第12話 ジャパニーズカルチャーはマジ最凶
第12話投稿します。
ジャパニーズカルチャーはいかに凶悪か・・・という話です。
この後、しばらく充電期間に入ります。
P.S.
愚かなへたれぬこです。
一回投稿したところ、指輪の精霊の名前について指摘がありました。
その単語の意味を知らず、とてつもなく恥知らずなネーミングをしていました。
筆者の無知ゆえの大失態です。
急遽、変更いたしました。
これからはネーミングの際、一旦検索して差し障りないか検討するようにします。
既に読まれていて不愉快な思いをされた方、本当に申し訳ありませんでした。
Side 御子柴 陽一
山賊団も壊滅させたし、クエストの薬草採取も終わったし、メスゴリラたちにも婿が見つかったし、俺とエリナは村を出て街に帰ることにした。
村人たちに見送られて。
山賊どもから救出した娘さんは、
「あ、あのっ・・・
またいらしてください・・・」
と、顔を赤らめながら俺に言ってきた。
「ええ、機会があれば・・・」
俺はそう返しておいた。
もっとも、そう答えておいて本当にまた訪れるヤツなどそう居ない。
その間、俺の隣でエリナは不機嫌そうな顔をしていた。
そうして、街へと帰る道中のこと。
「ねえ、ヨーイチ」
エリナが話しかけてきた。
「私ね・・・勇者だって言ったでしょう?
私の兄も勇者だったんだ・・・
8年前の魔族侵攻の時、魔王に戦いを挑んで帰ってこなかったけど・・・」
俺は黙ってエリナの話を聞き続ける。
「私はね・・・兄の・・・お兄ちゃんの無念を晴らすために勇者になったんだ・・・
両親は小さい頃に魔族に殺されて、お兄ちゃんだけが私の唯一の家族だったから・・・
魔王を倒して人間の・・・平和な世界を取り戻す・・・
それがお兄ちゃんがいつも口にしていた夢だったから・・・」
寂しそうな顔をしてエリナは話を続ける。
「それからは、自分で言うのもなんだけど厳しい修業を積んで剣の腕を磨いて、魔獣もたくさん倒して・・・」
「そんなことを続けているうちに、いつの間にか周りから次期勇者って期待されるようになって・・・」
「まだ公表はされていないけど、ついこないだ勇者として認められたの・・・」
「とはいっても剣の腕も多分まだあの時のお兄ちゃんには及ばない・・・
だから、せめて志だけは強く持とうって・・・
人々を守りたいという気持ちを糧にしようって・・・」
そこでエリナは悲しそうな顔をした。
「でも駄目ね・・・
いろいろなところで旅をしてると分かるんだけど、
人間って言ってもいろいろいるの・・・
優しい人もいるけど・・・悪い人はもっといるかも・・・」
「そういうの見てきたら・・・少し不安になってきたの・・・
仮に私が魔王を倒したとしても、世界は本当に良くなるのかって・・・
私が死にモノ狂いで頑張ったって、そんなに意味はないんじゃないかって・・・
その度に人々を守るのが勇者としての務めなんだって、自分に言い聞かせてきたけど・・・
けどやっぱり不安になって・・・」
「でもヨーイチやあの村の人たちを見て思ったの・・・
あの人たちは、たとえ力が無いとしても、他人のために戦おうとした。
私が守りたいのはそういう人たちなんだって・・・・
そういう人たちのためなら、私は勇者として戦えるんだって・・・」
「でもやっぱり一番はヨーイチのおかげかな・・・
私が危なくなった時、ヨーイチは人を撃って助けてくれたでしょ?
