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第13話 野に咲く~♪花のように~♪

第13話投稿します。


皆様、お久しぶりです。へたれぬこです。

長い間あけてしまい、申し訳ありませんでした。

仕事が忙しく、ネタを考える時間と書く時間がなかなかありませんでした。


これからも不定期ではありますが、ちょくちょく更新していきますので、よろしくお願いします。

Side 御子柴 陽一




カヤコ再封印のため久しぶりに奮闘した俺だったが、結果は無駄だった。そもそも前提が間違っていたのだ。


「ひっ!?

 あああああっ!?

 また出たっ!!

 また出たぁぁあああああぁっ!?」


カヤコはアリビアに完全に取り憑いてしまったのだ。

ただし、俺から移動(うつった)ではない。俺から感染(うつった)だ。

カヤコは依然として俺に取り憑いたまま。

ウイルスが増殖して他の人間に感染(うつ)り、被害を拡大していくように、カヤコも関わった人間を次々と巻き込んで呪いを広げていく特性をもつらしい。

厄介な事態になってしまった。

正直どう手を着けていいのか分からない。


ただでさえ、この世界で人間と魔族との争いを止めるという困難な課題を抱えているにも関わらずだ。


いっそのこと、呪いなんぞ指輪(アリビア)ごと目のつかない遠くに捨ててしまいたくなる。

しかし、それだけはできない。

流石に指輪(アリビア)に悪いということもあるが、拾った者・振れた者は次々に呪いを受けてしまう。

呪いを受けた者に関わるだけで、さらに他の者まで呪いを受ける。

俺の知らぬところで、鼠算式に呪いが広まってしまうことになる。


呪いが爆発的に拡大して、世界が滅亡なんてシャレにならん。



「あ、ああぁああぁああっ!?

 ヨヨ、ヨウイチィ~~~

 あ、あの女が・・・また・・・

 ま、また髪の毛がぁああああ~~~!?」


見ると、いつの間にかアリビアの体中に長い黒髪が大量に巻き付いている。



『あ”あ”あ”あ”あ”あ”』



そして突然のうなり声。


ビクッとしたアリビアの背後から、徐々に黒く大きいモノが這い出てくる。

ガサガサと不気味な音を立てて蠢くそれは、黒く長い髪の塊だ。


髪の隙間からわずかに顔がのぞいている。

髪でほとんど隠れているが、ギョロリと開かれた白い眼だけはハッキリ見える。

生きる者すべてに憎悪を向ける眼。生者を呪う眼だ。


眼だけで彼女がどんな貌をしているか分かる。

「苦しみ」「怒り」「妬み」「恨み」、あらゆる負の感情が入り混じったおぞましい貌が・・・


やっぱりカヤコは怖いな、いつ見ても・・・


ギッ・ギッ・ギッ・・・と壊れたオモチャのように恐る恐る後ろを振り返るアリビア。

振り返った先には、当然どアップのカヤコの貌があるわけだから・・・


「!?~~~っ!?」


声にならない声をあげて、気絶するアリビア。


四六時中付き纏われ、この底なしの悪意・害意にさらされ続けるのだ。

真っ当な人間が耐えれるハズがない。

精霊など人間に近い人格をもつ存在とて、例外ではないハズだ。


こんなのに取り憑かれてよく死ななかったよな・・・俺・・・

自分は強かな人間だと誇ればよいのか、それとも真っ当な人間ではないと嘆けばよいのか・・・


ちなみにアリビアは、ここのところ実体化して俺のそばから離れない。

そのせいで、俺はアリビアの見たくもない恐怖体験を見る羽目になっている。


指輪の中に戻ってもカヤコから逃れられないそうで、いわく、常に女の黒い影とギョロリとした眼が付き纏ってくるらしい。

彼女(アリビア)の精霊としての人生(?)の中で、これほど恐ろしいことはかつてなかったそうだ。


何とかしてやりたいところだが、あいにく俺は除霊なんてスキルはない。

俺の場合は魔力と精神力にモノを言わせて抑えつけている。

スキルなどとは言えない力技だ。

本当にどうしようか・・・



・・・・・・



「ヨウイチッ!!!

