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第5話 俺とぬことオバちゃんと・・・

第5話投稿します。

今回、ようやくヒロイン(?)登場

Side 御子柴 陽一




先日、俺の前に神様が現れ、人間と魔族の争いを止めさせてくれと頼んで行った。

つい流されて受けてしまったけれど、考えれば考えるほど困難な内容だ。

今さらながら鬱になってきた。


俺はそんな鬱憤を晴らすかのように、目の前の女体にむしゃぶりつく。


『フニャャャャァアン・・・』


女の胸に顔を埋め、熱い息を吐きかけると可愛い声で反応する。

ふっ、可愛いヤツめ・・・



・・・バレバレかもしれんし、ネタバレといこうか。



女の名はタマ。猫女。すなわち雌猫。

白い毛並みが美しいスラッとしたお嬢ちゃんだ。


俺が下宿している宿屋のオバちゃんが飼っている猫。

オバちゃんはエリザベスなんていかにもゴージャスな名前を付けているが、どう考えてもこのシンプル・イズ・ベストの美猫には似合うと思えない。


そこで俺は勝手ながら気軽にタマと呼ばせてもらっている。

本猫(?)もそれを気に入っているようだ。


そもそもオバちゃん、どんな願望をもってエリザベスなんて名付けたんだ。

エリザベスなんていかにもブルジョワな名前付けて、この猫に何を求めたいんだ・・・?



話は戻るが俺は大の猫好きだ。

それはもう心の底から愛している。


ファンタジーでは定番の猫耳獣人娘なんぞ邪道。

やはり本家本元の猫の可愛さには到底かなわない。

猫耳と尻尾が付いてるだけで、猫の素晴らしさを継承できてるなどと思ったら大間違いだ。

あのクリッとした大きな目、ω形の口元、そしてあのフニャフニャとした表情が何より可愛いというのに・・・


『猫耳、だがそれが良い』なんて言っているヤツらは、そもそも現実を見ようとしていない。

どんな美女・美少女・美幼女も必ず歳をとる。彼らはそのことを理解しているのだろうか?

シワくちゃのバアちゃんが猫耳とか痛いだけだろうが・・・


その点、本家本元の猫は歳をとっても変わらぬ愛らしさがある。

どんなに歳をとっても、猫は変わらず可愛いのだ。


あまりの愛の深さゆえ、以降は「ぬこ」と呼ばせてもらう。

ぬこのためならどんなことでも出来る。


それを証明すべく俺はタマの尻尾を持ち上げ、剥きだしになった尻に鼻をくっつけ、スンスンにおいを嗅ぐ。スルメのようなにおいがする。


ギョウ虫? 何それ? おいしいの?

こんな可愛いぬこの尻に寄生虫なんて巣くっているのか?

たとえ居たとしても、ギョウ虫だろうと回虫だろうとサナダムシだろうとエキノコックスだろうと恐るるに足りん。

寄生虫ごときに屈していては、俺はあの森はおろか、これまでの異世界で生きていくことなどできなかった。

ぬこ好きたる俺が、居るのかさえ分からん寄生虫に怯え、目前のぬことのスキンシップを放棄するなどあり得ない。


ほら、言うだろ?


【 おケツに入らずんば虎子を得ず 】


だっけ?



『フシャァーッ!?』


流石に尻は不快だったのか、タマは身をよじりながら俺を威嚇する。


ぬこ語は分からないが、視線や鳴き声から気持ちが分かるほどに、俺はぬこに精通している。

ぬこ検定なんてものがあったら、俺はどれほどの高得点をマークできるだろうか。


タマの視線は


『コラーッ!少しは手加減しろーっ!』


と訴えているが、


「手加減って何だ?」


まったく俺は聞く耳もたん。うざいと思われようとこの湧き上がる愛情、何らかの形で表現せずにはいられない。

『目に入れても痛くない』という言葉がある。俺もぬこなら目に入れても痛くはない。

しかし実際問題として目は物理的に不可能だ。失明しちまう。


よって


「あーっんぐっ」


大きく口を開き、その小さな頭ごとタマの愛らしいお顔を、俺の口の中にスッポリ入れる。


『ニビァアァァァァァ・・・・』


タマは驚き、前足をジタバタさせて暴れる。

構わず俺は歯を立てないよう気を使いながら、タマの頭を甘噛みする。


あー・・・至福の時だー・・・



そこへ


「なーに馬鹿なことやってんだいっ!」


俺の至福の時間に水を差す怒鳴り声が。


「あんたってヤツァ~ッ!・・・・・(怒)

 うちのエリザベスに、また変なイタズラしてっ!

 おーヨチヨチ・・・・エリザベスちゃーん!

 コワかったでちゅよねー?」


声の主であるオバちゃんは、俺からタマを取り上げて、赤ん坊をあやすように抱いている。

タマは助かったという表情をしながらも、ウザそうな目をオバちゃんに向けている。器用だな。


どうでもいいが、いい歳して赤ちゃん言葉とかやめて欲しい。

まあ同じぬこ好きとして気持ちは分かるがな。

他人に見られなければ俺もこれぐらいはやる。


オバちゃんの名はセリーヌさん。

俺の下宿しているこの宿の女主人。

見ての通り、俺のタマに勝手にエリザベスなんて名前を付けて溺愛している。


見た感じは恰幅の良い、肝っ玉かあちゃんといったところ。

これまた外見と名前があっていない。


オバちゃんの親は、どんな願望をもってセリーヌなんて名付けたんだ。

セリーヌなんてどこぞの姫様みないな名前付けて、このオバちゃんに何を求めたかったんだろう・・・?



