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第28話 必殺、未来予知拳!!

続けて第28話、投稿します。


サブタイトル、意味不明……

Side 御子柴 陽一




「おおぉ、待っておったぞ。ミコシバよ。

 さあ、席に座ってくれ」



メイドさんに案内されて入った部屋には、既に食事の用意がされていた。

食卓の椅子には国王、エレノワ姫、そしてピエロ王子が座って待っていた。

部屋の広さに反して食卓の広さは小さめで、座っている全員の距離は随分と近い。

おかげで所狭しと並べられた料理は豪勢ながらも、随分とアットホームな感じがする。



「愛娘の足を治してもらったのだ。

 一人の父として改めて礼を言わせてくれ。

 そして家族全員で感謝の意を示したい」



感謝の意……の割にはピエロだけは随分と面白くなさそうだ。

妹の足が治った事は嬉しいが、俺みたいな怪人物がもてはやされるのが気に入らないのだろう。

ピエロの性格からすれば、そりゃ不機嫌にもなるだろうな。


そんなピエロを余所に楽しい(?)お食事会は開始され、俺はご機嫌な国王とエレノワ姫に質問攻めにされた。



「ほう、ではミコシバは幼少のころより勉学と修練に明け暮れ精進してきたのか。

 若いのに大したものだ」


「ミコシバ様は大変な努力家ですのね。

 わたくしも見習いたいですわ」



二人の関心はやはり俺の経歴にあるらしい。

今の俺は賢者であり、しがない修行僧という設定だ。それに気を付けながら適当な経歴をでっち上げる。

でっち上げは今や俺の十八番と言ってもよい。



「大した事ではありません。

 それしか能のない不器用な人間にございます」


「フフ、ミコシバ様ったら謙虚なお方♪」


「うむ、その謙虚さもそちの美徳であるな」



国王もエレノワ姫もさっきから俺を褒めちぎりまくり。

その度にピエロは憎々しげに俺を睨んでくる。


楽しい食事の席なのに、一人だけ会話に参加できないで可哀想……なんて同情したりはしない。

せっかく妹を治してやったのに、感謝するどころか突き飛ばしやがった事は今も忘れていない。

些細な事とは分かっているのだが、アレは何気に気に障った。

そこでせいぜいジェラシー感じてろ、馬鹿め。



「実はな、ミコシバ。

 そちを見込んで頼みたい事があるのだ」



突然、国王が真摯な面持ちで話を切り出してきた。

話の内容は予想できる。そもそも一つしか思い浮かばない。



「勇者への勧誘……の事でしょうか」



長々と前口上を語られたりしても時間の無駄である。

俺の口からズバリ本題を提示してやる。



「ふむ、すでに勇者ファヴから聞いておったか。それならば話は早い。

 ミコシバよ、我々には力が必要だ!

 そちに勇者として魔王討伐に加わってもらいたい」



国王の頼み事は予想通り、俺を勇者チームの一員として迎え入れたいという事。

ファヴやリーズが言った通り、この国王の前で力をひけらかしたせいですっかり目を付けられてしまったようだ。

実力主義というのも相手によっては厄介である。


エレノワ姫とピエロは、この件を知っているのだろうか?

ふと、二人の様子が気になった。


エレノワ姫は、まるで祝福しているように柔和に微笑んでいらっしゃる。

対してピエロは、忌々しそうに鼻を鳴らして心底面白くなさそう。

対極の反応と言えるが、二人ともこの件について(あらかじ)め知っていたようだ。



「……国王陛下。

 私はとある事情により、陛下の頼みを聞くことはできません」



予想していた頼み事に対し、用意していた答えを返す。


エレノワ姫とピエロは驚いた表情。

一方の国王は「ほう?」と顎鬚をひと撫でするだけで、さほど驚いてはいない様子。



「貴様っ!! せっかくの父上のご厚意を無碍にする気かっ!?

