第21話 プロジェクト始動
第21話、投稿します。
お久しぶりです。
執筆ペースがかなり遅くなっているので、次の投稿も結構先になるかと思います。
Side 魔族青年 バルディウス
私は赤一色の地獄にいた。
空一面が暗黒の雲で覆われ日の光を遮り、大地を包む業火によって目の前の地獄が照らし出されている。
私の周りには、おびただしい数の物言わぬ骸ばかり。
我が同胞である魔族も、怨敵である人間も、従僕である魔獣も、この地獄では全てが平等だった。
天から巨大な火の玉が雨のように降り注ぎ、爆風で地上にいる者たちを容赦なく薙ぎ払っていく。
からくも生き残った者たちは悲鳴を上げ、降り注ぐ火の玉や、迫り来る業火から逃げ惑っている。
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図のような光景だ。
私はあまりにも無力だ。
目の前で同胞たちも次々に死んでいるというのに、私は全く動く事が出来ない。
もうじき『アレ』が来る。
どうせ『アレ』が来たら、全てが終わるのだ。
私が何をやったところで意味はない。
既に諦めはついている。
『愚かなる民よ・・・』
唐突に頭上から声が響く。
地の底から響くような声・・・
とうとう『アレ』が来たのだ。
上を見ると、空一面に広がっていた暗黒の雲が形を変え、巨大な貌を形成していた。
『進化を諦めた怠惰なる者たちよ・・・
もはやお前たちに価値はない。
塵に帰るがいい。
このダークマターの手で・・・』
天から巨大な黒い手が降りてくる
巨大な影を落とし、私たちを覆い尽くさんと迫って来る。
底なしの闇が世界を呑み込もうとしている。
(終わりだ、もう・・・)
私は目を閉じて最期の瞬間を迎え入れる。
どうせこれは夢だ。それはすでに分かりきった事。
あの森の一件以来、ずっと同じ夢を繰り返し見る。
魔神ダークマターが起こす世界終焉の日の夢だ。
世界が闇に包まれ、決まってそこで夢から覚める。
目を開ければ、そこはいつものベッドの上だ。
しかし、この夢はいずれ現実のものとなる。
いずれ訪れる世界終焉を前に、私は何もできない。
できるわけがないのだ・・・
私は無力感に打ちひしがれながら、またいつもの朝を迎えるべく目を開き・・・
「ッ!?」
目を開くと、そこはいつものベッドの上ではなかった。
そこは何もない、ただ真っ黒な世界。
「・・・・・・・・・・・・
どういうことだ、これは?
いつもの夢でないのか!?」
まさか、さっきのは夢ではなく現実で・・・
この暗黒の世界は、ダークマターによって無に帰された後だというのか。
「馬鹿な・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!!!」
やっぱり納得できない。
こんな終わり方があってたまるか。
こんな現実あっていいわけない。
「・・・こんなの夢だ・・・夢であってくれ・・・」
しかし、所詮は私に出来る事など、目の前の現実を頑なに否定する事のみ。
私には滅びの運命を受け入れることなど到底できない。
だからといって運命に抗い、ダークマターと戦うなんて無理だ。私にそんな力はない。
私は頭を抱え、その場にうずくまる。
一刻も早くこの悪夢から抜け出したい。元の日常に戻りたい。
(誰でもいい、私をこの悪夢から救ってくれ・・・
私には無理なんだ。
私には何も出来ないんだ・・・)
私は一心に思った。
その時だった。
『諦めては駄目だ、バルディウス。
まだ何も終わっていない』
唐突に私の耳に響く声。
私が顔を上げると、そこには思いもよらない人物がいた。
「ミコシバ殿・・・」
ガリュグの森で私の命を救ってくれた黒髪の青年。
私がダークマターの存在を知ったのも彼のおかげだ。
尤も、今では知るべきではなかったと後悔しているが・・・
しかし、それよりもこの暗黒の世界になぜ彼が居るのだろうか?
「なぜ、貴方がここに・・・?
私を・・・この悪夢から救い出してくれるのか・・・?」
私は期待を込めた視線で彼を見た。
彼ならば、また私を救ってくれる筈だ。
『戦うんだ、バルディウス。
世界を滅亡から救えるのは、君しかいない』
「なっ!!??」
しかし彼は私の期待を裏切り、とんでもない事を言い出した。
私が世界を救うだって!?
「何を言うんだ!? ミコシバ殿!!
私には無理だ!!
