第3章 自分と他人
シロユキは穴に顔を覗かせた。
「むこうにいちご畑があるんだ。いちごを食べに行こう」
美紀はいちごが大好きだった。それで、いちごと聞いたら急におなかがすいてきた。
「でもこの辺て草しかないじゃない。ここから遠いの?」
「少しね。20分くらい歩けば着くさ」
美紀はすっと立ち上がり、穴の中からでてきた。やっぱり外は少し眩しくて、美紀は思わず目を細めてしまった。でも、すぐに慣れた。シロユキは美紀と並んで歩いた。シロユキは美紀より20 cmくらい、背が高かった。
「ねえ、シロユキはいくつなの?」
「ぼく?ぼくは美紀の3つ上くらいかな」
「なにそれ?まだ美紀の年齢言ってないよ。私のこと、知ってるの?」
「知ってるよ。何でも知ってるよ」
「なんでそんなこと言うの?私たち、他人でしょ?」
「他人てなんなの?他人だと分からないの?」
「当然じゃない」
美紀は馬鹿にされているような気がして、少し不機嫌になった。
「じゃあ私の好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きな音楽、昨日何したのか、全部言ってみてよ」
シロユキはただにこにこしているだけだった。
「やっぱり分からないじゃない」
ムッとしている美紀の顔を見て、シロユキは言った。
「ぼくは美紀が、雪が好きなこと知っているよ」
「それはさっき、シロユキとお話したからじゃない」
「じゃあ美紀は、そのときまで自分が雪を好きだったこと知っていたの?」
美紀は黙ってしまった。
「美紀とぼくとで、何が違うのさ」
美紀は少し考え込んでから、言った。
「美紀のことだったら、美紀にしか知らないことが多いわ」




