第25話 語り場っ!?
第25話投稿します。
サブタイトルの通り語りがメインです。
Side 御子柴 陽一
「それで私にどういったご用件でしょうか」
お茶を啜りながら、目の前の二人に聞く。
現在、俺の前には冒険者風の男と魔術師風の少女の二人組が座っている。
街の大通りで二人に声を掛けられ、立ち話もなんだからと近くの喫茶店に連れてこられたわけだが……
これは何かのイベントフラグっぽい気がしてならない。
「ああ、実はアンタに頼み事というか……スカウトしに来たというか……」
冒険者風の男が答える。
「……スカウトですか?」
目の前の二人を観察してみる。
まずは冒険者風の男。
赤みがかかった茶髪。
身長は俺と同じくらい。
歳も俺よりちょっと上、そう離れてはいまい。
そして服の上からでもはっきり分かるぐらい、筋肉質で引き締まった肉体に端正な顔つきのナイスガイだ。
白い歯を覗かせてニカッと笑っているが、男の俺から見ても不思議に嫌味を感じさせないのが不思議だ。
次に魔術師風の少女。
紫色のセミロングの髪。
身長は150cm以下、プロポーションは残念というか……まあ、ロリっぽいとでも言っておこう。
美少女と言ってもよい容貌だが、何というか先ほどから態度がよろしくない。
頬に片肘なんぞついて、むっつりした表情であさっての方を見ている。
俺に視線を合わせないようにしており……機嫌が悪いのを隠そうともしていない。
「そうそう。
本題に入る前に自己紹介といこうか。
……ほらっ、お前もいつまでムクレてんだ」
そう言うと男は未だ不機嫌な少女に視線を向ける。
「……分かったわよ」
嫌々ながら返事をし、ようやく目線をこちらに向ける少女。
表情は相変わらず不機嫌なままだ。一体なんだというのか。
少女が俺に向き合った事を確認すると、早速とばかり男が切り出した。
「それじゃ、まずはこちら側から名乗らせてもらうぞ」
声を掛けてきたのは向こうなのだから、それも当然だろう。
俺は頷いて、お茶を啜った。
「ファヴだ」
「リーズよ」
「…………………………
…………………………
ブボォオオオオッ!?」
3秒ももたず噴いてしまった。
それも最悪な事にリーズと名乗った少女の顔面にお茶をジェット噴射だ。
ジェット噴射を喰らった彼女は椅子ごとひっくり返ってしまった。その間、無言……恐らく悲鳴を上げる暇も無かったのだろう。
初対面の相手(それも女性)に途方もない粗相を働いてしまった。
「ブホン、ブホン……失敬」
詫びを入れながら、せめて引き起こさなければと席を立つが、ジェット噴射を喰らったリーズの惨状は凄まじかった。
顔も服もびしょ濡れ、スカートなのに大股開きだ。
この騒動に周りの客たち……特に野郎共は例外なくガン見している
「い……痛ぁ……
ア、アンタ!!
アタシに何か恨みでもあるってのっ!!?」
後頭部を押さえながら体を起こすリーズ。
顔がびしょ濡れで分かりにくいが、涙目で俺を睨み付けている。
「いや、風邪をこじらせていたので、ついクシャミが……申し訳ない」
とりあえず言い訳しながら謝っておく。
これが元の世界なら「いや、お前らが笑わせるからだろうが!!」と逆ギレする事も出来たんだろうが、生憎この異世界で俺の言い分を理解出来る者はいない。
とりあえず引き起こそうと手を差し出すが、リーズはそれを叩いて自分で起き上がった。
「ファヴ!!
アタシやっぱり反対だからね!!
なんでこんな変な奴を……!!」
「そうは言うけどな……
お前も見ただろ?