 そもそも貴様ごとき下郎、父上と妹のお情けでこの場に居る事を許されているというのに…………」



何やらピーピー文句を言い始めたピエロを無視して、俺はなぜ勇者になれないのか事情を話した。


すなわち、この世界に存在するあらゆる種族はダークマターなる超存在によって創られた事。

ダークマターの目的は高次な知的生命の育成、そしてそれに至るための文明の進化を模索である事。

進化が停滞した文明は、ダークマターによって過去幾度となく滅ぼされてきた事。

人間と魔族との長きに渡る戦争により現文明が停滞し、過去の文明と同じく滅びの道を辿(たど)ろうとしている事。

そして滅亡を防ぐために、俺が人間と魔族との戦争停止を目指して活動している事。


それらを全て包み隠さず話した。……全部、俺の考えた厨二ホラ話だが。






「……そ、それはまた……

 なんとも奇抜といいますか……

 その……斬新な世界観ですわね?」



流石に今の話についていけなかったのか、上擦った声で感想を述べるエレノワ姫。

それでも俺の心証を害しないように言葉を選ぼうとしてくれるのは、せめてもの救いである。



「フン、馬鹿馬鹿しい。

 これだから下賤の者は……

 君の頭の中身を疑うね?」



ピエロも実に率直な感想を述べてくれた。しかしお前の意見なんてどうでもいい。

問題は国王が今の突拍子もない話をどう捉えるかである。


どのくらい突拍子ないかと言えば、元の世界で「宇宙人が攻めて来るから戦争を止めましょう」と言う事と同じレベルだと思う。

ましてやファンタジー世界の住人に、このどちらかと言うとSFっぽい設定は受け入れ(がた)いのではないかとも思う。

正直言ってまともに取り合おうとする方がおかしい。

ピエロのようにキッパリと突っぱねるか、エレノワ姫のように言葉を濁すかのどちらかだろう。


ゆえに国王が次に発した言葉は意外だった。



「ミコシバよ……

 その話が真実ならば、まことに恐ろしい事だ。

 そして全てを守り救わんとする、そちの志は果てしなく貴い」



顎鬚を撫でながら、落ち着いた様子で国王は言葉を続ける。



「長きに渡る人間と魔族との戦……余とて早く終わらせたいと思うておる。

 戦のために余を慕う民たちが疲弊し、果てていく様を見るのは耐えられん。

 そして魔族といえど命あり知性ある存在(モノ)

 戦わずに済むならば、ぜひそうしたい」


「しかしそれが不可能である事は、歴史が物語っておる。

 魔族は総じて強力な魔力を持ち、凶悪な魔獣をも使役する。

 一部の卓越した才能を持つ者を除けば、我々人間は純粋に力で劣るのだ。

 自然と魔族は人間を見下し、人間は魔族を恐れる。

 人間と魔族とが分かり合い、共に世界を築くなど土台無理な話なのだ!」


「もし本当に戦わずに済む方法があるならば、

 どんなにみっともなくとも余はそれに(すが)り付くだろう。

 しかし余とて為政者。

 全てを救うなど、現実には為し得ない事だと分かっておる。

 己の器も弁えておるつもりだ。

 余の手では……余の民を救うので精一杯なのだ」



そこまで語って己の両手を見つめる国王。

自分の手では人間と魔族の両方を救う事は出来ない。

彼の表情は己の無力さを嘲笑しているようでもあった。



「世界滅亡を回避する唯一の方法、

 それは余の代で魔王を討ち、その勢いで魔族を滅ぼし、速やかに戦争を終結させる。

 その後は人間の手で素晴らしき文明を、栄光の世界を築き上げる!