 あの女は本当にナニモノじゃっ!?

 おぬしは精霊じゃと言っておったが、

 あんな禍々しい、おどろおどろしい精霊なんておるものかっ!?」


しばらくして気絶から目を覚ましたアリビアが突っかかってくる。


精霊というのは流石に無理があったな。

さて、どう説明したもんか・・・


「これは、俺の故郷にある概念ですが・・・『呪怨』といいます。

 『呪怨』とは、強い恨みを抱いて死んだモノの呪い。

 すなわち怨霊、悪霊のことです。

 それは、死んだモノが生前に接していた場所に蓄積され、『業』となる。

 その呪いに触れたモノは命を奪われ、新たな呪いとなる・・・

 こうして呪いが新たな死を呼び、死が呪いを大きくしていく・・・

 これが永久に繰り返され、怨念は際限なく膨れ上がり、最終的に全てをのみ込みます」


説明としてはこんな感じで十分だろう。

アリビアは真っ青な顔をして、口をパクパクさせている。

(わらわ)はなんというモノにふれてしまったんじゃぁああぁっ!?』

ってな顔だ。

少々脅しのような説明になったが、決して誇張ではない。


「ばっ・・・馬鹿なっ!?

 わ、(わらわ)は高位精霊じゃぞっ!?

 高等な霊格をもつ精霊が、下級な悪霊なんぞに憑り殺されてたまるかっ!!

 ヨウイチッ!!

 (わらわ)がこんな目に遭うのもおぬしの責任じゃぞっ!?

 なんとかいたせ、今すぐっ!

 さあっ!

 さあっ!!

 さあっ!!!」


アリビアが俺の襟元を掴んで涙目で迫ってくる。


こんな時は・・・


「よしっ」


「!? 何かよい考えがあるのか?

 ヨウイチっ!?」


「気分転換に出かけよう!」



・・・・・・



そういうわけで、俺とアリビアは街に繰り出した。


「おいしいものでも食べて、とりあえず嫌なことは忘れましょうや」


「・・・そうじゃの・・・」


アリビアも少し落ち着いたらしい。

肩を落としながらも、俺の提案を受け入れた。



そうして行き着いた先は・・・・

オバちゃんたちが戦場・・・それは大市場!!


「ここで試食品を摘まむとしましょうか。

 三周くらい回れば、腹も膨れてくるんで」


「・・・・・・」


俺は常習だから変装道具が必須だ。

試食コーナーを一巡したくらいでは腹は膨れない。腹いっぱい食べたいなら、何度もループする必要がある。

そこで1ループごとに変装して格好を変えれば、売り子のオバちゃんに同じ人物とは気付かれない。

人目を気にせず、理論上、無限に試食コーナーをループ出来るのだ。


「さあ、いきますか」


「ま・・・待てっ!?

 待つのじゃ、ヨウイチッ!

 何が悲しくて、そんなわびしいマネを(わらわ)がせねばならんのじゃっ!?

 ここは、ぱっと高級料理店とかで、フルコースのディナーとか頼むものじゃろうが!

 ケチケチするなっ!!」


そんなこといってもな・・・

試食コーナー巡りだって捨てたものじゃないと思うが・・・


「イヤじゃイヤじゃ!

 そんなみっともないマネはイヤなのじゃ!!