このニイちゃんの治癒術を」
「でもっ……!!」
当事者である筈の俺をほったらかしにして、口論を始めるリーズとファヴ(今度からはこの順序を意識する)。
ちなみにさっきガン見していた野郎共はリーズが起き上った途端、興味を失ったかのように一斉に視線を戻し、それぞれお茶を飲んだり雑談に興じたりしている。
現金というかなんというか……用があるのはパンツだけかい、おまいら。
まあ、理解できるし納得もできるけど……
「あの、私の自己紹介がまだ終わっていないんですが」
いつまでもほったらかしは困るので、とりあえず自己紹介の再開を促す。
「ああ、スマンスマン……
じゃあ、アンタの名前を教えてくれないか?」
喚き立てるリーズを宥めながら、自己紹介の再開を承諾。
自業自得とはいえ、何で自己紹介でここまで時間がかかってしまうのか……
心の中でそうぼやきながら、俺は名乗った。
「私の名は御子柴。
しがない修行僧です」
魔族国で俺は"ミコシバ"で知られているが、人間国でも"ミコシバ"で通して構うまい。
のちに同一人物だとバレても特に不都合はないからだ。
「ミコシバか……珍しい響きだな……
んじゃ、ミコシバ君と呼ばせてもらうぜ」
「ふんっ!!」
二人の反応はそれぞれ。
そしてファヴは一呼吸置いてこう言い放った。
「それでな、ミコシバ君……
君にな、俺たちの仲間に加わってほしいんだ」
……まだ話が見えてこないな。
仲間にスカウトしたいという事だが、そもそもこの二人は何者だろうか?
「実は俺たちな、勇者なんだよ」
……勇者だって?
「ちなみに俺は戦士で、こっちのリーズは魔術師な。
ま、みりゃあ分かると思うけど」
あれ? 勇者ってもしかして、何人もいたりするもんなのか?
勇者戦隊○○レンジャー! みたいな……
「他にも勇者はいらっしゃるんで?」
「おうよ。
他にも剣士の女の子と……
あと、どうしようもない馬鹿が一人……」
剣士の女の子ってのは、恐らく以前出会ったエリナの事だろう。彼女一人が勇者ってワケじゃなかったんだな。
それにしても、もう一人のどうしようもない馬鹿ってのが気になる。
それにしても、いいよな~~俺が別の世界で勇者やってた時なんて一人だったんだぜ~~
一応、御供とかは付けてもらってたんだけど、早々に死ぬか逃げ出すかで脱落してしまうし……おかげでほとんど俺一人で戦ってきたもんな~~
「本当はもう一人、治癒を司る神官がいたんだけどな……
結構もう高齢でな……つい先日ポックリ逝っちまったんだ」
なるほど、現時点で勇者チームの回復役ポジションが空席なわけか。
仲間になってくれって意味が分かってきたぞ。
「それでどうしようかと途方に暮れたところで、何やら布教活動っぽい事やってるミコシバ君を見かけたワケだ。
こう言っちゃなんだけど得体が知らなかったから、しばらく人ごみに紛れて観察させてもらってた。
チンピラに絡まれてた母娘を助けたあたり悪い奴じゃなさそうだし……ああ、もちろん君がいかなけりゃ俺が助けに入るつもりだったがな……
ま、結論から言えばその神官の後釜になってもらいたいって事なんだけどさ」
確かに回復役がいないという現状は辛いな。
俺は一人でほぼ全てのポジションを兼ねていたから、回復役としてもそれなりにベテランだと自負している。
「君の実力もバッチリ見させてもらったよ。
手をかざしただけで、あのバアさんの腰や冒険者の目を速効で治すんだもんな。
あのオッサンの髪は……まあ、残念だったけどな……」
「あぁ……はは……
見苦しいところをお見せしまして……」
あの黒歴史とも言える事件も当然見られていたわけね……ハズ過ぎる。
「本当よ。
無様に失敗した挙句に、馬鹿笑いしちゃってさ。
アホ丸出しで見苦しいったらありゃしなかったわ」
たまに口を開いたと思ったら、リーズが耳の痛い批判をしてきやがった。
先ほどのジェット噴射を根に持っているのだろう。
「リーズ、そう突っ掛かんなって。
スマンな、ミコシバ君。
コイツ、王立魔術学院出身でな。
首席で卒業とかしてるから無駄にプライド高いんだよ」
ほう……このリーズという少女、勇者に選ばれるだけあってエリートというわけか。
「それであの治癒術もそうだけど、杖無し詠唱無しで空を飛んだり雷を出したりしてたろ?
それ見てコイツ、魔術師として対抗意識を持っちまってな」
「ア、アタシは別に対抗意識なんて持ってないわよ!?
だ、大体あんなデタラメ、アタシは魔術なんて認めないんだからね!
杖無し詠唱無しなんて魔術を行使するなんて不可能だし、雷はともかく空を飛ぶ魔術は未だ研究中なのよ。
なにかインチキしてるに決まってるわ!!」
ファヴの言葉に、顔を赤くして反論するリーズ。
そうか、初っ端から不機嫌そうだったのは俺に対抗意識を持っていたからなのか……
それにしてもインチキしているとは心外な……
「インチキなどではありません。
あの場に居たなら、貴女も私の話も聞いていたでしょう?
