帝国で愚痴っていたら、サマーパーティーが、今日開かれると聞いて、慌てて転移しました
転移陣なんて、ヒューゲルの寮の部屋に繋いでおくのでは無かった。
繋いでいなければここに外務卿とか近衛騎士団がやって来る事は無かったのに!
本当に最悪だった。
「嫌だ。俺はまだここにいるぞ!」
俺は近くの柱に捕まって抵抗したが、あっさりとフィンに手を外されてしまった。
「陛下、陛下がご不在でどれだけの書類が滞っていると思われるのですか?」
「いい加減にしてください」
皇帝が嫌だと言ったのに、俺は暗部と近衞騎士達に半ば連行されるように帝都に連れて帰られたのだ。
「はああああ!」
俺は盛大なため息をついた。
今いるのは執務室だ。
横に怒り顔の宰相と外務卿がいるがそんなのは知ったことではない。
「せっかくあと少しでアミに父親だと告白できるところだったのに」
俺は机に突っ伏した。
「陛下、いい加減にしてください!」
「陛下の決裁書類がたまってどれだけ仕事が滞っていると思っているのです!」
「お前らが適当にやれば良いだろう?」
俺は白い目で宰相達を見上げた。
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか?」
「そんなの出来る訳ないでしょう!」
「判っているのですか? そもそも陛下が勝手に出て行かれたから……」
そこから宰相の説教が延々と始まったのだった。
「はああああ、アミ、お父様はじじい共に虐められて辛いぞ」
俺は一人言を呟いた。
「誰がじじいなのです!」
「私は陛下とそんなに年は変わりませんぞ!」
「私もたった10しか違いません。そもそも陛下も現実的にはすぐにじじいになられるのでは無いですか」
宰相がとんでも無いことを言いだしてくれた。
「どうやってじじいになるのだ?」
俺がむっとして聞き返すと、
「ノルトハイム王国の王太子殿下がアマーリア様にご執心と聞きましたが」
「はああああ! そんなの俺が許す訳無いだろう!」
俺はその一言に切れていた。
あの小僧などに愛しのアミをやる訳にはいかないだろう!
「そうですよ。宰相閣下。アマーリア様は唯一の陛下のお子様なのです。いずれは帝国を継いでもらわないと」
外務卿が宰相を窘めてくれた。
「しかし、現実には皇弟殿下のお子様が陛下の養子としておなりです」
「しかし、帝国では血のつながりが重視されます。アマーリア様はノルトハイム王国でも有数の魔術師であり、名門のヨーク公爵家の令嬢であったクリスティーネ様の血も継いでおられます。アマーリア様は魔力的にもノルトハイム王国の魔術学園では随一だとか。陛下の跡継ぎとしては皇弟殿下のこ子息よりも余程有望ではありますまいか?」
「しかし、そうなると今は平民として生活していらっしゃるクリスティーネ様を皇后としてお迎えなさらないといけなくなりますぞ」
宰相が危惧してくれた。
「別に公爵家のご令嬢ですから何も問題ないのではありますまいか? 調べたところでは未だにヨーク公爵家に籍はあるようですし。それに唯一陛下がお子を作れたお相手ですからな。クリスティーネ様相手なら不能が治る可能性もあるのではないですか?」
外務卿がとんでもないことを言ってくれた。
確かにクリスの事は気になったが、不能が治る保証はない。
もし治らなかったら、俺は目も当てられないでは無いか……
「それを言うな外務卿。俺は媚薬の後遺症で不能になったのだぞ」
「しかし、変ですな。あの薬の副作用に不能になるというのは無いのですが」
「何だと、しかし、俺は父からそう聞いたぞ」
「あれはお年を召した方が、多用しすぎると不能になったという物で、若い例では陛下だけではないかと」
「そうなのか?」
俺は初耳だった。
でも、現実問題俺は不能になっているではないか?
「しかし、クリスティーネ様は結構きつい性格であるとか」
宰相が懸念事項を述べてくれた。
「それも作られたところもあるかと。未だにノルトハイム王国では夫人方に凄まじい影響力をお持ちですし、ノルトハイム王国の王妃様とは親友であるとのことではないですか」
そうなのだ。未だに信じられなかったが、クリスはあのディアナととても仲が良いみたいだった。
「それはそうですが……」
宰相は言葉を濁してくれた。
なるほど、クリスのあの気の強い性格では帝国に迎え入れるのは中々厳しいのでは無いかと思っていたが、外務卿の様子を見るに、廷臣達は家柄を重視すれば問題なく迎え入れようとしてはくれるみたいだった。
「まあ、何にしろ、まずは陛下のお子様であるとご本人に理解して頂けないと厳しいとは思いますが」
外務卿も口を濁してくれた。
「そうだな。そこが難しいのだ」
俺はうなだれた。
何度も口に出そうとしたが、クリスの妨害で本当に大変だった。
「まあまあ、陛下、そう落ち込まれますな」
「そうですよ、陛下。やっと殿下を胸に抱けたのでしょう?」
「そうですよ。良かったではないですか?」
宰相と外務卿が言いだしてくれた。
そうなのだ。あの可愛いアミをこの胸に抱けたのだ。
俺はそのときのことを思い出すと心の中が暖かくなった。
「そういえば、今日はその魔術学園のサマーパーティーですな」
外務卿が思い出したように言い出してくれた。
「何だと、もうそんな日か」
俺は立ち上った。
こうしてはいられない。
アミの所に行かなければ……
「ちょっと陛下、どうされたのですか?」
「まだ仕事が残っておりますぞ!」
俺はそう叫ぶ宰相と外務卿を残してあっという間に転移したのだった。
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