私に世界を救うなど出来るものか!!」
即座に否定する。
高位とはいえ一介の魔族に過ぎない私に、そんな力はない。
するとミコシバ殿は片膝を下ろし、へたり込んだままの私に目線を合わせた。そして
『大丈夫だ、自分を信じろ』
そう囁き、私の手を取って両手で優しく包み込んだ。
「え・・・?
ミコシバ殿・・・?」
彼の突然の予想外の行動に私は唖然となった。
『大丈夫、僕は信じている・・・
君なら出来る・・・
君なら必ず世界を救えると・・・』
ミコシバ殿は私に微笑みかけた。
私は不覚にもその優しげな笑顔に見とれてしまった。
「しかし・・・私にそんな力は・・・」
『君は選ばれし者なんだ。
僕たちが出会ったのも偶然なんかじゃない、運命なんだ』
私たちが出会ったのが運命・・・?
真摯な瞳で私を見つめるミコシバ殿。
私はその漆黒の瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
『安心して、君は一人じゃない。
僕たちがついている』
「僕たち・・・?」
私がその言い回しに首をかしげた時だった。
ミコシバ殿は私の背後を指差した。
「・・・?」
私は後ろを振り向く。
「・・・!?
・・・貴方は!!」
そこにいたのは、全裸に魔獣の頭骨を被った人物・・・私が捜し求めていた野人、オッパッピーだった。
私の心臓が高鳴った。
あれほど憧れた人物が今、目の前にいる。
野人は何も話さない。
きっと私が口を開くのを待っているのだろう。
私は高鳴る鼓動を抑えながら、震える口を開いた。
「貴方は・・・私を・・・認めてくれるのか・・・?」
コクリと野人は頷いた。結局、彼は何も話さない。
しかし私には、それで充分だった。
かの野人…憧れの人物が私の事を見ていてくれる・・・私の事を認めてくれる・・・それがどれほど報われた事か・・・
私の頬に涙が伝う。
「ありがとう・・・本当にありがとう・・・」
私は涙を流しながら野人に礼を言う。
本当はいくら礼を言っても足りないぐらいだ。
そんな私の心からの礼に対し、彼はコクリと頷いた。
そして唐突に被っている頭骨に両手をかけた。ゆっくりと頭骨を頭から引き抜いていく。
(まさかっ!!??)
彼は頭骨の仮面を外すつもりか?
そして私に素顔を見せるつもりなのか?
ついに彼の素顔を知る時が来たのか?
私は息を呑み、露わになる彼の素顔を目に焼き付けようとして・・・
「・・・・・・はっ!?」
気がつくとベッドの上だった。
「今のは・・・夢・・・?」
状況を見ればそうなる。
ここは私がいつも使っている寝室だ。
「夢かよ・・・はぁ~~~」
先ほどまでの事が夢だと理解し、一気に落胆する。
いつもは悪夢から解放され、ホッとしていたものだが、今回は逆だった。
そしていつもと違うことがもう一つ。
それは私の心の裡にあった。
「なんだ・・・?
この熱き想いは・・・」
夢の中であの二人と出会い励まされ、私の心に芽生えた熱き想いが、夢から覚めた今でも健在していた。
気付けば、いつものように恐怖で体も震えていない。
私は、私を勇気づけてくれたあの二人の顔を思い浮かべた。
「ミコシバ殿、オパッピー・・・
私は、私は・・・ッ!」
Side 御子柴 陽一
「ふぅ~む、魔神ダークマターのう・・・
魔族国の伝承を利用して争いを止める・・・か」
難しい顔で考え込む、ぴよしこと神様。
現在いつもの宿で、ぴよしにこれまでの経緯とこれからの計画について説明中。
真面目な内容だからか、ぴよしもいつもの画伯的口調ではない。
魔神とはいえ神を騙るのは、やはり神として見過ごせないのだろうか?
