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第15話 切り札

第15話投稿します。


戦闘描写が難しいしメンドくさすぎる・・・

もうコリゴリだーっ

Side 御子柴 陽一




「喰らえ!! これがワシの最強形態(キングフォーム)じゃっ!!!」



そう叫んだ途端、神様が体からまばゆい光を放つ。



(まさか、パワーアップか!?)



多段変身によるパワーアップ、変身ヒーローモノでの定番のアレだ。

最初は普通の変身で戦うが、敵が強すぎてピンチになったらさらに強化変身するというのは、ヒーローモノではもはやテンプレだ。


・・・そんなモノがあるなら、最初っから使えよってんだ。


使用すると大量のエネルギーを消費するとか、寿命が縮まるとかの裏設定があるならまだしも、あの神様のことだ。

場を盛り上げて自分をカッコ良く見せようと、出し惜しみしているだけだろうな・・・

他に可能性など考えられない。



そして光がはれ、やはりというかなんというか、そこに居たのはさっきまでの鈍色の騎士ではない。


そこに居たのはまさに金色(きんぴか)の騎士。


全身を包む鎧は全て金色(きんぴか)になり、より装甲の厚いゴツイものとなっているため、以前より遥かに威圧感が増している。

一目見て『あ、パワーアップしたの?』って分かる。


最強形態(キングフォーム)というだけあり、まさに王の風格。



・・・見かけ倒しでないことを祈るばかりだ・・・



「す、すごい・・・

 あの猛々しくも神々しい姿は・・・

 カメンライダーに一体何が起こったのじゃ?」



アリビアは目を大きく見開いて茫然としている。

たび重なる超展開に置き去りにされることなく、なおも喰らいついていこうとする彼女。


猛々しくも神々しい?・・・彼女の目には今の神様の姿がそう見えているのか・・・

神様なんだから神々しいのはむしろ当然・・・っていうか普段ぜんぜん神々しく見えないのが問題な気がするが。


それはともかくとして、確かに鎧のデザインは洗練されててカッコイイと思う。

今の彼女の目はカルチャーショックにより、色々と補正がかかっているのも大きいと思うがな。





「いくぞっ!!!」


ゴツイ見かけと裏腹に一瞬でカヤコとの距離を詰める神様。



「喰らえっ!!!」



拳を握りしめ、そして繰り出される剛腕。



ブオンッ!!!



しかし、当たるというところでまたしても消えるカヤコ。


次の瞬間、神様の背後に感じるわずかな気配。


俺は咄嗟に『うしろだ』と神様に叫ぼうとした。


これではさっきの二の舞になってしまう。



しかし神様は、


「見えておるぞっ!!!」


今度は俺が教えるより早く、背後に振り向きざま裏拳を放つ。


パワーアップすると感覚や反応速度も上がるのか・・・

しかし、これでは先ほどの展開の焼き直しにすぎない。


さっきは苦し紛れに放った裏拳はあっさり止められ、そのまま反撃されてしまった。


今回はどうなる?



バキィィィッ



今度は神様の一撃は受け止められることはなかった。

鈍い音とともに吹き飛ぶカヤコ。


『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”・・・』


ユラリと立ち上がるが、片方の腕はグシャグシャにへし折れている。

神様の一撃を受け止めようとして潰されたのだろう。



『ア”あ”あ”っあ”ア”あ”ア”っあ”』



今の神様の一撃に激昂したのか、一際大きなうめき声をあげるカヤコ。



『あ”ア”  ア” あ”ア”ぁ” ア”ア”あ”あ”   ァ”ア”ア”ア”  あ”あ”』



続いて残像のように姿がブレ出すカヤコ。



(これは・・・カヤコの奇襲攻撃の前兆だ)




『あ”ア”ァ”あ”ア”あ”あ”ア”あ”ぁ”あ”ア”

 ァ”ア”あ”あ”あ”ァ”ぁ”あ”あ”ア”ア”ァ”