 どうせなら高級料理店がいいのじゃ!!!」


アリビアは人目もはばからず、地団太踏んで嫌がっている。


「タダより高いモノはない。

 タダで食べられることこそ、最高のスパイスになるんですよ」


俺は持論を展開して彼女に対抗する。


「・・・・・・

 ああぁ~~~っ・・・・

 なんで(わらわ)はこんな人間に拾われてしまったのじゃ~~~・・・」


いい加減俺に呆れてしまったらしく、アリビアは頭を抱えてガックリうなだれている。


「魔力もでかいし、顔も好みじゃというに・・・

 とんでもない怨霊を感染(うつ)されるやら、

 こんな貧乏っちい恥知らずなことを平然とやったり・・・

 初めて会った時の(わらわ)のときめきを返してほしいぞ・・・」


まあ、あれだけひどい目に遭わされたら幻滅もするよな。

だからこそ気分転換のために外に誘ったのだが、お気に召さなかったようだ。


しかし、そんなに駄目かね? 試食コーナー巡り。

某料理マンガの三巻あたりで、ホームレスのおっちゃんが大企業の社長に接待でデパ地下の試食コーナーを巡って、仲良くなるという感動エピソードもあるというのに・・・


そうして試食コーナーという名の戦場に到着。

肉を焼くいいニオイがしている。


そして、いざ突入! と意気込んでいるところに・・・



「う、うまいんだな・・・

 ででで、でも、ぼくは・・・おむすびのほうがいいんだな・・・」


そこには既に先客がいた・・・


でっぷり肥ったカラダに、ぼろぼろのランニングシャツに半ズボンに下駄、リュックに赤い傘、スケッチブックを抱えた爺さん(?)がいた。

いかにも浮浪者(ルンペン)といったカンジ・・・

その姿はまさしく『 裸の大将 』!!


ずうずうしく試食コーナーの前に陣取り、試食用に焼いてある肉を食っている。


ヒョイ、パクッ、ヒョイ、パクッ


全く遠慮というモノがない。

食ったら次の肉を手を伸ばし、また食ったらさらに次の肉に手を伸ばす。

売り子のオバちゃんも流石にコメカミをひくつかせている。もうそろそろ爆発する頃かも知れん。


ヒョイ、パクッ、ヒョイ、パクッ


しかし裸の大将(仮)は、そんなオバちゃんの様子を気にした風でもなく、一心不乱に試食用の肉を食い続けている。



(ったく、誰だよ?・・・俺でも出来ないようなことを平然とやってのけるのは・・・)



異世界の地にてピンポイントで裸の大将の格好をする謎人物・・・無視はできまい。これはぜひとも確認せねばならない。

とりあえず裸の大将(?)の顔を拝んでやろうと、試食コーナーに横から回り込んで近づき・・・・・・固まった。


「むう、なんか変な爺がおるな・・・

 ヨウイチ、やはり考え直せ。

 あんな爺と同類と思われておぬしは平気なのか?

 (わらわ)は断じて御免じゃぞ」


アリビアは呆れ顔で俺に話しかけてくるが、俺はそれどころではなかった。


裸の大将(?)は知ってる顔だったのだ。それもごく最近知った・・・


(・・・神・・・様・・・?)


神様。

俺をこの世界に召喚した張本人。

人間と魔族との争いを止め、両種族の橋渡しをしろと無茶な依頼をしてきた爺さんだ。


その神様に目の前の裸の大将(?)はとてもそっくりなのだ。

そっくりというか、もしかして本人?



あの神様なら裸の大将を知ってても不思議ではない。


偶然で神様に似ている爺さんが、偶然に裸の大将の格好をしている可能性。

妙な気まぐれを起こした神様が、何をトチ狂ったのか裸の大将のコスプレをしている可能性。


あの神様の人となりを知っているだけに、後者のほうがよっぽど現実味がある。



(それにしても・・・)


こう言っちゃアレだが、すっげぇ似合ってる!

裸の大将の格好でずうずうしく試食品をむさぼる様には、神々しさのカケラも感じない。

ここまで浮浪者(ルンペン)が板についている神様って一体・・・



そんなことを考えているうちに裸の大将(?)は試食品の肉がとうとう食いつくしてしまい、


「お・・・オバちゃん。

 に、肉がなくなってしまったんだな・・・

 ぼ、ぼくは全然もの足りないので、もっと焼いてほしいんだな。

 お、おむすびでもいいんだな。うん」


さらにずうずうしいおかわり発言をした。

ここで、とうとうオバちゃんに限界が来た。


「アンタッ!!

