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三十一歳と天ぷらうどん

作者: コウ
掲載日:2026/04/14

お昼休憩に出ようとしたら、先日二十歳になったばかりの後輩、阿部くんに声をかけられた。

「あれ、今日はお弁当じゃないんすか?」

緩いウェーブがかかった髪、黒いリングのピアス。いかにもアパレル店員っぽくてオシャレだ。

「あーうん。ご飯炊くの忘れちゃって……」

私は普段朝からおにぎりを二個握って持ってきている。毎回買ったり食べに行ったりしていたら、金額もバカにならないからだ。……ちょっとババ臭かったかな。

「なんか二階にうどん屋ができたんですけど、良かったら一緒に行きません?」

「うどんかぁ、いいね。行こうか」

うどんだと消化に良さそうだし。

新しく出来たうどん屋はチェーン店ではなく、個人でやっているお店らしい。よくこんなショッピングモールに出店したなと思う。出店料高いだろうに。

お店に入ると注文形式はチェーン店タイプと同じらしく、まずうどんを注文した後、お盆ごと横にスライドして、積み上がっている天ぷらやらトッピングを取り、会計する仕組みらしい。

かき揚げ食べたい気もするけど、胃もたれするかな…

私は悩んだ結果、蓮根の天ぷらだけを取って会計を済ませた。後輩の阿部くんの分も払ってあげようと思っていたのに、私か天ぷらを悩んでいる間にさっさと済ませてしまったらしい。

無料のネギを乗せて、水を持って行くと、阿部くんは私が断念したかき揚げや蓮根の天ぷら、鳥天や味玉の天ぷらなど盛り盛り乗せてきていた。

「すごい取ったね。いくらだった?ご馳走してあげるよ」

「え?いいですよ。僕いっぱい食べるから高いし、別に先輩に奢ってもらおうと思って誘ったわけじゃないですから」

何度言っても阿部くんは遠慮するので、私は奢ってあげられなかった。

「私くらいの歳になってくると、若い子にはお腹いっぱい食べさせたいっていう願望が湧いてくるもんなんだよ。自分はもうそんなに食べられなくなってきてるから、代わりにいっぱい食べてるとこ見るのも気持ちいいし」

なんて事を言うと阿部くんは途端に嫌そうな顔をした。

「先輩まだそんな歳じゃないじゃないですか。そういう事言ってると、ホントにすぐおばさんになっちゃいますよ」

予想外のリアクションに驚いたものの、正直そう言われてちょっと嬉しかった。とはいえ二十歳の子からすれば三十一歳なんて充分おばさんのような気がするけど、まだおばさん扱いしないでくれるだけありがたい。

たまに五十代でもおばさんと呼ばれて怒る人がいるが、私なんてファーストおばさんは二十七の時だったよ。

ともあれ、二十五過ぎた頃から一年のスピードがどんどん早くなってる気がする。小学校の六年間なんて無限に終わらないんじゃないかと感じていたのに、今は六年前の曲を聞いても最近のような気がする。

「伸びちゃいますよ、うどん」

阿部くんにそう言われて、私はしばしぼぅっとしていた事に気づいた。

ちゃんと出汁の効いたツユにコシのあるうどん。蓮根の天ぷらもサクサクの衣に噛み付くと中の蓮根が心地よく歯を受け止めてからゆっくりと噛み切れる。蓮根特有の甘みもあって、水煮とかではなく生の蓮根を使っているのがわかる。

とても満足な昼食だった。

「美味しかったね」

そう言いながらお店を出た。

「でもやっぱりうどんだとすぐお腹空いちゃいそうです…」

とお腹をさする阿部くんに、あんなに食べたのにさすがこの大きな体を支えるにはたくさん食べなきゃいけないんだなぁと感心した。

やっぱ若いわぁ。

またそんなおばさんみたいな事を思って、いけないいけないとお店へ向かった。

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