第9話 ひーーきょーーおぅーー♪♪
第9話投稿します。
今回も冒頭から意味不明です。
Side 御子柴 陽一
ボクをー、ひきょーうとーー
みんなは言うけれど-ーー♪
ほんとはー、みんーながーー
言うほど悪じゃないーーー♪
そうさー、ひきょーうなーー
ところもあるけれどーーー♪
そんなにー、みんなでーー
言うことないだろう---♪
ひーーきょーーおぅーー♪♪
これがオイラの弱みさーーー♪
ひーーきょーーおぅーー♪♪
ズルいオイラのすべてさーーー♪
ヤダなーーー(涙)♪♪♪
ヤダなーーーーーー(涙)♪♪♪
ふう、卑怯な藤木・・・じゃなくて卑怯な御子柴です。
何が卑怯かって?
それはもう、俺の生き方そのものがさ。
よくよく考えてみたら、昨日、俺、花沢親子にありもしない罪かぶせて、悪人に仕立て上げちまったよな?
自分の苦しみから逃れるために・・・相手が実在しないキャラなのをいいことに・・・
他にも生き延びるために、汚い狂言を演じてきたりもしたし・・・(※ 第4話参照)
藤木、スマン!!
俺、小学生の頃、君のこと卑怯卑怯と言って面白がってました!
面白がって
『全国にいる藤木さんに謝れー』
なんてココロないことも言ってました。
ところがドッコイ、気付けば俺は君を遥かに超える卑怯者!
俺のほうこそ、全国にいる御子柴さんにゴメンナサイだ。
さあ、懺悔はこのくらいでいいだろう。
ここまで悔いれば、花沢親子も二度と化けて出はきまい・・・かな?
現在、俺とエリナはクエストの薬草採取中。
途中、襲いかかってくるクマなどの猛獣もいたが、足元にビーダ○ンの超ビー玉砲を爆裂させ、ビビらせて撤退させた。
エリナは相変わらずビーダ○ンの威力に驚きながらも、いそいそとビー玉を回収する滑稽な俺を見て、クスクスと笑っていた。
・・・いつか俺の本気である真・超ビー玉砲を見せてくれる・・・
でもそれじゃあ、俺のビーダ○ンが耐えきれずに壊れちまうから、やっぱりやめとこう。
しかしエリナといえば、昨日はいきなり俺のことを抱き締めてきたりして、一体どうしたんだろうか。
その次の日には、何事も無かったかのように振舞っている。
しかも、やけに元気だ。
昨日のことを聞こうか迷ったけれど躊躇される。
なんだかな~~~
そうこうしているうちに規定量の薬草を摘み終えて、今日はもう遅いから近くの村に一泊して帰ろうか、というところだったんだが・・・
「山賊が出たですってっ!?」
山賊が出没したらしい。
村人たちが言うには、近頃、この村付近の森の洞窟を根城に、盗賊が活動を始めたとの事。
近いうちに、領主かギルドに依頼して討伐してもらう予定だったそうなのだが・・・
「そうだ・・・
娘が・・・うちの娘が・・・
さらわれちまって・・・
ああああああぁあっ・・・!」
泣き崩れる中年男性。
年頃の娘さんを山賊にさらわれてしまったそうだ。
まわりの村人たちは、そんな彼にかけるべき言葉が見つからないようだ。
しばらく泣き続けた中年男性は、唐突に涙に濡れた顔をあげて
「だいたい村長が悪いんだっ!!
今まで山賊どもを討伐しないでほっとくから!!
おかげで俺の娘が・・・・
どおしてくれるんだよぉおおおおっ!!」
と喚き散らす。
可哀そうではあるが、はたから見てもこれは八つ当たりだ。
村長らしき老人は、バツが悪そうに沈黙している。
村人たちは激昂する男性をなだめようとするが・・・
「うるせぇっ!!
娘をさらわれたんだぞっ!!
