京子と花火 虫よけスプレー
京子、念願の花火に満足するが・・・
夏の虫に困り果てる。
京子「スカートの中の内腿とお尻近く3ヵ所くらい蚊に刺されたんだけど・・・」
「え?虫よけ塗ってなかったの?」
京子「こんな内側まで塗れるかー!恥ずかしい」
7月29日のお昼
京子からメッセージが入る
京子「おじさん、今日は何の日か知ってる?」
「にくの日」
京子「はは、違う」
「なんの日?」
京子「今日は犀川で花火大会がある日!」
「そうなんですね」
京子「一緒に行こ!麗華は仕事で行けないけど」
既読スルーされる。
京子「ちょっとー!」
京子から電話がかかって来て
「もしもし」
京子「私、何してんの花火に誘ってるのに返事しないって」
「いや、麗華ちゃんが行けないのに京子ちゃんとだけ行くとまたズルいって言われるので」
京子「大丈夫よー、黙っとけば分からないから」
「えーと、一昨日に麗華ちゃんにサンダル買わされましたけど」
京子「あははっゴメン!けど今日の花火は黙っとくからさ(笑)」
「だめです、麗華ちゃんが一緒のときなら行きますけど」
京子「え~、去年の10月から楽しみにしてたんだよ、今日逃したら
また1年待たないといけないんだけど」
「えーと、そんな話ありました?」
京子「忘れてるの?犀川沿いのお店行ったときに花火行くって約束したの」
「ああー、約束までしてました?」
京子「うん「その時にそばに居たらね、必ず行くよ」って言ってた!」
「そこまで言ってました?」
京子「うん、言ってた(笑)」
「笑ってますけど」
京子「もー、いいの!花火大会行きたいから迎えに来て」
「お迎えまであるんですか?」
京子「うん、外暑いし!」
「我がまま過ぎません?」
京子「いいじゃん、たまには(笑)」
「たまにはって言います?」
京子「いつもの事なんだから、お願い!(笑)」
「も~、分かりました!それじゃ18時に行きますね」
京子「そんな早く行くの?」
「そうしないと近くの駐車場に止められないから」
京子「そうなんだー、けど花火まで時間あるよね?」
「うん、この前のお店で晩ご飯食べてから花火にします」
京子「あっ、そだ、了解!」
「なので18時でね」
京子「はーい!」
電話が切れて
京子「はー、めんどくさっ!もー麗華が麗華がって、そんなに麗華が好きなの?」
スマホに向かって呟いたあと
京子「さーて、何着てこうかな~、アウトレットで買ったの着れる(微笑)」
夕方18時、コンビニの店内でおじさんの車を待っていると
駐車場に見慣れた車が入ってきた。
お店を出て車に近づき助手席のドアを開けて
京子「ども~、お迎え悪いね~(笑)」
「そう思うなら現地集合にして欲しかったですけど」
京子「だって外暑いし!今日は軽なんだね」
「うん、空いてる駐車場探して止めるから軽の方が楽」
車がコンビニの駐車場を出て片町に向かって走り出す
京子「おじさん、気づいてる?アウトレットで買ったの着てるんだよ、可愛くない?」
「なに買ったかまでは見てなかったので」
京子「そっかー、選んでるところみてないもんね~、けど可愛いかどうかは言えるでしょ!」
「はい、可愛いですよ、可愛んですけど、花火見に行くにはどうかな~」
京子「どう言う意味?」
「ミニスカートって、蚊に刺されますよ」
京子「あっ、そうだよね、どうしよ」
「虫よけスプレーは持って来てるから後で塗ればいいけど」
京子「えへへっ、お願いします」
「いや、俺は塗らないよ、自分で塗って」
京子「冷たいな~(笑)」
「街中で女の子の足に虫よけスプレー塗ってたら捕まるし(笑)」
京子「あははっ、さっきからスプレーを塗るって言ってるけどかけるの間違いじゃない?」
「虫よけスプレーって吹きかけて直ぐに掌で塗り拡げないと効果が薄いよ」
京子「そうなの?」
「スプレーでべちゃべちゃになるまでかければ別だけど、サラッとかけた
だけだとムラがあるからけっこう刺される」
京子「ふーん」
「あとは、その新しい服に虫よけスプレーがかかってもいいかどうかだね」
