第7話 ギルド・・・そして爆球連発!!!
第7話投稿です。
今回も、陽一は現代人的なノリで、内心くだらないことばかり考えてます。
Side 御子柴 陽一
チンピラから助けてくれた(?)冒険者風少女にギルドの場所を聞かれた。
俺も今からギルドへ向かうところだと言ったら一緒に行くことになった。
「すいません、ギルド登録したいんですけど」
現在、ギルド登録を開始。
ギルドの受け付けは、テンプレ通りの美人の受付嬢ではない。
受け付けは中年のおっさんだ。それも波平。
側面だけは残して頂部分だけハゲあがっており、てっぺんに一本のチヂれた剛毛がポツンと生えている。
もし、髪の毛一本一本に意思が宿っているならば、てっぺんの一本はさぞかし寂しい想いをしているに違いない。
いっそのこと抜いて楽にしてやればいいのに・・・
それにしても、なんというか、波平さんは偉大だと思う。
こういう髪型(?)の人を見たら、問答無用で「波平だ!」って思ってしまうからだ。
その人の人格やアイデンティティをすべて無視して、波平というイメージが全てを埋め尽くしてしまう。
もはや波平という名は個人名にとどまらない。
彼の名は無意識のうちに属性にまで昇華されているのだ。
ファンタジー世界に来てまで波平について考察している俺、余裕だな。
ファンタジー慣れしてくれば、こんなものだ。
「はい、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
名前か、ここは本名ではなく偽名を使おう。もちろんノリで。
どうせ珍しくもないんだろう?
「はい、カツヲといいます」
目の前の受付係にカツヲと呼ばせてみたい。ただそれだけのため・・・
「はい、カツヲさんですね。
こちらが発行されるギルドカードになります」
カツヲさんか・・・よそよそし過ぎる。
いつものように
『バッカモーン!』
『コラ、カツヲー!』
『許せ、カツヲ』
と言ってくれよ。他人じゃないんだからさ、お父さん。
そのくせカツヲだからって、イガグリ頭にする度胸はない俺。
そんなことを考えながら、ギルドシステムの説明を受ける俺。
ギルドが受注するクエストは難易度に応じてランク付けされており、S, A, B, C, D, E, F の7段階ある。
俺は登録したばっかりだから最低難易度のFランクな。
そうこうしているうちに、ギルドシステムの説明を終え、クエストを受けることになったのだが・・・
「あっちゃー・・・
今はFランクのクエストしか残ってないんだー・・・」
残念そうに言う、付き添いだった冒険者少女。
別の受付とのやり取りを見てたが、どうやら彼女、俺とは違いすでにギルド登録済み。
冒険者やってるなら当然なんだろうけど、意外なことにSランクを受けれるほどの実力者だそうだ。
周囲も受け付けも驚いていた。
しかし現在、高難易度クエストは全て受注済みらしい。
俺はどちらにしても、F しか受けれないから構わないんだけど。
「・・・しかたないかぁ・・・
何もないよりはマシだものね・・・」
ちなみに残っているFランクのクエストは
【 この街から南にある森で、薬草摘み 】
とのこと。いかにもテンプレな内容。
最大3人まで受けることができるらしい。
冒険者風少女が俺に話しかけてくる。
「あなた、登録したばっかりでクエスト初心者なんでしょう?
私こう見えてもクエスト結構慣れているの、
といってもモンスター討伐ばかりだったけど。
よかったら一緒にクエスト受けてみない?
先輩としていろいろ教えてあげるわよ?」
チンピラとの一件といい、なかなかに面倒見の良い性格らしい。
それともよほど俺が頼りなさげに見えるのか・・・
「自己紹介がまだだったわね。
私の名前はエリナ。
見ての通り今は冒険者をしているわ。
あなたは?」
「俺の名前はカツヲといいます。
クエストは初めてなので、いろいろご迷惑をかけると思いますが、
よろしくお願いします」
ギルド登録でそう名乗ってしまった以上、カツヲで通すしかない。
あとクエストが初めてというのは、あくまでこの世界でのはなし。別の世界では腐るほどこなしてきた。
「そう、カツヲっていうのね・・・
黒目黒髪もそうだけど、珍しい響きの名前ね・・・
こちらこそよろしくね」
受付係ではなく、冒険者風少女に『カツヲ』って呼ばれてもなぁ~
アテがハズれて、軽く落ち込む俺。
そうして一緒に薬草摘みのクエストに出かけることになった俺とエリナ。
そして、街の南の森へ向かう道中でのこと
「そういえばカツヲ、あなた武器は持っているのかしら?
いくら薬草摘みだからって、道中何があるか分かったもんじゃないし、
万一に備えて護身用の武器や防具ぐらいはあったほうがいいわよ?」
護身用の武器も防具も身に着けていない俺を怪訝に思ったのか、エリナが聞いてくる。
確かに武器が何もないっていうのはおかしいよな・・・
そこで唐突にイタズラゴコロが湧き起こってくる・・・
「護身用の武器ならありますよ」
そう言って、懐からソレを取り出す・・・ように見せかけて、亜空間からソレを引き出す。
「何これ?ずいぶんちっちゃいけど・・・
これ本当に武器なの?