俺の娘はベッピンだ・・・
今頃、山賊どもにどんな目に遭わされているか・・・」
取り付く島なし。
それは確かにマズイだろうな。
美人ならこういう場合、十中八九で慰みモノにされる・・・
そんな中・・・
「私が助けにいくわ・・・」
エリナが声をあげた。
村人たちは驚いてエリナに顔を向けた。
「私が助けに行く。
目の前で人が困っているのを見て、黙ってはいられないから」
エリナはもう一度、ハッキリと村人たちにそう伝えた。
きっと、同じ女性として娘さんの危機を放っておけないというのもあるんだろう。
「あ・・・あんた・・・
なんとかできるのか・・・?」
男性は唖然とした表情でエリナに尋ねた。
「もちろんよ・・・
私、こう見えても剣の腕は立つから。
魔獣とも何度も戦ってきたわ。
私が山賊たちを倒して、娘さんを連れ帰ってくる!」
強い意思を秘めた言葉。
「た、頼む!
あんただけが頼りなんだ!
娘を、娘を、どうか助けてくれ!!
お礼は何でもする!!!」
エリナに頭を下げる男性。
「お礼は何だっていいわ。
私がしたくてすることなんだから・・・」
エリナは、なんつーか漢だねぇ~
いや、勇者か?
そして、エリナは俺のほうを向き、
「ヨーイチ、そういうわけだから私、今から行ってくるわ。
幸い、山賊の居る洞窟の場所は分かっているらしいし・・・
すぐ戻ってくるから、ヨーイチはここで待ってて」
と言ってきた。
「え・・・?
俺は一緒に行かなくてもいいんですか?
いちおうビーダ○ンがあれば、俺も戦うことができるけど・・・」
いちおう助力を申し出てはみたが、
「うん・・・
気持ちはありがたいけど、
あなたの魔導具、弾が5つしかないんでしょう?
山賊の正確な人数も分からないから・・・」
まあ、エリナからしてみれば当然の心配だよな。
盗賊が大勢いたら、ビー玉5つだけでは足りないだろうし、使い切ってしまったら俺は足手まといにしかならない・・・
うーん、その心遣いはありがたいんだけど、俺に限っては杞憂なんだけどな・・・
今さら、『俺、実は強いんです』なんてバラすのは気が引けるが・・・
しかしそれで、万が一、彼女が失敗してしまった場合がなぁ・・・
俺が悩んでいるのを察したエリナは、
「大丈夫、
さっきも言ったけど、私結構強いから。
正直言うとね、人を相手に戦った経験って、そんなにないから不安なんだけど・・・」
本当に少し不安そうな表情をするエリナだったが・・・
「でも、私は勇者だから・・・
困っている人を助けるのが私の使命だから・・・」
そうニッコリ笑うと、俺たちに背を向け、盗賊たちのいるであろう洞窟に走り出した。
勇者ね・・・意外な事実・・・
まあ、彼女なら王道らしい勇者だとは思うがな
ただ人を相手に戦ったことがないというのは不安だな・・・
モンスターとは何度も戦ったことはあるらしいが、相手が人間ではまた違ってくるからな・・・
・・・どうにも不安だな・・・
・・・・・・
Side エリナ
ドスッ!
「っくうぅっ・・・!」
しくじった・・・
山賊の洞窟を見つけ、乗り込んだところまでは良かった。
幸いさらわれた娘さんは無事で、まだ暴行を受けた様子はなかった。
はじめは、数の優位と私が女ということで油断していた山賊たちだったが、
仲間が斬り倒され、20人以上いた人数が10人にまで減ったところで、流石に顔色が変わってきた。
そして、追いつめられた山賊たちは、あろうことかさらわれた娘さんに刃を突き付け、人質に取ったのだ・・・
娘さんは喉元に刃を突き付けられ、涙を流しながら怯えている。
その目は、私に『 助けて 』と訴えている。
それを見て、私は手も足も出せなくなってしまった。
・・・情けない・・・
今まで、私は困っている人を助けるために努力してきたはず・・・
それが、こんなにも簡単に無力になってしまう・・・
私は勇者のはずなのに、目の前の人間一人救えないなんて・・・
こんな状況でこそ、人を救い出すのが勇者のはずなのに・・・
なんて、情けない・・・
なんて、もろい・・・
ゴスッ!
