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淫蕩な人

「あなた、私のそばに来て、私の上に這い上がって。今夜もまた一度、刺激的で愉悦に満ちた夜を一緒に過ごしましょう。どうか私を失望させないでね」


我が最愛の国王陛下はそうおっしゃった。彼のこの広い胸筋は、まるで私を引き寄せるように魅力的だわ。 ああ、なんて素晴らしいの。私のような者がこれほど偉大な君主の傍にいられるなんて。これこそ私が受けるべきご褒美よ。私、とっても綺麗なんだもの。


この人はなんて優雅で素敵な男性なの……。このベッドの上で、私の魅力でこの国王陛下を完全に征服して差し上げるわ。陛下に私の身体にひれ伏させ、身体の隅々まで満足させてあげる。この機会を無駄になんてできないわ。


たとえ私がただの愛人、小三の立場だとしても、皇后の座だって奪い取ってやる。私、ずっと陛下のそばにいるんだから。


指で彼の頬をそっと撫で、貪るようにその広い胸筋を触る。そして大きく脚を開いて―― 陛下の手を取って、私の胸の谷間に滑らせ、柔らかくて滑らかな腹部、そしてふくらみを触らせながら――


「我が国王陛下~ 私の本気、しっかり感じてくださいね。このベッドの上で、熱く燃え上がって、決して退屈させません。陛下もどうぞ存分に、私を味わってくださいませ」


――私はアンナ・ソフィア・エビフォン。男爵家の三女で、うちで一番美人と評判の娘。 確かに綺麗だけど、頭は良くないし取り柄もない。だからこの美貌だけを武器に生きてる。本当に便利なのよね。


男ってみんな年老いたスケベばっかりだから、この手は百発百中。私もこの手が大好き。 でも欠点が一つだけあるわ。みんな私の顔と身体しか見てくれない。それもあの臭くて気持ち悪い顔で。


まるで七宗罪の「色欲」の地獄に落ちた連中みたいに、醜い指で私の腰を這い回してくる。 でもその代わりに無限のお金が手に入るんだから、まあいいわ。だって実家の人たちなんて私を全く大事にしてくれないんだもの。生活費? あの実家が出す生活費って、あの? 数日分の食事にもならない銀貨数枚のこと?


実家には私の居場所なんてないし、私もあそこに居たくない。ただの笑いぐさよ。貴族の娘なのに使用人部屋に住まわされて、持ってる銀貨はいつも数枚、従者もゼロ。


貴族社会をうろついてるうちに、ちょっとした悪名は取っちゃったわね。外から見たら堕落してるって言われるけど、これって一番普通の手段じゃない。


あの人たちにわかる? わからないわよね。裏で何を言われてるか全部知ってる。実家の連中だって私と縁を切りたがってる。


貴族がこんな淫らなことをしてるなんて、娼婦以下だって言われてるわよね。貴族の掟に反してるって。 でもその掟って何? 自分たちを高みにいるためだけのものじゃない。高みにいる者が一番下賎な商売をしたら、もう貴族じゃない。ただの人間か、せいぜい下人よりちょっと上くらいの存在になっちゃう。


人は自分より上の存在が落ちるのを妬むものよ。だから没落貴族なんて想像もしたくないんでしょうね。


まあ私は貴族だけを相手にしてるし、だいたい偽名を使ってるから、本当の名前を知ってる人はほとんどいないはず。知ってる一部の人たち……「良き家族」たちは、家の名前に「貴族娼婦」の汚名が付くのを嫌がって黙ってるわ。


爵位は高くないけど、プライドだけは異常に高いのよね。一滴の汚れも許さない、天から見下ろすような目。でも中身は変わらない。


……まあいいわ。私、この位置にちょっとだけいるだけ。いつか必ず這い上がってやるんだから。そのときに見てなさいよ。


(ちっ、また金がなくなっちゃった。あれだけ気前がいいふりしてた貴族のおじ様たちが、結局くれるのってこれっぽっち……)


財布の中の銀貨、もう数枚しかない。どうしよう。尻尾振って実家に帰って金をせびる? いやよ。今夜は舞踏会があるわ。王室の貴族たちがたくさん来るはず。需要のある人が何人か見つかるはずよ。


それに、なにより――今夜は国王陛下が珍しくご出席なさるって。もしかしたら近づけるかも。陛下と繋がれたら最高だわ。 運試しよ。数日は暮らせるくらい稼げるかもしれない。あのガチガチの硬いパン、もう食べたくない。歯が痛くなるわ。何日もまともなワイン飲んでないし、飲みたい……!


とりあえずマルグリットを探そう。服を何着か貸してくれるかも。そうすればまた一緒に王室舞踏会に行けるわ。 完璧な計画ね、よし決まり!


ウキウキしながら大親友のマルグリットんちに向かうわ。可愛くて純粋なマルグリット、今日もきっと意味不明な礼儀作法を一生懸命勉強してるはず。


彼女の家は私の家より何倍も立派。王室直系だもの、私なんかただの男爵の三女と比べるなんておこがましいわよね。


のっそりと管家が出てきて、私を見た途端に顔が曇ったけど、丁寧に言った。


「マルグリットお嬢様はまだお授業中でございます。アナお嬢様、先にお待ちになりますか?」


「ああ、いいわ。じゃあ中に入って待ってるわ」


すると管家が手を差し伸べて止めて、笑顔で向かいの喫茶店を指さした。


「申し訳ございません、ただいま屋敷にお客様がいらっしゃいまして。アナお嬢様はあちらでお待ちいただけますか? あちらにも美味しいお菓子がございますよ」


丁寧な口調のくせに、心の中では「こんな女がよくうちに入ろうと思えるな」「貴族の体を成してない」「流行遅れのドレスだし、髪もベタついてて気持ち悪い」って思ってるに決まってる。犬眼見下ろし低き、いつか私が皇后になったら絶対に仕返ししてやるんだから。でも今は我慢。


私はカッとなりそうになるのをぐっと抑えて、ぎこちない笑顔を作って答えた。


「じゃあ、マルグリットが終わったら呼んでちょうだい。私はあそこで待ってるわ」


「いえいえ、一時間後にまたお越しいただけますか。その頃にはお嬢様も授業が終わるかと」

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