第11話 ゴリラ大行進
第11話投稿します。
お久しぶりです。へたれぬこです。
4月から仕事が忙しくなるため、更新頻度が下がるかもしれません。
でもミステナイデー!?
Side 御子柴 陽一
山賊軍団はゴリラ軍団の猛攻により壊滅した。
役目も終わったし俺も村に戻りたいところだが、そうもいかない。
後始末が残っている。
エリナや村人たちにしてみれば、山賊たちは未だ残存しているハズ。
それがすべて壊滅したとなればどうなるだろう?
当然、最後まで残ってた俺が何かやらかしたと疑われるだろう。
特にエリナ的には俺はビーダ○ン以外に能なしという認識のはずだから、ゴリラ召喚して戦いましたなんて言いづらい。
ゴマかせるものならゴマかしたい。
そういうわけで、
「ではメスゴリラたちよ、これからしてもらいたいことがある」
俺は彼女たちに指示を出す。
彼女たちは、力尽きてグッタリした山賊どもを肩に担ぎ、俺の前に並んでいる。
山賊どもは
「ママー、こわいよー」
「もうイタいの、いやー」
「えひゃひゃひゃひゃ・・・」
などとほざいている。
全員幼児化したり気が狂ったりしたようだ。
「・・・というわけで、以上のことをやってほしい」
「「「「ウホッ・・・・ウホホーーーッ!!」」」」
あらかた説明し終え、彼女たちに分かってもらえたようだ。
本当なら召還魔術で今すぐにでも元の森に送り返すことができるのだが、俺の身の潔白(?)を証明するためにもそれはできない。
そのために彼女たちにひと働きしてもらわなければならない。
「ありがとう。
すまないな・・・」
俺の勝手なワガママに快く付き合ってくれる。
彼女たちは本当にええ娘や・・・
しんみりしている俺に、一体のメスゴリラが肩に手を置いてくる。
ふと顔をあげた俺に対し、彼女はニカッっと歯を剥き出しにして、
『グッジョブ』
とサムズアップ。
そしてツンツンと肩に担いだ山賊を突っついている。
なるほど彼女たちも婿が出来たのが嬉しかったらしい。
突っつかれた山賊は
「ひっ!?ひっ!?」
と情けない声をあげているが、ざまぁ。
ジャイ子と結婚させられる別未来ののび太もきっとそんな感じだったんだろうな・・・
かく言う俺も、夢とはいえ花沢さんと結婚させられそうになったからその恐怖は分かる。
おっと、こんなことを考えていては彼女たち失礼だ。
俺もニカッと笑い、彼女たちにサムズアップで応えた。
Side エリナ
「遅いわね・・・ヨーイチ・・・」
ヨーイチが時間稼ぎしてくれたおかげで、私とさらわれた娘さんは無事に村にたどり着くことができた。
それからしばらくたつけど、一向にヨーイチが戻ってこない。
村の人たちには一通り事情を説明しておいた。
怪我も村の人たちに手当してもらった。
みんなもヨーイチのことを心配してくれている。
特にさらわれた娘さんは気が気じゃないようだ。
今も目に涙を浮かべてソワソワしている。
私も同じ・・・
ヨーイチに何かあったらと思うと・・・もう・・・
もう限界だ。
「私・・・ヨーイチのところに戻るわ・・・」
村人たちは驚き、
「で、でも手当したからといっても、その怪我じゃ「ヨーイチのほうが心配だわ」・・・」
それだけ言って私は立ち上がる。
すると
「だったら、俺もいくぞ!!」
村人の一人が声をあげた。
さらわれた娘さんの父親だった。
「あんたらには娘を助けてもらったんだ。
その恩を返したい!!」
彼は肩に大きな斧をかついでいる。
すると、そんな彼を見た村人たちは
「だったら俺も行く!!」
「俺も!!」
と次々に声をあげ、武器をもってくる。
「みんな・・・」
そんな彼らを見て、胸の内が熱くなってくるのを感じる。
「なあに、山賊もあと9人しか残っていないって言うじゃねぇか!
