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第16話 神による神業的な髪技

第16話投稿します。


今回、というか次回から展開が変わる予定です。

Side 御子柴 陽一




「はっはっはっはっ・・・・」



現在、俺は逃げている。


アレが来る・・・

ヤツらが迫ってくる・・・


ヤツらはデカイ。

まるで山のようだ。


デカイだけなら、百戦錬磨の俺の敵ではないだろう・・・


しかし


ヤツらは怖い。

本能が逃げろと言う。



「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」



息が・・・苦しい。

カラダが重い。

心臓が破裂しそうだ。


ただ走っているだけなのに・・・

俺はそんなヤワな体力していない筈だぞ・・・!?



『『『 待ってぇ~~~ん 』』』



(っ!? 来たぁっ!!??)




花沢さん 『 磯野く~~ん!! 逃がさないわよ~~~ん!!! 』


ミギワさん『 イヤ~~ン!! ハナワく~~ん、テレないでぇ~~ん!!!  』


ジャイ子 『 のび太さ~~ん!! んチュ~~~ /// 』




(く、来るな・・・来るなっ!! 化け物ども!!!)



背後に迫る山のごとき巨大な恐怖の化身たち・・・

次第に俺との距離を狭めてくる。

巨大な影が迫ってくる。


迷惑なことに、俺をどこかの誰かと勘違いしている。

勘違いを正そうにも、全く声が出ない。

こうやって逃げるしかない。


戦おうなんて気は微塵も起きない。

そんなトチ狂った事しようとすれば、その瞬間に俺という存在は塵も残さず消えてなくなる。

そんな無駄な事する余力があるなら、ひたすら逃げることに費やすべきだ。


恐怖にかられ背後を振り返る。

チョットだけのつもりだった。

すぐに後悔した。



花沢さん 『 ばあぁぁぁあああああっ!!! 』



花沢さんは大きく口を開くと



しゅるるるるるるっ



口の中から無数の黒い触手のようなモノが伸びてきたのだ。



(っ!!?? 人間じゃねえぇっ!!??)



ヤツらが人間じゃないなど今更だ。

俺はすぐさま前を向き、全力疾走を再開した。


だが


しゅるるっ


俺の左足首に何かが巻きつく感触。



花沢さん 『 つ~~か~~ま~~え~~た~~ 』



(しまった!? 捕まった!!!)



そのまま俺はとても抗えない力で宙に引っ張り上げられる。


左足に触手が巻きつき逆さ吊りにされたまま、俺はヤツらを眺めることとなった。



『『『 ぐふふ~~~・・・ 』』』



無様に逆さ吊りのまま、三人に取り囲まれる俺。

三人はニヤッと笑うと、目玉が跳び出んほどギョロッと目を剥き、耳元まで口が大きく裂けて



『『『 あはははははははははははははは

    あはははははははははははははは

    あはははははははははははははは

    あはははははははははははははは 』』』



(わら)いながら、俺に手を伸ばして来る。

巨大な手が三方から俺に迫ってくる。



全身の血が凍る。


何故、俺がこんな目に・・・


俺は何か間違えたのだろうか・・・?

罪を犯したのだろうか・・・?

それとも前世の業(カルマ)・・・?


何故、なぜ、ナゼ・・・



走馬灯がグルグル頭を巡る。



そうして俺を、巨大な三つの手が・・・深い闇が包み込んだ。




・・・・・・・・・・




「ぁあああぁっ!!??」



跳ね起きる。

ベッドの上だった。

ここは・・・下宿している宿の一室。

いつも寝泊まりしている部屋だった。



「はぁっ・・・はぁっ・・・よかった・・・夢だったか・・・」



夢オチ・・・それにしても最悪の夢だ。


けれど夢でよかった。

心からホッとする。



ふと気付いた。

全身汗でビッショリ、喉はカラカラだ。



とりあえずは喉の渇きを潤そうと、部屋を出て宿の食堂に向かう。


食堂にはこの宿屋の女主人セリーヌさんが居た。


飼いぬこのタマは・・・居ないようだ。お出掛けかな?

気分直しにもふもふして癒されたかったのに・・・


それにしてもオバちゃん(セリーヌさん)食堂(ここ)に居るということは、今は昼時だろうか。



「おや、起きたのかい?

 といっても、もう昼時だよ?