 ア”あ”ァ”ぁ”ア”あ”ア”ア”ァ”ぁ”ア”あ”

 あ”ア”ア”ァ”ぁ”ぁ”あ”ア”あ”ァ”ぁ”ア”

 あ”あ”ぁ”ア”ァ”あ”ア”ぁ”あ”ァ”あ”ァ”・・・・・・



ピタリとうめき声が止み、同時にカヤコの姿がかき消える。

先ほどカヤコが使っていた戦法。



静寂が辺りを支配する。



「見えとると言うとるじゃろっ!!!」



突然、左背後に手を突きだす神様。



『あ”あ”あ”っあ”あ”あ”あ”っあ”』



カヤコが神様にガッシリと腕を掴まれていた。

今度は攻撃しようとしたカヤコが神様に止められた。


やはり神様の反応速度は格段にあがっている。


先ほどとはまるで逆の展開だ。



「ハァアアアアアアッ!!!!」



カヤコを掴んでいる手とは逆の手で握り拳を作り、気合いを溜める神様。

魔力とは異なる力が収束し、拳が薄く発光しているのが分かる。



「ズリャァアアアアアアッ!!!!!!」



そしてカヤコの腕を引き寄せ、そのまま膨大な力が籠った拳をカヤコの顔面に叩きこんだ。



メキャッ



生理的に嫌な音を立て、首が180度折れ曲がるカヤコ。

通常なら間違いなく致命傷となる一撃だ。


『あ”あ”っあ”』


今の攻撃が流石に効いたのか、カヤコの動きが止まった。

否、ピクピクとわずかに痙攣している。



「すごいすごい!

 やれぇ~~~!!

 いけぇ~~~~~!!!

 カメンライダー~~~~~~~!!!!」



アリビアのテンションも最高潮に達している。

両手をぶんぶん振り、その場でぴょんぴょん飛び跳ねている。

ここ数日、自分を恐怖で蝕み続けたカヤコが、今まさに圧倒されているのだ。


カメンライダーの勝ちを確信し、タガが外れているのだろう。

応援の仕方が、まるっきりテレビの前のチビッ子のそれである。



神様の攻撃はなおも続く。



「まだじゃ~~!!!」



ドズッ



続いてボディーブロー

鈍い音とともに、カヤコの体がくの字に折れる。



「とどめじゃ、喰らえっ!!!」



ガスッ



最後にアッパーカット

きりもみしながら宙を舞うカヤコ。



ドサッ



頭から地面に墜落し、カヤコはピクリとも動かなくなる。



「か、勝ったのか・・・?」



隣でアリビアが恐る恐る呟いた。




Side 神様




「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・・・ぜぇ・・・・」



()った・・・・間違いなく()った。

今のはワシの渾身の神気を籠めた手加減抜きの一撃じゃった。

怨霊には効果抜群、効かないワケがない。


カヤコに近づき、様子を確認する。



カヤコはうつむけに倒れたまま動かない。

首は変な方向に曲がったままじゃ。



(ふ・・・ふふふ・・・見たか。(ワシ)の実力を)



陽一たちの方に振り向き


ピッ


サムズアップを決めてやる。



(決まった)



アリビアとかいう娘、いい笑顔をしてワシに手などを振っておる。

ふっふっふ・・・こりゃワシに惚れたな・・・


陽一の奴は意外そうな顔をしておるな。

ワシがここまで強いとは思っておらんかったようじゃな・・・



普段のお茶らけた言動の爺さんが、敵が現れると途端に強くカッチョいいヒーローに・・・


くくく・・・たまらんのう・・・

これぞギャップ萌えというヤツじゃ。

今やあやつらの中でワシの株が急上昇しておるに違いあるまい。


神とはいえ、ワシも少年の心を持ち続ける爺。

神という管理者としての立場上、派手なことは出来んがワシにも人並みの自己顕示欲ぐらいはある。

たまにゃチヤホヤされてみたいわい!


