第29話 動き出す暗黒神
第29話、投稿します。
今回の話は少し短め……
Side 人間国ヒューマニア国王
「し、信じられん……
こんなこと……あるはずがない」
一体なんなのだ、これは……
これは本当に現実か?
「余の城が……
余の街がぁ………!?
余の国がぁぁっ………!!??」
壊されていく。
天を突くほどの……山のようにでかい巨人が、余の全てを破壊していく。
突如現れた巨人……漆黒の鎧を纏ったかのような、まるで全身を闇で染めたようなナニカが、
余の所有する全てを踏み潰し、叩き壊し、凄まじい閃光を放ち焼き払っていく。
-アレは本当に何だ!?
-兵器用のゴーレム?
-馬鹿な!? あれほど巨大なゴーレムなどあり得ない!!
唐突に巨人が余の方を向いた。
そしてその眼が赤く光った。
「ひいっ!!??」
あの巨人は余を見ている。
そしてその巨大な手を余に伸ばしてきた。
「ひいいいいいいいいいいぃっ!!!???」
-なぜだ!?
-あの巨人はなぜ余を見ている!?
-なぜ余を捕らえようとするのだ!?
逃げようとするも体はピクリとも動かず。
「だ、誰かっ!
余を護れっ!! 助けろぉっ!!」
しかし誰も助けに現われず。
-どうしてだ?
-余は王だぞ。
-余を護る駒がいる筈だ!
巨人の手はどんどん迫って来る。
「よ、余を誰だと思うておるっ!!??
ヒ、ヒュ、ヒューマニア国王であるぞっ!? 人族の王であるぞっ!?
い、一体、余が何をしたっ!!??」
巨人の手が影を落とし、余を覆い尽くす。
底なしの闇が目の前に来た。
「あぅあああぁっ……ああぅぅあああうあああっあああああっ!!??」
……………………………
「ッ!!??」
ゆ、夢かっ!?
目が覚めるとそこは余の寝室。
そうだ、あんな事が現実に起きる筈がない。
一体なぜ、あんな夢をみたのか
"私は貴様に、未来を視る幻の拳を放った"
未来だと?
さっきみた夢が未来だとでもいうのか?。
……フン、まさかな。ミコシバのハッタリに決まっておる。
それにしても生々しい夢だった。
黒い巨人……あんなモノがこの世に存在する筈ないというのに
"人々の心が荒廃しその叡知が途絶えた時、暗黒神ダークマターは降臨する"
……まさか、いや、そんなはず
"その時こそ世界の終わりと知れ!"
「ええい、黙れいっ!!!」
ガチャンッ
投げた花瓶が壁に当たり、粉々に砕ける。
「おのれぇっ!
ミコシバめぇええっ!!
全て貴様のせいだ!!!」
あれこそが全ての元凶。
下賤の分際でエレノワを怯えさせ、ピエトロに怪我を負わせ、あまつさえ余にふざけた夢をみせおって……
好き放題やった挙句、煙のように余たちの目の前から消えてしまいおった。
見ておれ……
魔王を討伐し魔族ども皆殺しにした後は、草の根を分けてでも貴様を探し出し、
死んだ方がマシと思えるほどの地獄を味あわせてやるぞ。
余に逆らったその愚かさ、死ぬほど後悔させてくれる。
Side ???
