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第10話 ミナト元帥は海に行きたい!下

キャラ紹介


ミナト・ナツメ

本作の主人公兼大部分の語り手。ひょんなことから下っ端→元帥になってしまう戦士。身長160センチ。体重45キロ。黒髪ショートボブ。本人曰くザ・平均的な見た目。あらゆる適正値がずば抜けて低い。かなりのオタクで、可愛いキャラクターが大好きな変態。アニメや漫画の見過ぎで心の声がめちゃくちゃ多い。


シノン・ソラキ

第36代 インターナショナル・アーミーズ元帥。くじ引き元帥決めの元凶。前例がないような突拍子もない思い付きによる改革で組織を指揮した天才。身長171センチ。体重49キロ。パープルヘアーのポニーテール。細身の絞られた身体。美人。低音ボイス。戦闘能力も組織においてずば抜けているとの噂。


マコト・ハルネ

二等戦士将→将軍。性別不詳の可愛らしさ。身長140センチ。体重28キロ。水色ヘアーのワンレンボブ。恥ずかしがり屋。その可愛らしい見た目とは裏腹にとてつもない戦闘力を秘めている。


ナナミ・アキカゼ

一等戦士監→軍師。高飛車な性格の魔法少女。身長145センチ。体重30キロ。金髪で腰のあたりまでのロング。様々なオリジナル魔法を使えるが技名が全部青少年期特有のあの感じ……。


ユイ・フユサキ

元帥付見習戦士。雪山に突如現れた幼女。身長128センチ。体重25キロ。銀髪セミロング。正体不明で記憶喪失。とてつもない魔力量を有しており、その威力は山脈を半分に割れるほど。


ジョー・モリムラ

一等戦士尉。秘書兼警備戦士隊隊長。身長201センチ。体重100キロ超。全身筋肉のようなガチガチのマッチョにサングラスをかけているコワモテ。忠誠心が高く戦士としての能力値が高い。声がデカい。


※本作品は現実世界の未来寄りの世界観かつ別世界です。ゆえに登場する事象(用語・単位等)は、現実世界のものと同じ場合が多いです。

※本作品はキャラクターの独白やキャラクターの持つ主観が多い場合がありますので、予めご了承ください。

 生涯で死を覚悟することなど、そうそうないとは思うが、やはり、誰しも一度くらいはあるのかもしれない。それが私にとっては今であり、そして今、「ミナト、死す」。


 死ぬ間際、人は走馬灯をみるという。一瞬のはずが、とてもとても長い時間を感じた。これまでを振り返るには充分な時間であった。


 だがしかし、そう簡単に死なないのが主人公あるあるとも言うべきだろうか。


 バリンと、まるでガラスが破れたかのような音が響き渡る。おそるおそる目を開けるとそこには、シノンさんの姿があった。


「遅くなったね。間に合って良かった」


 シノンさんは片手で魔法障壁を展開し、難なくS級クラーケンの一撃を受け止めている。


「シノンさん! どうしてここに?」


「それはあとだ」


 シノンさんはこの状況下でも笑みをみせつつ、そのまま攻撃を弾き返す。そして、言い放った。


「斬れないなら、溶かしゃあ良い! メルトフレームっ‼︎」




 30分前ーー本部にて。


 出張で少し本部を離れていた私だったが、今回の件を耳にし、急いで本部に戻った。普段ならS級であっても、優秀な部下達を信じてそう焦ることもないのだが、今回ばかりは妙な胸騒ぎがした。私の直感はよく当たる。私自身がそれを自覚している。


「S級クラーケンが出たってのは本当か⁉︎」


「はい、ただいま元帥を始め将軍、軍師ら幹部で討伐へ」


「最新の観測値と対象の写真を」


「こちらです」


 驚いた。これはかなり古い歴史書にしか記載されていないような伝説級のモンスターだ。たとえ、データベースを知り尽くしたとしても、このレベルのモンスターは普通知り得ないだろう。

