傾国の一着
マーガレットは優雅に紅茶を啜りながら、休憩室の方角を見て小さく首を振った。
「ほんと最近の男って言うこと聞かないわよね~。この茶館の男ども、ちゃんと躾け直さないとダメみたい。つーかこの紅茶なに!? めっちゃ不味いんだけど!」
「でしょ! 私も言ったじゃん、この紅茶ほんとマズいよ! うちで淹れる方が百倍美味しいのにこの値段! 完全にぼったくり店! ていうかさ、あんたの犬管家が私にここ来いって言ったのに、結局あんたが来たよね?」
つい「犬管家」って言っちゃった。あの管事の顔思い出すだけでゾッとする。あの作り笑い、本当に気持ち悪いんだから。
「ちょっと! 犬管家って!! 最高にウケる! あとで絶対本人に言ってやる!!」
「やめてよ~! もう十分私を見下してるのに、それ言われたら次会ったとき絶対嫌味たっぷり言われるじゃん!」
もうシュークリーム食べ終わっちゃった。視線をマーガレットにやると……おお、金のなる木がそこに座ってるじゃん!
こんな金持ちなんだから奢ってもらうくらい当然でしょ。夜の宴会にもご飯はあるけど、あれじゃ思いっきり食べられないし。
「あ~、シュークリームもうなくなっちゃったんだ。ちょっと残念~」
「食べたいなら素直に言いなさいよ~。私たち親友でしょ? 遠慮しないで。じゃあ20個! オコット! シュークリーム20個! 早く持ってきて!」
しばらくして山盛りのシュークリームが運ばれてきた。私は両手で何個も掴んでパクパク食べる。この味、ほんとどこかで食べたことある気がする……。
マーガレットは一つも手をつけず、扇子をパタパタさせながら「暑い暑い」と文句ばかり。頭の飾りもめっちゃ重そう。私には到底手が出せないレベル。
そういえば今日の目的、まだ言ってなかったっけ。でも彼女にはバレてるよね、きっと。
「ねえ今日私に会いたかったの、またドレス貸してほしいんでしょ? ちょうど新作が何着かできてるの。あげるよ~。私特注の十二宮シリーズ! 絶対宴会で一番目立つから~」
「むぐっ! 絶対欲しい!!」
口の中にシュークリーム詰まったまま即答。王室専属デザイナーが作るドレスだよ? 最高級じゃなくてもトップクラスだし、何より……
最新作なんだよ!!!!!
彼女もまだ着てない新作なんだよ!!!!!
誰も見たことないドレスなんだよ!!!!!
「いつ試着するの!? 今!? 宴会まで時間ないよ!! サイズ合うか試さなきゃ!!」
興奮しすぎて今すぐ着たい衝動が止まらない! 私のスタイルにこのドレスがどう映るか、もう想像しただけでヤバい!
「焦んない焦んない。ゆっくり食べなよ。サイズは絶対合うから、私に任せて~」
「でも……あれ私のサイズで作ったわけじゃないよね? コルセットきつめに締めるやつでしょ? あの苦しみ思い出すだけで……前回もメイドさんたちにめっちゃ引っ張られて死ぬほど痛かったもん……」
私、マーガレットよりかなり細いから、彼女のドレス着ると毎回ブカブカ。上回なんてまるで人形がサイズの合わない服着せられたみたいでダサかった。
「大丈夫だって! そんなに心配しなくても! ここでちょっと休んでて、すぐ行くから」
窓の外は異常なほど強い日差し。石畳の通りを貴族たちの馬車が通っていく。普通の平民はこの道すら歩けなくて、ボロ靴で泥道を遠回りしてる。貴族は馬車から降りることすらなく、靴底も汚れない。
……まあ、どうでもいいけど。私も貴族だし。あいつらがどう生きようと知ったこっちゃない。
心の中でニヤリ。この身分があるからこそ上を目指せる。マーガレットと知り合えて、そして彼女の従兄……
ポモディス・ナンベモン。この王国の君主。噂じゃ王国内でもトップクラスのイケメンらしい。本気で一緒にベッドで転がりてぇ~♪ もしかしたら私の虜になっちゃうかも(完全なる妄想)。
でも今夜、彼も宴会に出席するって聞いた。本物が見られる! うひゃ~楽しみ~!




