前世の記憶を取り戻して前世でもアミとクリスティーネと家族だったのを思い出しました
「稲!」
俺はクリスの怒り顔が何故か稲の顔に見えた。
いや、待て!
稲って誰だ?
俺がそう思った瞬間だ。
「遅いわよ!」
「ギャーーーー」
俺は至近からの雷撃を受けた。
そして雷撃のショックで、怒濤の如く前世の記憶が蘇ってきたのだ。
凄まじい記憶の量と雷撃のショックで俺は気を失っていた。
「亜美! 亜美! しっかりして!」
妻の稲子が必死に動かない亜美を揺さぶった。
しかし、亜美は目を開けることは無かった。
「お母さん! もう……」
横にいた看護婦がそう稲に呼びかけて頭を降ってくれた。
「嘘よ! 亜美が死んだなんて! 亜美は寝ているだけよ。すぐに目を覚ますわよ。ねえそうでしょう。礼男」
稲は今度は俺にすがってきた。
「稲、そう思いたいのは俺も一緒だが、もう、亜美は……」
俺はそれ以上は話せなかった。
まさか、亜美がこんなに早くに亡くなるなんて想像だにしていなかったのだ。
「何を言っているのよ、礼男! そんな訳無いわよ。亜美は……亜美は……」
稲の目から涙が落ちてきた。
「嘘よ、亜美! さあ、亜美、目を覚ましてよ! 亜美!」
泣き叫ぶ妻とそれを唖然として見守る俺がいた。
生まれた時から病弱だった亜美が死んだ。
高校に上がることも出来ずに亡くなったのだ。
「お父さん。私、高校に行けるかな」
「大丈夫、絶対に行けるから!」
亜美に聞かれて、そう答えたのがついこの前だったのに!
その時はまだ元気で、こんなに急に亡くなるなんて想像だにできなかった。
俺達は亜美の最後にも間に合わなかった。病院から危篤の知らせを聞いてすぐに駆けつけた時には亜美はもう亡くなっていた。
何故亜美の体調が悪くなったと聞いた時に、すぐに駆けつけなかったのだろう。
そうすれば亜美の最後には間に合ったのに!
俺達は亜美が少し体調を崩していると病院からは聞いていた。
でも、俺はプロジェクトリーダーで、そのプロジェクトが丁度山場だった。ピークが来ていて、ちょっと簡単には抜けられなかった。
そこで徹夜して終わらせようと必死に働いている間に、亜美は亡くなってしまったのだ。
俺は今回も亜美は治ると信じていた。
ちょっと体調を悪くしただけだと……
そう思ってすぐに駆けつけなかった俺が馬鹿だった。
「アミちゃん。最後までお父さんとお母さんを待っていましたよ」
看護師さんの言葉がずきんと俺の胸に響いた。
「そんな、亜美……亜美……ご免なさい、亜美!」
その言葉に妻の稲子は号泣していた。
稲も年度末の決算対策で仕事場で遅くまで仕事をしていて間に合わなかったのだ。
それほど亜美の容体は急変だった。
俺は唇を噛んだ。
「出来たらもう少し一緒にいてあげてください」
俺達はそう主治医の先生達にも言われていたのに!
仕事の忙しさにかまけてそうしていなかった。
父親として失格だった。
「アミちゃんは最後にお父さんとお母さんに有り難うって伝えてっていってましたよ」
看護師さんはそう言うと部屋から出て行った。
最後まで来ない両親の俺達が後悔したら悪いからとそんな事を言ってくれたんだ。
物も言わなくなったアミを前に、俺と稲が残されていた。
俺と稲は30前に結婚したが、中々子供が生まれなかった。
俺も稲も子供が出来にくい体質だとかで、何度も不妊治療をした末にやっと誕生したのが、亜美だった。
俺達は諸手を挙げてアミを歓迎した。
でも、生まれた亜美は元々病弱で、子育ても大変だった。
保育園にも預けられず、妻は職を辞めていた。
そんな亜美が小学校、高学年になった時に稲は職場に復帰した。
亜美の治療にはとてもお金がかかったのだ。
俺の薄給だけでは家計が中々苦しくなってきていた。
「『私も頑張って働くからね。亜美も頑張ってね』
私がそう言ったら
『判った。私も頑張る! だからお母さんもお仕事頑張って!』
そう、亜美は言ってくれたのよ。
私は亜美のために頑張って働いているんだって思っていた。でも、亜美はもっと傍にいてほしいと思っていたのよ」
泣きながら稲が話してきた。
「最後に『有り難うお母さん』って言われる資格は私にはないわ。それに亜美も絶対に『何でもっと一緒にいてくれなかったのよ』って思っていたに違いないもの」
稲は泣いていた。
「稲、自分を責めるな! 悪いのは俺もだ。稲に亜美の事を任せすぎた。俺がもっと看病に精を出せば良かったんだ」
俺は頭をかきむしった。
苦しんでいる亜美を見たくなくて稲に任せてしまったのは事実だ。
俺はただただ地面を見ていた。
亜美の亡骸なんて見れなかった。
俺達はいつまでもその席を立てないでいた。
それから俺は抜け殻のようになった。
今まで亜美はほとんど入院していて、家にはいなかったのに、亜美が死んだ途端、家の中も火が消えたように寂しくなった。
そんな中で俺達はちょっとしたことでいがみ合いの喧嘩を始めた。
そして、喧嘩が絶えなくなり、しばらくして離婚した。
稲は親友だった阿奈と一緒に暮らしていたみたいだ。
でも、その阿奈がストーカーに殺された後、稲は少しおかしくなった。
精神がいかれたみたいだった。
亜美が死んでから10年経たないうちに稲は亡くなった。
俺はそれから20年くらい長生きしたが、亜美が亡くなってからは周りの色が無くなって惰性で生きていた記憶があった。
そんな事が夢の中で走馬灯のように浮かんでは消えた。
俺は悲しい前世の記憶を取り戻したのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
前世の記憶を取り戻した皇帝様でした。
これからどうなるのか?
今度こそ明朝、完結のはずです。
お楽しみに!