いつもは優しいヨーイチが・・・
不謹慎だけど・・・本当にうれしかったんだよ・・・」
「守りたいモノのために勇気を振り絞って立ち向かう・・・
それが勇者なんだって、ヨーイチを見ててそう思ったの・・・」
「だから、私にとってはヨーイチが勇者なんだよ?」
ここでエリナは俺を見てニッコリ笑った。
「・・・・・・」
ちょと困った・・・あまりの現実との乖離に、気まずくなって流石に視線を反らしてしまう。
「ふふ・・・心配しないで・・・
魔王と戦って来いなんて言わないから」
「魔王と戦うのは私の使命・・・
ヨーイチには優しくて勇敢な・・・私だけの勇者様でいて欲しいってこと」
「私、もっと強くなるわ・・・
強くなって、魔王を倒して、それからまた私と会って欲しいの・・・
伝えたい気持ちがあるから・・・」
そんなエリナに俺は
「・・・はい・・・」
やっとの想いで、この言葉を絞り出した。
キタ・・・キテしまった・・・
これは十中八九で告白フラグ・・・
流石に勘違いってことはないと思う・・・
(どうしましょか・・・俺・・・)
それから俺とエリナはギルドで報償金を受け取り、その場で別れた。
それから3日間、俺は自堕落な生活をおくっていた。
日中の大半を寝て過ごし、小腹が減ったら外に出る。
向かうのは手頃な食堂でも高級レストランでもない。
大勢の主婦たちが通いにぎわう大市場だ。
そこではファンタジー世界には似つかわしくないが、日本のスーパーマーケットのように各所に試食コーナーが設けてある。
街が裕福な証だ。
ひょいっ ぱくっ
俺はひたすら試食品を取って腹に入れる。
同じコーナーにとどまると売り子のオバちゃんに目を付けられるため、一口食っては別のコーナーに移動。
また一口食っては別のコーナーに移動を繰り返す。
一通り試食コーナーを回ったら、また最初のコーナーに戻り、何食わぬ顔でまた試食。
本日はこれで三周目だ。
黒髪は目立つためスッポリと帽子をかぶってはいるが、流石に三周目となると流石に売り子のオバちゃんに気付かれたらしい。
『また来たのかい、コイツ』
みたいな視線を投げてくる。
そろそろ潮時か・・・そう感じていそいそと切り上げる。
(次からは一周ごとに変装する必要があるな・・・)
そんなことを考えながら・・・
さて街をブラブラ歩いていると、
「ちょいと、そこの帽子のニイちゃん。
ウチで何か買っていかんかね?
今なら面白いものを仕入れとるよ」
唐突に声をかけられた。
声の主は露天商のおっさんで、地面に布を敷き、その上で様々なモノを置いて売っている。
(うーん、少し見ていくか・・・)
ここ最近の俺はエリナの件や神様の依頼の件で、テンションが下がりまくっていた。
気分転換にいいかもしれないと思い、俺は置かれている商品に目を通していく。
その中で、
(うん?・・・これは・・・)
それは一見、何の変哲もなさそうな指輪。
だがなにやら魔術的な仕掛けがあるようで、不気味な魔力を漂わせている。
明らかに掘り出し物っぽい。
「おっ、ニイちゃん。
そいつの良さが分かるんかね・・・
なかなかに見る目があるじゃないかい。
こいつはかの有名な錬金術師が作った・・・」
俺が指輪に興味をもったと見た露天商のおっさんは一気にたたみ掛ける。
話している逸話はおっさんが即興で作ったニセモノっぽいけど、指輪自体には確かに興味が湧いてきた。
「そもそもこの指輪を所有したといわれる「この指輪ください」・・・はいよっ!!」
おっさんの話はどうでもよいので、さっさと指輪を購入して宿に戻った。
「では、指輪をはめてみようか」
指輪をはめる。
すると指輪が光を放ち、輝きだす。
わずかだが指輪に魔力を吸われているようだ。
そして光がはれ、
「ふう~っ、イキの良い魔力を喰えて久しぶりに受肉できたぞ」
そこには銀髪ツインテールに金色の瞳が目を引く美少女がいた。
身長は160cm弱といったところ、エリナと同じくらいか。
黒いゴスロリ衣装を身にまとっている。
もしかしなくても、この指輪から出てきたのだろう。
テンプレだとこの指輪に宿った精霊さんとか・・・
美少女は俺を見てニッコリ笑い、
「はじめまして・・・じゃな。
妾はこの指輪に宿っておる精霊じゃ。
今はおぬしの魔力を糧に受肉しておる」
そう挨拶してきた。
なので俺も返す。
「ああ、はじめまして。
陽一・・・御子柴 陽一といいます」
「うむ、礼儀正しいのは美点じゃ。
ヨウイチといったな。
妾はアリビアという名じゃ。
以後そう呼んでたもれ」
アリビアさんとやらは満足げに頷いている。
「おぬしの身につけておるその指輪は『アリビアの指輪』と呼ばれておってな。
これを身につけたものに強大な力を授けるものじゃ・・・」
うん、テンプレな指輪だな・・・
「すごいんですね」
無論、そんな浅はかな考えは表に出さない。
「ふふん、そうであろう?
