泣いている月と僕 【夜語り企画】【月(と)のお話し企画】
それは昔、むかしそのまた昔
冴え冴えとした月の綺麗な冬の夜
肌を刺す氷のような冷気の中で
月の光が辺り一面を照らし出す
それはまるでドビュッシーの月の光
暗い夜道をも明るく煌々と僕を導く
独りぶらりと唇にはいつの時代かの流行り唄
口ずさみながらてくてくてくてく歩いていた
何が哀しかったわけではない
ただ、歩く度についてくる三日月をふと見上げながら
僕は声を殺さず泣きたかった
何故だかなど解らないけれど
僕は無性に泣きたかったんだ
本作は、2018年・秋月忍さま主催『夜語り』企画、2023年・武頼庵さま主催『月のお話し企画』参加作品です。
参加させて下さった秋月さま、武頼庵さま、又、お読み頂いた方、どうもありがとうございました!