 アンタはまだ若いんだから、もっと早起きしないと・・・

 若いうちから体がなまっちまうと、歳とってから大変さ!」



いつもと変わらず同じ事を言っているオバちゃん。


(平和だ・・・)


現実はなんでこんなにも平和なのだろう・・・

テーブルに座り、水を飲みながらそんな事を考えていると



「アタシが若い頃はねぇ~~~・・・

 って、アンタ!?

 どうしたんだい、その顔?

 泣いてたのかい?」



オバちゃんに言われて、俺は自分の頬に触れた。

すると確かに、涙跡のザラザラした感触がする。


(また泣いたのかよ・・・俺・・・)


先に顔を洗って来ればよかった。

そう言えば、女勇者エリナの時も同じような事があった。

あの時も恐ろしい夢を見て、いい歳して泣いてしまったんだっけ・・・


(そう言えば、エリナ元気してるかなぁ~~~)


しみじみとそんな事を考えてしまう。



「何か心配ごとでもあるのかい?

 アタシでよかったら相談にのるけど?」



オバちゃん・・・面倒見がいいな。

肝っ玉母さん的な見た目は伊達じゃない。

よっ、太っ腹!


とは言え、他人に相談するような悩みではない。

俺的には深刻だけど、俺の心が強ければ解決する問題だ。

要は精進するのみ。



「大したことじゃないですよ。

 少し怖い夢を見ただけで・・・

 ようか・・・女の人に追いかけられる夢です」



危うく『妖怪』と言いかけた。

流石にそこまで言ったら、祟られてまたひどい悪夢を見るかもしれない。



「へぇええ~~~女の人ねぇ~~~

 夢の中とは言え、アンタも隅に置けないね~~~

 ちなみにどんな女の人だい?」



興味があるのか、身を乗り出して聞いてくるオバちゃん。



「どんな女の人って・・・そうですね・・・

 圧倒的というか・・・粘着質といいますか・・・」



出来るだけオブラートに包むよう心掛ける。

祟られたくはないからな・・・



「ふ~~~ん・・・?」



何かを考え込むようにうつむくオバちゃん。


そして



「それは、こんな貌の女かい?」



顔を上げるオバちゃん。

それはさっきまでのオバちゃんの貌ではなかった。


それはあの花沢さん貌・・・

ギョロっとした目と耳元まで裂けた口・・・

最後に見せたあのおぞましい貌だった。





よういちはちからつきた。


よういちはめのまえがまっくらになった。




・・・・・・・・・・・・・




「はっ!?」



跳ね起きる。

気が付いたらまたもやベッドの上だった。



「・・・・・・・?」



キョロキョロと周りを見る。


ここは・・・?



「ここは・・・ポケ○ンセンター・・・?」



混乱した頭で何とか言葉をひねり出す。

続いて所持金を確認しようとして・・・



「アホらしい・・・」



止めた。所持金が半分に減ってるなんてワケない。

自分でも気付かないほど、相当に俺は混乱しているらしい。



(本っ当にひどい夢だった・・・)



まさか二重オチなんて・・・


『なんだ夢だったんだ』とホッとした矢先に、あの仕打ち・・・

ぬか喜びさせられた分、二度目の絶望はどん底よりさらに深かった。

マントル突破して地核に到達ってくらい深かった。



「こ・・・」



冷静になるに従い、今度は言いようのない怒りが沸々と・・・



「殺す気かっ!!?? 馬鹿野郎っ!!!!」



別に誰に対してツッコんだわけでもない。

ただ叫ばずにはいられなかった。



そもそも、なんであんなホラーな夢を見たんだろう?

やっぱり先日カヤコと戦ったからだろうか?


だとしても感じた恐怖はカヤコ以上だった。

カヤコより怖いモノはないと思っていたのに・・・

夢の中だから余計に誇張されて怖く感じてしまったとか・・・?


今になって考えてみれば、二次元キャラの花沢さんたちが出た時点で、まず夢であることに疑うべき。

おそらく頬をつねってみれば一発で分かるだろう。

だというのに実際の夢の中では、そんな簡単なことすら忘れてしまう。


本当に夢と言うのはつくづく思い通りにならない。



大体、悪い夢といったって所詮は自分の頭が生み出した妄想みたいなモンだろう?

何が悲しくて自分の生み出したモンにうなされて、挙句殺されかけにゃならんのだ!?

以前といい今回といい、あんな度の越えた悪夢を見るなんて、俺の頭はよほどの欠陥でも抱えているのか!?



俺の夢ならもっと俺に都合良く出来ていてくれよ!!