それとも何かの魔導具とか?」
魔導具・・・おそらくマジックアイテムみたいなモノのことか・・・
よし、それで通そう。
「はい、これは我が家に代々伝わる魔導具です。
特別製の弾を撃ち出し、敵を攻撃する道具なんですよ」
これの場合、弾とはビー玉の事。
指を介してホールダーで締め付けられたビー玉を、トリガーで勢いよく押し出して発射する。
その名もビーダ○ン。ジャパニーズホビーの代表格。
しかし侮ることなかれ、これは使用者の握力がそのまま発射威力に比例する恐るべき飛び道具。
無論、俺が使えば凶器。否、兵器となる。
「へぇ~・・・こんなモノがねぇ~
小さいけど、なんだか精巧な作りをしてるし、確かになんか凄そうかも。
ねぇ、ちょっと使って見せてよ!」
おっ、エリナは興味しんしんだ。
ならば、
「ええ、かまいませんよ」
見て驚け、俺の超ビー玉砲を・・・
俺は、20メートルほど先にある大岩に狙いをつけ、
---ビーファイトォッ!
瞬間、
ドグォァッ!
轟く爆音。
そして大岩は木っ端みじんに吹き飛んだ。
「・・・・・・」
エリナは口を開いたまま言葉を失っている。
見たか! ビーダ○ンの、いやジャパニーズホビーの実力を!
ジャパニーズホビーがその気になれば、ファンタジーにおける魔法だの聖剣だの魔剣だの足元にも及ばない。
ジャパニーズホビーのもう一つの代表格、最新テクノロジーによって生み出されたベーゴマにいたっては、科学の力によって聖なる獣の力を封じ込め、竜巻を起こしたり火炎を纏ったりできるのだ。
その力は現代兵器をも凌駕し、実際それらを用いて世界制覇をもくろむ悪の組織が存在するほどなのだ。
かつての俺もその話に心躍り、興奮したものだ。
・・・それが玩具メーカーと結託した、コロ○ロコミックの陰謀だったと知った今でも、その時の熱き想いは変わらず俺の心の中に在り続ける。
「す・・・すごいじゃない!
すごい魔導具じゃないの、それ!」
エリナからのウケも好評だ。
「すごい武器よ。
ね、ちょっと私も使ってみていい?」
相当に興味を興味を引いたようだ。
問題はないと思い、俺はビーダ○ンをエリナに渡す。
「いいですけれど、俺以外は使えないと思いますよ」
エリナは怪訝な表情で返す。
「え・・・なんでよ・・・?」
そしてエリナは俺がさっきしたように、ビーダ○ンをかまえてトリガーを押そうとするが、
「・・・くっ・・・!?
なによ・・・これ・・・
すごく・・・かたい・・・!?」
そう、このビーダ○ンはタダのビーダ○ンではない。
俺専用の超握力にも耐えきれるよう、特殊改造されている。
並みの握力では、トリガーが固すぎてビー玉を発射できないのだ。
ちなみに特殊改造を行ったのは、以前訪れた巨大魔導ロボなファンタジー世界でだ。
魔導と科学が高度に融合したという触れ込みだけあって、その技術力は確かに凄まじく、ビーダ○ンの魔改造くらい余裕でできた。
「どうなってるのよ・・・
何にも出ないわよ・・・これ・・・」
「言ったでしょう、俺以外には使用できないって。
これは悪用防止のために、俺の一族以外は使用できないように魔術的な処置が施されているんですよ」
もっともらしい理由をでっち上げる。
「そう、なら仕方ないわね・・・
あ、でも・・・」
エリナには、まだ何か思うところがあるのか・・・
「こんなすごい魔導具があるなら、なんで街で三人組に絡まれてた時、使わなかったの?
護身用なんでしょ?コレ・・・」
「・・・護身用とは言いましたけれど、見ての通り威力が強すぎて・・・
街中で使ったら被害が出てしまいますし・・・
流石に殺されようとしない限りは使えませんよ」
そう返す。すると
「・・・そうなんだ・・・
ごめんなさい。私あなたのこと、少し見損なってたかも知れない。
初めてあなたを見たときは、ちょっと情けないなんて思っちゃったけど。
あんな目にあっても、まだ周囲や相手のことを心配できるなんて、
そうそう出来ることじゃないわ。
ふふ・・・見直したわよ」
「いえ・・・そんなことは・・・」
流石に言葉に詰まった俺は、粉々に大破した大岩のあった場所まで歩く。
「ふふ・・・謙遜しちゃって・・・
って何してるの?」
俺は大岩の残骸の中からソレを拾う。
「弾ですよ。
これ特別製で5つしかないんで。
こうやって使用後は回収しないといけないんです」
そう、ビー玉も強化処置を施してあり、対象に当たっても壊れたりはしない。
ただ5つしかないため、使い捨てにはできないのだ。
「・・・・・・
スゴイけれど・・・
微妙に使えないわね・・・ソレ・・・」
「・・・護身用ですから・・・」
今回の話、コロ○ロコミック読んでなかった人には通じなかったかな?
読んでいた人になら、共感を得られるはず・・・かな?
次回、クエストの最中で・・・