私は万物の理を知り、独自に術を編み出したのだと……
私の使う術は貴女の知る魔術とは別物です」
「そ、それが納得いかないって言ってんのよ!
アンタみたいな見るからに怪しい恰好の宗教家が『世界の声を聞きました~~万物の理を理解しました~~』ですって!?
アタシを含む全世界の魔術師に対する冒涜よ!!」
俺の言葉に真っ向から噛み付くリーズ。
彼女としては、俺のような不審人物が高度な術を使える事が気に喰わないらしい。
「いいこと? 宗教家のアンタには分からないかもしれないけど、
私たち魔術師はね、魔術開発のために世界の仕組みの解明に何世代にも渡って心血を注ぐ学者でもあるの!
軽々しく神だの奇跡だのと、そういった宗教的な事と結びつけられるのは、果・て・し・な・く・迷惑なの!!」
なるほど、この世界の魔術師は元の世界で言う物理屋さんとしての面も持っているのか。
あるいは数学屋さんを兼ねているのか?
それにしても、この世界では宗教と魔術はあまり仲がよろしくないのだろうか?
「勘違いしちゃってる似非学者のアンタに教えてあげるわ!
この世界の全ては目には見えないほど小さな粒で構成されていて、それぞれが火・風・水・土のいずれかの属性を持っているの。
私たち魔術師は新たに魔術を創る際、それらの4種の粒子をどのように作用させるのか~~~から考えて、
次にそれぞれの属性の粒子を振る舞いを記述するために矛盾の無い論理式を組み立てて…………」
それから延々とリーズの説明が続いた。
「…………そうして最後に、呪文……すなわち人間本位の言葉を杖という触媒を通して世界に働きかける言語に変換し、
4種の粒子に作用させることで想定された効果が現われるの!
それが魔術なの!! 分かった!?」
10分後、ようやくリーズの説明が終わる。
ロクに呼吸も置かず一気にしゃべり続けたせいで、すっかり息が上がっている。
大体分かった。というか、それぐらいの情報は事前に書物を読んで調べてある。
それでも改めて聞いてみると、元の世界で言うプログラミングが近いといった印象だ。
俺も趣味でプログラムを組んで遊んだりしてるから理解しやすかった。
別の世界では俺の世界からプログラマーが召喚され大活躍しました~~~なんて話も聞いた事があるぐらいだ。
実際、俺が使う魔術もプログミング感覚で構築出来るものを選んでいるため、この世界の魔術と根っこは似たようなものだ。
恐らく火・風・水・土という4種の属性も、物質の4態であるプラズマ・気体・液体・固体の事なのだと思う。
物質の4態を操作するのがこの世界の……正確にはこの世界の人間の魔術ならば、空間転移の類は無理なはずだ。
そうなると異世界から勇者を召喚して魔王退治を~~~なんて夢のまた夢、そんな概念すら存在しないかもしれない。
これが以前出会ったエリナや目の前のリーズとファヴといった、この世界の人間から勇者が選定される理由なのかな~~~と妄想してみたり……
「フンッ! どう? 似非学者さん?
色々と偉そうに語っちゃってたけど……
ああ、アンタの場合は語ってるんじゃなくて騙ってるんだったわね」
誰が上手いこと言えと……
しかしあんまり馬鹿にされるのも癪だし、少しだけからかうか。
「貴女の言う事は間違いではありません……しかし火・風・水・土の4属性に囚われているようでは、行き着く先はたかが知れています。
世界を統べる最も基本的な力は4種あり、4属性など4種の力のうちの一つ『電磁気力』から派生したモノに過ぎないのです」
「な、なによいきなり……一体何を言って……」
突然の俺の反撃にたじろくリーズ。
貴様らのいる場所は、我々が既に2000年前に通過した場所だッ!!
一気に畳み掛けるべく、俺は語り出した。
「あ"~~~っん!!
