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第6話 狂言と出会い

第6話投稿です。

今回、陽一のキャラクターを掘り下げてみました。

話はあまり進みませんが、新しい出会いがあります。

Side 御子柴 陽一




「おうおう、ニイちゃんよぉ!

 金だしな!金!」


「恵まれねぇオレたちによぉ、おすそ分けしてくんねぇかなぁ~

 ヒッヒッヒ・・・」


「ちょっとばかし顔がいいからってよお、調子こいてんじゃねぇぞっ!」


ギルドへ向かおうと外に出た俺だったが、なぜか三人組のチンピラに絡まれていた。

真昼間の街中、当然まわりには人も多いが、みんな遠目に見ているだけで関わろうとしない。見て見ぬふりだ。


しかし哀れなチンピラたちだ。


確かに俺は、見た目あまり強そうには見えない。否、見せない。

百戦錬磨なオーラを発したり、悪魔も逃げ出す鋭い眼光もない。

体格も背は高いほうだが、ぱっと見は華奢。


無論、着痩せしているだけで、実際は極限まで絞り込まれた高密度の筋肉鎧で全身覆われている。

大型モンスターですら肉弾戦で屈服させることができるのだ。



そういうわけで現在、実際の構図としては


【 一匹の恐竜() VS 三匹の蟻(チンピラ) 】


というイジメのような状況になっているわけだ。

無論、まわりで気付いている者などいないだろうが。



そういうわけで恐竜()が、(チンピラ)に対して取る行動は



「スイマセンでしたっ!お金もってませんっ!カンベンしてくださいっ!」


「ほらっ!ほらっ!ほらっ!」と体を揺すって、金などないことをアピールアピール。

財布は装備と同じく俺専用の亜空間にしまってある。

遠巻きに見ているまわりの人たちはみんな、そんなヘタレな俺に同情しつつも、情けないモノを見るような視線だ。



なぜに恐竜()(チンピラ)にこんな態度を取っているのか?


格闘技習っているくせに不良が怖い、のような腑抜けた理由からではない。

「人類皆友だち、話し合えば分かる」なんて平和主義な(オメデタイ)ことも、口が裂けても言わない。

だったら森で追い剥ぎして奪った、お前が着ているその服は何ぞや? となってしまうからな。



理由は簡単。人目に付くところで必要以上に目立ちたくないから。



ここでチンピラをノシてしまうのは実に簡単だ。それこそいつでもできる。

しかし実際として俺には害がない。あるわけないのだ。

チンピラが俺にどんな罵詈雑言浴びせようが、殴る蹴るなりしようが、俺には痛くもカユくもない。

適当にボコられるふりして、痛がるふりして、やり過ごすことだって簡単だ。

これも圧倒的強者だからこそ、選べる選択肢の一つ。



強いのならば、力にモノを言わせて・・・というのも選択肢の一つではある。

しかし、今の俺は別に世界征服をたくらむ魔王とか、世界を滅亡させんとする破壊神ってわけじゃない。


単純に強さだけがモノを言う森での生活では一切遠慮しなかったが、文明社会にいる間はそうはいかない。

俺だって最低限の節度はもつ。

激しいツッコミで友人を病院送りにしたり、ウッカリで建物を半壊させちまうようなインモラルなマネはしない。


進んで他人を助けようとは思わないが、恨みを買って社会からはじき出されようとも思わない。

余裕があれば人助け、それいう生き方ができれば人生勝ち組だ。


そのためには極力一般モラルに抵触しないよう努めるつもりだ。

いくら力を持ってるからって節度をもたない者には、文明社会の恩恵を受ける資格はない。

うまい飯を食う、温かい風呂に入る、ニコ動で笑う・・・etc・・・


そういうわけで文明社会で度を越えた事をして、必要以上に目立つのはNG。



だからといって、こんな狂言まがいの事までする必要があるのか?

そう聞かれれば必要はないが、狂言を演じるのは、もはや俺の習性みたいなモノなのでしょうがない。



それは過去の異世界召喚において、魔王として世界制覇の際に染みついたこと


-擬態能力


実際より弱く見せ、無能を演じる。

敵対している相手から侮られる。過小評価される。

実際とはかけ離れた自分の虚像を信じ込ませる。

様々な思念と陰謀渦巻く世界において、それがどれほどありがたいファクターとなることか・・・


歴戦の戦士などがよく言うセリフ


---雰囲気や眼で強いか分かる?


---馬鹿言っちゃいけない!