こんなこともあろうかと、陽一の世界で数多の有名なヒーローモノを研究しておいたのじゃ。

中でもカメンライダーはワシのツボに入ったからのう・・・


かませ犬にさせてしもうたカヤコには悪いがの、なにせワシは神じゃからな。



さあワシを敬うのじゃ!!

ワシのファンクラブとかを作ってもかまわんぞい?



かっかっかっかっかっかっかっかっ・・・




・・・・・・・・



「神さ・・・カメンライダー!! カヤコが!?」



突然、陽一が叫びおった。

何やら必死の形相で

どうでもよいが、あやつワシのことを『神様』と言いそうになったな。


「・・・なんじゃい?」


せっかくいい感じにハイになっておったのに水を差された気分じゃ。

辛気臭い顔をしおって・・・

心の中でぶつくさ文句を言いながら前を向く。



「っ!?」



絶句した。なぜなら



「カ、カヤコがおらん!?」



さっきまで倒れていたカヤコが消えた。

ほんの一瞬目を離したすきに・・・


「どこじゃ、どこに消えた!?」


周りを見渡す。じゃが、見当たらん。どこにも・・・



ボゴッ



突然、ガシッと足を掴まれた感覚。


「!?」


とっさに足元を見る。


地面から白い腕が生え、ワシの片足を掴んでおる。



ボゴッ



『あ”あ”あ”っあ”あ”あ”あ”っあ”』


腕の隣から今度は黒いモノが生えてくる。

それは黒髪がベッタリ張り付いた頭。



『あ”あ”あ”っあ”あ”あ”あ”っあ”』



黒髪の下から白い貌が現れる。


へし折れた首をもたげ、光の宿らない眼がワシを捕らえておる。



『あ”あ”あ”っあ”あ”あ”あ”っあ”』



メキャッゴキャッグギャッ


グロテスクな音を立て、ビデオのコマ送りのような動きで折れた首を元に戻しておる。


いちいち薄気味悪い女じゃ!!


「おのれ、化け物め!!

 死人はおとなしく冥府に帰れぃ!!!」


恐怖にかられ思わず頭を踏み潰そうと、もう片方の足を上げようとするが、



(うっ、動かん・・・

 体が・・・動かんっ!?)



金縛りに遭ったかのように体がピクリとも動かん。



『あ”あ”あ”っあ”あ”あ”あ”っあ”』



カヤコはワシの足にしがみつくと、地面から這い出ながら、崖でも登るかのようにワシの体をよじ登って来る。



(ええい、離れろっ!? 離れんかっ!!??)



叫ぼうとしても声すら出らん。


そして、目の前にカヤコの白くおぞましい貌が来て



『あ”ア”ァ”あ”ア”あ”あ”ア”あ”ぁ”あ”ア”

 ァ”ア”あ”あ”あ”ァ”ぁ”あ”あ”ア”ア”ァ”

 ア”あ”ァ”ぁ”ア”あ”ア”ア”ァ”ぁ”ア”あ”』



一瞬だけカヤコが(ワラ)った気がした。



次の瞬間



カッ



目の前に閃光が走り、弾けるような音とともに衝撃が襲った。




Side 御子柴 陽一




俺は悪夢(ユメ)を見ているのだろうか・・・


神様にしがみついたカヤコは、あろうことかそのまま爆発・・・つまり自爆したのだ。


煙がはれるとそこには大きなクレーターができている。

カヤコのものらしき黒髪や血痕が散乱しており、その中心には倒れ伏した神様・・・



爆死(ヤムチャ)・・・俺の脳裏にとてつもなく不吉な言葉がよぎる。



しかし



「・・・ぬっ・・・ぐぅ・・・」



呻きながら地面に片手をつき、ふらふら立ち上がる神様。


ホッとする。


神様はまだ生きていた。

金色の鎧は所々ひび割れており、負ったダメージは大きいようだ。

お世辞にも無事とは言えない。


ようやく立ち上がりつつも、すぐさま地面に片膝をつき、肩で息をしている。

もはや限界のようだ。



しかし普通ならばこの時点で勝負は決したと言える。


なにしろ自爆とは自らの命と引き換えに相手を道連れにする手段(ワザ)