もうっ、いいわよ! これ以上語らなくても!!」
30分後、とうとうリーズは音を上げた。
正直言うと危なかった……一学生に過ぎない俺ではもう少しでネタ切れになるところだった。
それでもここまで語れたのは、聖書Newton(図書館とかに必ず置いてあるアレ)のおかげだ……ありがとう……
「つまり、アンタのあの飛行魔術は風の力とかじゃなく『重力』って力を操作したもので……
他にも『強い力』や『弱い力』……って何よこの適当な名称は……この力を操作すれば石っころをどんな金属にも変換したり、神の火を生み出したり出来るワケ?」
「然り」
ひとしきり語り終わった俺はお茶を啜る。
嘘は言っていない。異世界といえど元の世界と物理法則が変わるわけではない筈だ。
そうでなければ、この世界に転移した(された)瞬間に原子レベルで崩壊~~~なんて事にもなりかねないし。
「世界はヒモで出来ているとか10次元だの11次元だの、途中からますますワケ分からないんだけど……」
そこはまあ、調子に乗り過ぎたというか背伸びしてインテリぶってみたかったというか……実際は俺にもサッパリ分からん。
術を知っているというだけで詳しい理屈は全然知らなかったりするものも結構多い。
以前、本格的に勉強しようとはしてみたけど難解すぎて断念した記憶あり……orz
「まあ、そこは人間の感覚では到底理解ますまい……
高度な数学でのみ表現できる世界ですからな……うん」
分からない箇所は尤もらしい事を言ってお茶を濁しておく。
澄まし顔でお茶を啜っているが、内心ヒヤヒヤものである。
「エッラそうに……髪の毛生やすの失敗してたくせに」
それでも胡散臭そうな目で俺を睨んでくるリーズ。
いや、いい加減そこ指摘するのは止めて欲しいんですけど……
「お~~~い。
難しい話はもうそれくらいにして、もうそろそろ本題に戻ってもいいか~~~」
ここでファヴが口を挟んできた。
俺に勇者の仲間に入って欲しいってところで話が止まっていたな。
答えは既に決まっている。
「御誘いの件ですが、お断りします」
俺の答えは二人にとっては意外だったようだ。
「な、なんでよ!?
勇者になれるって、すっごく名誉な事なのよ。
あ……べ、別にアタシはアンタに仲間になって欲しいだなんて、こ、これっぽっちも思っていないんだからね!
ただアンタみたいにその黒メガネの奥でロクでもない事考えてそうな奴が、こんなおいしい話を蹴るなんて意外だっただけよ!!」
「そうだぜ、ミコシバ君。
そりゃあ、俺たちの一存で勇者を決めれるってわけでもないけどな……
それでも推薦すりゃあ、王様に直々に会う事ぐらいは出来る筈だし、
そこで実力を示せば多分すぐにでも採用されると思うぜ。
回復役の神官ってのにも高い能力が求められるから、なかなか後釜が見つからなくて結構参ってんだ。
その点、ミコシバ君ならきっと大丈夫だって!」
身を乗り出して、俺に今にも迫らんとする勢いの二人。
「いえ、私の立場的に問題が……」
人間と魔族との共存の架け橋になろうってのに、人間側に付くわけにはいかない。
立場としては中立でなけりゃならないからな。
「あ~~~そう言えば、世界の滅亡を防ぐためにも人間と魔族との共存を目指しましょう~~~なんて言ってたっけ……」
「アンタ、このご時世にそんな与太話を吹聴して回ってたら今に捕まるわよ。
……そもそもダークマターって何よ?
アタシもこれまで山ほど本を読んで来たけどね、そんな話どんな古い文献にも載ってなかったわ」
そういえば……これはもしかして布教のチャンスか?
目の前の二人は勇者……王様とも謁見出来るくらいだし国への影響力はそれなりと考えられる。
この二人から国の中枢に噂だけでも広めてもらえれば……
そうと決まれば耳にタコが出来るほどこの二人に
「なあなあ~~~ミコシバ君~~~」
そんな事を考えていると、ファヴが俺の席の隣に移ってきた。
「君さ……こう言っちゃなんだけど、傍から見ててアホだよ?」
などと言いながら肩に手を回してくるファヴ。
なんかすごく失礼なこと言われているな。
「気を悪くするなよ?
ただ人間って生き物の事をもっと良く考えようぜって言ってんだ。
人間ってのはさ、尻に火が付かないと動き出さない生き物なんだよ。
予兆も現われていないうちに、いずれ世界が滅びます~~~皆さん行動しましょう~~なんて言っても真に受ける奴がいると思うか?」
……いないだろうな。少なくとも魔族側にはいたけど。
尤もそんな事は百も承知。今はまだ種まきの段階に過ぎないのだ。
「仮にだよ? 君の話が本当だったとして。
世界の終わりがやって来るのっていつだ?
