プロローグ
「すまん、我が娘よ。隣国へ嫁に行ってはくれんか」
「はぁああぁあ!?」
この国の第二王女である私、アニエス・カーティスラントは絶叫した。
「なんなんですか!?私が男の人嫌いなの知っててそれ仰ってるんですかお父様!!」
そう、私は男の人が嫌いなのだ。……理由はまたおいおい説明していくとして。
敬語すら忘れてお父様に飛びかかりそうな私を押さえてくれた人がいた。
「まぁまぁ、落ち着きなさいなアニエス」
「お母様!」
さすがお母様!この状況をどうにかしてくださるのだろうか。
お母様はニコリと微笑んでお父様の方へ向いた。
「アニエスの男性嫌いは幼き頃からのこと…彼女にとってとても苦しいことだと思うのです」
「だが…」
お母様は「そうねぇ…」と呟きながら何かを考えている。
んん?何か雲行きが怪しそうな……?
「お母様…?」
「…夜会を開く、というのはどうかしら?」
「……え!?」
……はい?……夜会ぃ!?夜会ですかお母様!?
お母様の思いがけない提案に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「それは良い。周辺国の諸侯をご招待して開こうじゃないか」
「で、でも私は夜会など参加しても王子の方と話すことなどできません!」
「アニエス」
お母様が私の名を呼んだ。
真っ直ぐ私の顔を、目を見て。
「これは貴女の為でもあり、この国の為でもあるのですよ」
「…っ」
そう言われてしまえば反論などできない。
私の選択でこの国の未来が決まってしまう様な気がした。
「……分かりました……」
結局、三日後この国で夜会が行われることになってしまった。
「はぁ…」
部屋に戻ってまた溜息を吐いた。
もう……夜会になんて出たくないのに……。
「そんなに溜息を吐いてしまわれると幸せが逃げてしまいますよ」
侍女のリリィがハーブティーを運んできてそう言った。
「幸せ…ねぇ」
自分はどこで一体誰と幸せになれるのだろうか。
「あぁ!もう!」
「姫様?」
私らしくない。私はもっと…
「明るくて自由だった筈よ」
勢い良く立ち上がってベランダへ向かって走る。
「姫様!?」
リリィの声を無視して柵を乗り越え、飛んだ。
「あはははっ!!」
そう、私はもっと自由だった。空を翔ける鳥のように。
ああ、体が軽い。――軽い?
「えっ」
足下で声がした。…声?
私の身体はそのまま真っすぐに落下した。
柔らかい芝生があると思っていたのに、私の身体と地面の間には
「いて……」
「ひっ………!」
この世で一番大嫌いなものが。
「きゃああああっ!!!」
何でこんなところに男がいるの!?