じゃが、ただ身につけるだけでは力は授からぬ。
妾と契約し、心身一体となることで強大な力が得られるのじゃ」
得意そうに胸を反らせるアリビア。
「ちなみに、強大な力とは?
具体的にどんなモノが?」
強大な力とやらが少し気になったので聞いてみた。
「うむ、精霊魔術じゃ!
人間の身で精霊魔術を使いこなせるのじゃ、まさに強大な力じゃろう?」
「はあ・・・
すごいんですね・・・」
正直この世界の精霊魔術とやらが、どれほどすごいか分からない。
適当に驚いたフリをしておく。
「うむ、ただし先ほども言ったように指輪をはめれば力が授かるというわけではない。
妾に認められねばならん。
魔力はもちろんのこと、ふさわしい人格かなどじゃ」
ふむ、俺の場合は魔力はともかく、人格は怪しいモンだ。自分で言ってて悲しいが・・・
「おぬしの場合、魔力は全然問題ナシじゃ。
あれほどの大量の魔力を吸われて平然としておる。
一流と呼ばれる魔術師でも、あれほど吸われたら底を尽いてしばらく寝込んでしまうんじゃが・・・」
容赦ないですね、指輪さん。
「人格の面じゃが、おぬしを見る限り邪悪な感じはせん。
これでも人を見る目はあるつもりじゃ。
おぬしなら、妾と契約する資格を持つのやも知れん。
これからおぬしに試練を課す。
見事これを乗り越え「あのー、すいません」・・・なんじゃ、話の途中じゃぞ」
話を折られ、怪訝な顔をするアリビア。
「すいません、俺、アリビアさんと契約するつもりはないんです」
「はあぁっ!?」
俺の言葉に唖然とするアリビア。
「ま、待て、なぜじゃ!?
人の身で精霊魔術が使えるようになるのじゃぞ!?
過去に妾と契約した者は、いずれも富と名声を得て英雄として歴史に名を残しておる!
おぬしにはそういった願望はないのか?」
「いえ、あんまり・・・」
「・・・・・・」
富や名声なんて興味はない。
そういったものとは無関係に、面白楽しく生きていければそれでいい。
それに・・・
「それに俺、既に別の精霊と契約済みなんです」
実はこっちの方が切実な問題だったりする。
「な、なんじゃと!?」
突然の俺のカミングアウトにアリビアは驚いた様子。
しかしアリビアは
「妾にはおぬしの中に精霊の存在など感じ取れんぞ。
本当に精霊と契約なんぞしておるのか?」
やはり精霊として、そういう精霊との繋がりとかが分かるらしい。
まあ、俺の場合はちょっと、いやかなり特殊だから・・・
「ええ、俺の精霊はすこし特殊で、精神のかなり深いところに棲みついているので・・・」
嘘ではない。嘘ではないが・・・
「うーむ、嘘を言っているようには・・・見えんな・・・
しかし、そうなると気になるのう、その精霊とやら。
よし、これから指輪を介しておぬしの精神に潜ってみるぞ!
その精霊とやらに会ってみたくなったわ!」
アリビアはそう言い放つと、光になって消えてしまった。
どうやら俺の精神に潜ってしまったらしい。
「あー、止めたほうがいいのに・・・」
止める暇もなかった。
俺の精神に棲みついている精霊・・・確かにそれは実在する。
ぶっちゃけ、契約したという言い方はカッコつけすぎ。
実際は憑かれてる。
精霊は女性型で、白いワンピースを着て腰まで伸びた黒い長髪が特徴。
肌はとても白い・・・白くて白くて、それはもう死人のように青白い。
目は黒くて・・・それも目の周りまで黒くて隈みたいになっている。
無口で・・・たまに口を開けば『あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・』という独特のうなり声。
アリビアのように受肉して現界することもでき、気付けば俺の後ろに立っていたり、布団の中に現れたり、首に手を這わせて絞めてきたり、風呂の中に引きずり込んで溺れさせようとしたり・・・
はい、ぶっちゃけて言いますが、全然精霊なんかじゃありません。
霊は霊でも幽霊?