 いい加減にしなっ!!

 試食品ばくばくたいらげて、さらにはおかわりだって!?

 ここは飯屋じゃないんだよっ!

 食いたきゃ金払って買いなっ!

 常識だろがっ!!」



「ぼ、ぼくはね・・・

 お・・・おなかがすいてたんだな・・・

 で・・・でも、お金ないんだな・・・

 お母さんが、し、死ぬ間際に『ぴよし、お前は頭が悪いから、おなかがすいたら親切な人たちから、おむすびをもらって食べるんだよ』って、言ってたんだな」



ぴよしってなんだよ!?

あんたの名前は『山下ぴよし』ってか!?

口調といい格好といい、やはりネタでやっているとしか思えんな、この爺さん。

神様である可能性が一気に高くなった。

というよりほぼ確定だろう。



「いい歳して母親のせいにするんじゃないよっ!?

 お金がないんだったら働いて稼ぐっ!

 当たり前のことじゃないのかい!?」



「ぼ、ぼくは頭が悪いから、働くのは苦手なんだな・・・

 そ、そうだ。お金がない時はこれを渡せばいいって、え、園長先生が言ってたんだな」


そしてぴよし(?)は、スケッチブックを開き、その中の一ページを無造作に破り取って、売り子のオバちゃんに渡した。


「・・・なんだい?・・・コレは・・・?」


オバちゃんは少し困惑しながらも紙を受け取っている。

俺も気になったんで、さりげな~く覗いてみた。


「ぼ、ぼくの描いた絵なんだな・・・」



・・・・・・



ブフゥウッ!!!???



描かれていたのは、なんと波平の絵・・・っていうかイラストかよっ!?

それも喜怒哀楽の4通りの表情を並べた豪勢な絵。

しかもめっちゃくちゃうまいっ!!

アニメクオリティーそのままの波平さんだ。


絵の左端の隅には、日本語で『ぴよし』とデカデカと書かれている。これまた達筆だ・・・

いや、この世界、日本語通じないから・・・

まあ、『山下』をいれなかった分だけマシかも知れんが・・・


「あんた!! いい歳してふざけるのもたいがいにしなっ!?

 こんな子供のラクガキ以下のモノじゃあ、1G(ゴールド)の価値だってありゃあしないんだよッ!」


残念ながら、オバちゃんにはこの絵のうまさが分からないようだ。

まあサ○エさんは作画自体がシンプルだからな・・・

アニメが自体が無いこの世界では、到底芸術とは認められないだろう。

日本なら、百人中百人が『 おお~っ 』と感嘆するであろう会心の出来だ。


こんなモノを描けるあたり、もはや疑う余地もなく、ぴよし(?)は神様だ。

本当になんでこんなところにいるんだ?

神様はよほどヒマなのか?


「とりあえずアンタはもうどっか行きなっ!!

 アタシャ、アンタみたいにヒマじゃないんだよっ!!

 シッシッシッ!!」


オバちゃんはよっぽど腹に据えかねたのか、せっかくの神様の力作(?)をビリビリと破いている。

一応は神様が描いたものだから、実際はとても値が付けられないほどのお宝なんだろうに・・・もったいない。


「ひひひ・・・ひどいんだな。

 モノを粗末にすると、もったいないお化けが出るって、

 ええ、園長先生が言ってたんだな!」


もったいないお化けって・・・


「い、い~~けないんだ~~、いけないんだ~~

 もったいないお化けが出るんだな~~

 ・・・というわけで、おむすびください!」


「まだ言うかいっ!?

