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第118話 初めての……

「うがーーーーっ! また凶だーーーーっ!!」


 寒空の下、井上の叫びが木霊する。


 新年早々元気なやつだ。ちょっと離れた場所では、ゼミ友達の青山たちが、おみくじの結果を教え合っている。


 私はといえば、社務所からそれを眺めているのだった……




「お姉ちゃんの巫女服姿が見たいっ!!」


 始まりは、そんなアリスちゃんの一言だった。



 年の瀬も迫ったある日。


 突然のアリスちゃんの告白に、しかし私は困惑する。


「い、いきなりどうしたの?」


 まあ、アリスちゃんが突然なのはいつものことだけども。


 きっと今回も、この子の中では突然じゃなくて段階を踏んでいるんだろう。……たぶん。



 手に持っているチラシが、きっとそれだ。


 受け取ると、そこには、元旦の巫女のバイトの求人が書かれていた――




 そんなわけで、私たちは元旦から働いている。……巫女服を着て。


「えへへっ。お姉ちゃんかわいいっ」


 アリスちゃんはとってもうれしそうだった。まあ、それならよかったけれども。



「みゃーの。おみくじリセマラさせて」


「いいけど……いいの?」


 新年早々ブレないやつだ。




 井上たちが帰ったすこしあと、今度は星野さんがやってきた。


「あけましておめでとうございます、小岩井さん、お姉さんも」


「おめでとう星野さん……わあ……っ」


 アリスちゃんは驚いたような声を上げた。



「星野さん、その晴れ着、すっごく似合ってるよ」


「そ、そうかな……? ありがとう……」


 照れくさそうに笑う星野さん。たしかに似合ってる。普段のかわいらしい様子とは違って、今日はキレイだ。


 そうして笑っている姿は、普段とはまったく違って……



「小岩井さんも、巫女服すっごく似合ってるよ! お姉さんとお揃いで、とってもいいね! とっても! とっても!!」


 ……いや、やっぱりいつも通りかも。




「そういえば……」


 すこし経って、落ち着いた様子の星野さんが言う。


「二人はおみくじ引いたんですか?」


「うぅん、まだだよ」


 そういえば、私たちはまだ引いてなかった。



「だ、大丈夫ですよ! 二人ならきっと大吉を引きます! だってこんなに素敵なんですからっ!!」


「う、うん……?」


 やっぱり、ときどきこの子が分からない。


 でも、アリスちゃんは冷静に「ありがとー」と返していた。


 ……この二人、ホント普段からどんな会話してるんだろう?




 おみくじの販売を終えて、私たちは、今度は境内の掃除をする。


 初詣に来る人も結構すくなくなってきた。今は私たち以外にはだれもいなかった。


 神主さんから、早めに休憩を取っていいと言われたので、私たちはお言葉に甘えることにした。



 アリスちゃんの提案で、私たちもお参りすることにした。


 うーん、どうしようかなあ。いちおう就活生だから、合格祈願と、あとは……


 ふと隣を見ると、真面目な顔で手を合わせている大好きな女の子がいた。


 白い肌に、金色の髪、けぶるように長いまつ毛……


 やっぱりキレイだ。本当にキレイ。


 もう一つの願いは、この子とずっと――



「お姉ちゃん、どうかしたの?」


 視線に気づいたらしい。アリスちゃんがキョトンとした顔で訊いてくる。


「な、なんでもないよっ」


 反射的にそう答えてしまう。答えてから後悔したけれど、



「ほんとうに~~?」


 いたずらっぽい笑みを浮かべて、アリスちゃんは私の顔を覗き込んできた。


「うっ……アリスちゃんのことを考えてました」


「ほんとっ!?」


 パァっとアリスちゃんが笑顔になる。


「私もね、お姉ちゃんのこと考えてたんだ! おそろいだねっ!」


 突然手を握られたので、ちょっとビックリしてしまった。



 だ、ダメだ。一度意識したら、止まらなくなっちゃった。


 考えてみたら、年が明けてからは、まだ一度もしてないんだよね。その……



「お姉ちゃん。今エッチなこと考えてたでしょ」


「うぇっ!?」


 さっきよりもビックリしてしまう。


「べ、べつにエッチなことなんて考えてないよっ!?」


「ほんとかなぁ~~?」


 またいたずらっぽい笑みを浮かべたアリスちゃん。私は……



「ほ、ほんとです。その……まだキスしてないって考えてただけだからっ」


「やっぱり考えてるじゃん」


「えぇっ!?」


 そ、そうかな。でも、そうかも。人前でするようなことではないし。う~~ん……


 突然、私の視線が上を向く。アリスちゃんに、あごをクイッとされたからだ。



 さっき横目で窺った恋人の顔が、近くにある。


 サファイアの大きな瞳は、本物の宝石みたいにキラキラと輝いている。


 こうして見ていると、吸い込まれそう……


 どんどん、近づいてくる。アリスちゃんが、どんどん近くに。うぅん、私が近づいてるのかも? あれ……



 ちゅっ



 やわらかな温もりが、唇の包み込む。それはあっという間に、私の全身を包み込んでいった。


 でも、胸のドキドキは止まるどころか、さっきよりも大きくなっている。


 もっと、もっとしたい。でも我慢しなきゃ。ここは外だし……



「今年もよろしくね、お姉ちゃん。大好きっ」


「うん、こちらこそ。大好きだよ、アリスちゃん」


 でも、今だけ。今だけは……



 私たちはもう一度、唇を重ねたのだった――

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