こんだけ人数がいればなんとかなる!」
娘さんの父親が照れくさそうに笑いながら言う。
「うん!
みんな、ありがとう!」
嬉しい。
危なくなった私を助けてくれたヨーイチ。
そして今度はそのヨーイチを助けようと、こんなにたくさんの人が立ち上がってくれた。
私は頼もしい応援を連れて、再び山賊のアジトへ向かおうとしたところで、
ドドドドド・・・・
何やら地響きが聞こえてきた。
「・・・?」
地響きは森の方から聞こえてくる。
森を見ると、何やら土埃が舞っている。
「なにかしら・・・?」
目を凝らして見ていると、地響きは大きく、土埃は派手になっていき、
「「「「ウホッウホッウホッホホホホッ」」」」
「!? ま、魔獣ですってっ!?」
土埃の中から現れたのは魔獣。
(一体じゃない!?)
大型の魔獣が数体こっちに向かって来る。
「そ、そんな!? どういうことなんだ!?」
「な、なぜ魔獣が森に!?」
「聞いたことないぞ!?」
魔獣の姿に気付いた村人たちは騒ぎ始める。
よく見ると魔獣すべてが肩に何かをかついでいる。
さらに目を凝らして見てみると、人のようだが・・・
(えっ!? あれって山賊!?)
私たちがさっきまで対峙していた山賊たちだ。
なぜ彼らが魔獣にかつがれているのか・・・?
(・・・っ!?
そんなことより、このままじゃ村が・・・)
この方向だと、魔獣たちは村にぶつかってしまう。
大型の魔獣が複数体・・・確認したところ9体か。
万全の状態でも難しいのに、手負いの私がとても戦える相手じゃない。
「くっ!?」
そうこうしているうちに目前に迫ってくる魔獣たち。
「うわあぁぁぁっ、どうすんだよぉ!?」
「あんなデカイ魔獣に、こんな剣や斧じゃあ歯が立たねえぞ!?」
「このままじゃあ村が!?」
村人たちは顔面蒼白になってうろたえている。
(こ、こんな時こそ・・・私がっ!!)
とっさに剣を構える。
これまで魔獣を相手に戦ってきたことは何度もあるけど、こんな最悪の状況は初めてだ。
大型の魔獣が9体。
手負いの私。
村の中。
村人たちも絶望的な顔をしている。
私の頭を死がよぎる。
山賊に襲われそうになった時はヨーイチが助けてくれた。
でも今度は・・・
(ヨーイチ・・・!!)
心の中で叫ぶ。
魔獣たちは、そんな私を・・・
跳び越え・・・
「え・・・?」
思わず間抜けな声が出る。
村人たちも同じ反応。
魔獣たちは私たちを無視し、村を突っ切っていく
「きゃああああっ!?」
「魔獣が来たぁああっ!?」
「た、たすけてぇ!?」
村は一斉にパニックに陥るも、
「「「「ウホッウホッウホッホホホホッ」」」」
魔獣たちは村人たちを跳び越え、建物を迂回していく。
地響きと土埃をまき散らしながら、どんどんその姿は遠ざかっていく。
村に被害は出ていない。
「ど・・・どういうこと・・・?」
わけが分からない。
魔獣が突然現れたこともそうだが、凶暴な魔獣が人間に危害を加えずに素通りしていくなんて・・・
村人たちも同じ疑問を抱いているのか、茫然としている。
気が抜けてへなへなとその場に座り込む。
そこへ
「みんなー!
無事ですかーー?」
聞きなれた声が聞こえた。
Side 御子柴 陽一
ゴリラ軍団を村に向かわせてから、俺も村に向かった。
案の定、突然のゴリラ軍団の乱入により、みんな茫然としている。
見たところ村に被害はない。彼女たちはうまくやってくれたようだ。
「みんなー!
無事ですかーー?」
茫然としている村人たちに声をかける。
「ヨーイチ!?」
真っ先に俺の声に反応したエリナ。
座り込んでいた彼女はフラフラと立ち上がり、駆け寄ってきて
「ヨーイチ!!