生き残られては、いかにダメージを負わせられても相手の勝ちだ。

したがって、重症とはいえ生き残った神様は勝者。

粉々に散って、この世から消え去ったカヤコは敗者。


そう、普通(・・)ならば・・・



ゾワ・・・



生暖かい風が吹いた。



「「「っ!?」」」



驚愕はその場に居る全員のもの。


辺りに散ったカヤコの黒髪が、生き物のように蠢き始めたのだ。

不気味にうねるその様子は、ミミズやウジ虫を連想させる。

まるで一つ一つが意思を持つかのように、一カ所に集結していく。



神様を見る。

さっきまで肩で息をしていたが、それすら止めて目の前の光景に目を奪われている。


アリビアを見る。

おぞましい光景に目に涙を浮かべ、ガタガタ震えている。



カヤコは怨霊。当然、普通ではない。

既に命無き者が、自爆したから死ぬなんてあり得ない。

粉々に散ったカラダだって、いわばかりそめのモノに過ぎない。

いくらでも再生・・・具現化できるハズだ。



『あ”ア”ァ”あ”ア”あ”あ”ア”あ”ぁ”あ”ア”

 ァ”ア”あ”あ”あ”ァ”ぁ”あ”あ”ア”ア”ァ”

 ア”あ”ァ”ぁ”ア”あ”ア”ア”ァ”ぁ”ア”あ”』



集まった黒髪が、山のように大きく盛り上がる。

黒髪は次第に短くなっていき、白い両足、白いワンピース、白い両腕が順番に現れる。



(最悪だ・・・)


状況は最悪。絶望的と言っていい。




しかし



「ま・・・まだまだじゃ・・・」



満身創痍ながら、なおも立ち上がる神様。


まだ闘うつもりなのか、神様は・・・

その無謀とも見える闘志(ファイティングスピリット)に驚愕を覚える。


それともまだ何か『とっておき』が残っているのか・・・



「ま・・・まだ、ワシには最強の切り札が残っておる・・・」


そう言うと神様は5枚のカードを取り出し、剣の柄あたりにある挿入口らしきところにカードをセットし始めた。


『スペード10(テン)

『スペードJ(ジャック)

『スペードQ(クイン)

『スペードK(キング)

『スペードA(エース)


『ロイヤルストレートフラッシュ』


剣から響き渡る電子音声。

そして剣が黄金色に輝き出す。



やはり『とっておき』はあったようだ。


それにしても、今更だが神様のカードはトランプを模してあるようだ。

それぞれ異なる効果を持つA(エース)K(キング)の13枚のカードを用いて、ポーカーのように組み合わせで発動できる必殺技があるのだろう。

ロイヤルストレートフラッシュなんて、そのまんま最強の技だしな・・・



「ぬおおおおおおっ!!!

 喰らえぃいいいいいいっ!!!!!」



神様は剣を大きく振りかぶる。


しかし



『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”』



神様が剣を振り下ろすより先に、何を思ったのかカヤコは頭を大きく振った。途端、



ぴゅおんっ!!



鋭い風切り音とともに、黒髪が触手のように伸びてきたのだ。



バキィィィッ



鞭のごとき鋭い一撃は神様の手甲にヒット。



「ぬがぁあああっ!!??」



よほど重たい一撃だったのか、派手に吹っ飛んで地面に転がる神様。

そして剣は神様の手から弾かれて宙を舞い、弧を描いて俺とアリビアのすぐそばに突き刺ささる。



しゅるしゅるしゅるしゅる



続いてカヤコは何束も黒髪の触手を伸ばしてきた。

そして未だ倒れたままの神様の体中に巻きつく。



「ぬぅ・・・何じゃこれは!?

