俺はシリアスを望まない!!!
20XX年。
魔王を倒すために作られた4人のパーティー――通称勇者パーティーが、魔王の元へと辿り着いていた。
「魔王、貴様はここで倒す!」
「ふっ、たかが勇者に私が倒せるかな?」
この会話を最後として、戦いの幕は切って落とされた。
「喰らえ! 【飛翔剣】」
勇者が魔王に向かってスキル攻撃を放つ。
【飛翔剣】は斬撃を飛ばす事が出来るスキルであり、そのスピードは速く、威力も中々に高い。
だが、決して魔王が避けられない強さじゃない。
魔王が避けた先の事を考えて攻撃の準備をしていると……。
「ぐはぁ……。 おい勇者! 俺の方に飛んできたぞ!」
「す、すまん! 少し制御を間違えたみたい!」
勇者の放った【飛翔剣】はなぜかまっすぐ俺の方へと飛んできて、俺の背中を後ろから切り裂いた。
半ば予想していたことではあるので、不意打ちの衝撃はないが、普通に痛いのですぐに回復魔法を施す。
背中の回復を終わらせると、今度は魔導士が声を掛けてきた。
「みんな、魔法の準備ができたから離れて!」
「了解!」
彼女の魔法に巻き込まれるのは嫌なので慌ててその場から飛び退く。
それを確認した彼女は、最後の一説を紡ぎあげる。
「顕現せよ、我が仰望する大地。【氷結世界】」
この魔法は彼女が最も得意とする広範囲究極魔法だ。
もちろんその分、威力も申し分ない。
ちなみに広範囲魔法にしたのは安易に魔王に避けられないためである
魔王の周囲を急激に氷が包んでいく。
魔王はその場から飛び退き魔法の範囲から逃れようとするが、勇者が【飛翔剣】を放ちそれを阻止する。
範囲から逃れることに失敗した魔王は、少しでもダメージの量を減らすために周囲を炎で包み結界の様にする。
その光景を眺めながら、魔法が解けた時の準備をしていると……。
「な……制御が!? 勇者の付き人さん避けて!」
「うん? どうし……うおっ!」
ちなみに、勇者の付き人とは俺の事である。
彼女が俺に避けてと言った瞬間、俺の足元に氷の世界が広がり始めた。
【氷結世界】である。
慌ててその場から逃げ出す。
「なんで俺にまで魔法撃つんだよ!」
「す、すみません。いきなり制御が効かなくなりまして……」
すんでのところで【氷結世界】の範囲から抜け出す。
多分、後一秒遅れてたら氷漬けになっていただろう。
その恐ろしさに身震いしながら、魔法を耐えた魔王と対峙する。
再び接近戦が始まる前に、後方にいた聖女から声がかかった。
「今のうちに回復しておきますね。【治癒】
俺と勇者と魔導士の体を、緑色の光が包む。
本来、その光で傷が治り疲労が取れていくのだが……。
「……聖女さん? 俺だけ効果がないんだが……」
俺にだけ一切効果が出ない。
毎度のことながらちょっとへこむ……。
「……本当ですね。相変わらず、貴方にだけは回復魔法が効かないようです。発動はしているんですが……」
やっぱり、俺に回復魔法は聞かないらしい。
いや、正確には、戦闘中に俺に使った他者の回復魔法は俺に一切の効果がなくなるのである。
「お前本当……その能力厄介だな」
「ホントだよ!」
これには俺のスキルに原因があった。
【コメディー製造機】
これが俺がこの世界に来た時に与えられていたスキルだ。
その効果は、文字通りコメディーという状況を作り出す能力である。
なのだが……。
「シリアス展開になると、身を呈してギャグ展開に変換される、ねぇ……」
そういう事である。
どうやらこの能力を持つと、スキルが判定したシリアス展開になろうとしたときに、周囲の行動や状況すらもある程度操ってギャグに変えてしまうという能力なのだ。
だから、勇者の【飛翔剣】は俺のところに飛び、魔導士の【氷結世界】は俺にも発動され、聖女の【治癒】は俺にだけ作用しない。
だって、その方が面白くなるから。
というスキルを持ってしまったのである。
「気をつけろ、魔王が態勢を整えたぞ……って、俺たち何で魔王が態勢を整えるのを待ってたんだ……?」
「……すまん、多分それも俺の能力のせいだ。……俺にコメント入れてたじゃん……?」
「……本当、厄介だな」
「すまん……」
ここで疑問が生まれる。
どうしてこんな邪魔な人間が勇者パーティにいるのか?
幼馴染のよしみ?
そんな理由で死地に連れていく奴は悪魔だ。
じゃあなんだ。
答えは簡単。
「付き人! 攻撃が来た!」
「アイアイサー!」
その理由は至って単純。
魔王が大量の魔法を放つ。
俺はそのすべてを剣で斬りつけた。
「その程度の攻撃で俺を倒せると思うな!」
――普通に強いからである。
「……その量の魔法を全部斬れるはやっぱお前だけだわ」
俺は数々のシリアス展開を阻止し、コメディー展開へと変換してきた。
それだけならいいんだが、その度に俺は身を呈して攻撃を受けたり、回復が効かなかったり、即死級の攻撃から逃げたりしていたのだ。
結果俺は、強いやつの攻撃に耐え、自らで回復術を覚え、即死級の攻撃を瞬時に避ける技術力を手に入れたのだ。
つまり、この体質によって鍛えられたおかげで、この体質によって起こる問題を基本的に自力で解決できるうえで、余りある実力を持ってしまったのである。
「クッ、それも効かぬか……。ならば、我が必殺を食らえ! 永久――」
「誰が撃たすか」
魔王が大技を放ってこようとするが、シリアス展開になりそうな行動を許すわけがない。
だってそんなことしたらギャグじゃなくなるからな!
その後、魔王はなんの困難もなく倒す事が出来た。
一応、俺が勇者の大技に狙われたり、魔導士の放った弾幕をすべて叩き落したり、なぜか聖女の回復魔法でダメージを負ったりしたが……。