1年後? 10年後? それとも100年後か?
そんなのその時になって行動すればいいじゃねぇか。
世界の命運が懸かってんだ……その時はみんな必死になって動くだろうぜ。
頑張ってそれで駄目だったってんなら、キッパリ諦めがつくってもんだ!」
いや~~~そういう考え方もあるかもしれないけど、そこまで楽観的過ぎるのもどうかと思うな。
元の世界でいう環境・資源問題に対する認識にも似通っているし……
あとは小学生が夏休みの最後までついつい宿題を溜めてしまう心理とかにも似ている気が……
そう考えるとやはり先送り主義はよろしくない。
「あとの事はあとの人間に任せりゃいいのさ……
見たところ君もまだ若いんだしさ……
本当は色々と遊びたい盛りなんじゃないのかい~~~へっへっへっへ……」
今度は俺の肩を揉みながら、小声で話しかけてくるファヴ。
「白状しよう。
俺はな……エロなんだよ。
勇者なんてやってるけどな、頭の中じゃ四六時中エロい事ばっかり考えてるんだよ。
どうせ君もそうなんだろ? ミコシバ君」
英雄色を好むと言うが、コイツはその典型というか権化だな。
というより一緒にしてもらいたくない。俺はもっと様々な分野で妄想を広げているのだ。
「勇者ってだけで、そりゃもうモテるぜ~~~
魔王倒せばよ~~~ハーレムだって夢じゃねぇ!!
一緒に魔王倒そうぜ~~~ミコシバ君!」
ここまで欲望に忠実に生きている人間がいるとは……その辺の野盗なんぞ目じゃないな。
生きてて楽しいんだろうな~~~コイツ。
「聞こえてんだけど……」
リーズがジト目で俺たちを見ている。
汚物でも見るような視線でだ。だからコイツと一緒にしないで欲しい。
「興味がありません。お断りします」
正直、後ろ髪を引かれる想いではあるが、ここはキッパリと断らなければ。
勇者になれば王にも謁見出来る機会もあるのだろうが……そう考えると結構惜しい。
何か他に理由さえあれば……今すぐにでも王に会いに行ってもいいんだが。
「………アララ」
懐柔は無理だと悟ったのか、頭をかしげながら向かいの自分の席へと戻るファヴ。
先ほどとは打って変わり、やけにあっさり引き下がっていった。
そしてお茶を一口飲んだと思うと
「仲間うんぬんの話は抜きにしてだ。
ミコシバ君、本当に君の力が必要なんだよ」
今度はやけに真面目な表情でそう切り出してきた。
「実はな、この国の姫様の足が不自由なんだよ。
小さい頃からロクに歩けなくて、ずっと車椅子でな……とにかく可哀想な姫様なんだよ。
でも君の治癒術なら治せるんじゃないかと思ってな」
リアルクララだと?
それも姫様…………クララ姫!
「ちょ、ちょっとファヴ!? そんな事したら」
「シィ~~~ッ!
リーズ! 余計な事は言わんでいい!!
どうだ? ミコシバ君、ここはひとつ可哀想な姫様のために一肌脱ぐつもりはないか?」
何やらリーズとファズが揉めているが、俺の心は揺れに揺れてそれどころではない。
いや、答えは既に決まっている。なんという渡りに船。
ただファヴが何か企んでいるっぽいのが心配なんだが……まあ、そこは気を付けておくとしよう。
「私の力でよろしければ喜んでお貸ししましょう。
困っている者を放ってはおけません」
クララ姫が俺の助けを必要としている。
ならば救いの手を差し出す事になんのためらいがあろうか。
「おお~~~ミコシバ君! 引き受けてくれるのか!!
姫様の足を治したとありゃ王様も喜ぶ。
うまくいけばミコシバ君の話も聞いてくれるかもよ?」
これでこの国の王に謁見する口実も出来たワケだ。
夢にまで見たクララ姫(?)を救いつつ国の中枢に世界終焉の噂を広める、まさに一石二鳥というわけだ。
「やっぱりアンタも男ってことね……大馬鹿よ!
どうなっても知らないんだからね、まったくっ!!」
リーズが額に手を当てて溜息をついているが気にすまい。
首を洗って待っていろ、クララ姫。
思ったより更新の間隔が空いてしまいました……orz
次回の更新も2,3週間後といったところです。
次回、クララ姫を救う?