 さすればそちの言うダークマターとやらも、世界を滅ぼそうとは思うまい。

 どうだ? ミコシバよ」



……そうきたか。

俺の厨二設定も少し構想が甘かったかもしれん。

ダークマターなる超存在があからさまに戦争停止を訴えるのも不自然かと思い、

文明停滞 → 世界滅亡 の流れから、遠回しに戦争停止を訴えようとしたんだが……

まさに穴を突かれたといったところか。



「ミコシバ様、お願い……

 お父様にあなたの御力を……」



助けを請うかのように、エレノワ姫がウルウル目で俺を見つめてくる。

一昔前のアイ○ルのCMに出ていた某チワワみたいな、保護欲をそそる眼差しである。非常に心揺さぶられる破壊力だ。


だが、それでも言わなければならない。



「申し訳ありません、陛下。

 私が目指すのはあくまで人間と魔族とが共存する世界。

 ゆえに勇者に加わって、魔王を討つ事は出来ません」



いまさら設定の変更は出来ないし、こうなればと直球で信念を伝えてみた。

国王だって出来れば魔族も救ってやりたいみたいな事を言ってたし、全く通じないって事はないと思う。



「ミコシバ様、そんな……」


「貴様っ!? せっかくの父上の想いを踏みにじりおってっ!!」



エレノワ姫は悲しげに(うつむ)く。

ピエロは何やらピーピーほざいている。その言い方だと怪しく聞こえるからヤメレ。



「……そちはどうあっても、我々の勇者となってくれぬのか」



諦めかけたように、それでも一抹の期待を抱いているかのように俺の意思を確認してくる国王。



「はい。申し訳ありません」



俺に期待してくれたところ申し訳ないが、ここはキッパリ意思を示させてもらう。



「…………」


「…………」



数秒の沈黙の後、



「……そうか、分かった。

 ならば無理に誘いはせん。

 せっかくの礼の席ですまなかったな」



俺の最終意思を確認した国王は、それ以上勧誘するのは止めた。


そしてお食事会の再開となったわけだが、当然ながら気まずい空気になってしまった。

誰も一言もしゃべろうとはしない。

国王もエレノワ姫も表情は暗く、ピエロはその原因(?)である俺を俺を睨んでくる。


そんな鬱な空気ではあったが、内心で俺はホッとしていた。


なにはともあれ、これで俺の目的は達せられた。

人間国と魔族国の両王に、俺の厨二設定が伝える事が出来た。

ようやく次の段階に進めるというもの……



「あ……っ!?」



そんな事を思案していると、エレノワ姫がフォークを床に落としてしまった。

落ちたフォークは俺の足元に転がっている。


紳士気取りの俺は、テーブルの下を覗き込みながらフォークを拾うも



(あ……落ちたフォークは拾っちゃいけないんだっけ?)



こういった席では、落ちた食器は給仕さんに任せるのがマナーである事を思い出した。

気まずく感じながらテーブルの下から顔を出すと、



「クスクス……ミコシバ様ったら」


「ふむ、賢者といえどテーブルマナーは少し苦手だったかな」



案の定、エレノワ姫と国王に笑われてしまった。



「…………」



しかしピエロは何故か黙ったまま。こちらを見て唖然とした表情だ。

ピエロの性格ならば、失敗に(かこつ)けて俺に毒を吐きまくると思ったんだが……



「よいよい、いかに賢者といえど完全無欠とはいくまい。

 少しは失敗する方が人間味があるというモノではないか」



ピエロの様子も気になるが、

とりあえず気恥ずかしさを紛らわそうと、俺は手元のグラスを取ってワインを飲んだ。



「そう……どんな人間でも失敗はするものだ」



国王がそう呟いた瞬間、




……ッ!!!???




「フフフフフ……早速効いたようだな」



なにっ!?



「クスクス……速攻性のシビレ薬ですわ。

 先ほどミコシバ様がフォークを拾ってくださった隙に、ワインに入れておきましたの。

 早速、引っ掛かるなんて……お・ば・か・さ・ん♪」



なんだとっ!? どういうことだ!? エレノワ姫!!



「ち、父上? これは一体……」



俺同様に事態を呑み込めていない様子のピエロ。



「相変わらず鈍いですわね、お兄様。

 何のためにお父様が、わたくし達をこの席に呼んだか。

 まだ理解していらっしゃらないの?」


「ピエトロよ。 お前も余の後を継ぐ者ならば覚えておけ。

 欲しいモノはな、こうして手に入れればよいのだ」



ま、まさか……



「勇者ファヴより既に話は聞いていた。

 この者がダークマターやら世界滅亡やらの与太話を信仰している事をな。

 それで交渉が難航するであろう事は予想できたからな……

 交渉が決裂した場合のためにシビレ薬を用意しておいたのだ」


「そして身柄を確保した後は、薬でじっくり洗脳……ですわね? お父様♪」



じゃ、じゃあ……ファヴは最初から俺を捕まえるために……?



「勇者ファヴはこの事を知らぬ。

 あやつは余を聖人君子の賢王と信じておるからな」



まるで俺の考えている事を読んでいるかのように国王は語る。



「力あるものを取り立て、(ねぎら)いの言葉を掛ける。

 たったそれだけで民は余を慕い賢王と評しておる。裏で余が何をしようともだ。

 それは勇者たちとて例外ではない。

 フフフフフフ……ぼろいものだ」


「でもおバカな民ほど可愛いと言いますわよね♪」


「民は全て余の駒よ。

 駒はひたすら余のために力を尽くせばよいのだ。

 ほら言うではないか?『余のため人のため』とな……」


「キャハハハハハッ♪ お父様ったらお上手~~~♪」



こ、こんな腐った奴らに……



「ハ……ハハハハハッ!