「ぐっ・・・ふっ・・・」
今の私は、山賊の言われるがままに武器を地面に置き、無抵抗のまま山賊たちに殴られ、蹴られている。
「そらそら、どうしたよおっ!
最初の威勢はどこいったんだぁっ!」
ガスッ!
山賊の一人が、膝をついた私に蹴りをいれてくる。
「ぐっ・・・っあう・・・」
膝が笑っていた私は、その一撃であっけなく地面に倒れた。
立とうとしても立ち上がれない。
体も痛いけど心も痛い。
「ふう、ようやく倒れてくれやがったぜ・・・」
「散々てこずらせやがって・・・」
「よくも仲間を殺ってくれやがったな・・・」
私に反撃する力が残っていないと見て、山賊たちは口々に言う。
「この恨み・・・
てめぇのカラダではらさせてもらうぜぇ!」
ここで今まで真ん中に鎮座していた首領らしき男が、痛みでロクに動けない私の体の上に、覆いかぶさるようにのしかかってきた。
「っ・・・!?」
「へへ・・・
こりゃあ、大した上玉だぜ・・・
今日さらってきた村娘よりもな・・・
儲けモンだぜ・・・こりゃあ・・・」
下卑た笑みを浮かべながら、私の頬に脂ぎった手を這わせてくる首領の男。
(・・・っ!?・・・気持ち悪いっ・・・)
気持ち悪い・・・
おぞましい・・・
怖い・・・
こんなこと初めてだ・・・
モンスターと初めて戦った時だって、こんな恐怖は感じなかった・・・
そもそも、私はなんでこんな目に遭ってるんだろう・・・?
私は、人間の未来のために魔族や魔獣を倒す勇者のはず・・・
それが、なぜ同じ人間にひどい目に遭わされようとするんだろう?
涙が溢れてくる。
こんな目に遭うのが勇者・・・?
違う、断じて違う・・・
(・・・たすけて・・・)
ふと浮かんだのは、最後に見たヨーイチの優しい顔。
「・・・たすけて・・・ヨーイチ!!」
私は、力の限り叫んだ。
瞬間、
パンッ!!
耳をつく破裂音たしたと思ったら、
下卑た表情をしていた首領の男の口から上が、文字通り弾け飛んだ。
ドサッ・・・
顔の大部分を失った首領の男は倒れ、ピクピクと痙攣している。
何があったのか分からない・・・
人の頭がいきなり粉々に弾け飛ぶなんて・・・
「「「「・・・・・・」」」」
まわりを見る。他の山賊たちも、さらわれた娘さんも、あまりの出来事に理解が追いつかず、表情が固まってしまっている。
ふと、洞窟の入り口のほうに、誰かがいることに気付いた。
「・・・ヨーイチ・・・!」
ヨーイチだった。
ヨーイチが例の魔導具を構えたまま立っている。
(ヨーイチ・・・)
ヨーイチが来てくれた。
ヨーイチが助けてくれた。
もう駄目かと思っていたのに・・・
今度は嬉しさで涙が溢れてくる。
ヨーイチの目は真剣だった。
目の前で人の頭が弾け飛ぶというショッキングな光景も、そんなヨーイチを見た瞬間には頭から吹き飛んだ。
命を奪うことを躊躇して、森の獣にすら魔導具を直接は撃たなかったヨーイチが、私の危機に躊躇なく人を撃った。
ヨーイチが私のために人を殺した・・・
臆病で優しいヨーイチが・・・
私を守るために・・・
それは悲しいことだけど、不謹慎だけど何より嬉しかった・・・
アホかーっ!!と我ながらツッコミどころ満載の話でした。
女勇者が山賊のアジトに出発し、次の場面でいきなり追い詰められているところなど特に・・・
違和感があり過ぎて、アジトに乗り込むトコロで話を切って、次の話の冒頭で追い詰められている・・・という風にしようかなどと、くだらないこと考えたくらい。
そんなことを考えるわたくしも
ひーーきょーーおぅーー♪♪
です。
ちなみに冒頭の歌『ひきょう者』のオリジナルを聞きたい方は、「 藤木 卑怯 歌 」で検索すれば、すぐに聞けると思います。
次回、ついに陽一の恐るべき本性が・・・