いや怨霊だな、あれは・・・
一般にリングな貞子とか呪怨な伽耶子とか言われている人たちだ。
この場合は伽耶子だな。
だから俺に取り憑いている彼女もカヤコと呼んでいる。
やっぱり中学校の頃、遊び半分で入った幽霊屋敷で憑かれたんだろうか・・・
なにやら昔その家に住んでいた夫妻がいたそうだが、妻が夫に惨殺されて、夫もまた奇妙な死を遂げたとやらで。
そのまま買い手が付かず、空き家になっていた屋敷だ。
当時の俺は、実に調子に乗っていた。
リアルでファンタジーを制覇し、元の世界で恐れるものなどないと思い上がり、テレビで紹介される超常現象やスプーン曲げなどの超能力をエセファンタジーと評してケチをつけまくっていた。
何をトチ狂ったのか、その一貫として心霊スポットにも大いに喧嘩を売りまくった。
それが幽霊屋敷に入って以来、白い女性が昼夜問わず、俺の前に頻繁に出現しては俺をとり殺そうとしてきた。
流石に俺も死ぬかと思った。
精神はドンドン擦り減っていき、食事ものどを通らなくなり、寝ることも出来なくなった。
今でこそ、俺の膨大な魔力でなんとか精神の奥底に封印することができ、その恐怖におびえることはない。
ちなみにファンタジーではそれ以来、精霊などと契約することができなくなった。
それまで俺と契約していた精霊たちも同様。
原因は言わずもがなカヤコ。
どの精霊も俺と契約して数瞬後、泣き叫びながら俺の中から飛び出して来るのだ・・・
顔面蒼白で、ガチガチと歯を鳴らす精霊たちに対し、俺は決まってこう言った。
「安心してください。クーリングオフは受け付けますから」
精霊たちは即決で契約解除を受け入れてた。
さて、今回のアリビアも同じようになるんだろうな・・・
Side 指輪の精霊 アリビア
指輪を介してヨウイチの精神に潜る。
ひたすら奥へ奥へと進む。
それにしてもヨウイチめ・・・
この妾がせっかく誘いをかけてやったというに、それをあっさり断りおって・・・
こんな屈辱はじめてじゃ!
一体どんな大層な精霊と契約しておるかは知らんが、気に入らん!!
大したことない精霊じゃったら、ヨウイチの中から追い出してやろうかの!
そうして奥へ奥へと進み、出た先は
「うん・・・?」
何やら家がある・・・
ここがヨウイチの心象世界?
何やら変わっておるのう・・・
普通じゃったら心象世界は草原とか青空とか相場は決まっておるのに・・・
見なれぬ趣向の家ではあるが、どこか寂びれた感じもするのう・・・
扉を開け中に入ってみる。
家の中は薄暗く、明かりもついておらん。
木製の階段が目についたので登ってみる。
階段を登った所にドアがあったので入ってみる。
「・・・・・・」
薄暗い部屋の中には女がおった。
長い黒髪を無造作に垂らして、うつむいているため顔は見えぬ。
肌は病的に真っ白で、白いワンピースを着ている。
こ奴がヨウイチと契約しとるという精霊じゃろうな。
(ふん、ヨウイチも所詮は男ということか・・・)
この女がおるから、ヨウイチはわらわと契約したくないと言ったのか?
ヨウイチと同じ黒髪じゃからか!?
ますます気に入らん!!
妾の女としての魅力がこの女に劣るとでも!?
そう思われておるなら心外じゃ!!
『ふん、まずは挨拶といこうかの?
妾の名はアリビア。
ヨウイチと契約予定の精霊じゃ』
・・・・・・
挑発を含んだ妾の言葉に女は何も言わん。
(ち、辛気臭い女じゃ・・・)
ヨウイチもこんな女のどこが良いんじゃ!?
