第12話 ミナト元帥は優勝したい?その2
キャラ紹介
ミナト・ナツメ
本作の主人公兼大部分の語り手。ひょんなことから下っ端→元帥になってしまう戦士。身長160センチ。体重45キロ。黒髪ショートボブ。本人曰くザ・平均的な見た目。あらゆる適正値がずば抜けて低い。かなりのオタクで、可愛いキャラクターが大好きな変態。アニメや漫画の見過ぎで心の声がめちゃくちゃ多い。
シノン・ソラキ
第36代 インターナショナル・アーミーズ元帥。くじ引き元帥決めの元凶。前例がないような突拍子もない思い付きによる改革で組織を指揮した天才。身長171センチ。体重49キロ。パープルヘアーのポニーテール。細身の絞られた身体。美人。低音ボイス。戦闘能力も組織においてずば抜けているとの噂。
マコト・ハルネ
二等戦士将→将軍。性別不詳の可愛らしさ。身長140センチ。体重28キロ。水色ヘアーのワンレンボブ。恥ずかしがり屋。その可愛らしい見た目とは裏腹にとてつもない戦闘力を秘めている。
ナナミ・アキカゼ
一等戦士監→軍師。高飛車な性格の魔法少女。身長145センチ。体重30キロ。金髪で腰のあたりまでのロング。様々なオリジナル魔法を使えるが技名が全部青少年期特有のあの感じ……。
ユイ・フユサキ
元帥付見習戦士。雪山に突如現れた幼女。身長128センチ。体重25キロ。銀髪セミロング。正体不明で記憶喪失。とてつもない魔力量を有しており、その威力は山脈を半分に割れるほど。
ジョー・モリムラ
一等戦士尉。秘書兼警備戦士隊隊長。身長201センチ。体重100キロ超。全身筋肉のようなガチガチのマッチョにサングラスをかけているコワモテ。忠誠心が高く戦士としての能力値が高い。声がデカい。
※本作品は現実世界の未来寄りの世界観かつ別世界です。ゆえに登場する事象(用語・単位等)は、現実世界のものと同じ場合が多いです。
※本作品はキャラクターの独白やキャラクターの持つ主観が多い場合がありますので、予めご了承ください。
「さあ、いよいよ始まります! 第1回インターナショナルアーミーズ最強戦士はだあれ? 決定戦! 司会および実況・解説は私、シノン・ソラキでお送りいたします」
シノンさん、明らかにいつもと違いすぎはしませんかね? と、思いつつも、あえて何も言わずにこのまま頑張ってもらおう。実況っぽさを満々にあそこまで楽しそうに盛り上がっているシノンさんを止める必要なんてない。
ついに始まったこの大会。全国中継がなされ、戦士のみならず、世界中の多くの人々がこの大会に期待を寄せている。
本戦会場はインターナショナルアーミーズ本部の戦闘訓練場。マコトくんとナナミちゃんが戦っているところを初めて見たあの日を思い出す。
今日以降、それを超える戦闘が見られるのだろうか。そう考えると私も内心やや興味深く感じて、開催できて良かったと思う。
「では、大会最初は格闘制から行います。準備をどうぞ、ってあれ? 一人戦士が足りないようですが棄権か?」
運営の戦士がシノンさんに耳打ちする。
「おっーと、すいません。あと一人は私でした。」
大丈夫なんですか、本当に。出番を忘れるなんて……。
そのとき、私の元にメッセージが届いた。
「シノンさんからだ、って……」
(実況、残りはよろしく頼むよ!)