「流石はワシが選び抜いた男じゃ。
その発想はなかったわーーー。
いやー、目の付けどころが違う!」
ところが俺の心配は杞憂だったらしい。
反対しないところを見ると、ぴよし的にはこの方法でもO.K.ということか。
「あの時はイキナリあんな与太話を始めて、ヨウイチの気が狂ったかと心配したが・・・
ダークマター教なるものを創り、世界を裏から操るつもりだとは・・・
流石は妾の現マスター。
これまでのマスターとはスケールが桁違いじゃ」
少しズレている気がするけど、大体そんなところだ。
アリビアも、下手すりゃ犯罪モノのこの計画を止めようという気はないらしい。
あくまでマスターの俺に任せるということか。
しかし理解を示してくれて嬉しいが、二人のぎこちない笑顔が妙に気になる。
あははーと、まるで何かを誤魔化すような作り笑顔のように見える。
そしてその予感は的中した。
「「君なら出来る。じゃ、頑張って!」」
ぴったりハモって、残酷な宣言を下してくれた二人。
「お~い、見捨てないで~~~」
俺はというと、そんな無慈悲な二人にすがるしか出来ない。
俺だって一人は心細いのだ。
とはいえ、今さら後戻りすることは出来ない。
すでに賽は投げられてしまったのだ。
もし成功しなければ、俺はただのイタイ人で終わってしまう。
「・・・スマン。
ワシ的に、流石にダークマターはチョットついていけんわ・・・
まさかワシが選んだ男が、こんな重度の厨二病患者だったとは・・・
今からでも、もっとマトモで有望な若者を探すかのぉ・・・」
「チュウニ病という言葉自体はイマイチ分からぬが、ヨウイチみたいな人間だという事は分かった。
世話になったな、ヨウイチ。
妾もおぬしの思考についていけそうにない。
新たなマスターを探すとしよう。
最期に年長者としての助言を・・・・・・妄想は一日一時間ぐらいにな」
その後、俺を見限ろうとする二人をなだめるのに苦労した。
しかし、二人の俺を見る目は依然として白いまま。
どいつもこいつも厨二を軽蔑しやがって・・・
そもそも厨二は病気じゃない、悟りなんだよ・・・
・・・チクショウ、こうなったらコイツらもトコトン巻き込んでやる。
「お~い、陽一。準備できたぞ~~い」
「はいよ~」
そして今、俺たちはデカイ鏡の前に座っている。
これからぴよしの神通力で魔族国の様子をこの鏡に映し出し、偵察を行うのだ。
目的は、先日バルディウスに吹き込んだ『魔神 = ダークマター説』が魔族国でどう受け止めらているか、それを知るため。
「では、いくぞ・・・そりゃっ!!」
ぴよしの気合いと共に、鏡面が水面のように波打ち、映し出される光景が変わっていく。
映し出されたのは、いかにも「宮殿です」って感じの豪勢なお部屋。
高価そうな壺や絵画が飾られ、床には広い赤絨毯が敷いてある。
会議室らしく、部屋の中心にはデカイ多角形テーブルが鎮座しており、それを囲うように十人以上のオッサンやジイさんたちが座っている。
全員が貴族っぽい格好をして、そのほとんどが「重鎮です」って感じの立派な髭を生やしている。
俺はまず目当ての人物を探してみる。
えーと、バルディウスバルディウス・・・バルバルバル・・・おっ、居た!
バルディウス・・・長ったらしいので略して『バル君』は、オッサンやジイさんたちに混じって何かを話している。
重鎮らしき人たちに囲まれているのを見ると、彼も相当に地位が高いか、あるいは相当な実力者なのだろうか?
それとも単に尋問だろうか?
先日のガリュグの森の件やダークマターについてなど・・・
重鎮A「では、君は・・・
そのダークマターなるモノこそ我ら魔族が信仰する魔神の正体であり、
近々世界を滅ぼすために現われるというのかね?」
バル君「はい。
現存する種族及び文明は全てダークマターによって滅ぼされます。
信じがたい事かも知れませんが、
この世界は既に過去にダークマターに幾度も滅ぼされ、その度に再興されてきたのです」
ビンゴ!
まさに超グッドタイミング。
魔族たちの話題はジャストでダークマターらしい。
これで魔族たちのダークマターに対する反応を知る事が出来る。
重鎮B「・・・それでダークマターが世界を滅ぼす理由が、
我々魔族と人間どもが争うばかりで仲良くしないからだと?」
バル君「正確には、争いに偏り過ぎて文明の発展を阻害しているからです。
ダークマターの行動原理はあくまで進化の追及。
喧嘩の仲裁がしたいわけではないのでしょう・・・」
重鎮C「・・・なるほど」
バル君は俺の考えた厨二設定を正しく理解している様子。
曲解することなく、正確に他の魔族たちに伝えてくれているようだ。
それに対し、重鎮らしき老人たちの反応はイマイチ読めない。
バル君「お分かりいただけたでしょうか。これがこの世界の真実なのです。
我々魔族は自分たちこそ万物の霊長、この世界で最も優れた種族なのだと信じてきました。
しかし、その実態はダークマターの掌で踊らされていたに過ぎなかったのです」
バル君「我々は確かに慢心していたかもしれない・・・
人間を劣等種族と蔑み、真剣に善悪を見極めようとはしなかった。
人間だけではない・・・過去の戦では数多の魔獣を道具として使い潰してきた。
魔族本位で動き過ぎ、他の種族を蔑ろにし過ぎてきた」
良い傾向だ。
少なくともバル君に関しては、種族についての意識改革は成功した模様。
あとは、他の魔族たちが彼の考えに共感してくれるかだが・・・
バル君「結果、ダークマターの意に背いた我々は、滅亡の危機に瀕している。
まさに因果応報と言えるかも知れん」
バル君「だが、本当にそれで良いのだろうか?
