼ばれた理由は私が次の絶対神になるためよ」
バーンッとものっそいドヤ顔で語る神様は自分が絶対神になるであろうことを疑わなかった。
「そのルールが異世界人を三人まで複製で呼び出し戦わせる、最後まで教徒が生き残ってた神様が次の絶対神に選ばれるってことよ。まぁ、人間には関係のない話ね」
「で、僕は何をすればいいんですか?」
「はぁ、今のでわからなかったの?殺し合いよ殺し合いどれか一つの神が使役するチームになるまで異世界人同士で殺し合いよ。まぁ、日本にいたあなたはこういうことに慣れてないだろうけど」
殺し合いかぁしたくないなぁ。まあ、俺の力じゃ誰も殺せそうにないしなぁ。よし、帰ろう。
「じゃあ、僕が出る幕はなさそうなのですね。出口ってどこですか?」
「あなたは複製だから帰る必要はないわよ。まぁ、方法もないのだけど。そんなことより出る幕がないってどういうことよ不思議なんだけど。あんた私に能力が適用されたじゃない」
「はぁ………それだけなんです」
「っへ」
「『あっち向いてホイ』は指差した方向に首を振り向かせる。ただそれだけなんです」
「……………」
ものすごい困った顔をした女神さま。ブツブツと小さい声で独り言を言い始めた。
「………つ、使えねー。一応レベルあるから育てることもできるけど伸び代はランダムだからなぁ。それに今必要なのは即戦力だしな。能力付与もできるけどこんなやつにしても変わらないかな。はぁ、また1年待たなきゃかぁ」
なんか使えないとかいわれてるし俺。まあ実際もとの世界でもクラスで最下位の落ちこぼれ、どんなにスキルアップの訓練や薬物を使用しても育たない能力だったし、自分でもいまさら期待していない。実験三昧の元の世界に戻れないし戻りたくもない。
「帰れないし必要なさそうな俺はどうするんですか」
「そうだねぇ、異世界人を召還するのは年に一人って絶対神様が決めてて、次の召還には一年待たなきゃいけないだよね。それで良い能力持ちが来れば育てるけど、悪い能力持ちが来たら一年待たなきゃだから他の神の配下とレベル差が開いちゃうだよ。だからね、あんまりしたくないけど」
女神さまの前に意味不明な言語の羅列された半透明の画面が浮かび上がり、それを指で左右にはじいて操作する。
「まぁ仕方ないよね」
そうつぶやき画面を押す。次の瞬間俺は指の一本さえ動かすことができなくなる。かろうじて眼球や口内はある程度自由に動かすことができた。
「えーとっ、次を呼ぶので消えてもらいまーす」
ぱちぱちぱちーと手をたたくが目が笑っていない。
「地上に行ってもし自分の配下が死ねばもう一度だけ召還権が与えられるかね。事故で死んでしまってもいいように考えたルールなんだ。流石に絶対神になる私が故意に人間を殺したとなれば天界問題になりかねないからね、ここから足を滑らせて勝手に死んでもらいます。最後に何か質問があれば一つだけ答えてあげる」
指で何かを弾くと口元だけ金縛りのようなものが解除された。もう一度指を振ると目の前の床にそれなりの穴が開き緑の森が眼下に大きく広がっている。落ちたら助かる見込みはないであろう。
「もし落ちて生きていたら」
「そーだねぇ、殺しにいくのは問題になってしまう。大人しく一年待つよ、それにその穴に滑った時点で君は私の配下から除外する、自由だよ」
目の前が緑になった。足元の床が消え去り一瞬の浮遊感を感じ大森林の上空へ投げ出されていた。
ゴウゴウと地面へ向かって落ちるさなかどんな風に生きていこうか第二の人生の設計する。