第8話 最凶の敵・・・別次元からの侵略者
第8話投稿します。
今回も、ファンタジーのファの字もありません。ごめんなさい。
ネタ補充のため、しばらく充電モードに移行いたします。申し訳ありません。
Side カツヲ( 旧名:御子柴 陽一 )
気が付くと俺は闇の中に居た。
いや、そこに俺が居るのかすら分からない。
なぜなら俺に実体がないから。
ここはどこなのか・・・
上も下も分からない・・・
俺はどこに立っているのか・・・それとも座っているのか・・・
落ちているのか・・・それとも昇っているのか・・・
実体がないから五感もない。感じ取れない。分からない。
『・・・・・・』
唐突に声のようなものが聴こえた。
聴覚はあるらしい。
『カツヲ・・・』
気が付くと、俺は闇から抜け出していた。
それとも失われていた視覚が戻ったのか・・・
目の前の光景は俺の予想を斜め上に超えていた。
(これは・・・)
目の前にあるのは一軒の武家屋敷。
木製の一階建ての広い日本家屋だ。
どこかで見たことがある。
どこだったか・・・
ふと、表紙が目にとまった。
【 磯野 】
そうだ思い出した!
これはサ○エさん一家の家だ!
なぜ俺がこんなところに・・・?
そう考えていると唐突に後ろから声がした。
「カツヲ・・・」
突然の声に俺は振り返った。
そこには
とある見なれた、それでも現実には存在するはずのない、一家がいた。
「おめでとう、カツヲ」
姉さん・・・?
「ステキよ、お兄ちゃん」
ワカメ・・・?
「やるじゃないかい、カツヲくん」
マスオ兄さん・・・?
「かっこいいですぅ~、カツヲにいちゃん」
タラちゃん・・・?
「カツヲもついに・・・」
母さん・・・?
「許せ、カツヲ・・・」
父さん・・・?
「ニャー・・・」
タマ・・・?
これは一体どういうことか・・・
なぜ俺の目の前にサ○エさん一家が?
なぜみんな俺を見て、嬉しそうな表情で、それでいて涙ぐんでたりするんだ?
俺はカツヲじゃない、陽一だ。御子柴 陽一。
確かにノリでカツヲを名乗りはしたが・・・
俺はふと自分の姿に気付いた。
いつの間にか実体がある。
何故か俺は白いタキシードを着ている。
一体何なんだ・・・この状況・・・これではまるで・・・
「いーそーのーくーん!!」
っ!? 今度はなんだ!?
またもや突然の声。
声のしたほうを振り向く。そこには
「がははーっ!!
遅くなってごめんなさーい!!
さ、いきましょうか~~!!」
ウエディングドレス姿の花沢さんが・・・
花沢さんは俺の腕を取り、組んでくる。
凄まじく嫌な予感がする。
花沢さんは俺の腕を組んだまま、ポッと顔を赤らめ
「アタシたち・・・
ついに結婚しちゃうのよねぇ~~ん!!
この日をどれだけ待ち望んだことか~~!!」
ガハハ~と品のない笑いをあげながら、そんな死刑宣告をほざきやがる花沢さん。
ちょ・・・ちょっと待ってくれ!?
「ま、待ってくれ!
俺はカツヲじゃないんだ。
俺は花沢さんと結婚するなんて業は背負っていない!」
なんとか否定の声が出た。
花沢さんもサ○エさん一家も一瞬唖然とするも
「やーーねーーっ!!磯野くん!!
テレのあまり緊張して怖気づいちゃって!!
この期に及んでジョークだなんて可愛いんだから~~ん!!」
豪快に笑いながら、バシバシと俺の背中を叩いてくる花沢さん。
サ○エさん一家も俺の訴えをジョークと取ったのか愉快そうに笑っている。
冗談じゃねぇぞ!?
「ちがうんだって!
本当に俺はカツヲじゃないんだ。
御子柴 陽一っていうんだ!
俺はアンタ等のことは知ってるけど、実際は会ったこともない他人なんだよっ!!
花沢さんと結婚なんて、そっちこそ悪い冗談はやめてくれ!!!」
渾身の力を篭めて、花沢さんとの結婚を否定。
「・・・イソノくん・・・?