京子「変色したりしない?」
「さぁ~、皮製品だと変色しやすいけど、服はどうなのかな?」
京子「えー、どうすればいいの?」
「掌にスプレーいっぱいかけてから足に塗ればいいよ(笑)」
京子「やり方あるんじゃない!最初に言ってよ!(笑)」
犀川大橋で片町に入る手前のコインパーキングに車を止めて橋を歩いて渡る。
京子「片町入って止めないの?」
「花火終わって帰るときに渋滞に捕まるの嫌だから、こっち側にとめるの」
京子「あ~帰りの渋滞ってイヤだよね」
「うん、最後の花火が上がって、それ見た後に渋滞に捕まるのって残念」
京子「そだね(微笑)」
橋を渡り切り直ぐに左に曲がって犀川沿いの道をゆっくりと歩いていく。
18時半過ぎ、まだ暗くなる前の川沿いを歩いていると、大勢の人たちが
下流に向かって2人を追い越していく。
京子「みんな会場近くまで行くのかな?」
「うん、たぶん」
京子「ここからでもちゃんと見えるの?」
「うん、ナイアガラの滝とか水面近くのは見えないけど、打ち上げは全部見える」
京子「それならオッケー!(笑)」
欧風居酒屋の入口につきドアを開けて中に入る。
店員「ご予約ですか?」
「はい」
店員「こちらのカウンターでお願いいたします」
「はい、ありがとう」
京子「えへっ、カウンターか~(微笑)」
「カウンター席はダメだった?」
京子「うんうん、大丈夫!」
京子がおじさんの右側の席に座ろうとしたので
「あ、ごめん、左側に座って欲しいです」
京子「ん、なんで?」
「右耳が全く聞こえないから、会話できなくなる」
京子「右耳聞こえないの?」
「うん、ストレスで聞こえなくなった(笑)」
京子「いつから?」
「言ってなかったっけ?もう10年以上前かな」
店員「失礼します。お飲み物はどうされますか?」
「俺はウーロン茶で、京子ちゃんは?」
京子「私もウーロン茶お願いします」
店員「ウーロン茶お2つですね」
店員が下がっていくと
「食事の注文は俺がしていい?」
京子「うん」
店員「ウーロン茶お待たせしました、ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい、和牛ヒレ肉のグリエ、バゲット、シーザスサラダ、トリュフ入りオムレツ
お願いします」
店員「かしこまりました」
店員が下がっていくと
京子「右耳が聞こえないって、病院には行ったの?」
「気付くのが遅れて、行ったけどどうしようもないって言われた」
京子「遅れたって、なんで?」
「もともと耳が良かったんだけど、良すぎて右耳が聞こえなくなってるのに
気付かなかった。左耳が全部カバーしてた(笑)」
京子「気付いたのは?」
「健康診断で聴力検査した時に。前の年の診断は全く問題なかったけど
その年には全く聞こえなくなってた」
京子「不便じゃないの?」
「こうやって2人で並んだ時くらいかな」
京子「車は?」
「うん、大丈夫、窓少しだけ開けてれば、元々ほとんど視覚だけに頼ってたから」
店員「シーザスサラダとオムレツ、バゲットお待たせしました」
「ありがとございます」
京子「サラダ分けるね」
「うん」
2人「いただきます」
サラダを少し食べてからオムレツにスプーンを入れるとトリュフの香ばしい薫りが漂ってくる。
京子「あはっ、いい匂い、美味しいそう!」
京子が一口食べて
京子「ふへへっ、美味しい!去年も食べたよね(笑)」
「うん、いいね、美味しい」
店員「和牛ヒレ肉のグリエお待たせしました」
「ありがとございます」
京子「お肉も美味しそう!(笑)」
「好きなだけ食べていいよ!(微笑)」
京子「うん、おじさんも食べて!(微笑)」
「うん」
出された料理を全て食べ終わる頃に花火の上がる音が聞こえてくる。
京子「あっ、花火が始まった!」
「それじゃ行こうか」
京子「うん」
支払いを済ませてお店をでると犀川の下流側で花火が上がっているのが見える。
京子「うわぁー、綺麗ー!ここからでも十分だね!(笑)」
「うん、少しだけ歩こう」
