「すっごいニュース!」と言って大した事ないニュースを持ってくる幼馴染と俺の関係
家紋武範様の「夕焼け企画」参加作品です。
少女漫画をイメージしています。
少女漫画のようなイラストがあります。
「ね!聞いて聞いて!すっごいニュースなの!」
隣に住む幼馴染のアオイがいつものように「すっごいニュース」を引っ提げて俺の部屋にやって来た。
「ねぇ、すっごいニュース!知ってる?新作のコンビニポテチ、ガーリックカレーキムチ味だって!!」
「なんだそりゃ…」
全ての個性が台無しになりそうな組み合わせだな…
「ね!すっごいニュースじゃない?これね、うーんなんていうか…ガーリックとカレーとキムチ味なの」
「でしょうね…」
「え?食べた事あるの?」
アオイがキョトンとした顔をこちらに向ける。
「いや?ないけど。ネーミングがそのままじゃん」
「じゃあ食べてみてよ!」
そう言って封が開いたポテチの袋を俺に差し出す。
「…(もぐもぐ…)うん。ガーリックとカレーとキムチ味だよ」
「ね?こんなポテチが売ってるなんてすっごいニュースじゃない?」
…どこがだ。
アオイはいつもこんな感じだった。
「すっごいニュース!隣のクラスのミカちゃんのお姉さんの彼氏のところに子猫が生まれたんだって」
「子猫、遠いな」
「すっごいニュース!カナちゃんのお父さん出張先で牡蠣食べ放題だったんだって!羨ましい〜。私も出張したい」
「美味しい物食べるだけの出張なら俺も行きたい」
わざわざ俺の部屋まで来て言うほどの事でもない、全然大した事のないニュース。
小さい頃から「ちいてちいて。(聞いて)」と言って俺に付き纏い、同じ幼稚園、小学校、中学校に通い、高校まで「どうせなら一緒がいい」とくっついてきた。
でも…
俺はアオイのそういうところが可愛いと思っていた。そしてそれは友達以上の感情だった。
高校に入ってから急に大人びて見えるアオイを意識せずにはいられない。
好きだ。
早くこの思いを打ち明けたかった。
そして関係を進めたかった。
…反面、この関係が壊れることに恐怖を抱いていた。
「すっごいニュース!昨日唐揚げ食べたら口の中やけどしちゃった。ほら、見て」
そう言ってアオイは小さな口を開けて、舌をペロリと出して顔を近づけてくる。
そして「ほあ、ここ」と、口を開けたまま、やけどの場所を指差す。
あまりに無防備すぎるアオイを、このまま食ってやろうかと思ってしまう。
「不細工だな…」
精一杯の強がりを言ってみた。
「いいの!ほら、やけど見てよ!」
アオイはそう言ってまた口を開けた。
「ほあ、ここ。わかう?」
「あ〜?わかんね〜」
「ほあ!ここ!」
さっきより大きく口を開けたアオイが、よく見ろとばかりに近寄る。
頼む。理性がぶっ飛ぶ前にやめてくれ。
「見えた見えた。痛そうだね」
適当にそう言うと、アオイは満足そうに口を閉じた。
夕日が窓から差し込み、部屋をオレンジ色に染めていく。
夕焼け色に染まったアオイがニコリと笑った。
気持ちを打ち明けようと覚悟を決めた時、アオイが言った。
「でもさ、こんな顔、好きな人の前じゃ絶対出来ないよね」
バッキィィィンッッ!!
と、心が盛大に折れた音が聞こえた…笑
「うぉおいっっ!!」
「あるある」「家族枠だよねー」
イラストは少女漫画をイメージしました。「トゥクン…♡」ってやつ。
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