*Prologue1 ~期待~
今は春。
私はとある事情で、5年前、私がまだ中学1年生の時に遠い地へ引っ越すこととなった。
それから月日が流れ、私はまた色んな事情でこの地へ戻ることになった。
そしてこれから通う高校は前通っていた中学校とエレベーター式に上がれる高校のため、知っている人はおそらく沢山いるだろう。
…だが、私は正直なるべく昔のクラスメイトらに会いたくない。
あの苦い記憶を思い出すだけで胸が傷んでしまうのだ。
それは中1の始業式のこと。
これから過ごす教室。
これから過ごすクラスメイト。
それらと初めて出会う日。
私はもともと人見知りで、引っ込み思案で、友達も少ない。
けれど、誰だって新しく入学する日は楽しみなものだ。
私は今思えばバカげた期待を背負いながら、中学校への桜並木を歩んでいく。
「紫音、ちゃんと皆と仲良くやっていくのよ。」
「もう中学生なんだから、その性格を直さなきゃだな。」
両親にそんな言葉をかけられたが、私は小さく頷くしかできない。
校門に入ってから両親と分かれ、配られた紙のクラス一覧を見つめる。
周りには友達同士で紙を見て笑い合ったりする人が大勢いて、自分だけが一人ぼっちな気がしてしまった。
もう、この時私の淡い期待はかき消されていた。
自分が1-B組だということを知り、自分の教室へ入っていく。
中にはもう20人ほどの生徒らがいた。
なぜもうそんなに仲良くなれるのか…と疑問に思ってしまうほど皆でワイワイやっていて、「1人ぼっち」なんて人はいなかった。
だから私もクラスに馴染める…というわけにはいかなかった。
なんといっても極度の人見知り。
私は1回も、誰とも話すことが出来なかったのだ。
クラスの3時間目が終わり、先生は生徒らに「自己紹介をしましょう。」と告げた。
それはただ皆の前で1分間ほど自分についてスピーチをするだけだった。
皆はスイスイと自己紹介をこなしていくのだったが、私はガチガチに凍ってしまった。
「では、暁さん、どうぞ。」
「は…はいっ。」
私は先生に促されて教壇の前に立つ。
「え、えーっと…
わ、私はあかつっき…紫音!です!
趣味は。。。ど、どくしょです。
えー、私は極度の人見知りなので…ハイ、以上ですっ」
私は頭の中が真っ白になってしまい、こんなスピーチをしてしまったのだ。
当然ものの20秒で終わってしまった。
ここから、私の人生はめちゃくちゃになってしまったのだ。