京子「うん」
100メートルも歩かずにおじさんが犀川の土手に降りる階段を見つける。
「下降りて座ってゆっくり見よう」
京子「うん」
土手に降りてコンクリートの地面におじさんがリュックから出した
ウレタンクッションの上に座って京子が首と足に虫よけスプレーを塗っていた。
おじさんは京子が差し出す掌にスプレーを何回かに分けてかけている。
「爪先にも塗って、足の指に刺されると最悪だし(笑)」
京子「うん」
京子が虫よけを塗り終わると2人して花火を見上げながら過ごす。
京子「このクッションいいね、お尻痛くない(笑)」
「うん、キャンプ用とかで売ってるの見かけたから買って来た」
京子「高くなかった?」
「1枚500円くらい」
京子「ふーん、男の人でクッション持って来るって珍しくない?」
「なんで?地べたに座ったら痛いし」
京子「周りみんな地べたに座ってるけど(笑)」
「お尻の肉が少ないから無理です」
京子「お尻の肉が少ないって(笑)」
「触ったら分かるけど地面に当たるところに直ぐ骨があってゴリゴリ痛いの」
京子がおじさんのお尻を触ってみると指が直ぐに骨に当たる。
京子「ホント、こんなとこに骨があるんだ?」
「いや、骨の位置は普通です。お肉がついてないだけ(笑)」
京子「痩せてる訳でもないのに、ここだけ?(笑)」
「もう良いですよ、花火見よ!(笑)」
京子「あはっ、そうだった!(笑)」
大きな花火、小さな花火、色とりどりの花火が上がっていく。
花火が開いてから3秒ほど遅れて音が聞こえてくるので会場からは1キロほど
離れているのが分かるが、十分な大きさで見えている。
時折、京子が「綺麗~」呟くように言い、おじさんが「うん」と答えるが、
ほとんどは2人して黙って花火が上がるのを見上げていた。
京子「花火っていいね~、何にも考えずに見てられる(微笑)」
「そですね(微笑)」
最後に大きな花火が夜空を覆い、花火の火が菊の花の様に開いたあと、静かに
地面に向かって落ち始めた時、それまでで一番大きな音が鳴り響く。
「この花火が一番綺麗だね、菊の花みたいにおっきく開いてゆったり火の粉が
落ちていって、柳の木の葉が揺れてるみたいになって」
京子「なに気取ってるの?(笑)」
「えっ、ダメ?(笑)」
京子「言いたい事は分かるけど(笑)それよりも大変なことに気付いたんだけど」
「なに?」
京子「スカートの中の内腿とお尻近く3ヵ所くらい蚊に刺されたんだけど」
「え?虫よけ塗ってなかったの?」
京子「こんな内側まで塗れるかー!恥ずかしい」
「あははっ、ははっ、それじゃ帰ろうか(笑)」
京子「もー、虫刺されの薬ないの?すんごい痒いんだけど、かけないし」
「あるけど、ここじゃ塗れないよね(笑)」
京子「そうだよね、早く車に戻ろ!」
車に向かって歩き出す。
「京子ちゃん、女の子がお尻かきながら歩くってどうかと思うよ(笑)」
京子「ああっ、無意識にかいてた(笑)」
駐車場に着き車に乗ると
京子「虫刺されの薬頂戴!」
「やめなさいって、足開いてかくの(笑)」
京子「しょうがないじゃない、痒いんだから!」
「はい、薬」
京子「ありがと、灯り点けて」
「はーい」
京子が車の車内灯で蚊に刺されたところを確認しながら薬を塗っている。
駐車場から車を出して京子の家の近所にあるコンビニに向けて走らせ、
京子「う~、痒い~!」
「今かいたら薬の効きが遅くなるから(笑)」
京子「分かってるよー!もー!」
コンビニの駐車場に車を止めて
「その薬あげる(笑)」
京子「うん、ありがと」
「機嫌悪い?」
京子「せっかく花火行ったのに蚊に刺されるって、もー!」
「ははっ、来年はそんな恰好しないで行くと良いよ(笑)」
京子「分かりましたー!(笑)」
「それじゃね、おやすみ!(笑)」
京子「今日は急に誘ったのに来てくれてありがとね!おやすみ!(笑)」
京子が助手席のドアを開けて降り
京子「またね、ありがと!」
車が駐車場を出て行くのを見送って京子が家に向かって歩き出す。