俺が生身で星間飛行出来るくらいの超人という設定で、カヤコも花沢さんもデコピンで粉砕する夢があってもいいじゃないか!!

夢の中でくらい、いい思いをさせてくれよ、本当・・・



しばらく落ち込み、強引に気を持ち直した俺は部屋を出て、先ほどの夢と同じく宿の食堂へ向かった。

今度は泣いてはいなかったが、顔は先に洗っておくことにする。




「む・・・?

 起きたのか、ヨウイチ。

 わらわは先に頂いておるぞ。

 女将の作ったスープは絶品じゃからのう」


「まあ、嬉しいこと言ってくれるじゃないかい!

 この娘ったら・・・」


「ニャーー」



夢とは違い、食堂にはオバちゃんだけでなくアリビアとタマも居た。

三人(?)で和気あいあいと食事をしていた。

夢とは異なる展開に少しホッとする。



(・・・・・・)



いや、油断はできない。

二度あることは三度あるというし、ここも夢の中ではないという保証はない。


今回はオバちゃんだけでなくアリビアとタマも居る。

先ほどはオバちゃんが花沢さんだったから、今度はアリビアとタマがミギワさんとジャイ子になるかもしれない。


さらに最悪のオチだ・・・


特にタマの可愛らしいお顔が花沢さんたちいずれかの貌に変わろうものなら、俺はこの先、ぬこという生き物を信じられなくなるかもしれない。



俺は頬を思いっきりつねってみる。


(いたひ・・・)


顔を洗った時、水はちゃんと冷たかったから、多分大丈夫だとは思っていたが・・・



「?? ヨウイチ?」


「何してんだい? アンタ・・・」


「ニャーー?」



皆、突然の俺の奇行に首をかしげている。



「いえ、なんでもありません」



頬が痛かったことにとりあえず安心はしつつも、一応は気を抜かないよう心掛ける。


備えておいたほうが、いざという時の精神的ダメージは少なくて済むはずだ。



「ところでヨウイチ。

 今日はどうするのじゃ?

 ヒマなら(わらわ)が付き合ってやらんこともないが・・・」



アリビアはご機嫌だ。

神様の奮闘のおかげで、カヤコという憑きモノが落ちたからな・・・

その解放感はさぞかし清々しいものだろうな。


取り憑かれていた時は、俺に出会ったのが運のツキみたいなことボヤいてたのに、結構ゲンキンだな・・・


余談だが、結局は俺に取り憑いている分のカヤコは除霊(?)することは出来なかった。

アリビアに取り憑いてたカヤコを除霊した時点ですでにボロボロだったからな・・・

もう一体なんて流石に無理だそうだ。

あの後、逃げるように神様は帰っていった。


『もう二度とカヤコなんぞと戦いたくないワイ』


なんてぼやいてたな。


まあ、俺の分のカヤコはいい・・・

魔力で封じ込めておけば実質的に害はないからだ。



「今日は・・・そうだな・・・

 ギルドにでも行ってみます」



新しい事をすれば気分は晴れるハズ。

最近、気分転換感覚でギルドを利用している俺の持論だ。



「うむ、面白そうじゃ

 (わらわ)もいくぞ」



速攻でのってくるアリビア。



「おっ・・・二人してデートかい?

 いいねぇ~~~若いって・・・

 アタシも若い時は、そりゃぁもう・・・」



無駄に長くなりそうなので、さっさと朝食をとって出かけるとしよう。




・・・・・・・・




久しぶりにギルドにやって来たのだが、受付の前で何やら人だかりが出来ていた。


何があったのだろうと人だかりに近づいてみると



「だから困りますよ!?

 このような依頼、ギルドでは受け付けることはできません」


「な、何でかな・・・?

 ぼぼぼ、ボクがルンペンだから、さ・・・差別しているのかな?

 ひ、ひどいんだなっ!?」


「ち~~がいますってぇ~~(怒)!!

 あなたのおっしゃる依頼内容がメチャクチャだからですっ!!!」



何やら、つい最近聞いたような声が・・・・・・


まさかと思いながらも人だかりの隙間から覗いてみると



「あっ!? あれはぴよしとかいう(ジジイ)ではないか。

 何であやつがこんな所におるのじゃ?

