一夜の過ちで娘が出来たのを後日知りました
「な、何て可愛いんだ」
俺は初めて自分の娘の姿を隠し撮りした映像魔術を見て感激した。
5歳のその子はとても可憐だった。
小さくちょこちょこと歩く様はとても可愛かった。
ストレートの黒髪は母親の血を引いているのは見た目で判った。
顔の作りも母親に似ていて将来美人になるのは確実だった。
まあ娘は父親に似た方が美人になると言う噂もあったが、俺は帝国の皇子だから、見目はもう一つ良くない。母親に似た方が余程嬉しかった。
でも、金のくりくりとしたつぶらな瞳は俺の血を引いている。
俺は今までまさか俺の娘がいるなんて想像だにしていなかった。
でも、あの金色の瞳は我が皇家独特のものだ。
俺の娘で間違いは無かった。
目元も俺とよく似ていたし……
でも、その子が何故か危険なダンジョンに潜っているのだが……何でだ?
「ママ、変なおじちゃんがこちらを見ているよ」
「なんですって!」
怒り顔の懐かしい顔のアップで画像は途切れていた。
「おい、この続きの映像はどうした?」
俺は慌てて次を促したが、
「申し訳ありません。陛下。これが現地から届いた唯一の映像でして」
暗部の長が首を振ってくれた。
「残りの暗部はどうした?」
「申し訳ありません。10名送りましたが、皆、連絡が取れなくなりまして……」
「そうか」
俺は原因に思い至った。
まあ、あの女とまともにやり合えるのものはこの帝国でもほとんどいまい。
俺は外務卿を呼び出したのだ。
俺が我が娘の存在に気付いたのは我が属国からの矢のような援軍依頼が発端だった。
なんでも、隣国から魔物達が大挙して我が属国に流れ込んできたというのだ。
「陛下、その昔、ノルトハイム王国に留学していらっしゃいましたよね。陛下からノルトハイム王国に対して、我が属国への魔物の流出を止めるように依頼して頂けませんか?」
外務卿が俺の所に頭を抱えてやってきた。
「ノルトハイムの誰に言えば良いんだ?」
俺は外務卿に尋ねていた。かの国にはもはや知り合いも少なくなったが、いないこともなかった。
「やはり国王陛下でしょうか?」
「あいつか!」
俺は苦虫をかみ殺したような顔をしていたと思う。
「あいつは好かん!」
「陛下、まあ、そうおっしゃられずに」
「しかし、あいつは俺が親しくしていた奴の婚約者のクリスティーネを婚約破棄して国外追放した悪逆非道な王だぞ」
俺は昔を思い出した。クリスティーネは俺と同じAクラスで魔術の得意な女だった。
俺たちは同じ魔術部で当時若手の新進気鋭の魔術師と近隣諸国に鳴り響いたヨーゼフの下で魔術の研鑽をしたのだ。俺はよく、そのクリスティーネと一年後輩の平民のゲオルクと一緒に行動していた。
「その婚約破棄された原因は陛下がクリスティーネ様に手を出されたからではないでしょうな?」
俺の言葉に外務卿がとんでもないことを言いだしてくれた。
「愚か者! お前な、クリスティーネなんかに手を出せるわけは無いだろう。そんなことをしたら燃やされたぞ」
「燃やされるのですか? 国王陛下に?」
「愚か者、クリスティーネにだ! きゃつは下手したら我が国の魔術師団全員が相手しても勝てるかどうかの腕前だったのだぞ」
「それほどの腕前の女性に陛下は手を出されたので?」
うさんくさそうに外務卿が俺を見てくれた。
「いや、だからあれは事故だったんだ」
俺は遠くを見た。
「やはり陛下が手を出されたのですね。国際問題ではないですか! 私は何も引き継ぎを受けておりませんが……」
「だから俺が原因でクリスティーネが婚約されたのではない。アーデルハイトがディアナとか言う平民の女に手を出したのが原因だ!」
俺ははっきりと否定した。
「ディアナ様と言えば今のノルトハイム王国の王妃様ではございませんか?」
「そうだ。だからノルトハイム王国は気に食わん!」
「陛下がクリスティーネ様に手を出さねばそのクリスティーネ様がノルトハイム王国の王妃様だったのですね」
「だから、違うと言っているだろう! あれは本当に事故だったんだって」
俺が言い訳したが外務卿は信じていない風だったが……
当時あの学園にはヨーゼフの元で学ぶために帝国の俺が留学していたし、その俺を慕って帝国の学生も結構いた。更には俺やアーデルハイト狙いで他国の王女や高位貴族の令嬢や令息達が大挙して留学しており、今では考えられないことだが、大陸一人気の学園になっていた。
そんな俺が王宮主催のパーティーで他国の王女から媚薬を一服盛られたのだ。
俺はその女の部屋から気付いて慌てて逃げ出したが、廊下で倒れている俺を見つけてクリスティーネが自分の部屋に連れ込んで解放してくれたのだ。
当時、俺もクリスティーネも婚約者がいたし、純粋に魔術のライバルというか仲間という感じで恋愛という感覚は無かった。俺よりは余程ゲオルクの方がクリスティーネにアプローチしていた。
でも、その隣国の王女の持ち込んだ媚薬は強力で俺はのたうち回ったのだ。
「クリスティーネ、直ちに俺から離れて医者を連れてこい!」
俺はクリスティーネに襲いかかりそうになるのを必死に耐えて叫んだのだ。
「はああああ、あなた、帝国の皇子が愚かにもパウナの王女なんかに媚薬を盛られたと公表するつもりなの」
クリスティーネは俺の言葉を無視してくれたのだ。
「頼むからクリスティーネ、このままでは俺はお前を襲ってしまうから、出て行け!」
俺は必死にクリスティーネを遠ざけようとした。
「別に良いわよ。襲うなら襲いなさいよ」
俺はクリスティーナの言葉に唖然とした。
クリスティーネの婚約者は平民と懇ろになっていたのは知っていたが、さすがに俺はまずいと思ったのだ。それにクリスティーネに恋心を持っているゲオルクにもまずい!
俺は必死に遠ざけようとした。
なのに、クリスティーナは俺から遠ざからなかった。
「レオ、このままだとあなた死んでしまうわ。良いわよ。事故に遭ったと思えば良いんだから。私に襲いかかってきなさい」
その瞬間だ! クリスティーナのその言葉に俺が必死に抑えていた理性が吹っ飛んだのだ。
後にも先にもあのように獣のように交わった事は無かった。
俺は欲望の限りをクリスティーナにぶつけたのだ。
本当に俺はやってしまった。
俺が気付いたときは俺はベッドに一人でいた。
その後薬の後遺症で少し寝込んでしまってクリスティーナが断罪された卒業パーティーにも出られなかった。そこでクリスティーナが学園から追放されて唖然としたのを覚えている。
俺は婚約者を裏切ったアーデルハイトに対して思う所もあったが、師のヨーゼフ先生にクリスティーナはゲオルクと幸せにやっていると聞いて、何もせずに帝国に戻っていたのだ。
クリスティーナと一夜の過ちでまさか娘が出来ていたなんて思いもしなかったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
どこかで聞かれた名前だと思いますがよろしくお願いします。
不定期更新です。








