愛娘を助けようとして間に合いませんでした
「ギャオーーーー!」
真っ黒な魔人が雄叫びを上げてくれた。
どうやらあの薬は魔人になる薬だったらしい。
そんな薬があるとはさすが魔導公国と思えたが、我々を迎え撃つ時に魔人部隊が出てこなかったと言うことは何か不具合があるのだろう。
魔力が少ないと魔人になる前に体が保たないとか……
この公王は何を考えているのだ?
俺たちに敵わないと判ったからやけくそで魔人になってくれたんだと思うが公王が魔人と化すなんて前代未聞だ。まあ、倒せば良いかと、俺は単純に思った。
しかし、魔人は強力だった。
「阿奈!」
魔人が叫んだ。こいつはディアナにとても執着していた。
クリスが庇うが弾き飛ばされる。
「喰らえ!」
やなくて良いのにアミがファイアーボールを発射した。
「ギャオー」
魔人はアミのファイアーボールをはじきとばしてくれた。
「邪魔スルナ!」
魔人がアミを睨み付けて火炎放射をアミに浴びせてくれた。
「アミ!」
俺はアミの前に転移した。
前に障壁を張ってくれる。
バンッ!
なんとか火炎を止める。
しかし、俺の障壁でも魔人の火炎は防げなかった。
バリン!
割れてそのまま火炎が俺達に襲いかかった。アミをなんとか守ろうとする。
身体強化して耐えるが、火炎の勢いは止まらない。
ダン!
俺達は吹っ飛ばされてしまった。
そのまま飛ばされて地面に激突しそうになる。
「アミ!」
俺はアミを空中で抱きしめた。
娘を抱きしめられるなんて……俺はこんな時でも感激した。
そのまま俺が下で地面に叩きつけられた。
とてつもなく痛かったが、そんなのは関係なかった。
「アミ、やっとこの胸にお前を抱けた」
やっと愛娘をこの腕に抱けたのだ。俺はこんな時にもかかわらず感動していた。
「いつまで倒れている!」
そこに氷のように冷たいクリスの声が響いた。
これはまずいかもしれない!
バキッ!
「痛い!」
俺の頭をクリスが蹴飛ばしてくれた。
「私のアミを抱いているんじゃない!」
クリスがその後俺をアミから引き剥がしてくれた。
「おい、クリス! せっかくむす……グワ」
そう言う俺のお腹を遠慮なしにクリスは踏みつけてくれた。
「この戦闘中にふざけたことを言っているんじゃ無いわよ。レオ」
そこには激怒したクリスがいた。
「アミ、あなたはこの二人を守りなさい」
連れてこなくても良いのにクリスはディアナと小僧を連れてきていた。
「アミ! 大丈夫か? きれいな髪がぼろぼろじゃないか」
小僧が俺のアミの髪を撫でてくれた。
「おい、小僧、俺のアミに近づくな!」
俺がリックを引き剥がしてた。
「あなたのアミじゃないはずだ!」
「小僧は黙っていろ」
俺は一言叫んでいた。
「ギャオーーーーー、オレノ阿奈はどこだ?」
その時だ。遠くで叫んでいる魔人公王の声が辺り一面に響いた。
「レオ、アミのことは良いから、行くわよ」
「そうだな。小僧、アミのことは命に代えて守れ」
「言われなくても守る」
小僧は口だけは達者だ。
「アミ、後は頼んだわよ」
「了解」
俺はクリスと一緒に魔神のところに転移した。
「稲、阿奈ヲドコニヤッタ?」
目の前に転移したクリスに魔人は手を伸ばして掴もうとした。
クリスがその手をひょいと避ける。
「喰らえ!」
俺は魔人の後ろから頭を蹴りつけていた。
「ギャー!」
さすがの魔人も前屈みになっていたので、耐えきれずにたまらず前に倒れる。
ドシーン!
魔人が地面に顔から激突した振動が建物中に響き渡る。
「これで、どうだ!」
クリスがそこに雷撃を浴びせるが、魔人はビクともしなかった。
「ウィンドカッター!」
俺が特大のウィンドウカッターを後ろから魔人に浴びせた。
バリンッ!
しかし、魔人の体に当たるとウィンドウカッターは四散してしまった。
倒れた魔人が起き上がって、今度は俺に襲いかかる。
その後ろからクリスが蹴飛ばした。
「ギャッ!」
ドシーン!
魔人は地面に頭から突っ込んだ。
魔術では無くて殴る蹴るの力業が効くみたいだった。
俺達が力業で戦っている時だ。
何かが目の端を通った。
よく見るとそれはアミだった。
何をするのだ?
気になって俺が見るのを魔人も気付いたみたいだ。
そちらを見てくれたので、思いっきり後頭部を蹴りつけていた。
ドシーン
魔神が倒れる。
アミがやらなくていいのに、倒れているアーデルベルトを助けようとしていた。
そんな屑はほっておいたらよい。
魔人に踏み潰されたら丁度良いのだ。
捨て置けばよいのにアミは屑のアーデルベルトを背負った。
しかし、そこは丁度魔人が顔を上げたところから近かった。
「アミ、何故そこにいるのよ! すぐに逃げなさい!」
クリスが叫んでいた。
しかし、アミは剣を拾うと、ファイアーボールを魔人に向けて放った。
それと同時にそのファイアーボール目がけてアミが加速した。
「ギャオーーーー」
魔人は叫ぶと火炎を発射していた。
俺は爆裂魔術を魔人に放つが魔人は跳ね返してくれた。
火炎放射がアミのファイアーボールに激突する。
爆発が起こった。
「アミ!」
俺は叫んだ。
アミが!
でもアミはその爆発の中から飛び出してきた。
俺がほっとした時だ。
アミが魔人の右目に剣を突き刺していた。
そのまま、魔人の顔を飛び越して逃げていく。。
「ギャオーーーー」
魔人の悲鳴が辺り一面に響き渡った。
良くやった。
俺も思わずアミを褒め称えた時だ。
魔人が振り返ってアミを見つめたのだ。
「えっ?」
俺の反応がワンテンポ遅れた。
アミは背のアーデルベルトをリックに投げつけていた。
そんなの盾にすれば良いのに、なんて事だ!
俺は必死に魔人を止めようと前に出た。
死に者狂いで!
動転していなければ転移すれば良かったのだ!
馬鹿だった。
俺の目の前で魔人が口を開けて、アミに向かって火炎を噴き出しくれた。
俺はほんの少し間に合わなかった
その炎がアミを直撃したのだ。