 は、放せいっ!!!」



神様は身をよじって髪を振りほどこうとするも、まるでミイラのように全身を包まれてしまい動けない様子だ。



『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”』



そしてカヤコの方へとズルズルと引っ張られる神様。

そしてさらに多くの触手(くろかみ)を伸ばして、神様を包み込もうとしている。


カヤコは神様を取り込もうとしているのか!?

いずれにせよ、神様が危ない。


こうなったら、俺も闘うしかない。


先ほど弾かれ、地面に突き刺さった神様の剣を見る。

剣刃の放つ黄金の光は脈動し、振るわれる時を今か今かと待ち続けているかのようである。


カヤコを見る。

触手(くろかみ)を伸ばして神様の体を完全に包み込んでいる。

まさに獲物を捕食しようとする触手生物(タコ)のようだ。



今が攻撃のチャンス!!



俺は剣の柄を握り、地面から引き抜く。

俺が握った途端、脈動していた黄金の剣刃はより強く輝き出す。

これは使用者の魔力に反応しているのだろうか・・・


しかし剣から放たれる黄金の光は、明らかに魔力とはベクトルの違う力だ。

ただ、これがとてつもなく強力な力だと分かる。

これが神様の力というものだろうか・・・


魔を絶つ剣・・・まさに聖剣、流石は神様のもつ剣と言ったところだ。

確かにこの剣なら、カヤコを倒すことすら可能かもしれない。



だが、今はこんなことを考えている時間さえ惜しい。


俺は剣を上段に構えると、



「破っ!!!」



地面を一気に踏み砕き、一瞬でカヤコとの距離を詰める。


そして、今まさに神様を呑み込もうとしているカヤコに



「邪っ!!!」



背後から剣を斜めに振り下ろした。



ここから俺の意識は急激に加速した。

コンマ1秒にも満たない瞬間だが、極限まで集中していた俺の眼は、その瞬間瞬間をコマ送りのごとくスローモーションに捉えていた。


剣は黄金の軌跡を描きながら、カヤコの肩口に食い込む。

そこからは、まさに豆腐を切る感覚で、スーッとカヤコの体を斜めに裂いていく。


驚くべき剣の切れ味だ。

まるで剣から放たれる聖なる光が、カヤコという闇を浸食しながら断ち切っていく・・・そんな感じだ。



(いける!!)



そう思った時だった。



「っ!?」



肩から胸あたりまでを裂いたところで突然刃が止まった。

地面を掘ってて突然固い岩盤にぶつかったかのように、それ以上進まなくなったのだ。

見ると剣から黄金色の輝きが失われている。



(一体どうした!?)



そう思った時だった。



『あ”あ”あ”あ”あ”』



メキメキメキ・・・



「っ!?」



カヤコの首がねじ曲がり、顔だけが180度うしろを向くカヤコ。



『あ”、あ”ぁ”あ”あ”・・・ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”・・・』



カヤコと眼が合う。

カヤコの眼の奥に自分自身()の姿が映っているのが分かる。

彼女(カヤコ)の眼は、確かに俺を捉えている。



(・・・神様の剣ですら通用しないのか・・・)



聖剣の聖なる力ですら、カヤコという底なしの闇では喰いつくされ、呑み込まれてしまう。


まさに打つ手なし・・・

万事休す・・・


思わず体がこわばる。

思考も停止する。

次の瞬間、何が起こるか全く予測できない。



『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”・・・』



カヤコが口を開くと『こぽっ』という音とともに、口の端から赤いモノが一筋流れる。



「!!!」



血だ。カヤコが斬られて血を流している。



(この剣、カヤコに効いてるぞ!!!)