「黙っておらんで、何か言ったらどうなんじゃ!?
格式高い精霊アリビアが挨拶しておるのじゃ。
何も返さぬなど無礼であろう!!」
ついカッとなって声をあげる。
そこで、やっと女は動いた。
ゆっくりと顔をあげていく。
『あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・』
む・・・?
なんじゃ、この女・・・
妙なうなり声をあげおって・・・
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・』
本当に薄気味悪い女じゃ。
ヨウイチもこんな女とはさっさと契約を打ち切ってしまえばよいものを・・・
そして先ほどの無礼を謝るのなら、妾も快く契約を結んでやらぬこともない!
・・・顔も少し妾好みじゃしの・・・///
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”』
うるっさいのぅ!!
女は相変わらず変なうなり声をあげておる。
妾はイライラしながら、あがった女の顔を見---------
Side 御子柴 陽一
アリビアが俺の中に入って数瞬後、
『きゃぁあああああああああああああぁっ!?!?』
案の定、アリビアが泣き叫びながら俺の中から飛び出してきた。もちろん実体化して。
『ああああああぁっああああああああ!?!?』
アリビアはひどく錯乱しており、ぺたんと床に座り込んで泣きじゃくっている。
そしてアリビアの座り込んだ床から水たまりが広がっている。
恐怖のあまり失禁してしまったようだ。
失禁までした精霊はアリビアが初めてだな。
それにしても精霊なのに失禁するんだな、なんてどうでもいいことを考えてしまう。
「あー、アリビアさん、大丈夫ですか?」
「ううううぅ・・・ぐずっ・・・
ヨ、ヨウイチ・・・なんじゃあれは・・・
なんなんじゃ・・・あの化け物は・・・」
まあ、当然の疑問だろうな。
「えーと、先ほど話したと思いますが・・・
彼女が俺の中にいる精霊です」
「あ、あほぬかせっ!
あんな精霊おってたまるかっ!!
精霊という存在に対する冒涜じゃっ!!!
うぅ・・・ぐすっ・・・」
「まあ、確かにそうですね・・・
ところで、クーリングオフは受け付けてますが・・・どうします?」
俺は毎回お決まりになった言葉を言った。
「く、くーりんぐおふとはなんぞ?」
アリビアは涙目でかわいらしく首をかしげている。
この世界ではクーリングオフという言葉は通じないらしい。
「契約は無かったことにしましょうってことですよ」
まだ契約はしてないけどな。
「う、うむ!
くーりんぐおふ!!
くーりんぐおふじゃ!!!」
勢いよく、首をコクコク振るアリビア。
「あんな化け物にとり込まれたら、
いくら精霊の妾といえども消滅してしまうわっ!!
残念じゃがおぬしとはここでお別れじゃっ! ヨウイチ!!」
「はあ、やっぱりこうなりましたね・・・ってあれ・・・」
「ん!? どうしたのじゃ? ヨウイチ・・・」
キョトンとするアリビアの両肩に白い手が乗っている。
アリビアはまだ気付いていない。
『あ”・・・』
『あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・』
聞こえてはならない例の声が聞こえる。
「・・・・・・」
ひきつった顔でギギギと後ろを振り返るアリビア。
そこには
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”』
俺の精神の奥底に封印されたハズのカヤコが居た。
「・・・・・・」
ぱたんっ
恐怖で声もあげれずにアリビア気絶。
精神世界から現実世界に出る際、カヤコまで引っ張ってきてしまったのだろう。
こんなこと初めてだが・・・
「ふうっ・・・・」
俺はひと息をつく、そして
『あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”』
不気味な声をあげるカヤコを再び封印すべく、久々に勇気を奮い立たせて彼女に立ち向かった。
ああ・・・今日中に終わるかな・・・
読んでくださってありがとうございます。ヘタレなヌコです。
今回、ジャパニーズホラー最凶の一角・カヤコさん(?)が出てきました。
サダコさんもですが、その気になれば世界中の人間を呪い殺すことの出来る彼女ら。
絶対ファンタジーにおける魔王なんかよりタチ悪いって!!
陽一がそんなヤヴァイ彼女と契約(?)できるのも、最強主人公だから!!
次回、まだ決まってません・・・