「ええ……」
シノンさんはいつの間にか戦闘場にいて、私と目が合うや否や、力強くグッジョブを見せた。
なんだかこの全く人の気持ちを理解していないグッジョブは既視感があるな……。
仕方ない。あまりやりたくはないが、私も元帥として一仕事しますか。やるならやる、手は抜かない。
「さあ! いよいよ格闘制が始まります! 注目の第1戦はシノン・ソラキ一等戦士将が出場します!」
戦闘場は基本的に訓練目的なので大規模な観客席などはない。今大会は観客はおらず、全てオンラインで試合を中継している。
しかしながら、本部の施設内で中継を観ている戦士がよっぽど多いのか、どこからとなく歓声は聞こえてくる。
「盛り上がってますねー」
観客がいなくても言えてしまう実況だ。
「さあ、制限時間は5分それでは試合開始です!」
ーー私が合図したと同時だった。シノンさんの対戦相手はもう目を回して倒れている。
「えっ、ええ⁉︎」
それしか言えなかった。そうだ、リプレーがあるはずだ。
私が「開始です」の「す」を言ったのち、わずか0.03秒後、シノンさんの右ストレートが相手の頬にのめり込むほど入っている。相手は何の防御もしない、否、何もできることなく一発KOであった。
「あ、あんなの、どうにもならないじゃない」
振り返ると背後にはマコトくん、ナナミちゃん、ユイちゃんがいた。
「みんな来てたなら声かけてよ。ほら、誰か実況代わらない?」
「ぼ、僕は嫌だ!」
そんな某有名アイドルグループの曲みたいに全力で断らないでよマコトくん。
「ユイ、やる。」
「お、ユイちゃん代わってくれるの?」
「解説だけ、やる。実況は元帥がそのまま」
「あーうん。わかった……」
「さあ! 格闘制いよいよ決勝が始まります!」
急に初戦から決勝戦まで飛んで一体どうなってるんだと思ったみなさん、ごめんなさい。
しかし、大まかにこれまでの流れを言ってしまうならば、みなさんのご想像通り、シノンさんがずっとパンチ一撃で無双してしまったので、お話することがないのです。
「決勝ですが、両カードをご紹介しましょう。まずはここまで一撃パンチで無双しているシノン選手ですが、解説のユイさんはどうご覧になりますか?」
「強そう……」
「……ありがとうございます」
「そして対するはなんと、ジョー選手です!こちらはいかがですか?」
「強そう……」
全然解説になってない。だけど可愛いので許します。
そして何より驚きなのは、決勝に残った二人がまさかの知り合いという……。
ジョーさんは元から強そうな見た目ではあるが、実際のところ、格闘技に関してはいろいろと経験があるようで、シノンさんほどではないがここまで難なく相手を倒してきている。
この試合は本当に歴史に残る名勝負となり得るかもしれない。
「それでは決勝戦……開始です‼︎」
その声と同時に戦闘場では激しい爆発が起こり、激しい地響きが起きた。
「な、何だ⁉︎」
徐々に視界が開け、戦闘場のなかが見えてきた。
二人は拳を突き合わせたままお互いに静止している。
「私の手を止めたのは君が初めてだ、ジョー。」
「お手柔らかにお願いします」
二人の会話が終わるや否や、戦闘場には再び大きな爆発が。そして爆音が鳴り止まない。
先程の一発とは違い、何度も何度もお互いが視認することもできない速さで拳を打ち合う。
「きゃあっ‼︎」
振り返ると、さっきまで隣に座ってたはずのユイちゃんも一緒に三人で頭を抱えて隅にうずくまっている。
「大丈夫だよ‼︎ 戦闘場外は安全だから‼︎」
私は叫んだが、そうも言えなくなってきた。
揺れはどんどん大きくなり、天井も床もキリキリと音を鳴らしている。
「こ、これ本当に大丈夫だよね……」
そろそろ5分が経つーー制限時間だ。
「制限時間です! 終わってください! 終わってくださあああい‼︎」
聞いてくれない……もういい、諦めた! 実況なんて知らない‼︎
30分後。
みんなと一緒に大泣きしながらうずくまっていると、ふと轟音が止まった。
おそるおそる戦闘場を覗く。煙から姿を見せたのは、ガッツポーズを掲げるシノンさんだった。
控え室にて。
「ごほん! 二人とも何か言いたいことはありますか?」
今、私の目の前には正座してうつむく二人の大人がいた。
「悪かった……」
「申し訳ありません……」
私は一つため息をつく。
「タイムオーバーの無視に加え、半径5キロ圏内において騒音と地震を発生。ええ、二人とも、失格です」
「はい……」
というわけで、第1回インターナショナルアーミーズ最強戦士はだあれ? 決定戦! 第一種目は優勝者なしという波乱の名勝負ならぬ迷勝負で幕を閉じたのだった。
続
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