テンプレだったらここで、


『なーんか失礼なこと考えてないかい?』


なんてオバちゃんが睨みつけてくるんだろうけど。

そこは俺、思考と表情を直結させるなんて初歩的な失態など犯さない。

何事もなくやり過ごす。



タマをあやしながらオバちゃんは言う。


「ところであんた!こんないい天気なのに昼間っからなに引きこもってんだいっ!

 若いモンなら若いモンらしく、

 外に出て働いてくるなり、遊んでくるなりしてきたらどうなんだい?

 黒目黒髪ってのは見たことないけど、あんた素材は相当いいんだし、

 彼女の一人や二人すぐにできるかも知れないよ?

 あたしも若い頃はねぇ、この宿の噂の美人看板娘として、

 そりゃぁもう沢山の男から言い寄られて困ったもんさね!」


それが本当の話なら、時の流れとは本当に残酷だ。

かつての美人看板娘・セリーヌさんとやらはもういない。次元の彼方にでも消え去ってしまったのだろう。


無論、そんな内心を悟られるようなヘマはしない。


「それでなくともさ、しばらくこの町に滞在するってんなら職に就かないとさ、

 このさき不安だよ。

 若いんだからさ、元気に動けるうちに働いて稼いどかないと。

 あんたみたいに昼間っから部屋に閉じこもって蓄えを切り崩す一方じゃさ、

 そのうち金も尽いちまうよ。

 定職に就く気がないんだったら、定期的にギルドでクエストを受けてみたらどうだい?

 この町を訪れる冒険者たちは大抵そうしているよ」



うーん、そうだなぁ・・・


実際のところ金には困っていない。

この宿を確保する前、以前森で追い剥ぎして奪った武器・鎧。

あれを売ったらすごい額の金が手に入った。

それも売り払ったのは美形男の装備一式のみ。

買い取ってもらおうと武器屋の主に鑑定してもらったところ、10万G(ゴールド)(日本円にして1000万円相当)になったそうだ。

なぜにそんな高いのか聞くと、鎧と剣はどちらも高度な魔術的強化処置が施されており、その性能はピカイチなのだと。

武器屋の主は興奮しつつも、とても買い取れるような額ではないとガッカリしていた。


俺としてはとりあえず手元に早く金が欲しかったので、破格の五分の一である2万G(ゴールド)で買い取ってもらうことにした。

武器屋の主は「えっ?いいの?本当にいいの?」とさらに興奮して何度もしつこく聞いていた。


そんなわけで装備を売却して手に入れた額は2万G(ゴールド)、日本円にして200万円。

物価の高い日本でだって、これだけあれば2年は暮らせる。


とりあえず3ヵ月分の宿賃も先払いしてある。

特に金の心配もないからダラダラしていた。

なくなったら、別の装備一式を売り払えばいいし・・・

装備を売るたびに騒ぎになりそうだから気が進まないけど・・・


あっ!そうだ!他にも方法があった!


「名案がある。町の人全員から1人あたり1G(ゴールド)ずつぐらい恵んでもらえば・・・・」


この町の人口が5000人ほどだったから、合計5000G(ゴールド)にはなる。日本円にして約50万円。半年分ってところか。


「馬鹿なこと言ってないで、とっとと外に行ってきな!

 あんたに弄ばれてエリザベスも迷惑してんだよ!」


悪くない方法だと思うんだけどな・・・

日本だったら国民1人あたり1円ずつ徴収したら全部で1億円超えるんだぜ。

恥も外聞も捨てて頭下げれば、うまく全員から恵んでもらえかもしれない。たかが1円だ。

あとは時間と根気の問題だけど・・・

こんな金儲けの方法を考えたことがあるのは俺だけではないはず・・・・・・だよな?


エリザベス改めタマもヤレヤレという視線を俺に向けてくる。

おおタマよ、お前もか・・・


まあ、いいか!

気分転換も兼ねてギルドに行ってみよう。

神様から厄介な仕事を押し付けられ、いい解決案も浮かばず、途方に暮れていたところだ。

新しいことをすれば、ある時、突然名案を閃いたりするかもしれん。


そんなことを考えながら、タマとオバちゃんに見送られ、久しぶりに宿の外へ出たところで・・・・・・ふと気が付いた。


某何十年も歳をとらない海の幸な7人家族。


そこのペットも白猫でタマという名前だったと。


・・・図らずもかぶってしまってたのだと。orz

猫耳属性の皆様、不快にさせてスミマセンでしたっ!

ケンカ売っているわけではないんですぅ!


陽一のぬこに対する愛情表現は、わたくしの願望を投影したものですが、少々行き過ぎてしまった感があります。

わたくしは普通に猫耳獣人娘よりも、某ハンティングアクションゲームのア○ルーとかメ○ルーに萌えるほうです。


好きなぬこ属性はヘタレ。わたくしのユーザーネームもそれが由来です。


次回、陽一はギルドに向かうが・・・

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