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アオハルシリーズ

雪の上、1人分の足あと

作者: 青井はる

アオハルな話を書きたくて初投稿。

さく、さく。


白い地面に、足跡が残る。


早朝の住宅街にひと気はなく、昨夜降り積もった雪はほとんどまっさらな状態で目の前に広がっている。

歩きづらいなあ。

ローファー越しに、冷たさがしみてくる。

私はいつもよりも大またで一歩一歩ゆっくり足を踏み出す。


「おう」


下ばかり見ていた私は、突然かかった声に驚き、足を止めた。

そこには、クラスメイトの山下君の姿。

ちょうど、目の前の角から曲がってきたところみたいだ。


「・・・あ、おはよ」

「積もったな」

「だね」


マフラーに口を埋もれさせながら、笑い合う。

うー、さみい、と漏らしながら、山下君が私の前を歩き始める。


さく、さく。


まっさらな地面に、山下君の大きな足跡が刻まれていく。

なんとなく、私はそのあとに、自分の足を合わせて、たどってみる。

まっさらな地面を踏み荒らしたらもったいないと思ったから。

山下君の足は、私のと比べると、随分大きい。

コンパスが違うから、さっきよりもさらに大またで歩く。

けんけんぱみたいだな、と思って少し笑った。


さく、さく。


さく、さく。


「なあ」

「・・・え?うわあ!」


どん、と額に鈍い衝撃。

下ばかり見てたから、山下君が立ち止まった事に気がつかなかった。

私は彼の背中をおもいっきりどついてしまった。

その衝撃でバランスを崩して、とっさに山下君の腕にしがみついた。


「あ、危なかった」


あやうくしりもちをつくところだった。

ほっとして顔を上げると、困った顔をした山下君と目が合った。


「・・・あ!ご、ごめんね!」


あわてて山下君の腕から手を離して、2、3歩後ずさる。

前方不注意でぶつかるなんて、ドジすぎる。

恥ずかしくなって思わず顔を伏せた。


「い、いや。俺の方こそ、急に止まったりして悪かったよ」

「う、ううん!そんな事!私がちゃんと前見てなかったから!」

「・・・」

「・・・」


少しの間沈黙が流れて、気まずくなった。

それを破ったのは、山下君のため息だった。


「いま、歩いてる間、さ」

「え、う、うん」

「俺、こっそり何度か振り返って見てたんだけど、よ」

「え?」


やっぱり気づいてなかったか、と呟いて山下君は頭をかいた。


「なんか、お前があんまり可愛い事してるから気になってよ」

「可愛い・・・事?」

「これだよ、これ」


少し怒ったように、山下君が地面を指差す。

山下君の、足跡。


「俺の足跡を辿ってただろ」

「・・・あ、うん・・・」


それを、見られていたんだ、と意識したら、なんだか、たまらなく恥ずかしくなってきて。

頬が熱い。しもやけみたいだ。


「そんなことしながら、お前、笑うし」

「え!私、笑ってた!?」

「笑ってた」

「嘘!」

「ホント」


恥ずかしい。

穴があったら入りたい。

冷たい手で顔を覆っても、熱は全然引いていく様子がない。


「ご、ごめん」

「・・・なんで謝るんだよ」

「気味悪いよね、笑いながら後をつけてくる女なんて」

「・・・はあ?」


そんな事言ってねえだろ!と怒鳴り気味の山下君の声にびっくりして彼を見ると。

山下君は、呆れたような、怒ったような、複雑な顔をしていて。


「だから!」


首を傾げる私に、山下君は大声で叫んだ。


「可愛かったっつってんだろ!」


そう言った山下君の顔は、耳まで真っ赤になった。




(山下君、顔赤い)(うっせぇ!霜焼けだよ!)

爆発しろ!と思ってもらえたら幸いです。お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初々しくてとても素敵です。 二人のこれからが気になるような作品で、好みでした。
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