 流石は父上、私などまだまだ足元にも及びませぬ!」


「まったくですわ。

 しっかりしてくださいまし、お兄様♪」


「その通りだ。

 早く精進するのだ、ピエトロよ。

 妹の方がしっかりしておるぞ」



エレノワが俺の首に背後から抱きついてきた。



「お父様、わたくしもこの人を気に入りましたわ。貧乏くさいけど♪

 魔王を倒したら、わたくしに下さいな♪

 新しい奴隷が欲しかったし♪」


「よかろう。ただし今度は壊すでないぞ。

 この者には色々と利用価値がある。

 勇者としてだけではなく、その知識を引き出せば魔術も大いに発展する事だろう。

 そして余は世界を初めて統一し、大いに栄えさせた偉大な王として後世に語り継がれる事になるだろう。

 フフフフフフフ……ハハハハハハハッ!!」



ドラ○もんでも手に入れたつもりかよ? こいつら……



「それでしたら父上!

 魔王討伐後、ぜひ私に勇者エリナと勇者リーズを!!」


「フッフッフ……好きにするがいい。

 ただし表には気付かれるな。裏工作は怠るでないぞ?」



こんな腐った奴らに……この俺が……



それもこんな古い手に…………











………引っ掛かるワケねえだろ。






「きゃっ!?」



急に立ち上がったため、椅子がひっくり返って俺に抱きついていたエレノワが尻餅をつく。




「「ッ!!??」」



国王とピエロは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

親子だけあってそのマヌケ面がよく似ていること。


生憎だがシビレ薬なんて全然効いていない。

フォークを拾った時も、エレノワが俺のワイングラスに何か入れたことは気配で分かっていた。

つまり、さっきまでのは俺の狂言。いつもの事だ。

ただし、いつもより真に迫ってみた。それこそ自分をも騙すくらいの勢いで。



「貴様……なぜ毒が効かぬ?

 まさか、あの治癒術か!?」



確かに治癒(ヒール)でも治せただろうけど、そもそもシビレ薬自体が効いていなかったからな。

毒に分類されるものについては、大抵は耐性を持っている。



「親が親なら子も子、逆もまた然りか」



国王の言葉には答えず、俺は思った事をそのまま口走った。



「なに……?」



「流石はそこの馬鹿王子の親だと言ってるんだ。

 それにしたってもだ、娘の足を治してやった恩人に毒を盛るとのはやり過ぎだと思うがな」



馬鹿呼ばわりされて、ピエロの顔に一瞬で赤みが差した。

ちなみに俺自身も結構アレな人間だが、親の方は割とマトモ。(今は父親しかいないが)

何事も例外はある。


それはともかくとして、毒については予想していなかったわけではない。

食事の席で交渉だなんてフラグ立ちまくりだ。



「ふん、優秀な駒が手に入るのだ。

 これぐらいやるさ」



国王はもはや猫を被る必要が無いと知り、すっかり開き直った様子。

いよいよ本性を現したってことか。

それでこそ俺も本音をぶつけられるってもんだ。



そして俺を呆然と見上げるエレノワに視線を寄こした。

俺の視線を受けてビクリと反応するエレノワ。



「な、なんですの?」



流石はあの国王の娘だ。

助けたはいいが、中身はとんでもない腹黒女。

幼い頃から足が不自由だと聞いていたから、さぞかし人の心の痛みの分かる心優しき少女だと予想していたが……

初めて立ち上がった時に流した涙も、治ったばかりの足で俺の元に駆けて来てくれた事も、全て俺の気を惹くための演技だったのだろうか。


コイツはクララなんかじゃなかった。

クララの皮を被ったタダの……



「ク、クララって誰ですの?」


「知る必要はない」



危ない危ない。つい思考が口から洩れていたか。

あとテメェがその名前を口に出すんじゃない。




(もっと)も騙しているのは俺も同じ事だ。

この世界にはない技術をエサに、人々の関心を集めていたわけだから。

あまりコイツらの事を言えないのがネックだな。



「ミコシバよ……

 やはり捨て置くには惜しい存在だ。

 先ほどの暴言は水に流してやるから、余に仕えぬか?」



謝罪どころか懲りもせず、この期に及んで懐柔してくる国王。



「そちとて一人の人間。

 欲のひとつもあるだろう?