 誰か~~~っ

 この爺さんを何とかしておくれよ~~~っ」


売り子のオバちゃんはとうとうまわりに助けを求め出した。

確かにオバちゃんが可哀そうになってきた。

神様、あれじゃ営業妨害だって・・・


しかしまわりの人たちは関わり合いたくないらしく、遠巻きに見ているだけだ。


仕方ない・・・


「あのー、すいません・・・

 その人、知り合いなんです」


俺としては非常に気は進まないが、自ら知人を名乗り出る。

こんな変な爺さんの知人と思われたくはないが、この神様の謎行動も気になるところだ。ぜひとも問いただしたいところ。


「ヨ、ヨウイチ!?

 お、おぬし・・・

 この爺と知り合いじゃったのか!?」


アリビアも大層驚いている様子。

そりゃそうだろう、こんな見るからに浮浪者(ルンペン)の変な爺さんと知り合いだってんだから・・・


俺の突然の名乗りに、オバちゃんとぴよし(?)は同時にこちらを向いた。


そして、ぴよし(?)が俺を指さして言った。


「あ~~~っ

 え、園長先生なんだな」


おいっ!?

お前の中では園長先生って俺のことだったのかよ!?

これじゃあ、ぴよしのこれまでの奇行は俺が仕込んだと思われるじゃねぇかっ!?


それを聞いたオバちゃんが


「アンタッ!!

 この変なのの保護者かいっ!?

 あんたの連れなら、ちゃんと手綱を握っときなっ!!

 こっちはいい迷惑だよッ!!

 それからこの爺さんに妙なこと吹きこんでんじゃないよっ!!

 ちゃんと教育しなおしな!!

 まったくっ!!」


「・・・すみません・・・」


弁明するのも面倒だ。

納得いかないが頭を下げておく。


こころなしか、まわりの人たちからも白い目で見られている気がする。

・・・非常に納得いかない。


「え、園長先生~~

 こ、このオバちゃんは、全然おむすびをくれないんだな・・・

 だ、だから・・・オバちゃんは、し、親切じゃないということになるんだな」


こらっ、ぴよし! いらんこと言うなっ!?


案の定、オバちゃんの貌が般若のように歪んだ。


「・・・なんだって・・・」


「いえ、なんでもありませんっ!

 さあ、いこうかぴよし(?)さん!」


俺は、ぴよし(?)の手を引っ張って、人気のない裏路地に連れて行こうとする。


「ま、待てっ!?

 ヨウイチ!!

 一体どういうことじゃ!?

 ヨウイチが園長先生とはどういうことなんじゃ?」


この爺さんとの関係が非常に気になるのだろう。

アリビアが突っかかってくるが、


「ちょ、アリビアさんはここで待っていてください!

 少し、人には聞かれたくない、混み入った話があるので!」


強引にアリビアをこの場にとどめる。

流石に神様との会話を聞かれてよいとは思わない・・・


・・・流石にこの爺さんが神様だとは、そう信じてもらえないだろうが・・・


「・・・それで、神様・・・

 説明してもらえるんですよね・・・

 なんで、こんなところで裸の大将やってるんですか・・・」


路地裏にぴよし(?)を連れ込み、早速問いただして見る。


「騒々しいのぅ~~~

 ワシだって、たまには遊びたくなる時もあるんじゃい」


そう答えた神様の口調は、裸の大将もどきから元の砕けた口調に戻っている。


それにしても・・・神様だからって好き勝手やりすぎだろう!?

裸の大将のマネなんてして・・・

異世界において知ってる奴なんていないだろうに・・・

意味ないことこの上ない・・・

だいたい、心が全然清らかではないこの爺さんが裸の大将って、あり得ないだろう?



