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人とのつながりの温かさに触れる

一階から美味しそうな香りが漂ってきた。時間は午後七時前になっていた。本当は今日の家事当番は俺のはずだが望が気を利かせて夜ご飯を作ってくれているのだろう。


望は学校にもあまり行かない金髪ギャルだが昔から根はとても優しい子だ。


さすがの俺も丸一日何も食べなかったのでおなかが空いた。


「ありがとな、当番変わってくれて」


「は?別にお兄のために作ったんじゃねーし、うちの夜ご飯がないと困るから作っただけだし」


かわいくない妹だとも思ったが感謝している。


「ぼーっと突っ立ってないでさ、食器ぐらい出してよ」


「わるい、わるい・・・こういうとこ母さんに似てきたな」


「今なんか言った?」


「なんも」


久しぶりに笑みがこぼれた気がした。


「ご飯できたよ。急いで準備して」


俺は急いで食器を望のもとへ持っていき、料理を受け取りダイニングテーブルに運んだ。今日は俺の大好物の唐揚げか。ほんの少しだけ心の中でガッツポーズした。


「お兄、華恋ちゃんに早めに謝っときな。少し落ち込んでたよ」


唐揚げをとりながら望が言った。俺は麦茶を一口飲んで気持ちを落ち着かせた。


「あぁ、そうするよ。華恋には悪いことしちゃったし」


長い時間一人で考え込んでいたが多少の気持ちの整理はできたと思う。そのおかげか今の望の言葉に素直に返事ができた。


「望がそばにいてくれて助かったよ。本当にありがとう」


「う、う、うるせぇ。別にうちはなんもしてないし、お兄が勝手に元気になっただけだろ!ほ、ほらっ冷めないうちに早く食べて寝ろ」


そういいながら脛を蹴ってきた。


「いてっ、蹴ることねーだろ」


「フンッ」


すぐに望は顔を背けた。照れくさいのか顔は真っ赤になっていた。


 食事も終わり片づけをした。夜ご飯は望に作ってもらったから食器洗いや残りの家事は俺が担当した。いつまでも甘えてばかりではいけないと思っているからだ。


その後自室に戻り、華恋への謝罪のメールを考えていた。なんて話を切り出してよいのか分からなかった。


今思えば、俺は華恋に対して謝ったことが一度もなかった。小、中と対立したことはあったがどちらも特に謝ることなく普段通りに戻っていた。悪いのは完全に俺であるが謝ることに恥ずかしさを感じてきた。


一文字も打てないまま悩んでいるところに華恋からメールが届いた。『明日も家に遊びに来るから。ちゃんと家にいてよね。』メールの内容を見て絶句した。あんなひどい態度をとったのに謝罪のメールすらも打てない俺にどうしてみんなこんなに優しいんだと思い涙が出てきた。『りょうかい!』そう返信して俺は眠りについた。


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