 それに何やら言い争っておるようじゃぞ?」



アリビアの言うとおり、裸の大将の格好をした神様(本人希望により『ぴよし』と呼ぶ)が、何故か受付のオッちゃん(その髪型から便宜上『ナミヘイ』と呼ぶ)が言い争っていたのだ。


周囲の人間は関わり合いになりたくないらしく、少し距離をおいて眺めているだけだ。



何をやっているのか・・・あの神様(じいさま)は・・・

相変わらずその行動の真意が不明だ・・・


ナミヘイさんは、受付カウンターの上に置かれた書類を指さしながら怒鳴っている。


依頼書のようだが・・・ぴよしが書いた依頼書なのだろうか?

そうだとして、神ともあろう者がギルドに一体何を依頼するつもりなのか・・・?



少し興味が湧いたので依頼書の内容を覗いてみた。

アリビアも興味があるらしく、同じように覗いている。



『 ボクのお願い聞いてください。

  この街の人たちから、1人1G(ゴールド)ずつお金を集めてきて欲しいんだな。

  この街には人が5000人くらい居るそうなので、全部で5000G集められるんだな。

  お金が集まったら、貧乏なボクでもお腹いっぱいおむすびが食べられるんだな。

  お礼は園長先生が払ってくれるんだな 』



「・・・・・・」



俺、絶句した。



「アホじゃ、あやつ・・・」



隣でアリビアが呟いた。



「この世にこんなアホな事を本気で考えるヤツがおるとは・・・世も末じゃな・・・」



スイマセン、ここにもう一人おります・・・

まるっきり同じ事を考えたことあります。


流石に実行しようとは思わなかったが・・・



自分がぴよしと同じ思考レベルだったことにショックを受けていると



「あっ!! 園長先生なんだな!!」



ぴよしが俺たちに気付いて声をかけてきた。

俺たちに周りの視線が一斉に集中する。



「・・・こんにちは、ぴよしさん」



話しかけられた以上、無視はできない。

一応、挨拶する。


もはやギルドで依頼どころではなくなったな。



「あなたは確か・・・カツヲ様・・・いや、ヨウイチ様でしたね。

 こちらのぴよしさんとはお知り合いなのですか?」



ナミヘイさんは俺の事を覚えていたらしい。


この世界では黒目黒髪そんなに目立つのか?

それともエリナという最高ランク者と一緒に居たことがインパクトに残っていたのか?


ちなみにエリナとのクエスト終了後、とあるトラウマから名義を『カツヲ』→『陽一』に変更した。



怪訝そうな顔をしているのは、ぴよしが俺を園長先生と呼んだからだろう。

俺がぴよしの保護者かなんかだと勘違いしているのかも・・・



「まあ、知り合いといえば知り合いですが・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 すみません、ご迷惑おかけして・・・

 すぐに連れて帰ります」



言い訳はすまい。

納得いかないが、早いところこの場から離れたい。


そしてぴよしを尋問せねば・・・なぜタイミングを見計らったように俺の前に現れたのか・・・

何か厄介事をもってきたのかも知れん。



「さあ、行きますよ。 ぴよしさん」



俺はぴよしの手を引いて、ギルドから出ようとするが・・・



「ぴよしさん?」



ぴよしは動かない。

ナミヘイさんの頭をジッと見たまま、動こうとしない。



「あ、あの・・・まだ何か・・・?」



ナミヘイさんは凝視され、少し戸惑っている。



「・・・・・・」



ぴよしは無言のままナミヘイさんに近寄り、



「えいっ」



プツンッ



ナミヘイさんの頭頂に生える、たった一本しかない髪の毛を抜き取った。



「「「「あああああぁっ!!??」」」」



その場に居る全ての人間が驚愕のあまり声をあげた。



「えっ?・・・えっ?・・・えっ?・・・あれ?・・・髪・・・」



ナミヘイさんは自分に何が起こったか理解できていない・・・理解したくないようだ。



「ちょっとっ!?

 いきなり何やってるんですかっ!!!

 ぴよしさんっ!!!!」



唐突過ぎるぴよしの暴挙に、思わず詰め寄る俺。

一体何の意味があって、こんなワケわからんことしてるんだ。この爺さん。



「だだだ、だって・・・

 何もないところにたった一本だけなんて、かか、かわいそうなんだな・・・

 ぬ、抜いてやったほうが・・・楽なんだなっ」



何だよっ!!?? そのメチャクチャな理由っ!!!

本当にそんな理由で、たった一本しかない頭頂部分の髪の毛を抜いちまったのか!?



「・・・って、園長先生が言ってたんだな」



え・・・・?