「だいたい、ぴよしってなんですか?」


「うん? お茶目なワシらしい、可愛い名前じゃろう?」


「・・・・・・」


まあ、可愛い名前と思えなくもない・・・

可愛い猫(ぬこ)に付けるのは、確かにありかも知れん。


そもそも、人の名前なんてその人の勝手だから、何も気にする必要などないのに・・・

しかし、この爺さんが「ぴよし」だなんて、理由もなく殺意しか湧いてこないから不思議だ。


「まあ、そういうなや・・・

 狂言だったらお前さんとて、よくやるじゃろが・・・」


「・・・・・・」


痛いところを突かれて、俺は言葉に詰まってしまう。

話題を変えなければ・・・


「・・・とにかく神様・・・ぴよしさん、何しにここにいるんですか?」


わざわざこんなコスプレまでして現れたんだ・・・

いちおうは空気を読んで『ぴよし』と呼んでやることにする。


「さっきも言ったじゃろう?

 ヒマつぶしじゃよ」


「・・・ほんとうは?・・・」


「いや、じゃから本当にヒマつぶしなんじゃて!

 まあ、しいて言えばお前さんがこの世界を救うために四苦八苦している様を直に拝んでみたいなと・・・」


「さようですか・・・」


やっぱりそんなところだったか・・・

本当にヒマなんだな、神様って・・・


「それで、どうじゃ?

 何かいい方法はありそうかの?」


「いやあ、全然ですよ・・・

 これまでの勇者召喚や魔王召喚とは勝手が違ってて・・・」


未だに良い案が浮かばない。

そんな難しい課題、正直考えるのも億劫だ。

そんな俺が苦戦する様子に満足げな顔だ。


「ほっほっほ・・・

 しっかり悩むがよい、若者よ」


「まあ、今は別の問題も起こっているんですがね・・・」



これが今一番の悩みだ。



「ふむ?

 何のことじゃ?」


「じつは・・・」


俺は神様にカヤコのこと、それに関する経緯(いきさつ)を話した。



「ふーむ、なるほどのう。

 怨霊カヤコの呪いとな・・・

 ウイルスのごとく増殖し、際限なく広まっていくとは・・・

 それは確かに厄介じゃのう・・・」


「でしょう?

 ヘタをすれば、この世界中で呪怨感染爆発(パンデミック)ですよ。

 ・・・というわけで何とかなりませんかね・・・ぴよしさん・・・」


他力本願は好きではないが、せっかく目の前に神様がいるのだ。

神頼みしてみてもいいかも知れん。


これで解決できるならば、まさにご都合主義(デウスエクスマキナ)。訳すれば『機械仕掛けの神』ってやつだ。

この言葉は、古代ギリシャの演劇において、物語が糸のよう絡まって終結困難な内容である場合、ラストで舞台装置に吊るされた神様が降臨して、チート能力であっさり解決。そうして強引に物語を終結させる手法が語源と言われる。


『機械仕掛けの神』なんてカッコいい響きではあるが、実体は舞台装置に吊るされたゴンドラに乗っかり、『はっはっはっ、ワシは神じゃ~』と突如現れる変な爺さんやオッサンらしい。

そんなんで神様を名乗れるなら、裸の大将のコスプレで『お、おむすび食べたいんだな』と試食品をあさる神様もありかも知れない。

怪しさのレベルでは、ドッコイドッコイだ・・・


「ふむ、この世界の神としてカヤコは確かに捨てはおけん。

 ワシがカヤコをこの世界から消滅させてくれよう!」


「!?」



マジかよ!?

頼んでみるもんだな。

へたれぬこです。


わたくし、昔から裸の大将や水戸黄門が大好きでしょっちゅう観てました。

普段(というか旅先で)は、しがないオッサン・爺さんとしか思われていませんが、ラストで実はものすごい高名な人物だと分かり、まわりの人間が大騒ぎして態度が一変する。

そういう流れが好きなだけですが・・・


今回、神様が再登場しました。

主人公ですら手に負えないカヤコですが、神様ならば何とかしてくれるハズ?

まあ作中述べている通り、あまりに強力なカヤコの呪いを抑え込むために、ご都合主義的手法(デウスエクスマキナ)として神様を出したわけですが・・・


次回、神様が除霊をおこない・・・

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