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03話

最初に霊獣と対峙したのは燿だった。

白虎から降りた燿は軽く撫でた後に印を結び、白虎を陣の中に戻した。

「霊獣様、お待ちください。」

燿は霊獣の正面に立ち、声を掛けた。

「陰陽師か。何用か」

「おっしゃる通りまだ駆け出しの陰陽師でございます。九尾様とお見受けしますが、まずはお名前を伺ってもよろしいでしょうか。

そして契約をまだ誰ともされていないのならば、私を試していただけませんでしょうか」

「ふむ。最近は儂を式神にしようと声を掛ける酔狂な者も随分減ったからな。少し話を聞こうか。人は儂の事をただ九尾と呼ぶが、

今は白とでも呼ぶがよい」

「ありがとうございます。白様、質問を許していただけますでしょうか」

「応」

「白様は人間をどうお思いでしょうか」

白はしばらく考えたあと、

「難しい質問よな。人は善悪入り混じっておる故、一括りに判断はできまい」

「ではどういう人間に好意を持てますでしょうか」

「力がある者だな。我と契約を望むならその力見せてみよ!」

そう言うと、白は身体を震わせた。すると、白い尻尾が燿に向かって飛んできた。

燿はとっさに『守の陣』を自身に掛けたが、勢いそのままに吹き飛ばされ地面に転がった。

「くっ、白様・・・」

「力をぶつける時だ。無礼講でよいぞ」

「そう・・・なら白、不意打ちなんて小物みたいな事しないで貴方の本当の力を見せて頂戴。そうでないと白が私と契約するに値するかわからないわ」

「⁉」

燿がいない。と思った瞬間、尻尾の一つが爆発した。慌てた白が振り返ると燿が印を結び終えていた。

白が慌てて距離を取ろうと後ろに飛びのくと、そこには白虎が待ち構えていて二本目の尻尾を嚙みちぎった。

「ぐぁぁぁぁ!お主は何者だ。駆け出しの陰陽師ではないな!」

「ごめんなさい、伝え忘れていたわ。私は駆け出しの『天才』陰陽師、燿よ。今から尻尾を順番に破壊していくわ。

降参する時は早目にお願いね」

可愛らしい笑顔で物騒な事を言った燿は指を白に向けると、大きな亀のような生き物が上から落ちてきた。白はそれに潰され、さらにはどこからか蛇が現れ白に巻き付きついていた。燿が印を結んでいる間に白虎がもう一本噛みちぎる。燿が印を結び終えた指で尻尾を指すと、そこに雷が三回落ちた。白が降参するまでに燿が壊した尻尾は五本だった。


―その頃、紬は猫又の虎徹と対峙していた。

紬は次々に襲い来る尻尾を避けながら距離を詰め、虎徹の顔面を蹴り上げた。虎徹は顔を歪ませ、お返しとばかりに鞭のようにしなった尻尾を二本同時に振り下ろした。一本目を避けた紬は、二本目を掴みそのまま地面に投げつけた。紬は印を結び『炎舞の術』を放ったが、虎徹は右手の爪で炎を切り裂いた。

「つむぎん、面白い!面白いよ!」

「うっさい!とっとと契約しないと顔の形変えるからね!」

「そいつはおっかないが、まだまだ遊び足りねぇなぁ!」

虎徹は尻尾の形を槍に変え、紬に向けて放った。慌てて距離を取った紬は右に左に避けつつ印を結び始めた。

「にゃはは!『守の陣』だっけか?あれで守らないと身体が穴だらけになっちまうぜぇ!」

「『守の陣』は使わないの。だって当たらないし。ボクも質問があるのだけどいいかな?」

「何でも聞いてくれていいぜぇ」

「あんたの尻尾って回復するの?」

「ああ、何度でも生えてくるぜ。だけど痛みは感じるから狙ってみたらどうだ?」

「そう、安心したよ」

虎徹は二本の尻尾を棘の付いた棍棒に変えて同時に放った。左右から棍棒が向かってきた紬はその場から動く事もせず先程の印を結び続けている。

「楽しかったぜぇ!つむぎん!もう終わりなのが残念だぜぇ!」

「残念だよ。ボクもね!」

二本の尻尾に押しつぶされると思った瞬間、紬の周り全てが凍った。

「いてぇ!なんだこれはぁ!」

「『氷城の術』だよ。燿姉が作ったのだけど、ボクがやると印を結ぶ時間がかかりすぎるし、自分の周りしか攻撃出来ないからあまり使えないと思っていたけど。術は使いどころが重要だね」

「なんだそりゃぁ!聞いてねぇ!聞いてねぇぞ!」

「言ってないからそりゃそうでしょ?さぁ、本当に顔の形変えてみようか!」

虎徹の身体を軽業師の如く器用に飛び跳ねると、紬は左右の拳を連続で虎徹の顔に叩きつけた。どうにか喋れるうちに契約出来たのは虎徹にとっても紬にとっても幸運だったかもしれない。


―桃は黒い九尾の前に立っていた。

「貴方が霊獣?」

「んん?あぁ九尾の黒だ」

「式神になって」

「いきなりだなぁ。式神だって?なんか得でもあんのかよ?」

と言って黒は品定めをするように桃を見つめた。

「お前、人間か?あんまり知らねぇ匂いと気配だな」

「人間のつもりだけど」

「お前の中に何か・・・いや、気にすんな。んで、お前戦えるのか?」

「わからない」

「なんだそりゃ。力無き者に従う霊獣はいないぜ?」

「刀でなら少し」

「術でも刀でも俺が降参すればなんでもいいぜ」

「ごめんね」

「あん?降参かよ?」

「加減出来ないから、先に謝ったの」

そういうと、桃はすらりと刀を抜いた。まさか刀とは、霊獣相手に正気とは思えない。黒は退屈凌ぎに軽く撫でて終わりだなと思っていた。桃は抜いた刀を持ったまま一直線に向かってくる。黒はげんなりしながら尻尾をまずは一本桃に向けて放った。尻尾は桃の頭に落ち、大きな音と共に土埃が舞った。しかし、悲鳴を上げたのは黒の方だった。

「ぎゃぁぁぁ!な、なにが起きた⁉」

土埃の中、桃が刀を振り上げていて、尻尾は身体から切り離され遠くに落ちていた。

黒は自分の身体が震えている事に気付いた。桃から発している尋常ではない殺気をすぐさま感じ取ったからだ。

このまま戦り合ったら契約以前に殺される!

「ま、待て!今ので充分お前の強さはわかった。戦いはここまでにしよう!」

「式神は?」

「いや、その強さがあればお前に式神なんていらないだろう」

「いる」

「なんでだ!」

そう言われた桃はもじもじしながら答えた。

「姉と妹が・・・喜んでくれるから」

黒は呆気に取られた。あれだけ殺気を放っていた少女が見る影も無く恥ずかしそうにしていたからだ。俄然興味が沸いた。

「面白いな。いいぜ。お前と契約してやる」

桃はぱぁっと顔を輝かせた。黒は調子が狂うなぁと思いながらも契約することに決めた。

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