 地位でも金でも女でも、何なりと申してみよ」



「丁重にお断りする」



即答してやる。

どうせコイツらにもう用はない。

こっちはこっちで勝手にやらせてもらうさ。



「……そうか。それは残念だ」



国王がパチンと指を鳴らすと、武装した兵士たちが部屋に雪崩れ込み、俺の周りをぐるりと取り囲んだ。

その間に国王一家は俺から距離を取っていた。



「殺すでないぞ。

 そやつには利用価値がある。あとで洗脳を施さねばならんからな」



こいつら恐らく近衛兵とは別の私兵なのだろう。

国の闇の部分……汚れ仕事を一手に担っている暗黒部隊とか。



しかしイチイチこいつらの相手をする必要はない。

目的を果たした以上、ここにいる理由はもう無いわけだからな。



「父上、ここは私にお任せください」



何を血迷ったのか、ここでピエロが腰のレイピアを抜いて前に一歩前に出てきた。

そしてピュンピュン風を鳴らして、優雅にレイピアを振り始めた。


アレ……? 結構サマになってる?



「フン、まさか僕をお飾りの勇者だと思っていたのかい?

 だとすれば君の目はとんだ節穴さ。実力の方もたかが知れている。

 僕は剣術のコーチからは百年に一人の逸材と言われているのだよ?」



ほう、百年に一人って……充分に天才だな。あまり大した事なさそうなのに……

剣術のコーチとやらがオベッカを使ってるだけかも知れんし、仮に才能があってもピエロじゃ宝の持ち腐れって気がする。

……本当に強いかどうかは、戦ってみるまで結局分からないもんだけど。


そんな事を考えながら、グラスを取ってワインの残りを口に含む。



「一応、手加減はしてあげるよ?

 全力で抵抗してみたまえっ!!」



そう言い放ち、踏み込みと共に俺に刺突を放ってくるピエロ。刺突で手加減もクソもあるのか甚だ疑問だ。

しかしこの程度、わざわざ俺の手を煩わせるまでもない。



「ブゴォオオオオオオッ!!」



手は使わないが、代わりに口を使う。

口に含んだワインをジェット噴射して、ピエロの顔面に喰らわせてやる。


思いもよらない攻撃に声も上げれず、その場でひっくり返って床に頭を打ち付けるピエロ。

ピクピク痙攣しているのは、頭を打ったせいだけではない筈。

ワインに含まれる毒が効いているからだ。

鼻や口から入った毒が早速効いているらしい。

国王が俺を陥れようと仕組んだ毒が、皮肉なことに息子のピエロに炸裂したわけだ。



「ピ、ピエトロッ!?」


「お兄様っ!?」



おっと、ピエロの心配をしてる暇はないぜ。


俺は国王に向かって駆け出す。



「お、おのれ!! 舐めるな、小僧ぉ!!

 貴様ごとき小童に……」



剣を抜き放ち俺を迎え撃とうとする国王。

しかし俺は瞬時に国王の後ろに回り込み、



「なにっ!? ぐがぁあああっ!!??」



首に手刀を叩きこんだ。

調度品を巻き込んで派手にぶっ倒れる国王。

一応手加減はしている。



「きゃぁああああっ!? お父様っ!!??」



悲鳴を上げるエレノワを無視して、俺は床に転がっている国王に言い放った。



「聞け! 愚かな王よ。

 私は貴様に、未来を視る幻の拳を放った。(手刀だけど)

 いずれ訪れる世界滅亡の日が視えてくるはずだ。

 世界が滅びゆく様を視て、せいぜい苦しむがいい!」



「ぬっ……うぅ……

 き、貴様……何を言って……?」



首を押さえながら立ち上がろうとする国王。

俺はさらに言葉を続ける。



「馬鹿息子、馬鹿娘共々覚えておけ。

 人々の心が荒廃しその叡知が途絶えた時、

 暗黒神ダークマターは降臨する。

 その時こそ世界の終わりと知れ!」



さ~て、やる事すべてやったし、言いたい事もすべて言ったし、そろそろ帰りますか。

俺はスーと宙に浮くと、空中で胡坐をかいた。



「と、飛んで逃げるつもりか!?

 あ奴を捕らえよ!!

 絶対に逃がすなーー!!!」



そう焦らずとも、いずれまた会ってやるさ。

(もっと)もその時、立場は逆転してしまっている筈。

きっとお前らは俺に泣きついてくる事だろう。



つーわけで、あばよバイバイキーン。



剣や槍を構えて迫り来る兵士たちを悠々と見据え、



--ピシュンッ



俺は空間を跳躍した。仲間たちの待つ宿へと……



必殺とは言いつつ、特に誰も殺していません。

未来予知拳の元ネタはドラゴ○ボールZのTVスペシャル。

他に国王に対する置き土産を思いつかなかったもので……orz


次回、ついにダークマターが動き出す?

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