真の強者、それも狡猾な者ほど、自分の実力を敵に悟らせないものだ。

強さなど実際に戦ってみなければ、本当に最後まで分かるものではない。

何も『感じさせない』相手こそ、最も油断してはならなのだ。


可愛らしい外見の妖精さんに惹かれて、フラフラ近づいたら凶悪な本性を現してガブリッ!なんてよく聞く話だ。

流氷の天使クリオネなどまさしくそれ。

衝撃であると同時に、あの擬態能力にはつくづく感心させられる。


常時、俺TUEEEオーラを周囲にまき散らす者など論外だ。

相手に警戒してくださいと言ってるようなものだ。

身の運び方から「こいつは只者ではない・・・」など思わせるのもNG。


勇者のように武勇や名誉をステータスとする武人にとってはそれでいいのだろう。

しかし世界征服を為す魔王は、常に様々な可能性に備え、時には効率的に相手を罠にはめなければならない。

力技で全てまかり通るほど、世界征服は簡単ではない。


俺が倒した魔王の中には、魔王自身はただのクグツ、本体はその腕に抱いている黒猫だった、なんて強かな者もいた。

ぬこ好きの俺は当然苦戦した。


そういうのが身に染みてしまった俺だ。


力なんてものは、必要な時、必要な場所で、必要な分だけ使えばいい。


「おうおう、なんとか言えよニイちゃんよぉ!」


目の前のチンピラに、その必要あるのか?そんな価値あるのか?


否だ。



そういうわけで現在、俺は自分が思いつく限りの弱者(ヘタレ)を演じている。


正直ここまでやるのは自分でもやり過ぎだとは思う。

しかし、これが存外に楽しかったりする。くせになりそうだ。


チンピラからは好き勝手に粋がられ、まわりからは白い目で見られているこの状況。

それを楽しいと思えるのは、決して俺がマゾヒストだからではない。

周囲が自分の思い通りの虚像を信じている。すなわち自分の掌で踊っている。

その状況が楽しいというだけだ。

ヘタレを演じるその一方、内心で俺は吹き出していた。

大事なことだからもう一度確認するが、俺はマゾヒストではない。



そうしてチンピラと周囲をおちょくって遊んでいるところへ、突然女の声がした。


「やめなさい、あなたたち!

 たった一人に三人がかりなんて、はずかしくないの!?」


見ると、そこには上半身に鎧、腰に剣を差した冒険者風の少女がいた。




Side とある冒険者少女




私の名はエリナ。17歳。

今は冒険者をしているが、実は勇者。

私の兄も勇者であり、8年前に魔王討伐の任務で魔王の本拠地に乗り込んだが、そのまま帰らぬ人となった。

私は兄の意思を継ぐため、必死に剣の修業を積み、国から次期勇者と認められた。

まだ正式には発表されてないから、私の事を勇者だって知っている人はほとんどいないのだけれども。

今はモンスター討伐を行いながら、来るべき魔族との対決に備えて武者修行中。

露銀も尽きてきたし、近くの町に寄ってギルドでクエストでも受けようかと思って歩いてたんだけど・・・


「なにかしら・・・」


見ると、町の通りで大勢の人が立ち止って何かに注目している。


何事かと思って私もそれを見てみると、


いかにも荒くれ者の三人組の男が、一人の男の人に因縁をつけていた。

三人組の言い分は、金が欲しいから寄こせだの、顔がいいからって調子にのるなだの、実に身勝手なもの。


対する男の人は


「スイマセンでしたっ!お金もってませんっ!カンベンしてくださいっ!」


と、自ら体を揺すって、お金がないことを必死にアピールしている。

怖いのは仕方ないとしても、あれは少し情けないと思う。


それにしても


(黒髪なんて珍しいわね)


珍しいというか、初めて見た。

珍しさも相まってか、黒髪の男の人をついマジマジと観察してしまう。


歳は私と同じくらいか、顔立ちは整ってて理知的な感じがするけど、少し頼りない感じもする。

身長は高いけれど、見るからに華奢で強そうには見えないし。

実際、三人組に絡まれてあたふたしてるところなんて見ると特に。



しかし、こういったイザコザを見ていて思う。


「・・・人間みんなが一つになって、魔族と戦わなきゃいけないって時なのに・・・」


人間が決死の覚悟で魔族に戦いを挑もうとしているっていうのに、

瑣末ごととはいえ、一方でこんなことをする人たちがいるなんて・・・


とうとう帰ってこなかった兄や、これから戦いを控えている私は一体何なのだろうと悲しくなる。



見ると黒髪の男の人は三人組にまだペコペコしている。

三人組はそれをいいことに、さらに勝手な言い草で青年に絡んでる。


(まわりの人たちだってそうよ。見てばっかりいないで助けてあげればいいのに・・・)


目の前で困っている人がいるというのに、それを見て見ぬふりする人たちも・・・


だから


(もう見てられない)


私は周囲の人たちを押し分け、そのイザコザに割って入った。


「やめなさい、あなたたち!

 たった一人に三人がかりなんて、はずかしくないの!?」


私に気付いた三人組は、


「なんだぁ~?

 ネエちゃんよぉ~!」


「おい、結構な上玉じゃぁねぇか!」


「俺たちと一緒にイイコトしねぇかぁ?

