神々の饗宴⑵
「あら、このスタイル抜群のお姉さん、どうしてそんなにびっくりした顔してるの? あなたって、スカートで会場中の男たちをメロメロにする存在じゃなかったっけ~」
びっくりして振り返った私。やっぱりこの声の主は彼女だった。さっき到着したばかりのマーガレットだ。
「びっくりした! いきなり現れないでよ、お酒が床にこぼれちゃったじゃない、可哀想……一口も飲んでないのに、うう……」
「酒の中の“石”が欲しいんでしょ? 欲しいなら取ればいいじゃない、遠慮なんてしなくていいわよ。私たちみんな気ままなんだから、欲しいものは取るし、持ち帰りたいものは持ち帰っちゃうの」
「え?」
改めてマーガレットを見てみる。ドレスを新しいロングスカートに着替えていた。赤いロングスカートにはキラキラ光る貝殻が飾られていて、一つ一つ丁寧に加工され、金糸が反射してまるで人魚の鱗のよう。まるで海辺から上がってきて、ようやく足が生えたばかりみたい。もしくは、普段はスカートで脚を隠していて、こんなに白く柔らかい脚があるなんて気づかなかっただけかも。アイマスク越しに見える“白”だ。
「あれ、どうして服変えたの? さっきのドレス、別に悪くなかったでしょ。それにその脚、どういうこと! こんなに白かったの!?」
「あの服ね、ちょっと自分に合わないって気づいちゃって、脱いじゃったの。この方が私に似合うでしょ。二回目だけど、ちょっと古いかな。でもあなたもこのスカート、私の脚が目立つって思うでしょ?」
「そ……そうね……」
認めたくないけど、この脚は確かにトップクラス。私だってこの白さ、この質感には敵わない。宴会で着るにはぴったりで、“老獅子”たちの視線を集めるだろう。
「そんなに露出して、誰を誘惑しようっての? それとも、あなたも水から上がったばかりの幼い人魚になりたいの?」
少し嫉妬が湧いてくる。彼女の体に、私より優れた部分があるなんて思ってもみなかった。それもこんな場面で急に気づかされるなんて。
「人魚ってほどじゃないわ。宴会なんだから、少しでも綺麗に着飾るのは損じゃないでしょ? あなたもそうでしょ? さ、素直に釣りに行きなさいよ。あんなに泳ぎ回ってる魚がいっぱいいるんだから~」
「ちぇっ~、近づかないと観察できないじゃない。みんな衣冠楚楚で、どう見ても“奔放”そうには見えないし……」
目で観察しても、これらの貴族の素性はわからない。視線が見えないんだから。どの貴族も笑顔を浮かべて、雄弁に語り合っている。旅行先の風景、家のコレクション、自宅の召使いのこと――これが王家の宴会というものだ。
考えが甘かったみたい。この晩餐会に淫らな人はいないし、色鬼なんて一人もいない。全員が高度な芸術的な会話に興じ、控えめに微笑む貴族夫人たち、余裕たっぷりのイケメン公爵たちばかり。
マーガレットが私の肩をつついて、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべながら、グラスを軽く揺らした。
「なによ、その怖い笑い方」
「そういえば、あなたをこの宴会に連れてくるの初めてだったわね。知らないのも当然か。ここに招待されるのは王族か大貴族だけ。小さい貴族は普通の宴会にしか参加できないのよ、可哀想に……」
「だから結局……」
まだ彼女が何を言いたいのかよくわかっていないと、中年の貴族男性がマーガレットに挨拶しに来た。
八の字髭を生やし、深紅の礼服を着ている。バラの刺繍が施され、まるで香りを放つ花が咲いているようで、上品で格調高い。
でも本人の気品がそれに追いついていない。着ていると逆に俗っぽく見えるし、ねっとりした髪の毛がより油ぎっしゅさを強調している。服のおかげで少しはマシになったけど、それでも抵抗感はある。
「美しいお嬢さん、一緒にゆっくりお話ししませんか? 私の邸宅には巨匠の絵画があります。一緒に鑑賞しませんか?」
話し方に大貴族特有の傲慢さがにじみ出ている。マーガレットは少し黙って、静かに一口酒を飲むと、はっきりと答えた。
「結構です」
貴族の表情が徐々に険しくなり、口元が引きつる。でもすぐに笑顔に戻り、「わかりました」と一言残して去っていった。不満は一瞬の表情にしか現れなかった。
「あの人、何者なの? あんなにストレートに断って……大丈夫……?」
「ここでは、あなたが誰だかなんて誰も知らないわ。面紗を外さない限りね。でも面紗を外したら、もう別の場所に行かないとダメよ、ふふ」
自慢する機会もないのに、この宴会を開く意味って何なの? 彼らは普通、他人にないものを持ち出して、羨ましがらせて、「うちにはもっと良いのがあるのよ」なんて言いたがるんじゃないの?