流石は神様の剣、この聖剣は確かにカヤコにダメージを与えていたのだ。



そう確信した以上、やるべきことは一つ。

俺は剣に全魔力を篭める。

力を取り戻したかのように再び黄金色に光り輝く剣。



「カヤコォオオオオオオオッ!!!」



長年の敵の名を叫びながら気合いとともに剣を振りきり、カヤコの体を完全に両断した。


『・・・・・・』


瞬間、剣から閃光が走った。





Side 神様




(あ・・・危ないところじゃった・・・)


あともう少しでカヤコに取り込まれてしまうところじゃったが、陽一の奇襲のおかげで命拾いしたわい。


見れば、陽一はワシの聖剣でカヤコを背後から斬っておる。

いかにカヤコでもあの聖剣で斬られりゃ流石にダメージくらいはあるはずじゃ・・・



こんなことなら出し惜しみなんぞするんじゃなかったわい。

せっかくワシの美しい勝ち方を陽一たちに魅せてやろうとしたのにのう・・・


通信空手で勇猛さを魅せる → 剣技で華麗さ魅せる → 必殺技(ロイヤルストレートフラッシュ)で最強さを魅せる


これだけ魅せれば、ワシの非の打ちどころのない完璧さに尊敬の念を示すと思ったのに・・・

完全に当てが外れたわい・・・


最初っから最強形態で必殺技をぶち込んでやれば・・・・・・って、必殺技放とうとして反撃くらったんじゃった。



ワシのカッコイイところを魅せるつもりが、カヤコに散々ボコられるし、陽一に助けられる形になるし、散々じゃわい!!



にしても陽一のヤツめ・・・

あやつだけおいしいところをもっていきおって・・・

ワシの剣なのに・・・



そもそも人間の身では、圧倒的に魔力不足で、あの剣は使えぬというに・・・

やっぱあやつはちーと以外の何者でもないわい・・・



まあ良いわい・・・

さっきは不発に終わったが、あとはワシが聖剣で必殺技を叩きこめば・・・

陽一もいくらなんでも、聖剣の真価までは発揮出来まい。

やはりフィニッシュを決めるのはワシしかおるまい。ふっふっふ・・・



さて、では陽一から剣を受け取って・・・



ん? 陽一の魔力が急激に上がっておる・・・それとともに剣が光を放っておる。



え・・・ま、まさか・・・



「カヤコォオオオオオオオッ!!!」



気合いとともに剣を振りきる陽一。



そして聖剣から解放される極光。



極光は両断されたカヤコを呑み込み、ワシにも迫ってくる・・・



(こ、これは・・・ロ、ロイヤルストレートフラッシュ・・・)



ワシは光の渦に飲み込ま・・・れ・・・



(お、おおおぉぉぉぉ・・・)




Side 御子柴 陽一




思い切り剣を振りきったら、なんか剣先から光線(ビーム)が出た。

それも極太の・・・


一瞬だったが確認はできた。

ビームは地面にほぼ平行に走り、周囲に衝撃波をまき散らし、土煙が舞っている。



「・・・・・・」



俺は別段、特別なことはしていない。

目一杯、魔力を篭めて聖剣を振っただけだ。

ビームが出るのはこの聖剣の仕様なのだろう。



あの聖剣は遠距離でもビームで薙ぎ払えるのか・・・



って、違う!!!

どうするんだよ!? 俺!!?? 思いっきり神様をビームに巻き込んじまったよ!!

死んでないよな、多分・・・おそらく・・・きっと・・・

だ、大体さぁ・・・神様だって、いくらなんでも自分の武器で死ぬなんてヘマはしないだろう(?)