このまま黙って滅ぼされる事を良しとするのか?
答えは否!!」
バル君「慢心は今すぐ捨て去るべきだ!
だが、魔族としての誇りまで捨てる必要はない!!
運命と戦い、抗う権利はある筈!!」
重鎮A「・・・それでは貴殿は、ダークマターとやらを倒して世界の滅亡を止めるというのかね?」
バル君「場合によっては、ダークマターと戦うことも念頭に置かなければならないでしょう。
しかし、それはあくまで玉砕覚悟の最期の手段。
もっと先にやるべき事があります」
重鎮A「・・・言ってみたまえ」
バル君「現在計画している人間側への侵攻の中止、および我々魔族と人間との和平締結です」
まさに狙いどおり。
少々うまく行き過ぎな感はあるが、バル君は俺の思惑通りにこの結論を導き出してくれた。
バル君「我々魔族と人間との間には、埋めがたい確執がある。
もちろんそう簡単にはいかないでしょう。
それに今さら人間との共存を目指したところで遅いかもしれません。
しかし僅かでも可能性があるならば、それに力を尽くすべきです。
世界滅亡を喰い止め、生き残るために」
重鎮D「熱く語ってもらっているところ悪いが、バルディウス卿・・・」
それまでおとなしく話を聞いていた重鎮の一人が、ここで口を挟んできた。
重鎮D「ダークマター? 世界の滅亡?
貴殿はそんな馬鹿げた話、本気で信じているのかね?」
キッパリと、これまでのバル君の言い分を斬って捨てた。
他の重鎮達もうんうん頷いている。
これまでおとなしく話を聞いていた彼らだったが、全くもって信じていなかったようだ。
とはいえ、これが普通の反応なのだろうけど・・・
重鎮D「そもそも、その与太話の出処はガリュグの森で出会った黒髪の青年だったか?
よくもまあ初対面の、それも得体の知れぬ相手の言葉をそこまで真に受ける事が出来るものだ。
野人の件といい、貴殿はそんなに『黒髪』が好きなのかね?」
バル君「・・・『黒髪』は関係ない、そう言えば嘘になるかもしれません。
しかし私はミコシバ殿に命を救われ、実際に言葉を交わし、
それで信頼に値する人物だと確信したのです。
私とてこのような話、彼以外の口から聞いていれば鼻で笑っていた事でしょう」
その信頼を利用して、俺は彼に嘘を吹き込んじまったわけだ。
改めて考えてみても随分あくどい事をやっているな、俺も。
重鎮D「生憎だが、我々は君の言う『ミコシバ殿』を知らんのでな。
貴殿の言うように、こんな話を聞かされたところで鼻で笑うしか出来んのだよ。
どうしても信じてもらいたいのならば、
その『ミコシバ殿』とやらをここに連れて来たまえ。
『黒髪』で高位魔獣をも容易く屠る男・・・
なるほど、本当にいるならばぜひとも会ってみたいものだ」
バル君「・・・本当にいるならとは、どういう意味ですか?」
重鎮一人が吐き出した言葉に、バル君は冷やかな声で反応する。
重鎮D「昼間から夢でも見ていたのではないか、と言っているのだよ。
その人物は、貴殿の妄想上の存在ではないのかね?
あるいは貴殿が『黒髪』好きなのを利用して、誰かが仕組んだイタズラとかではないか?
