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1-7.生徒の会長

 ポプラの伸ばした手は空を切った。

 だが、そこで引かないのが我が妹である。


「じゃあ、いつなら友達になってくれるの?」


「いや、君とは一生友達になる気はない。来世でも未来永劫ないだろう」


 うっわ......。

 きつ......。

 生徒会長の言葉に感情はこもっていなかった。

 もう、この言葉を言う事にも抵抗がないのか、四万十川のように淀みのない綺麗な発声であった。


「......かっこいい」


「え?」


 生徒会長は耳を疑う。

 大抵の人間は「友達になる気はない」と言えば自ずと後退りし、二度と話しかけてくるような事はなかったのだろう。

 だが、目の前の美少女は引きさがるどころか自身を称賛したのだ。


「すごいよ! そんな堂々と言えるなんて! いいな! 私も堂々としたいよ! 言いたいこと言えるようになりたい! ねえ! どうしたら言いたいこと言えるのかな?」


 そんなもん、反町に聞け。

 ポプラは目をキラキラ、頭はほわほわさせながら生徒会長に詰め寄る。

 まさか、自身が後退りするとは思っていなかったのか生徒会長は額に汗を掻く。


「そ・そんなもの知るか! おい! 双子兄! どうにかしてくれ」


「すいません。妹はそういう奴なんです」


「くっ! 一体何なのだ!」


「友達になろう!」


「わ・分かった! とりあえず、今日は帰れ!」


 生命の危機を感じたのか生徒会長は声を振り絞る。


「友達になってくれるの!?」


「いや、それは無理」


 嘘でも友達になるって言えよ!

 ウチの妹はしつこいぞ!


「______もうやめて!!!」


 光ちゃんは叫ぶ。

 幼女の叫びは耳が幸せになると噂で聞いていたがそれは嘘だ。

 実際はキーンとして、イラっとするぞ。


「光......」


「あたしがいけないの! お姉ちゃんはいつも学校の事とか、家の事で忙しいから友達が出来ないの! わ、私達のせいで友達と遊べないのが可哀想で......。私、私......」


 ほう。

 生徒会長はそっち系の人ね。

 成績優秀で容姿も良いけど、家が貧乏で大家族的なヤツ......。

 って設定でボッチなのを隠してるんだろ?

 俺には分かるぜ。

 俺も一時期、家庭事情が複雑って背景で同情誘おうと風聴した時期あったから。


「うわぁー! ごめんなさい!」


「あっ! 光!」


 光ちゃんは泣きながら生徒会室を飛び出した。


「ポプラ!」


「ガッテンしょうゆこぼした!」


 ポプラに光ちゃんを追うように指示し、ポプラは生徒会室を出た。

 泣きっ面の妹を追おうと生徒会長も足を前に出すが、俺は生徒会長の前に立ち、進むのを妨害。


「どいて!」


 刃のような尖った視線を向ける目の前の女性から生徒会長の片鱗は見えなかった。


「それは出来ません。やっと二人になれたのだから」


「???」


 しまった。

 変な言い回しをしてしまい、生徒会長を困惑させてしまった。

 まぁ、気持ち悪いと言われないだけマシか。

 因みに、個人的に「気持ち悪い」と言われるよりも「キンモッ」と省略される方がダメージがデカイ。


「生徒会長は友達が本当に欲しくないのだとお見受けします」


「先程からそう言ってる。だから、早くそこをどけ」


「いえ。どきません。会長はこの問題を軽視しているのではないですか?」


 生徒会長は眉をひそめ。


「友人がいないのは問題ではない。私は学校生活というのを謳歌している。君も見たところ、友人はいなそうだな。早く退け」


 実際そうだけど、決めつけないで下さい。

 俺も友人がいない事は特に気にもしていないそこは同意見。

 しかし、生徒会長。

 あなたは問題の本質を分かっていない。


「ええ。友人がいないのは問題ではない。しかし、問題はそこじゃないんです。友人がいないのを心配されているのが問題です」


「......どういう事だ?」


 こちらに興味は示したが、未だに敵意は持ったまま。

 俺はそれを気にせずに続ける。


「光ちゃんは小学生です。そんな子があなたの為に高校まで来てあなたに友人を探してくれと見ず知らずの俺たちに会いに来たのです。これが高校生である俺たちでまだ良かった。では、知らないオッさんだったら?」


「......」


 俺が提示する問題を把握してきたのか、生徒会長は黙る。

 しかし、目線はこちらから外さず、正直、何を考えているのか判らない。

 数秒の沈黙の後、歯切れの良い言葉が返ってくる。


「わかった。友達になろう。しかし、これは偽りの友人だ。お前は私に干渉するな。あくまでも光を心配させない為に君の提案に乗ってやっているのだ。いいか? 私はお願いはしていない。そこを決して履き違えるな」


 何故、この人はこんなにも高圧的なのだろうか。

 いつの間にか主導権を握られてしまったぞ。

 これが不細工。

 例えば、この間の同人誌バカに言われていたらそいつの耳を引きちぎっている。

 生徒会長が美しい。

 そして、俺よりも身長が小さくて良かった。


「妹のためには友人を作れるんですね。ただ、こちらとしてもそれを受け入れるのは3つ条件があります」


「......とりあえず、聞いてやろう」


 生徒会長は自分が座っていた椅子に戻り、腕と足を組んでまるで軍隊の隊長が部下の話を聞くような態度でこちらを見やる。

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