プロローグ 神にも悪魔にもなれる男
わたくし、へたれぬこの初めての小説です。
うまく書けているか分かりませんが、読んでもらえたら幸いです。
感想をお待ちしています。
大自然・・・・それは文明社会の中で摩耗した心を癒すオアシス。
「ふぇっくしょいっ!!」
今、俺が裸なのもそうした大自然の恵みを一身に受けるため・・・・ではない。
「あーっ、さみぃよぉ〜」
日も暮れてきたので魔術で火をおこし、暖をとる。
俺の名は御子柴 陽一。18才。名前からして日本人。
なぜ日本人である俺が魔術なんてものを使えるか、それは俺のふざけた経歴を知れば納得がいく。
異世界召喚。
生まれながらに潜在的に魔力が高いらしい俺は、その素質のせいで幼いころから様々なファンタジーな異世界にひっぱりだこだった。
ある時は邪悪な魔王を討つ勇者、またある時は世界制覇を目指す魔王として。
すごい時は魔法と科学の融合した世界で、巨大魔導ロボのパイロットとして巨大エイリアンを殲滅、なんてこともあった。
8歳で異世界デビューにして初の勇者召喚を経験し、血反吐を吐きながら何度も修羅場をくぐりぬけてきた。
その過程で様々な世界の魔術・武術を身につけてきた。
・・・ちなみに巨大ロボもちゃっかり頂いている。
しかし飽きた・・・・・も〜うんざりだ。
勇者召喚も魔王召喚も何度も経験したが、その度に数えきれないモンスターや人間の命を奪ってきた。
最初こそは平和な日本から召喚されたテンプレ主人公らしく、勇者として戦うよう求められても、命を奪うことに抵抗を感じてうだうだ悩んだりした。
しかしそんな良心の呵責とやらも、自分の命がいざ危険にさらされると、紙よりもあっけなく吹き飛んだ。
人は守るものがあれば強くなれるというが、俺の場合それは自分の命だった。
それも当然。いきなり見知らぬ世界に放り出され、家族も友達もいない。心のよりどころなどありはしない。一番大事なのは自分の命だろう。
以降、自分の命惜しさに、鍛錬を積み試練を乗り越え、自己を高めることに腐心した。
その適応力と努力の甲斐あって、着実に実力を身につけた俺は魔王討伐をなんとか成功させ、元の世界に無事帰還を果たしたのだった。
と思ったのも束の間、その1週間後には別のファンタジー世界に、今度はなんと魔王として召喚される始末。
割り切っていた分、最初の勇者召喚よりもずっとスムーズにこなせたが・・・・
そんなこんなで、これまで勇者として召喚されたのは6回、魔王として召喚されたのは5回・・・・巨大ロボは流石に1回だけだ。
最初の1回目こそ苦戦した勇者召喚と魔王召喚だったが、2回目、3回目と回数を重ねるうちに要領をつかんだというか、今まで培った力と経験がモノを言うようになり、難なくこなせるようになっていった。決して楽ではなかったが。
ちなみに巨大ロボ入手後の勇者召喚・魔王召喚では、ファンタジー世界で念願の巨大ロボ無双を実現させた。あまりにあっけなく片がつき、味方から神のごとく崇められ、敵から悪魔と恐れられたものだ。
今やすっかりベテラン召喚者となった俺なのだが・・・・・
これからもきっとそんなことを続けていくのかと思うとウンザリする・・・・
モンスターだろうと人間だろうと命を奪うことにはもう慣れた。
味方からの期待という重圧を背負うことも、敵からの憎悪にさらされることももはや気にもならない。
だが永遠にゴールの来ないマラソンなどまっぴらごめんだ。
だからこそ決めていたんだ。せめて次に異世界召喚された時は、今までとは違う振る舞いをすると。世界に逆らって生きてみようと。
人生の終わりまで何十回も繰り返すであろう異世界召喚だ。一回ぐらいは風変わりなものがあってもよいはずだ。
今回の異世界召喚はそんな気まぐれから始まった。
話はなぜ俺が森の中で裸なのかに戻る。
大自然の雄大さに触発されたからではない。単に風呂に入っている最中に召喚されたからである。
しかも召喚された場所が誰もいない森の中。こんな事態は初めてだ。
人里に向かおうにも全裸だから無理だし、衣類を手にいるには人里に行かなければならない。
思考の無限ループにハマって抜け出せない状況だ。
まあ焦る必要もない。次に召喚されるときは、召喚主の意向に関係なくノリと気まぐれで行動しようと思っていたのだ。
そういった意味では、勇者を召喚する人間側にも、魔王を召喚する魔族側にも息がかかっていない現在の状況はある意味都合がよいというものだ。
そう結論付けて当面の指針が決まるまで、この人気のない森で大自然相手のスローライフを楽しむことにした。
陽一はわたくしの妄想の具現です。
最強の力を持ったら、俺ならこうやって生きる!という願望を投影しております。
容姿は黒目黒髪・長身・細マッチョ・イケメンです。・・・願望ですので・・・