衝撃波で舞い散った土煙がはれ始める。

ビームの進行方向に地面が深く抉れており、直径3メートル程の溝が200メートル程先まで伸びている。

被害は特になさそうだ・・・



あとは神様とカヤコがどうなったかが問題だ・・・



神様は・・・居た。


神様はうつ伏せに倒れていた。

金色の鎧は完全に大破していて、完全にスクラップ状態。

所々黒く焼け焦げ、シュウシュウ煙をあげている。

ボロボロである。


ピクピク痙攣しているところを見ると、かろうじて生きているようだ。

とりあえずは一安心と言ったところか・・・



カヤコも居た。


カヤコもうつ伏せで倒れていた。

両断され、上半身のみとなった体が・・・

両断面からおびただしい血が流れ出し、血だまりを作っている。

さっきの一撃は確実に致命傷に至ったようだ。


顔だけが俺の方を向いていた。

目から血の涙を流しながら俺を睨んでいた。

俺に対する怒りと憎悪、そして助けを請うような悲しい眼だった。


『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”・・・』


心なしかその声も弱弱しい。


一瞬だけ、少しだけ彼女(カヤコ)が哀れに思えた。



「・・・っぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」



カヤコに気を取られていると、視界の端で神様がフラフラ立ち上がった。

そしてカードを取り出し、おぼつかない足取りでカヤコに近づく。



何をする気か・・・



神様はカードをカヤコに向かって投げ・・・



『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”?』



カードはカヤコの額に突き刺さった。



『ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”・・・』



カードは光を放ち、カヤコの体は黒い粒子となって崩壊していく。

粒子はそのままカードの中へと吸い込まれていった。



あとにはカードのみが残っている。

カードには真中にでかでかと『封』という漢字が書かれていた。



(そうか、これが封印か・・・)



これを見て、ようやくこの光景が意味することに気付いた。



ふと神様を見る。

肩で息をしながら俺の視線に気づいた神様に対し、俺は親指をピッと立て、サムズアップを送った。





Side 神様





し・・・死ぬかと思った本当に・・・

この神様が死にかけたんじゃぞっ!!!


陽一のヤツめ・・・故意ではないにしても、このワシまで巻き込みおって・・・

この最強形態の鎧でなければ耐えきれなかったじゃろうて・・・


その陽一ときたら、こちらの気も知らずにサムズアップなんぞやっておる。


なんじゃっ!?

その自分だけひと仕事やり終えたぜ・・・ってな表情は!?

ワシは九死に一生を得たんじゃぞっ!!

空気を読め、馬鹿者めっ!!!



「ヨウイチ!

 最高にカッコよかったぞ!!

 流石は(わらわ)のマスターとなる男じゃ!!!」



娘っ子がこれ以上ないぐらいの笑顔で、陽一に抱きついておる。何やらフラグを立てとるな。

一番体を張ったワシは無視で・・・

ええそうかい・・・



おのれぇ~~~、陽一めぇ~~~



この落とし前は・・・そうじゃのう・・・


近いうちに陽一の奴に、花沢さんとミギワさんとジャイ子の三大娘と結婚させる悪夢(イタズラ)でもしてやるかいの・・・

いいザマじゃ・・・くくく・・・楽しみじゃ・・・



「あの~~~、カメンライダーさん」



内心笑いながら、カヤコを封印したカードを回収しようとしたところで、陽一が何やら話しかけてきた。


ふん、なんじゃい?

今更謝っても許してはやらんぞい?



「忘れているかもしれませんが、俺の中にはまだカヤコがもう一体封印されているんですけど、約束ではそれも憑り払ってもらえるんですよね・・・」



・・・・・・



思考が停止した。


そして



「ウゾダドンドコドーン(嘘じゃそんなことー)!?」



夕暮れの空を仰いだ。


『アホー』


心なしかカラスまでもがワシを馬鹿にしているようじゃった。

最近、ふと気づきました。

主人公最強モノだったはずなのに、主人公より強そうな敵を出しては本末転倒ではないのかと・・・


ギャグのつもりで出したカヤコですので『直接戦わせなければ問題ないかな~』なんて甘いことを考えたりもしましたが、なんだかんだで戦っちゃってるし・・・


カヤコのモデルは呪怨の伽耶子さん。

ジャパニーズホラー最凶の一角です。

わたくしの中では『絶対に勝てない』『そもそも戦ってはならない』存在として意識的に刷り込まれてしまってます。

これにあっさり勝つ主人公なんて、むしろナンセンス。


別の例えをするならば、クロスオーバーモノで、誰もが最強と認めるであろうドラゴン○ールのゴクウにオリ主がアッサリ勝っちゃったりして、「オリ主テメェ何様だよ!?(怒)」みたいな感じ・・・


以上、苦しいイイワケだったりします・・・



次回、神様によって封印されたカヤコだが・・・

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