 ひゃはははは!」


最低・・・

私はこんなヤツらを守るために勇者になったんじゃない・・・


不快感に私は思わず顔をしかめる。


「こいつを助けて欲しかったらよぉ!

 ・・・ネエちゃんにオレたちの相手してもらおうじゃねぇか!」


そう言い、三人組の一人の男が私に手を伸ばしてくる。


・・・もう限界だ。


私はその手を払い、そのまま男の腹に膝を叩きこんだ。


「うげぇぅっ!」


男の体はくの字に曲がる。


「ッ!?」

「テメェ!?」


残りの二人が身構えるけれど、


「・・・」


私は鞘からスラリと剣を引き抜き、


「そっちがその気なら、私も容赦しないわよ・・・」


目を細め、殺気を込めて、低い声で言い放つ。

力で脅すのは好きじゃない、けれど言っても聞かないならこうするしかない。


「ぐっ・・・」

「くっ・・・」


男たちは顔を歪ませる。

私の目が冗談でないことを悟ったのだろう。


「お・・おい、行こうぜ・・・」


「「・・・ああ」」


男の一人がそう言うと、膝をいれて悶え苦しむ男を引っ張り、三人組はその場から立ち去った。


「・・・ふぅ・・・」


一息つき、私は抜いた剣を鞘に戻す。

とたんに、まわりから一斉に歓声がわく。

・・・ゲンキンな人たち・・・


私は周囲に呆れながらも、助けた黒髪の男の人に声をかけた。


「大丈夫?怪我はなかった?」




Side 御子柴 陽一




チンピラに絡まれてたら、冒険者風の少女が割って入って、チンピラ達を追い返した。

そして少女は俺に話しかけてきた。


「大丈夫?怪我はなかった?」


ふと、その少女の容貌を再確認する。


金髪碧眼。美少女。歳は俺とそう変わりなさそうだ。

軽装の鎧。腰に剣を携帯している。


どうでもよいが、上は鎧着てるのに下はスカート。それもミニ。


これはあれだろうか。

ヒラヒラさせて視線をくぎ付けにして、その隙にバッサリ斬ろうって腹積もりなのだろうか。

そうだとすれば、なかなかの策士である。


現に、チンピラの一人に膝蹴りをいれた際、チラッと見えた。白いのが。


その瞬間は、(レンズ)から送られる視覚データを、画像処理エンジンと化した並列思考(マルチタスク)が受け取り、画像化して俺の脳内フォルダに保存してある。

最新デジカメにも劣らぬそのスペックは、高画質、瞬間10枚の高速フレームレートを実現させた。


なるほど、常人ならば画像処理に思考を全て占有され、フリーズしている間にバッサリ斬られるところだろう。

しかし、あいにく俺は並列思考(マルチタスク)、その手は喰わない。


残念なのは俺の頭がUSBにもSDカードにも対応していないこと。

これではパソコンに取り込むことも、プリンタで印刷することもできない。



そんなどうでもよいことで落ち込んでいると、冒険者風少女はムッとした表情になる。


「・・・あなた、いちおう助けてあげたつもりなんだけど、お礼の一つも言えないのかしら?」



おっとイカン、俺は助けてくれた(?)冒険者風少女に礼を言う。


「ああ、ごめん。

 困っているところを助けてもらってありがとうございます」


初対面の相手には基本敬語になる俺。


「ん・・・よろしい・・・」


冒険者風少女はニッコリと満足げにうなずき、俺に聞いてきた。


「ところでこの町のギルドに行きたいんだけど、あなた場所を知ってるかしら?」

わたくしの好きな主人公像は「能ある鷹は爪を隠すタイプ」です。

そういうわけで、陽一もそんな感じにしたかったんですが、まるっきり狂言ですね。少し違ってしまったかな?


ちなみに本当に私の理想とする主人公像は以下のような感じです。


主人公は普段は寡黙で温和。武闘派よりも知性派の面が強い。知的クールって感じ。普段はあまり目立とうとしない。

強大な敵が現れ、その絶望的な状況に味方はすべて沈んでしまい、もうダメかというなかで、主人公一人だけテンションがダダ上がり。

普段では見せないような気迫と強い口調で奮い立ち、「なめんじゃねぇ~!」とばかりに強敵を撃破。

その変貌ぶりに味方は唖然としながらも、その力強さに惹かれ、勇気づけられる。


まさに英雄~って感じしませんか?

グレン○ガンのシモ○が近いです。彼は漢って感じがしますね。


本来なら陽一もこんな最強主人公にしたかったのに・・・

どこで間違えてしまったんだ・・・

まあ、コメディだしね・・・


そういうわけで、文才のないわたくしの代わりに、こんなカッチョイイ最強主人公を誰かぁ~書いてくださ~い!


次回、いよいよギルドに

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