・・・ナニイッテルノ・・・?」
固まる花沢さん。固まるサ○エさん一家。
数秒後、
サザエ 「何を言ってるの!? カツヲー!!」
ワカメ 「ひどいわっ、お兄ちゃん!!」
マスオ 「あんまりじゃないかい! カツオくん!!」
タラオ 「カツヲにいちゃん、ひどいですぅ~!」
フネ 「なんてことをっ!? 今すぐ謝罪しなさい、カツヲ!!」
波平 「バッカモーン!!!」
タマ 「フシャーッ(怒)!!!」
みんな一斉に抗議。
気が付くと周りには、サ○エさん一家の他にも知った顔が・・・
中島 「磯野、見損なったぜ・・・」
カオリ 「磯野くん、あんまりよっ!!」
ハヤカワ「磯野くんが、そんな人だったなんてっ!!」
待ってくれよ・・・みんな・・・
本当に違うんだ・・・俺はカツヲじゃないんだ・・・
ノリスケ「カツヲくん、そりゃないと思うよ・・・」
タイコ 「そうよ、カツヲちゃん、さすがにひどいと思うわ・・・」
イクラ 「バブーッ(怒)!!!」
ッるせーよ! イクラァ~ッ!!
この際だから言ってやる!
俺もテメェのことが嫌いなんだよ!!
みんなハッキリと口には出さないがなっ!!!
俺が逆ギレしていると、
「カツヲくぅ~ん~・・・
うちの花子のぉ~~・・・
どこがそんなにぃ~~~・・・
気に入らないのかぁ知らないがぁ~~~~・・・」
またもや唐突に響く声。
この若本ヴォイスは・・・まさか・・・
「君にはぁ~・・・
我が花沢不動産の次期社長としてぇ~~・・・
発展させていく義務がぁあるのだよぉぅ~~~・・・」
げぇっ!?
一瞬アナゴさんかと思ったけれど、花沢さんのお父さん!?
ちょっと、マジでシャレにならない状況じゃねぇか!?
花沢パパ「君はぁ~・・・
花子のぉココロをぉ~~・・・
既にぃ奪ってぇしまったぁ~~~・・・
今さらぁ逃げることなんてぇできないんだぁ~~~~・・・」
花沢さん「そうよ、磯野くん!
花沢親子からはもう逃げられないわよぉ~~~」
そう言って、俺の両肩をガッシリ掴む花沢親子。
花沢親子「「さあ、逝こうか」」
俺を掴んだまま、空に昇っていく花沢親子。
もはや理解が追いつかない。
下を見ると、みんな笑顔で手を振っている。
こんな超常的な現象を見て、なぜみんな笑っていられるんだろう?
現実とは思えない。
俺は下を見続けた。
みんなドンドン見えなくなり、
街も次第に小さくなり、
やがては雲を通り越し、
周りが暗くなっていく。
何処まで行くのか・・・?
俺はふと、俺を掴んで昇っていく花沢親子を見た。
花沢親子は笑っていた。
二人ともいつの間にか顔は青白く、目はギョロっとして、口は耳元まで裂け
とても生きている人間の貌ではない。
それなのに笑っている。
口をケタケタさせ、ウレシソウニ・・・
その時、俺は悟った。
俺は連れて行かれるんだ・・・
死者の世界に・・・
あの世に・・・
無の世界に・・・
世界は再び闇に染まっていく・・・
どこで俺は間違えたのか・・・
何がいけなかったのか・・・
今さら考えてももう遅い。
消えていく・・・
俺という存在が・・・
削れていく・・・
溶けていく・・・
喪失していく・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ぁぁあああああああっ!!」
意識が覚醒する。
闇の中ではない。
ここは宿の一室。
今は薬草採取のクエストの途中で、森近くの村で一泊しているんだった。
「・・・どうしたの・・・カツヲ・・・」
俺の大声に無理やり起こされたのか、相部屋のエリナが眠そうに目をこすりながら聞いてくる。
「い、いえ・・・なんでも・・・」
そうだ、なんでもあるわけがない。
今のは夢だ。
あんなこと現実に起こるはずない。
二次元の住人に現実の三次元の住人が殺されるなどあり得ない。
下位世界である二次元が、次元の壁を越えて上位世界の三次元に侵略してくるなど、あってはならないことだ。
ふと気付く。
俺は泣いていた。
涙を流していた。
そこまで怖かったのかよ、俺は・・・
(なんで、あんな夢見たんだよ・・・)
まったくもって意味不明。
でも、キッカケは分かっている。
俺が『カツヲ』と名乗ったからだ。
軽いノリでカツヲを名乗ったから、その報いを受けたとでもいうのか・・・
カツヲの呪い・・・カツヲが背負うべき業を、俺が背負う・・・
それが、花沢さんとの結婚・・・
それが、絶対的絶望・・・
(馬鹿馬鹿しい・・・)
夢なんてしょせんは自分の頭が生み出した妄想に過ぎない。
自分が生み出した、いわば自分の一部だ。
それに恐怖していては本末転倒だろうに・・・
自分自身を『使いこなす』ことに自信があっただけに、思わぬ失態にガックリ落ち込む。
そんな俺にエリナが声をかけてくる。
「ちょ、ちょっと・・・どうしたのよ、カツヲ。
あなた、泣いてるじゃない。
大丈夫なの!?」
恥ずかしいところを見せてしまった。
人前で泣いたことなんて、本当に久しぶりだ。
「いえ、本当に大丈夫です。
少し怖い夢を見てしまって・・・」
本当は少しどころではないのだが・・・
夢から覚めて、今は実にホッとしている。
「そうなの・・・
ねぇ、カツヲ・・・
もしかしてあなた、過去に何かあったの?