無事だったのね!!」
俺に抱きついてきた。
「ええ・・・なんとか・・・」
少し驚いた。
エリナは目に少し涙を浮かべている。
そんなに俺のことを心配してくれていたのか・・・
ええ娘や・・・
「あの後、何があったの?
あの魔獣は一体・・・?」
やはりあの後のことが気になるらしく、エリナは聞いてくる。
「俺にも分かりません・・・
あの後できるだけ時間を稼ごうとしてたんですけど、いきなりあの魔獣たちが現れて・・・」
こういう場合は知らぬ存ぜぬで通すに限る。
「魔獣たちは山賊たちを捕らえて・・・
なんていうか・・・その・・・
交尾を始めたんです・・・力づくで」
流石に少し言葉を選びながら説明する。
「え・・・
こ・・・こうび・・・って・・・?」
その言葉の意味を理解し、どんどん顔が赤くなるエリナ。
嘘は言っていない。魔獣たちは俺が召喚したという肝心な事実を言っていないだけで・・・
「で、でもよくあなたは無事だったわね・・・」
赤くなったのを見られたくないのか、顔を伏せながらエリナは言った。
「ええ、俺も捕まりそうになったんで、魔導具を撃って威嚇したんです。
そしたら、森の獣と同じように逃げ出して・・・
山賊たちを抱えたまま・・・」
このあたりが嘘だ。
実際は村に向かって走るよう俺が指示を出したのだ。
その際、誰も傷つけない、何も壊さないよう念を押した。
村を突っ切ったら、そのまま元の森に帰るように指示してある。
元の森の方向と距離は分かっているからな・・・
・・・連れ去られた山賊どもは、婿という名の彼女たちの性奴となることだろう。
・・・早々に理性が壊れたのは幸運かも知れんな・・・
「村の方向に逃げたんで、心配だったんです・・・
村に被害はありませんでしたか?」
分かり切ってはいるが、しらじらしくエリナに聞く。
「え・・・ええ・・・
村には何も被害はなかったわ。
不思議よね・・・
いくら逃げるのに必死だったとしても、何も被害を出さずに素通りしていくなんて・・・」
「・・・そうですね・・・
不思議なこともあるモノですね・・・」
しらじらしく返す俺、あくまで知らぬ存ぜぬを押し通す。
そのあと俺は村人たちに囲まれて、同じ説明をする羽目になった。
この付近の森は本来、魔獣は棲んでいないらしく、突然の魔獣の来襲の事実(?)に村人は全員不安げだった。
やれ領主に頼んで討伐隊を組織すべきだの、ギルドに討伐を依頼すべきだの、様々な意見が飛び交った。
魔獣たちはみんな、元の森に帰っていったんだが・・・
魔獣が出現した以上は他に居ないとは限らないとのこと、村人たちは楽観視せず真剣に森を調査する構えだ。
まあ、確かにこの森に魔獣が棲みついていないという保証はない。
多分、杞憂で終わるとは思うが、魔獣は居ないという確信が得られるなら、あながち無駄でもないハズ?
そんなこんなで、村人たち、特にさらわれた娘さんの父親にはそれはもう礼を言われた。
さらわれた娘さんにも何やら顔を赤くして礼を言われた。
何やら「付き合っている女性はいますか?」などと聞かれたので、「いません」と正直に答えた。
すると、娘さんはパッと顔を明るくして「でしたら・・・」と言いかけ・・・
そこでなにやら不機嫌そうな顔をしたエリナが俺の腕を取って娘さんから引き離してきた。
その時、小さな声で
「なによ・・・デレデレしちゃって・・・」
と呟いていた。
別にデレデレなどしていないのだが・・・
そのあと、しばらくエリナと娘さんは二人して「むーっ」とにらみ合いを続けていた。
これはまさか・・・何やらフラグを立てちまったのか?・・・俺は・・・
最強召喚獣ゴリラには最後まで頑張ってもらいました。
山賊たち?ああ、知らん知らん!!
次回、さらに新たなる出会い?