髪の色など染めればどうにでもなる」
重鎮A「なるほど、大いにあり得ますな!」
重鎮B「案外、野人も誰かのイタズラだったのかもな、ハッハッハッハッ・・・」
スイマセン。それどころか同一人物です。
バル君「き、貴様ら・・・」
重鎮D「よいか、我々は人間共への侵攻をいよいよ間近に控えている。
ダークマターだの野人だの騒いでいる暇はないのだ。
貴殿もいい加減、そこを自覚したまえ」
バル君「ッ!! だから人間とこれ以上争えば、この世界は・・・」
重鎮D「分かった分かった。
ダークマターに滅ぼされて、我々は石器時代からやり直す羽目になるのだろう?」
重鎮A「なるほど、確かにそれは困った事態だ」
重鎮B「困った困った」
重鎮C「だー、くまった(困った)!」
重鎮達「「「「ハハハハハハハハ」」」」
話はまるっきり平行線しか進まない。
ダークマターはとうとうオヤジギャクのネタにされる始末。
バル君「黙れ!!
昼間から呑気に夢など見ているのは、貴様らの方だ!
滅亡は目前に迫っているというのに、何故気付かぬ!?
今は笑っている貴様らも、その時になれば皆死ぬのだ!!
貴様らもッ! 貴様らの大切な人もッ!! そして私もだッ!!!」
とうとうバル君はブチ切れてしまった。
馬鹿笑いする周囲に激昂し、怒鳴り散らしている。
そして俺はというと
「・・・・・・」
なんというか、彼には申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
重鎮たちが言うように、ダークマターも世界滅亡も全て俺の作り話。
それをあそこまで真に受けて信じるとは・・・
狙っていたとはいえ、実際に目の当たりにすると痛々しかった。
「ヨウイチ。
残念ながらダークマター計画とやらは完全にアイディア倒れじゃな。
やはりあのチュウニ設定を信じる奇人は、バルディウスとかいう魔族ぐらいしかおるまい」
『残念ながら』とか言う割にはやけに嬉しそうなアリビア。
そんなにダークマターがイヤなのだろうか・・・
あと、さり気に『厨二』って言葉を使いこなしてやがるな。
「いや、これで構いません。
ダークマターという名前さえ広まってくれれば、それでいいんですよ」
初っ端からダークマターを信じさせる事が出来れば楽だったが、それは初めから期待していない。
要は、連中に信じる気にさせればいい話だ。
現在、必死に連中を説得していたバル君には悪いがな・・・
先ほど笑っていた連中も、いずれは思い知ることになるだろう。ダークマターの恐怖をな・・・
「ところで陽一、さっきから思っとったんだが・・・
あのバルディウスとかいう男、ワシが見た限り厨二の素質が充分あるぞい」
ぴよしがどうでもいいことで話しかけてくる。
確かに俺の厨二話を真に受けているあたり、その可能性は否定できなくもないが・・・
「もともと思い込みが激しかったというのもあるんじゃろうが、
やはり陽一との出会いで感化され、妄想力がインフレしたんじゃろうな。
そうでなけりゃ、あの厨二話を信じるなんてとても出来んしのぅ」
心情的には全力で否定したいところだが、これも否定しきれない。
「つーわけで、諸悪の根源である陽一の妄想力を測っておかねば」
「何故に?」
俺の疑問には答えず、ぴよしは胸元から何やら取り出した。
何というか・・・非常にスカウターっぽい機械だ。
もしかしなくても、アレで俺の妄想力とやらを測るつもりなのだろう。
「では、測定開始・・・ポチっとな」
案の定、ぴよしは片目片耳に似非スカウターを取り付け、スイッチらしきものを押した。
スカウタ-のディスプレイに何やら表示され、ぴよしの表情が驚愕に変わっていく。
「スゴイ妄想力じゃ・・・
どんどん数値が上がっていく・・・」
はいはい、勝手にやっててください。
「ヨウイチ、よいのか?
ぴよしが何やら勝手なことを始めたが・・・」
「・・・やらせておけばいいんですよ。
あの人、ああやって遊ぶのが好きなだけだから」
ぴよしのやる事にいちいツッコんでいたらキリがない。
気にしたら負けだろうなと思う。
「馬鹿な、まだ上がっていくと・・・」
ボンッ!
ここで似非スカウターが爆発四散した。
俺の妄想力とやらは、機械でも測れないくらいスゴイのか?
「ぬぉおおおおおおっ!?
目が、目が~~~ッ!!??
し、失明すりゅーっ!!!???」
目を押さえてゴロゴロと床を転げまわるぴよし。
ハッ、ザマァ・・・
妄想は時として世界を動かす原動力となる・・・ハズです。
念のためですが、冒頭の夢はいつもの神様のイタズラではありません。
一人の漢が絶望の淵から這い上がるために、自ら生み出した妄想力の賜物です。
次回は、まだよく決まっていません。