そんな泣くほど怖い夢を見るなんて、普通じゃないわよ・・・」
エリナが心配した様子で聞いてくる。
良い娘や・・・
夢とはいえ、現実に起きた事ではないとはいえ、俺の味わった恐怖はまぎれもない本物。
ぜひとも誰かに聞いてもらいたかった。
この娘に知ってもらいたいと思った。
俺は包み隠さず話した。
Side エリナ
「・・・そうだったの・・・」
カツヲから聞かされた彼の過去。
彼の実家は7人家族。
彼はその家の長男で、家族と一緒に平穏な生活をしていたそうだ。
しかしある時、悪徳不動産業者『ハナザワ不動産』の一人娘・ハナザワハナコに目をつけられ、交際と結婚を迫られていた。
確かにカツヲは美形と言ってもいい顔だし、少し臆病だけど性格も悪くはない。
カツヲとお付き合いしたいと思う女性も少なくないだろう。
しかしその娘・ハナザワハナコはその父親同様に横暴で乱暴者、さらには腕っぷしも強いので余計に始末に負えない女性だそうだ。
彼女は父親と結託し、カツヲが何度断っても、幾度となく無理やり関係を迫っていたそうだ。
先ほどカツヲが見た夢とは、ハナザワハナコと無理やり結婚させられる夢だそうだ。
(・・・許せない・・・)
会ったこともないハナザワハナコという女性、そしてその父親に対して怒りが湧く。
人のいいカツヲに、ここまで恐怖心を植え付けたその親子に・・・
カツヲの涙に濡れたその顔を見ていると、なおさらそう思う。
カツヲはきっと、その親子から逃げるために旅に出たのだろう。
今の彼の様子を見れば、そう推察できる。
ふと私の心に何かが芽生えた。
それを理解する間もなく、私はカツヲの頭を胸に抱きかかえていた。
「・・・あの・・・」
カツヲは困惑しているようだが、私は気にしない。
だって、私がそうしたいのだから・・・
「いいから・・・
怖いならそのままでいなさい・・・」
私の中に芽生えたモノ、それはおそらく母性。
私より年上のくせに、どこか頼りなげなカツヲ。
なぜだか、守ってあげなくちゃいけない感じがする。
臆病なくせに、弱いくせに、不器用なくせに、人のことを心配する余裕なんてないくせに・・・
(そうだ、私はこういう人たちを守るために、勇者になったんだ・・・)
私は思い出した。大事な想いを。
そして抱きしめ続けた。
それを思い出させてくれた守るべきものを。
Side カツヲ( 旧名:御子柴 陽一 )
エリナに俺の心に巣くった恐怖を暴露したら、随分と楽になった。
本当に彼女には世話になった。
彼女が俺を抱き締めてきたのは流石に予想外だったが・・・
同時にもう二度と、こんな失態はしまいと誓う。
だから
「あの、エリナさん。
俺の名前なんですけれど・・・」
「ん・・・?
なあに、カツヲ。
名前がどうかしたの?」
「実はカツヲというのは偽名で、
本名は陽一というんです。
今度からそう呼んでくれませんか?」
流石にあんな夢を見た後で、『カツヲ』を名乗り続ける勇気はない。
あんな悪夢にうなされるぐらいなら、俺は『カツヲ』の名を捨てる!
もとから『カツヲ』を名乗るのに、そこまで強い理由があったわけではないし・・・
・・・あとでギルドで登録し直さなければ・・・
エリナは少し驚いた様子で
「え・・・?
そうだったの・・・?
でもどうして、私に本当の名前を?」
当然の疑問を投げかけてくる。
「まぁ、それは・・・
エリナさんを信頼しているから・・・ということで・・・」
無難に俺はそう答える。
「そう、ふふふ・・・
ありがとうね、カツヲ・・・
じゃなかった、ヨーイチ・・・」
エリナは柔らかく笑っていた。
ええ娘や・・・
Side 神様
「ふーむ、次はどんなイタズラをやろうかいのぉ~~~」
はい、というわけで今回、二次元世界からサ○エさん軍団が侵略してくるお話でした。
まあ、結局は神様の陰謀(?)だったわけですが・・・
あと、花沢さんファンの方々、イクラちゃんファンの方々、申し訳ありませんでしたっ!!
・・・って、存在するのか? ファン・・・?
次回、今度こそクエスト!