……またか。これで何度目だ。
我が創りしこの世界、それを他ならぬ我の手で原初の形に戻すのは……
しかし、これこそが我が存在意義。違えられる事はない。
我の目的は知的生命の成長を促し、その叡知をより高次へと導く事。
そのためには知的生命の有する文明、その進化の過程を解析する必要がある。
その膨大なデータを得るために、我はその無限といえる時間を使い、
幾度も世界を創造し、また滅ぼしてきた。
ひとつ確実に言える事がある。
それは文明の進化に必要な鍵は共存と争いであるということ。
異種族・異個性が集まって社会を形成し、時に共存し時に争う。
相互に干渉する事により社会は変動していき、歴史の中で文明として成長していく。
蟻や蜂のような単一種族・無個性が支配する変動無き社会では、文明が進化する事はあり得ない。
そして進化の過程に見られる最も多い失敗。
それは争いに偏り過ぎる事で文明が停滞するケース。
今回もそうだ。
人間という種と魔族という種の二つが争い、文明の進化が阻害されている。
進化の見込みのない文明は抹消し、速やかに次の進化を模索しなければならない。
今までそうしてきた。
失望などせぬ。
何故なら、それこそが我が唯一の行動原理
「………イチ」
…………そして我が唯一の存在意義
「ヨウイチ!」
………
「聞いておるのか? ヨウイチ。
さっきから一人で何をブツブツと言っておるのだ?」
「ミャーーン」
「いや、何でもない」
……いえね? 次の役作りのためにちょっと練習してたんだけど、
それを正直に話したら、また厨二とか言われるんだろうな。
「話を戻すぞ。
言われたとおりに妾の精神感応能力で、
おぬしの頭の中にある妄想を人間国の王に夢として見せてやった。
しかし、そこから一体どう行動をとるつもりじゃ?」
「ミャーーーー!」
前回、折檻のつもりで国王に放った『未来予知拳(?)』だったが、本当に俺に未来を視せる能力などない。
元々は神であるぴよしに頼んで、俺の脳内イメージを国王の脳に送って来るべき日の布石とするつもりだったが、肝心のぴよしが用事出来たとかで留守。
途方に暮れていたところ、精霊であるアリビアにも同様の事が出来る事が判明。
そういうわけで夜中に国王の寝室に空間跳躍で侵入し、俺の妄想で国王の脳内を毒してやったというわけだ。
「あんな夢をみせたところで、所詮妄想は妄想。
むしろ、おぬしが怪しげな術でも掛けたのではと疑っておるのではないか?」
「ミャーーーォン」
まあ、そんなところだと思う。
あの国王、今ごろ俺にカンカンに怒っているだろうな。
しかし、それも長くは続きはしない。
なぜなら、あの夢はすぐに現実となるからだ。
「その説明も兼ねるとして、実は二人(?)に見せておきたいモノがある」
「?」
「ミャ?」
二人とも俺の身内だし、そろそろ手の内を明かすとするか。
「こ、これは!!??」
「ミ"キ"ャ"ーーーーッ!!??」
ここは圧縮空間。
いくらでも持ち物を収納しておける便利空間。四次元ポケット的なモノ。
俺の全所有物はこの空間内をプカプカ漂っている。
俺が二人に見せたいもの……俺の切り札もここに在った。
「これは夢に出ていた……まさか……」
流石にコレを見れば驚愕せずにはいられまい。
そして俺がやろうとしてる事が理解できるよな?
「そう、そのまさかだ。
コレを使って、全世界を恐怖のドン底に叩き落とす」
そのためにあんな怪しげな恰好して、似非布教活動をやったんだ。
みんな信じちゃいなかったけど、これから俺が予言した事が現実となる。
何せ俺が実現させるわけだから……まさに自作自演。
「ほ、本気か? ヨウイチ。
コレは流石に反則というか……
本当に世界を滅ぼせるのではないか?……コレ」
「ミャァ……」
多分ガチで滅ぼせますとも。
目一杯手加減しないと、本当にやり過ぎてしまうだろう。
コレの力を存分に見せつつ、被害を最小限に抑える。
……これも結構、骨が折れそうだ。
「決行は魔族軍が人間国に侵攻したタイミング。
その時こそスーパーダークマタータイムの始まりだ」
次に俺が演じるのは神であり悪魔。
少し緊張してきたぜ。
Side 黒猫 シュレディンガー
たたたたた、大変ニャ大変ニャ。
あああああ、悪の帝王ニャ。
悪の帝王がとうとう本性を現したニャ。
世界を恐怖のドン底に叩き落とすって言ってるニャ。
ぼぼぼぼぼ、僕はとんでもない奴に捕まってしまったニャ。
ごごごごご、ご主人様~~~
助けに来てニャ~~~~~~
ついに本性(?)を現し、ラスボスポジションに就任した陽一。
次回……まだ構想中。
……とそう言えば、陽一に毛生え薬を提供してくれてもいいって方がいらっしゃいました。別世界の方らしいんですけど……
これは神の慈悲なのか、それとも悪魔の囁き!?(←失礼)
ナミヘイさんの幸せを考えるなら、すぐにでも受け取るべきですよね!?
現実の方の都合で、次の投稿はけっこう間が開いてしまうと思います。