 伝説は伝説であって、実在しない。私はそう思っていた。


 けれど、それが伝えられるのには意味がある。私はその程度の気持ちで歴史書も読んでいた。だからこそ一瞬でわかった。 


「実在した……」


「どうされました?」


 考える。間に合うか。今まだ動きが見られないなら……。


「攻撃が開始されました‼︎」


 何⁉︎ まずい……。


「止めろ! 今すぐにだ!」


「しかし、もう、始まっています!」


 くっ……頼む間に合え、間に合え、今日だけでいい、今日だけ私に力を……。


 私はめいっぱいの魔力を込めて、転移魔法陣を創りだそうとしていた。場所はわかる。初めて彼女と執務室で会ったその日、何があってもいいように、マーキングはしておいた。


 さぁ、間に合え、間に合え!




 S級クラーケンは不快なキーンと響く高い音にいかにも魔獣というような低い音も混じった叫び声をあげた。そのまま体はどんどんどんどん溶けてゆく。終いには海岸一面に粘液のようなどろどろとした液体だけが残った。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん‼︎ 死ぬかと思いましたぁぁ‼︎」


 私とユイちゃんは、すぐさまシノンさんに抱きついた。シノンさんはよしよしと二人の頭を撫でてくれた。


 他の兵士達もみなクラーケンの残骸に目を奪われたまま、ただただ呆然と立ち尽くしていた。

 

「そこに突っ立ってる班! サンプルを採取し、全ての残骸を片付けろ! 他の空いてる者で、被害情報の確認と撤収準備! ぼっーとするな‼︎ 動け‼︎」


 シノンさんの号令にはっとした皆々はすぐに動き始める。


「さぁ、元帥も。いつまでも泣いているんじゃない。しゃきっとしろしゃきっと! 示しがつかないぞ」

「はい……」


 私が涙を拭って、次にシノンさんをみたとき、彼女はその場で倒れてしまっていた……。


 原因は急激な魔力消費による反動で、命に別状はなかった。しかし、しばらく安静にという風になった。


 他の戦士達に関してもかなりの犠牲を覚悟したが、奇跡的にも戦士の死者は一名もいなかったそうだ。


 一安心したのもつかの間、私の胸は相当に苦しかった。これが元帥か。私の一言が、私の行動命令が多くの戦士の命に関わってくる。そして今回、私はナナミちゃん、マコトくん、ユイちゃんがいたことで心の底ではどうにかなるという油断があった。これが一番の問題だった。


 いつもなら、くよくよして思い詰めているだろうが、今回ばかりは違った。私は苦しさを感じるなかでシノンさんの顔を思い出す。「できる」その言葉を思い出す。


 そして、私は先程シノンさんのお見舞いの際にこう言われた。


「無知の知って知っているかいーーとある有名な哲学者が言ったそうだ。自分はなにも知らないことを知っている。それはなにも知らないことを知らないままよりもずっといいことだ。君は今回、元帥の重みを自覚した。元帥とはなんなのかを自覚した。そしてーー自分の弱さを自覚した。今はそれだけでいい。それだけで充分。君は自覚を以って、その前の君より強くなったんだよ。だから、次はもっと上手くいくんじゃないか?」


 私は思いっきりその場で泣いて、その場で立ち直ることができた。そのときシノンさんはずっと笑って私の頭を撫でてくれていた。


 それから私やナナミちゃん、マコトくん、ユイちゃんは戦闘訓練の頻度を増やし、日々鍛錬を積んだ。


 いつか、否、今すぐにでも今回同様のモンスターが現れるかもしれない。そのとき私達は決して同じようなことを起こさせない、そう心に誓った。




 一ヶ月後。


「ジャンケンポンっ!」


「ええっ! また私の負けぇ⁉︎」


「ずべこべ言わずさっさと、腕立て100回やりなさい元帥。」


「分かったよぉ。いーち、にー、さーん……」


 え、遊んでるように見える? いや、実はこれでも今、休憩中なんですよ……。


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