周囲の目が再び俺に集中する。



「ちちち、違うっ!? 違いますよっ!!!

 言ってませんって、そんなこと!!!!」



慌てて弁明する。


なんてこと言うんだ!? この(ジジイ)っ!!!

確かにナミヘイさんと初めて会った時、そんなことチラッと考えた記憶はあるけども・・・



・・・あれ?



もしかして、ぴよしって俺の記憶を読んでいるのか・・・?

さっきの依頼書も、俺の記憶をネタにして書いたんじゃ・・・?


神様なんだから、そのくらい造作もなさそうだ。



「「「「・・・・・・」」」」



・・・それより今は、周囲の目が痛い。



「とにかく、俺はそんな妙なこと吹きこんだ覚えはありません!!

 ぴよしさん、ナミヘ・・・受付の方に早く謝ってください」



危うく『ナミヘイさん』と言いかけた。



ナミヘイさんは唖然とした表情のまま固まってる。

固まったまま、自分の頭をぺちぺち叩いている。

痛ましい光景だった。


()くしてしまった、かけがえのない一本(オンリーワン)を必死に探しているのだろう・・・



「わ、分かったんだな・・・

 ご、ごめんなさい。

 お詫びに、ふふ、増やして返すんだな・・・」



増やして返す・・・?

『何を言ってるんだ?』という目で周囲はぴよしを見る。


俺も同じ気持ちだ。

まさか神の力を使って、ナミヘイさんを増毛してやるつもりなのか・・・?



そんな俺たちを尻目に、ぴよしは先ほどナミヘイさんから抜き取った一本の髪の毛を指でつまみ



ぺりぺり~~~



擬音にするとこんな音だろうか、驚くほど器用に一本の髪の毛を指で割いていく。

瞬く間に一本の髪の毛が2本に分かれた。



ある意味では神業に驚く周囲をよそに、続いてぴよしは接着剤らしきものを取り出すと、分割された2本の髪の毛の毛根部分にそれぞれ塗り付け



ぴとっ・・・



ナミヘイさんの頭頂部分、さっきまで1本髪の毛が生えていた箇所に、2本の髪の毛(?)を取り付けた。



「よしっと・・・

 こここ、これで2本・・・

 ウミヘイさんに進化したんだな」



「「「「・・・・・・」」」」



沈黙する周囲。

ウミヘイの意味を知る者はいまい。



そして、所詮は接着剤で取り付けただけの紛いモノ・・・

フニャリと力なく倒れる2本の髪の毛(?)。



とうとうナミヘイさんの目にジワリと涙が浮かんだ。



「・・・・・・」



俺は無言でぴよしの肩に手を置き、



ゴスッ



鳩尾(みぞおち)に膝を一発いれ、悶絶するぴよしを引きずってギルドの外に出た。



誰も後を追う者はいなかった。


アリビアさえも追ってこなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・




「本っ当に何がやりたいんだよっ!!?? あんたはっ!!!!」



現在、路地裏にてぴよしを問い詰め中。

もはや、こんな(ジジイ)に敬語など不要だ。



「ぐほっ・・・ぐほっ・・・

 陽一め・・・なかなかやるのう。

 神であるワシにさりげなくダメージを与えるとは・・・」



ぴよし・・・改め、神様は苦しそうに()せながらも、憎まれ口を叩いている。



「俺に用があるんだったら、さっさと用件だけ言って、さっさと帰れっ!!

 変なことに人を巻き込むなっ、まったく!!!!」



「悪い悪い、そう怒るなや~~~」



相変わらず軽い感じの神様。

まったく反省していないと見た。



「それで、用件じゃが・・・陽一よ・・・」



急に真面目な顔になる神様。



「・・・なんだよ」



対して俺はぶっきらぼうに返す。


そんな俺に神様は・・・



「出張命令じゃ・・・魔族の国へ行ってくれ」

神様って・・・・・・本当に便利ですよね・・・・・・

主人公が動かなくても勝手にイベントを運んできてくれますから・・・

伏し線をはる必要もなし・・・ご都合主義万歳!!


って・・・これは悪い傾向ですよね、やっぱり・・・


少々ネタバレですが、封印したはずのカヤコが関係してきます・・・

もっともカヤコはキッカケに過ぎません。

カヤコの件は割とすぐに片が付きます。

あんまりカヤコばっかり引きずりたくはないので・・・


次回、魔族サイドで事件が・・・

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